日本財団 図書館


3.1.5.2.3.3 現状のBase Riskの評価結果
 現状のBase Riskは3.1.5.2.3で推定したESPによる効果とSOLAS XIIの効果の相乗効果で低下していると考えられる。基本的にESP等は事故の発生防止に、SOLAS XII章等は事故拡大抑制に効くので、以下に示したごく簡単な仮定に基づき、両者の相乗効果を推定した。その結果を、Bulk Carrierと他船種のPLLと比較して、図3.1.5.3.13に示す。
 
ここに、rSOLAS_XIIはSOLAS XII章導入によるリスク低減率
 
 SOLAS XII導入前まで過去25年間のF-N CurveとSOLAS XII導入後20年間のF-N Curveの予測結果を作成して比較すると図3.1.5.2.14のようになる。同図には比較のため他船種のF-N Curveも描き加えてある。これを見ると死者数20人前後の発生頻度が高い部分は、これまでに導入された安全対策によりかなり下がってきているものの依然としてALARP領域のIntolerable領域に近い側にあることがわかる。
 
図3.1.5.2.12 Effect of SOLAS XII in PLL of Bulk Carrier
 
 TankerやGeneral Cargo等の他の船種と比較しても、相対的に発生頻度が大きいままといえる。従って、実行可能な範囲でReasonableな安全対策が見つかれば、導入を検討すべきと言える。
 
図3.1.5.2.13 Comparison of PLL of bulk carrier with other type of ships
 
図3.1.5.2.14 SOLAS導入後20年間のF-N Curve
 
 
3.1.5.3 Step 3; リスク制御オプション(RCO)
3.1.5.3.1 Step 3の方法
3.1.5.3.1.1 RCOの特定
 バルクキャリアについては表3.1.5.3.1に示した様にSOLAS新XII章を含め、これまで各種のリスク低減対策(RCO)が採られて来た。しかし、その効果が目に見える形ですぐに現れ難い側面もあることから、導入済みのRCO以外に様々なRCOに関連する提言がなされてきた。
 このため、今回の検討でRCOを特定させるに当たっては、以下に示すように既提案のRCOの整理を優先させる形で作業を実施した。
■文献調査等により既に議論されているRCOをリストアップする。
■既提案のRCO適用上の問題点や効果等を整理した表を作成する。
■専門家によるBrain Storming及びアンケート調査により、上記RCOの表をUpdateすると共に、必要と思われる新規RCOを加える。
 
表3.1.5.3.1 List of Risk Control Options Implemented
RCO
No.
適用 内容 Included
RCMs*
対応する
ハザード
ID in FTA***
ESP 就航船 Enhanced Survey Programme (ESP)      
ISM 新造船&
就航船
ISM Codeの強制化      
10 新造船 SOLAS Ch.XII
+ IACS UR S21
6, 29, 31,
32, 35, 58,
59, 64, 65
1.1.1,
1.1.4.3,
1.1.4.7,
1.1.5.1,
4.2.1
LS120, 220, 320, 322 &
330, BHD000, SSF000 & 200, WIH000, HCF000 & 020
10A   SOLAS Ch.XII
10B   IACS UR S21
20A
20B
就航船
(15年)
SOLAS XII章
A案:BHD replace
B案:BHD reinforce
32, 35, 58,
59, 64, 65,
70
1.1.1 LS220, 322 & 330,
BHD000, SSF000 & 200
 
3.1.5.3.1.2 RCOによるリスク低減量の推定
 各RCOの適用によるリスク低減量は、ヒストリカルデータに対する考察と専門家判断によるものとしている。これはヒストリカルデータが様々な損傷形態を網羅したものであるとともに、確率としてその効果を捉えやすいことによる。各々のRCOを過去の事例に適用した場合の効果については、専門化によるヒストリカルデータの細やかな検討により想定し、問題をより簡易化するために『効果がある』、『効果があるかもしれない』及び『効果は無い』の3つのグループに分類するものとした。これらの効果を一義的にそれぞれ100%、50%及び0%と設定することにより、RCO適用の効果は次式により与えられることになる。
 
 
 ただし、この手法により難い単船側構造強度の評価については、各対策案による破壊確率を直接評価しているため、各RCOによる破壊確率の低減率をそのまま使用することとしている。
 以上の結果を用い、RCO導入後のPLLについては、人的損害数が全損にいたる重大損傷数に比例するものとして次式により与えられるものとしている。この仮定は、必ずしも正しいものではないものの、事故データを一般化し一次近似的な結果を得るものとしては妥当なものと考えられる。
 
 







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION