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豊饒な平野見下ろす天守閣 栃木 塚本勘平
 
減反の愚痴はいわない肥後平野 熊本 宮本美致代
 
巡礼の鈴の音響く花平野 青森 新山風太郎
 
男出て津軽平野が冬に入る 岩手 野口みのる
 
草伸びて平野も牛も活気づく 大阪 竹田東六
 
どっかりと平野見守る天守閣 広島 奥村吉風
 
日本の平野だ限りない青田 長野 井出秀夫
 
立ち並ぶビルが平野を尖らせる 千葉 長野建八郎
 
老い二人筑後平野に麦を踏む 福岡 陶山嵐玉
 
開発のプランで揉めている平野 青森 八田穂峰
 
激流も大河の貌にする平野 静岡 梶原勝雄
 
ご巡幸稲穂の揺れている平野 山口 垣内義照
 
さぬき平野に弘法さまの杖の跡 香川 兜 はなえ
 
日暮れまで野良着の母がいた平野 香川 河合美絵子
 
飛行雲讃岐平野をひと跨ぎ 香川 山下芙美
 
空からの讃岐平野は穴だらけ 和歌山 新田 巽
 
満ち足りた顔の遍路がゆく平野 広島 天野弘士
 
減反が平野を斑ボケにする 愛知 川澄 博
 
網の目に水の利権を抱く平野 石川 坂 範子
 
血管のような水路を持つ平野 愛媛 矢野まさし
 
地吹雪か津軽平野を黙らせる 福岡 小池一恵
 
太陽をひとり占めしている平野 鳥取 岸本孝子
 
真ん中に大河を抱いている沃野 北海道 西出誠幸
 
一幅の絵に溜池のある平野 新潟 白勢朔太郎
 
豊作が続き恐縮する平野 高知 桑名孝雄
 
新幹線あっと言う間もない平野 愛媛 吉野無錫
 
地平線北の平野を朱に染める 長崎 南 茂
 
百姓の一揆刻んである平野 香川 金川朋視子
 
御幸と読める碑文の建つ平野 栃木 刑部鬼子
 
足腰が弱り平野に住み替える 群馬 原田木念
 
農民の汗が稔ってくる平野 香川 瀧井 勝
 
穀倉の平野に水と陽の恵み 愛媛 中岡錬三
 
武蔵野がまだそこここにある春野 新潟 玉井たけし
 
ため池の数も讃岐路のガイド 香川 幸田佳月
 
SLをさぬき平野が恋しがる 香川 川西一男
 
花遍路道後平野に鈴が鳴る 愛媛 西川和子
 
減反の平野で探す忘れもの 岡山 柏野遊花
 
開拓の汗を知らないトラクター 山口 礒部欣也
 
讃州の平野を濡らすへんろ雨 新潟 仁谷敏衛
 
酸性雨平野の四季を狂わせる 東京 上村健司
 
休耕田花を咲かせている平野 新潟 斉藤フミ
 
春一番吹いて平野が目を覚ます 香川 辻 あきら
 
一生を平野の隅で米作る 香川 西部郁代
 
震災の怖さ忘れている平野 愛媛 新本倫子
 
溜池は讃岐平野のいのち水 鳥取 早川玲坊
 
河口まで平野を二分する大河 愛媛 水野清流
 
鮮やかに平野を跨ぐ虹の橋 長野 山嵜一歩
 
いくたびの戦火を浴びてきた平野 大阪 前田咲二
 
カラフルに平野を染めた熱気球 神奈川 秋山茂子
 
風渡る讃岐平野は麦の波 大阪 山本半銭
 
水温み春のお酒落をする平野 東京 加藤金司
 
春耕へ北の平野も活気づく 秋田 松橋みよ
 
父帰る津軽平野の春が来る 青森 椛本愛子
 
絨毯のような平野の花桟敷 香川 萱原聖子
 
讃岐富士お椀を伏せた佇まい 千葉 平井吾風
 
洪水が忘れた頃に来る平野 東京 大矢 敦
 
減反へ平野が少しずつ荒れる 愛媛 野口三代子
 
酪農の試行錯誤を抱く平野 新潟 宮村桂路
 
開拓の歴史を知っている平野 大阪 上野楽生
 
先人の知恵が征服した平野 兵庫 淡路獏眠
 
耕すと昔ばなしをする平野 青森 岡本かくら
 
米づくり迷いはじめている平野 石川 辻田みえ子
 
オアシスのようなため池ある平野 青森 八木田幸子
 
麦の花さぬき平野を膨らます 香川 多田美代子
 
田に水が張られ平野は活気づく 香川 川西青蝶
 
耕転機唸り平野が目を覚ます 兵庫 大黒政子
 
たっぷりと水を含んでいる平野 富山 久場征子
 
秀句
米どころ黄金の海になる平野 大阪 藤田泰子
 
動脈のような大河を抱く平野 千葉 渡辺惇子
 
農耕の血を受け継いでいる平野 滋賀 大川巴羊
 
選者吟
関東平野のビッグな臍よ筑波山 茨城 植木利衛
 
選評
 集句の8割方が、さぬき平野をイメージした作品で占められた。すなわち、穀倉地帯を潤している1万数千の沼・溜池の歴史的背景、農作業や減反云々が大半だが、さぬき富士、遍路旅等々、開催地元に敬意を表されたはさすがと言うほかない。
 さて、特選2句は「米どころ」の平野だが、もう1句の「動脈のような大河を抱く平野」はさぬき平野よりスケールが大きい。
植木利衛







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