3.1.5.2.3 導入後のリスク評価
3.1.5.2.3.1 最近導入されたRCO
近年導入された安全対策の代表的なものとして、ESP(Enhanced Survey Program: 検査強化プログラム)やSOLAS XII章がある。これ以外にもISM Codeの導入や、PSCの実施等もある。
ESPはLACS/URの形で1993年7月1日に発効し、いくつかの船級協会では前倒しで導入されており発効後の年数も比較的長いことから、過去の事故データの中でその効果が表れていると考えられる。いっぽう、SOLAS XII章の要件は1999年7月1日の発効であり、統計的に事故データに表れるまでの十分な時間は経っていないと考えられる。
図3.1.5.2.8 PLL of total loss case by location of water ingress
3.1.5.2.3.2 ESP等及びSOLAS XII章の効果
ESPの適用は貨物倉構造だけではなく、バラストタンクやハッチカバー等も対象となっているが、貨物倉の船側構造の損傷頻度がESPの効果を最も典型的に反映すると考えた。ESPを船側構造損傷に対するリスク制御オプションと考え、ESPの効果は事故件数ベースのリスク低減率に表れると仮定した。尚、実際には、ISM CodeやPSCによる効果も事故統計には含まれているが、その効果を分離して定量化することは困難であるため、ESP等の効果として一括りに扱った。結果を図3.1.5.2.9のPLLグラフおよび図3.1.5.2.10のF-N曲線に示す。
図3.1.5.2.9 Effect of ESP in PLL of Bulk Carrier
SOLAS XII章の効果については、発効後の年数が短いため、それが統計的に事故データに表れるまでの十分な時間が経っていないと考えられる。そこで、過去の事故事例の1件1件を、表3.1.5.2.1に示した基準により専門化判断し、事故防止の可能性、事故拡大抑制の可能性を判断した。このようにしてSOLAS XII章が導入後20年間の仮想的な事故統計を作って、PLL及びF-N Curveの変化をシミュレーションした。F-N Curveについては、専門家判断に際し情報不足からSOLAS XII或いはUR S21の効果の有無の判断が困難な事故事例については、効果の有る無しの2ケースについて検討したが、大きな違いはなかったことから、ここでは効果最大の場合のみの結果を示した。
図3.1.5.2.10 Effect of ESP in F-N Curves of Bulk Carrier
このような過程のもとでSOLAS XII章適用による効果を求め、その結果を図3.1.5.2.11のF-N曲線と図3.1.5.2.12のPLLグラフに示す。
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