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特集
宮崎県の運輸と観光
宮崎県 総合交通課、観光・リゾート課
道路建設課、港湾課、高速道対策局
 
[1]はじめに
 
 成長の世紀と言われた20世紀は、わが国に経済的な豊かさをもたらすとともに、利便性の高い社会を実現した。本県においても、県政発展の基盤づくりが各方面で進み、豊かさと住みよさが実感できるようになってきた。
 しかし、21世紀を迎えた今日、少子・高齢化社会の到来や国際化・情報化の進展、地域環境問題の顕在化など時代の大きなうねりの中で、社会経済システムの改革が求められており、地方にとっても、地域の総合力が問われる時代を迎えている。
 本県では、このような時代の潮流を踏まえ、「県民共有の指針」として、平成13年3月に「人と地域が輝く豊かなみやざき新時代〜さらなる挑戦と参画」を目標とした第五次宮崎県総合長期計画を策定した。
 この計画の中では、「くらしと産業を支える社会基盤づくり」を施策体系のひとつの柱としており、特に総合交通網の整備については、東九州自動車道をはじめとする高規格道路や国県道などの整備による「県内1時間構想」の実現、日豊本線の高速化・利便性の向上、空港・港湾の整備促進など、積極的な取り組みを行っている。
 
[2]宮崎県の運輸について
 
(1)旅客・貨物流動の現状について
 
 平成12年度の旅客地域流動調査によれば、本県における旅客流動量の総量は約7億5千万人で、前年度より5・4%増加している。このうち約92・1%が県内で流動しており、3・5%が県外向け、4・4%が県外からの旅客となっている。
 これを輸送機関別に見ると、98・1%が自動車利用で、次いで鉄道が1・42%と、全国平均と比べて自動車の占める割合が格段に高い。
 貨物流動については、平成12年度貨物地域流動調査によれば、総量は約1億1200万トンで、前年度より16・7%増加しているが、うち71・4%が県内で流動しており、10・4%が本県発県外向け、18・6%が県外から本県着の貨物となっている。
 これを輸送機関別に見ると、自動車が92・3%と大半を占め、次いで海運が7・4%と、貨物についても全国平均と比べて自動車の占める割合が高く、大都市圏から遠隔地にありながら、鉄道等大量輸送機関の発達の遅れている本県の特性がよく表れている。
 
(2)航空について
 
(1)宮崎空港の概況
 宮崎空港は、昭和18年に旧海軍飛行基地として開設され、終戦後一時閉鎖されたのち、昭和29年10月、日本初のパイロット養成機関として運輸省(現国土交通省)航空大学校がこの地に設置されたことにより、訓練飛行場として再開された。同年11月には極東航空(現ANA)が大阪〜福岡〜宮崎線を開設して、民間空港としてのスタートを切った。それ以来、国際コンベンション・リゾート宮崎の空の玄関、南九州観光の拠点として順調に発展してきている。
 宮崎空港が誇るものとしては、そのアクセスの良さがあげられる。市街地から約7km、車でわずか10分余りに位置し、高速道路のインターチェンジも約5分の近距離にあるほか、全国の地方空港では初の空港連絡鉄道が乗り入れ、県内のみならず大分県南部までがその利用圏域となっている。
 
H12年度旅客流動の輸送機関別割合
平成12年度旅客地域流動調査
 
H12年度貨物流動の輸送機関別割合
平成12年度貨物地域流動調査
 
(2)航空輸送網の整備
 宮崎空港は、2500m滑走路を有し、各種機材が多数離発着している。国内線では年間330万人を超える利用客を誇る国内第9位(平成13年度)の空港であり、10都市・11路線に80便が運航している(平成15年6月現在)。
 空港ターミナルビルは、年間利用客が300万人を突破したのを機に増改築に着手し、平成11年6月に年間500万人対応のビルに生まれ変わった。従来から行っていた空港内オアシス広場での各種イベントに加え、授乳室の設置やバリアフリー設計など、全ての利用者に優しい施設になっているほか、団体バスヤードも整備され、団体客のスムーズな乗降が可能となっている。
 
宮崎空港の搭乗客数の推移(国内線+国際線)
 
 また、平成9年には、県をはじめ県内の各種団体により「宮崎空港国際定期便開設促進期成会」(平成13年に「宮崎空港振興協議会」へ名称変更)が発足し、主としてアジア地域との定期便開設を目指して、関係機関への要望活動やチャーター便の運航拡大など、積極的な運動を展開した。この結果、平成13年4月、アシアナ航空(本社・韓国ソウル市)により、宮崎空港初の国際定期便となる宮崎〜ソウル便が就航した。
 国際定期便の就航に伴い、平成14年4月には税関、検疫の宮崎空港出張所が開設され、その他のCIQ機関についても人員増が図られるなど体制が格段に充実し、定期便のみならずチャーター便の円滑な受入体制の整備が図られた。
 また、国内線では、宮崎市に本社を置く新規航空会社のスカイネットアジア航空が、平成14年8月に宮崎〜東京路線に就航したことにより、同路線の便数が大幅に増加(就航前11便、就航後15便)し、航空運賃の低価格化が図られるなど利便性が高まっている。
 
県民の翼「スカイネットアジア航空」
 
 このように、宮崎空港は、県民がいつでも各地へ旅立てる空港としてますます利便性が高まる一方、海外の旅客を直接受け入れることのできるリゾート宮崎の空の玄関として、今後更に飛躍していくものと期待している。
 
(3)海上交通について
 
(1)港湾の概況
 本県の港湾は、太平洋に直接面しているため、首都圏までの海上での距離が短いこと等の地理的特性を生かし、港勢を伸ばしてきている。
 本県は南北に長く、県北、県央、県南の3地区に重要港湾があり、地域の均衡ある発展に寄与している。
 
 
 県北の細島港は、国際物流の中核港として、県央の宮崎港は、大都市圏との間のフェリー等を利用した内貿拠点港として、県南部の油津港は、木材チップの輸入や首都圏への定期航路など県南地域の産業の拠点港として、それぞれ大きな役割を担っている。
 その他、地方港湾13港、56条港湾1港の計17港から構成されている。
 
ア 細島港
 細島港は、古くから海上交通の要衝であり、日向延岡地区新産業都市の中核港として重要な役割を果たしてきた。
 九州東岸の中央部で太平洋に面しており、近畿、中国、四国と東南アジアとをつなぐ航路の経由地になっているため、輸入ではFIRST PORT、輸出ではLAST PORTとして機能する港である。九州を扇の形に例えると、細島港は要の部分に位置しており、現在急ピッチで整備が進んでいる東九州自動車道や九州横断自動車道延岡線等の整備により、今後さらにその重要性は高まると考えられる。
 また、石炭等を扱う貨物船の大型化やコンテナ貨物の急速な増加に対応するため、平成12年に水深13mの大型岸壁やガントリークレーンを備えた国際ターミナルが整備された。さらに、現在は、港内静穏度を高めるために、沖防波堤の整備を進めているところである。
 
イ 宮崎港
 宮崎港は、背後に人口30万人の宮崎市を控え、高速道路や空港と直結する交通の要衝にあり、南九州の海の玄関口となっている。
 平成2年に大阪とを結ぶカーフェリーが就航して以来、カーフェリーやRORO船航路が相次いで開設され、取扱貨物量も急増している。
 さらに、平成8年には5万トン級の大型客船が接岸可能な国際観光船バースが完成し、豪華客船「飛鳥」などを迎え入れている。
 また、平成13年に本格オープンしたマリーナ施設「サンマリーナ宮崎」には、現在クルーザーヨットなど111隻を係留しており、将来はディンギーヨットも含め400隻の係留が可能である。マリーナに隣接する人口ビーチ「サンビーチ一ツ葉」と合わせて「みやざき臨海公園」という愛称で市民に親しまれ、新たな観光スポットの一つともなっている。
 
ウ 油津港
 昭和27年に重要港湾の指定を受けた油津港は、昭和30年以降、背後圏の工場等の輸送ニーズに対応するための整備が進められてきた。
 平成10年9月には水深10m及び12mの大型岸壁が東地区で供用を開始し、同年11月より、45000トン級の大型チップ船が入港を開始した。
 さらに、平成11年12月には東京と大阪を結ぶ定期RORO船の就航により、油津港の貨物取扱量は大幅に増加している。
 また、平成13年1月には韓国釜山とを結ぶ国際定期コンテナ航路が開設されており、今後の取扱貨物量の増加に対応すべく、新たにクレーン施設を整備し、今年5月から稼働を開始している。
 
細島港
 
宮崎港
 
油津港







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