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特集
下関市の観光について
 
山口県下関市・観光振興課
 
(1)概況
 
 下関市は本州の最西端に位置し、東は周防灘(瀬戸内海)、西は響灘(日本海)、南は関門海峡と三方を海に抱かれた海峡と歴史の街。
 関門海峡を挟んで九州と相対し、大陸に近い地理的特性も手伝って、古くから海上交通の要衝として栄えてきた。そして、関門海峡における源平壇之浦の合戦をはじめとして、巌流島で宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘、長府功山寺で明治維新の胎動となる高杉晋作の決起、史蹟春帆楼(しゅんぱんろう)では日清講和条約(下関条約)の締結と、わが国の歴史上、非常に重要な役割を果たす歴史の舞台ともなってきた。
 
海峡ビューしものせき
 
 また、「ふく」(下関では幸福に通じるということで「ふぐ」を「ふく」と呼ぶ)の水揚げ量日本一に代表されるように、主な産業の一つに水産業が挙げられる。ふく料理だけでなく、うに料理、鯨料理、最近では、これも水揚量日本一を誇るアンコウ料理など、多彩な海のグルメが、雄大な自然、歴史的観光資源と合わせて観光の目玉の一つとなっている。
 
カモンワーフ
 
(2)ハード設備の充実
 
 下関市では近年、唐戸ウォーターフロント地区の開発が重点的に行われた。平成13年4月には「海のいのち、海といのち」をメインコンセプトに21世紀最初の水族館として、市立しものせき水族館「海響館」が誕生。同じく13年4月には海響館から歩いて5分の場所に「唐戸市場」がリニューアルオープンし、地方卸売市場ながら一般の方でも新鮮な魚介を買い求めることができるという特異性から、市民の台所としてのみならず、広く、下関を訪れた観光客が楽しめる場としても知られる。
 
市立しものせき水族館「海響館」
 
関門海峡と巌流島
 
 また、翌14年4月には海響館と唐戸市場の間に、関門海峡の海の幸を堪能できる、飲食と物販を兼ね備えた複合商業施設「カモンワーフ」がオープン。さらにはこの唐戸地区から北東へ約2km、瀬戸内海国立公園の一角をなす標高268mの「火の山」山麓に、関門海峡はもちろん下関市街、対岸の北九州市門司港を一望できる絶好のロケーションを最大の売りにした国民宿舎「海峡ビューしものせき」がリニューアルオープン。全室オーシャンビューの設計が好評を博し人気を呼んでいる。
 このような新規集客施設の完成を受けて、平成10年から12年にかけては300万人を割っていた観光客数が13年には300万人を回復し、14年には340万7千人余りとなり、最も落ち込みの激しかった11年に比べて約20%の増加となった。しかし、ハード施設の集客がオープンから徐々に落ち込んでくるのは避けられないことであり、下関市ではハード施設の集客力維持に加えて、ソフト施策の充実に取り組んでいる。
 
(3)ソフト施策の展開
 
 下関市ではお越しいただいた観光客の皆様をおもてなしするため、官民一体となって「しものせき観光キャンペーン」を展開している。
 
武蔵と小次郎決闘の寸劇(巌流島)
 
 昨年は、大河ドラマ「武蔵」の放映を受けた巌流島観光の推進事業として、市民ボランティアによる武蔵・小次郎決闘寸劇の実施や、上陸の記念となる「巌流島上陸認定証」の販売、島への出店事業を行った。夏休み期間中には、市内宿泊のお客様を対象に巌流島行きの乗船券プレゼントと、関門海峡の夜景を堪能していただく夜景観光バスの運行を実施。また、秋には紅葉色付く城下町長府において「城下町長府クイズラリー&ジャンケン大会」を開催したところ、実に2500人以上の方に参加いただき、盛況であった。
 その他にも、毎年5月に行われる「しものせき海峡まつり」で使用する甲冑や官女の衣裳を観光客に着て頂く「甲冑衣裳着付け体験」、手荷物を到着駅から宿泊先まで運ぶ「手ぶら観光」サービス、海峡レンタサイクル、城下町長府観光案内CD・MDの貸出し、無料観光ボランティアガイドの実施に加え、各種お得なチケットの販売や「マル得パスポート」による割引サービスを行った。
 
城下町長府クイズラリー&ジャンケン大会
 
 しものせき観光キャンペーンは、地元観光関連団体や商工会議所などの民間と行政が、まさしく官民一体となって組織する実行委員会によって企画立案から運営まで行われている。この取組みは平成13年にスタートしたもので、官と民それぞれがお互いの足りないところを補い合うことで、現在の下関市の観光振興におけるソフト戦略の中心的役割を担っている。そして、その活動はJR西日本をはじめ多くの旅行エージェントから高く評価されている。また、このキャンペーンは、官と民が手を取り合って活動することによって、更に新たな付加価値も生み出している。それは、巌流島の決闘寸劇の市民ボランティアによる実施に見られるように、市民一人一人が観光客をおもてなしするという気運の高まりである。これは今後の観光振興における最も重要なキーポイントともなっている。
 
Musical 維新〜奇兵隊〜
 
下関市観光客数の推移(平成4年から14年)







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