日本財団 図書館


第2部 当日投句
第二部
「公園」
熊本 吉岡茂緒 選
公園の六時早起き会の声 香川 大石恵子
 
公園へちょっと優しくなりに行く 香川 小比賀千恵子
 
ブランコのゆれて公園らしくなり 兵庫 山本義子
 
名ばかりの公園がある文化都市 香川 村尾孝峰
 
雨の公園を五階から見てる 愛媛 原田否可立
 
プロポーズされブランコに揺れている 熊本 渡辺幸士
 
公園を横目に子らの塾通い 宮城 大泉美和子
 
公園のスターを気取る松の枝 新潟 山倉洋子
 
公園の砂場は僕の小宇宙 埼玉 岡部美雄
 
スケッチの子等へ公園貸し切られ 千葉 平井吾風
 
シルバーの公園デビューは草むしり 熊本 澤田律子
 
公園に舞台が出来て地蔵盆 兵庫 椙元世津
 
モンマルトルの丘で似顔絵かきの夢 愛媛 上岡喜久子
 
古戦場名園として甦り 千葉 河野桃葉
 
昼の公園近ごろ変なおじさんが 大阪 平井遊草
 
公園でじっと見ている蟻の列 岡山 濱野奇童
 
公園のお茶屋うまいところ天 香川 松井政子
 
ヒロシマの公園喪の日限りなく 広島 三木亜句人
 
入園料まだ藩候の威が残る 熊本 安永理石
 
公園に百歳も居る鳩もいる 千葉 米嶋暁子
 
公園の散歩一日鳩になる 香川 丸本うらら
 
公園の鳩に好かれている孤独 大阪 吉道あかね
 
奈良公園鹿も不況の風をうけ 大阪 熊代菜月
 
ベビーカー来て公園が笑いだす 北海道 西出誠幸
 
公園にお伽噺が落ちている 愛媛 山本博子
 
公園の特等席に青テント 愛媛 近藤庸子
 
公園の松に天女の忘れもの 鳥取 土橋睦子
 
公園の花はいつでも歌ってる 和歌山 宮本三喜夫
 
公園で少女に還る風に遇う 香川 兜 はなえ
 
公園の鳩と分け合うパンの耳 香川 多田誠子
 
公園へ母を連れ出す花菖蒲 香川 坂下久子
 
観光客公園ほめてゴミ残す 香川 竹内光人
 
公園のトイレ綺麗が町自慢 沖縄 中本まさし
 
遠足が来て公園がはしゃぎだす 愛媛 浅木邦子
 
公園の風も陽気な桂浜 神奈川 中元玲子
 
地雷原未来は平和公園に 愛媛 相原染若
 
公園をアダムとイブの気で散歩 香川 金森白峰
 
公園で犬も馴染みの犬に逢う 鹿児島 千田汀魚
 
退屈な絵が公園に掛けてある 愛媛 田辺進水
 
公園の借景がよいノッポビル 香川 山根つた
 
公園で遊ぶ孤独な定期券 東京 西潟賢一郎
 
五感全開バラ園の香に溶けてゆく 香川 村上佳津子
 
星の降る公園イサムノグチが還る 愛媛 原田否可立
 
注意書きばかりで囲む遊園地 香川 美馬ていほ
 
お疲れの公園鯉がひとつ跳ね 新潟 二宮秀三
 
讃岐冨士借景にして菖蒲園 香川 長谷寺てふ
 
公園の鳩に一目おくカラス 青森 豊巻つくし
 
墓地公園値踏みしながら一巡り 香川 山田周蔵
 
公園へ通勤してる失業者 兵庫 西内朋月
 
公園の小鳥はみんなよく喋る 鳥取 土橋睦子
 
路地裏の公園ふとん干してある 大阪 伴 洋子
 
公園の鳩と話をしてかえる 岡山 灰原泰子
 
満腹の鳩公園を離れない 北海道 葛西未明
 
公園にある昼の顔夜の顔 北海道 大橋政良
 
公園の太極拳に時止まる 茨城 太田紀伊子
 
公園のベンチ男が泣きに来る 香川 末沢 功
 
公園へ来ると小声で好きな歌 愛媛 仙波さとる
 
公園の絵になる雨のストーリー 静岡 鈴木 校
 
公園の絵の中にいて戻れない 香川 岡 照子
 
公園で出口をさがす老いふたり 香川 中村笑美子
 
公園に来てじっくりと出す答 愛媛 山内静子
 
人に疲れて公園の水を飲む 愛媛 高畑俊正
 
公園を斜めに走る朝の駅 徳島 森 ひかり
 
公園発千と千尋に出会う旅 香川 村上佳津子
 
噴水がとまって公園こわくなる 熊本 福島銀子
 
天才が公園に居るひとりぼち 大阪 榎本日の出
 
公園の風が記憶を撫でてゆく 香川 川下ゆきえ
 
秀句
父の公園からSLが走る 大阪 森中惠美子
 
公園のベンチ告げ口などしない 愛媛 伊藤賢正
 
公園の原風景に愛子さま 千葉 笹島一江
 
選者吟
公園の鳩よ縄張りなどないか 熊本 吉岡茂緒
 
選評
 時節柄、愛子さまの公園デビューが何十句とあり、そのなかの代表という意味で表現に工夫のあった一句を特選に選ばせてもらった。また「公園の椅子で孤独を癒し合う」といった発想の句も多かった。愛子さまは可愛らしく、公園のいすは孤独を癒してくれるといった固定観念での句作りから脱却しなければ、選者の目に止まる作品は生まれない。課題吟は発想が第一ということを改めて感じた。
吉岡茂緒







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION