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「休む」
埼玉 佐藤美文 選
心の荷ほどいて沈む羽根ぶとん 千葉 長尾美和
我慢にも限界がある休火山 秋田 猿田寒坊
一日ぼんやり筆休めしています 香川 川東ミサヲ
繋がれた鎖の長さだけ休む 北海道 佐々木江久子
休日になったらわたし蝶になる 香川 和田町子
休む暇無いので今日は休みます 福岡 伊豆丸竹仙
見えないものが見える休日のスニーカー 香川 桑島孝造
小休止うさぎも亀も缶ビール 新潟 皆川綾子
休みぐせついた靴だが捨てられぬ 香川 和田町子
八十の毬はどっこいしょと休む 広島 田部雛子
ポケットに休ませているいい笑顔 徳島 野口きよみ
懐が冷えて連休が終る 広島 番野多賀子
助手席でいつも眠っている私 佐賀 真島美智子
箸休め用の男を探してます 香川 橋 ひろみ
昼休み戦士は鎧つけたまま 福岡 古谷 清
休んだら弾き出される軽い椅子 北海道 三浦テイ子
休みあけ靴に気合いを入れられる 茨城 太田紀伊子
毎日が休み疲れるものですね 香川 川西青蝶
検診に休む青空なのになあ 兵庫 前川千津子
皆既日食忙中のロスタイム 茨城 大河原信昭
噴水のベンチ蚊柱たっている 大阪 河内天笑
働ける自信を秤る皿がない 埼玉 川崎達海
エプロンを羽衣にして横たわる 鳥取 吉田孔美子
休むのも難儀徹夜も又難儀 愛媛 山内クリエ
一休みするにはトイレいいところ 大阪 田頭良子
サスペンス以外は母の耳休み 香川 宮武テイ子
ひと休みしようか雨が降ってきた 鳥取 土橋 螢
砦には私の休む石がある 鳥取 鹿児島節子
子らみんな還らず棚田にて休む 兵庫 泉 比呂史
かあさんにも週休二日あげたいな 香川 高畑千代子
リストラは地上の星の小休止 香川 藤本ゆたか
休日宣言蝉やトンボの仲間入り 香川 兜 はなえ
油断した休み天狗の鼻が折れ 愛媛 矢野まさし
絵日記にパパが休んだ訳がある 熊本 渡辺幸士
休肝日のどがかわいて日が沈む 茨城 市毛英太郎
とてもナウイ休みをロボットから貰う 香川 板東弘子
ポケットにマルコポーロが仮眠する 埼玉 岡部美雄
箸休めかるい噂を繰り返す 大阪 片岡湖風
休み休み休み永遠に休み 奈良 樋浦桜竜
休刊日朝が一拍ずれている 東京 阿部 勲
さっちゃんが眩しくなった夏休み 香川 佐々木ええ一
修羅こえて胸の仏を休ませる 香川 内久保勝子
神さまも週休二日制ですか 香川 奥田音野
空海の風ふところにひと休み 新潟 長谷川冬樹
ある晴れた木陰に静む汗である 新潟 福田柳太郎
コーヒーぽこぽこ妻の休戦サインだな 新潟 橋本祐子
毎日が休みになって忙しい 大阪 安田忠子
盃の中にプライド休ませる 埼玉 亀井 哲
四百字詰十九行で休む眉 兵庫 山本義子
煉獄か蝉野仏に静止する 愛知 村井勢津子
休止符が足りない父さんの楽譜 千葉 津田 暹
休んだら倒ける私と一輪車 大阪 吉道あかね
輪になって休むカラスよサミットか 愛媛 尾崎整子
日めくりに海の音する日よう日 宮城 雫石隆子
この辺で休もう土用波が立つ 千葉 山口早苗
茶を淹れて一句心の日向ぼこ 兵庫 北野哲男
休日のパンはこんがり焼けてくる 香川 熊井艶子
べんとうがつめてあるので休めない 香川 高島真砂子
庭園の蛍が休む舞い疲れ 東京 三井良雄
休みたいから働いているのです 和歌山 柏原優子
父ちゃんがいたわり母ちゃんが休む 新潟 玉井たけし
継続は力と思うずる休み 新潟 阿部儀一
休み箸粋なわかれを考える 熊本 宮本美致代
風が休むとコスモスが淋しがる 愛媛 橋田呂久朗
ポケットにゆっくり休む場所がある 北海道 松田一洲
有休で足りる半端な愛社心 神奈川 鈴木柳太郎
傷心を母校の樹下に休めんか 大阪 田頭良子
秀句
フランスパン一本抱いてOFFにする 香川 定浪有貴子
ぼくアトム本当はもう休みたい 鳥取 吉田孔美子
父の日のバラードになる柳多留 大阪 森中惠美子
選者吟
休日はドミノ倒しを終えてから 埼玉 佐藤美文
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選評
一七〇〇句余りの作品を短時間で選句するのに苦戦を強いられたが、結果的にいい句にめぐり会えた事は選者にとってこんなうれしいことはない。入選七〇句はかなりの厳選である。数の制限に涙を飲まなければならなかった。秀句三句は課題「休む」を忠実に作品化していた。明るくユーモアたっぷりだったり、厳しい現実だったり。あるいは我等のバイブル「柳多留」をバラードにして楽しむ余裕を見せてくれた。
佐藤美文
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