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「宝」
石川 福岡竜雄 選
宝物空気のような妻だけど 沖縄 山城幸信
 
子宝が減って崩れるピラミッド 北海道 三浦テイ子
 
伝来の糠床母の宝もの 愛媛 井上関男
 
汗くさいミット宝に草野球 香川 兜 はなえ
 
抱き上げた宝がぼくをじっと見る 兵庫 泉 比呂史
 
すうどんのうまさ讃岐の宝です 山口 大庭華洋
 
健康が宝ひとりの野良仕事 香川 山下芙美
 
大の字に寝てますうちの宝物 香川 十河みち子
 
勲章はないが子供という宝 山口 進藤芳枝
 
保育器の宝を覗く輪が笑う 香川 川原喜吉
 
百歳を生きた皺です宝です 香川 多田誠子
 
一生の宝と決めて添いとげる 千葉 長尾美和
 
五人目の宝にファイト湧いてくる 香川 阿部孝子
 
ウエディングドレス子宝だいている 新潟 五十嵐球子
 
コツコツと溜めた宝が飛んでゆく 香川 原村ゆき子
 
うぶ声に日本の宝一つふえ 新潟 五十嵐球子
 
宝石に勝る子の指みな動き 沖縄 宮城康子
 
偏差値の谷で宝を見失う 愛媛 橋田呂久朗
 
足し算も引き算もない子は宝 愛媛 榎木陽子
 
青春のCDビートルズが宝 大阪 久保田半蔵門
 
知恵という宝を抱いている米寿 香川 河合美絵子
 
経験が宝と思う二度の職 香川 小比賀千恵子
 
頂いた臓器命となる宝 埼玉 花道歌子
 
鉢合せ蟻も宝を探してる 千葉 田辺サヨ子
 
さくら貝宝にしてる淡い恋 愛媛 山本 節
 
健康は宝青春しています 千葉 米嶋暁子
 
逆縁の神が没収した宝 愛媛 黒光可寿
 
パソコンの指が宝を探し出す 埼玉 花道歌子
 
にんげんは哀し宝を値踏みする 愛媛 坪内多美
 
ホスピスに流れる時という宝 大阪 西出楓楽
 
二十四の瞳が宝小豆島 茨城 渡邊妥夫
 
健康が宝休肝日を増やす 北海道 三浦強一
 
布団からつぎつぎ起きてくる宝 熊本 平田朝子
 
提げて来た手鍋私の宝物 静岡 堀澤静巴
 
米の飯食べて生きてる宝もの 新潟 神谷兎亀彦
 
受けついだ秘伝のたれは宝物 香川 加賀みち代
 
九条は平和を守る宝です 埼玉 丸山しげる
 
宝物見つけたらしい子の電話 香川 渡辺千代子
 
がらくたも宝少年燃えつきる 山形 山田不及
 
そばに居る宝が時に謀反する 徳島 湯浅三子
 
子は宝積み木くずしにある絆 奈良 坊農柳弘
 
他所の子を叱る宝として叱る 秋田 猿田寒坊
 
友情が宝と思う仲間の輪 愛媛 小國昌子
 
子は宝サラブレッドでなくていい 徳島 小川恒子
 
デジタルの波に宝を盗まれる 埼玉 相良博鳳
 
究極の味を暖簾につぐ宝 広島 飛田陽子
 
百歳の手に合掌という宝 徳島 河野花枝
 
ペダル踏む脚ありがとう宝です 徳島 長井てい子
 
宝など持たぬ私の力瘤 兵庫 赤井花城
 
秘宝展シルクロードの風を聴く 徳島 田中 清
 
僕たちの地球よいつまでも青く 大阪 河内天笑
 
不揃いに育つ五人の子が宝 愛知 村井勢津子
 
宝だと言われ続けて使われる 埼玉 岩瀬恵子
 
子宝に狂喜乱舞の十年目 大阪 鶴田遠野
 
永年勤続たったひとつの宝もの 愛媛 芝田凱予
 
ライバルを宝と思う金メダル 秋田 猿田寒坊
 
背くかも知れぬ宝を肩ぐるま 愛媛 渡辺 哉
 
おくるみに軽くて重い宝もの 東京 竹内祝子
 
亡き父の農耕日記宝物 愛媛 山内クリエ
 
一筋に生き国宝と言う至芸 埼玉 岩田柳堂
 
見る人で宝かゴミになるデータ 徳島 藤田羔爾
 
戦争を嫌う宝という乳房 大阪 森中惠美子
 
ノーベル賞会社あわてた宝もの 大阪 中澤伽羅
 
このひざでお乳を呑んでいる宝 岡山 灰原泰子
 
明日という宝を抱いて喪が明ける 東京 齊藤由紀子
 
終焉を飾る絆と言う宝 埼玉 深町金鳥
 
宝石をつけず輝く健康美 大阪 北村賢子
 
秀句
羊水の海でショパンを聞く宝 香川 石原和子
 
一本の藁を宝に再起する 埼玉 松岡葉路
 
国宝といわれる芸の鬼がいる 新潟 山本閑牛
 
選者吟
掌中の宝へ鬼火燃やす母 石川 福岡竜雄
 
選評
 宝とはそれを所持するものにとってはかけがえのないものである。絶対に手放せないもの、あるいはどうしても手に入れたいものである。
 それは財宝であり、子宝や家宝、国宝といわれるものであり、そのために争いが生まれ血が流され、人類の歴史がつづられてきた。そういった観点で選んだ佳吟七十句である。
福岡竜雄







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