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2.6 第73回海上安全委員会(MSC73/平成12年11月)
 第73回海上安全委員会(MSC73)は、平成12年(2000年)11月27日から12月6日まで、IMO本部において開催された。なお、今次会合においては、作業部会で審議するためには十分な情報が得られていないことから、作業部会を設けなかった。
 FSAスタディーについて、英国より共同FSAスタディーの進捗状況の報告があり、我が国は、FSAスタディーの中間レポートを提出した。また、ノールウェーは、救命設備に関するhazard identification exerciseを実施していることが報告された。
 Derbyshire号事故報告に関する事項については、我が国より、ケープサイズバルクキャリアのハッチカバー荷重に関する模型試験を行っており、SLF44に結果を報告することを表明した。
 
 第74回海上安全委員会(MSC74)は、平成13年(2001年)5月30日から6月8日まで、IMO本部において開催された。主な審議結果は、次のとおり。
 
(1)FSAスタディー
i)国際共同FSAスタディー
 英国より、本FSAスタディーは、国際的に共同で進められていることから進展が遅く、Step 3(Risk control options)は2001年9月までに、Step 4(Cost benefit assessment)は、MSC75の暫定レポートには含められるという見通しであり、MSC76に最終報告が提出されるであろうという報告があった。
ii)日本のFSAスタディー
 我が国より、FSAスタディーの結論と勧告を含む暫定レポートを提出・説明し、関心のある国及び機関に2001年7月までにコメントを我が国に送るよう要請した。我が国は、各国等のコメントを考慮してFSAスタディーを再検討し、最終報告をMSC75に提出する意向を表明した。なお、審議において、BIMCO等より、我が国のFSAスタディーの勧告において、SOLAS第XII章の規定を二重船側バルクキャリアに適用する必要がないとされていることについて、特に減じられた乾舷をとっている時にも必要ないとされていることについて、疑問が呈された。
iii)その他のFSAスタディー
 ノールウェーから、バルクキャリアの救命設備に関するFSAスタディーの最終報告があり、自動浮揚機能付自由降下型救命艇等の3つの勧告が説明された。
 IACSからバルクキャリアの船首部の水密性に関するFSAスタディーの結果報告があり、その勧告のうちのいくつかは、既にIACSで対策が講じられており、残りについても早急に対策を講じることが報告された。
 
(2)Derbyshire号事故報告に関連する対策
i)船首部の強化対策
 英国は、模型試験の最終結果は2001年の晩夏まで得られないと説明し、この最終結果及びLL条約の改正提案をSLF44に提出することを表明した。
 多くの国は、英国が提出すると考えられるLL条約の改正提案は、バルクキャリアの強度に関するものであることから、SOLAS条約の改正が適当であるとの見解を示した。この件については、SLFでの検討の後、DEで検討すべきであることが合意された。
 我が国が実施しているケープサイズバルクキャリアのハッチカバー荷重に関する模型試験について、比較的細い船型についても実験を行うことを表明した。
 
ii)Re-opened formal investigationの報告に含まれる対策
 英国は、英国高等裁判所(High Court of Justice)が実施したRe-opened formal investigationに記載される24の勧告を紹介し、それらについてIMOで同様の対策を採るべきことを要請した。この中で、特に、船首部の浸水に対する対策(precaution)についての対応を要求されたところ、MSC74は、「船首区画の浸水の危険に関するアドバイス」に関するMSC/Circ.995を承認するとともに、スパーリングパイプのシーリングの代替措置の検討及びケープサイズバルクキャリアの衝突隔壁よりも前のスペースの水位監視システム及びポンプシステムの設置について、SLF及びDEに検討を指示した。
 
 第75回海上安全委員会(MSC75)は、平成14年(2002年)5月15日から24日まで、IMO本部において開催された。主な審議結果は、次のとおり。
 
(1)FSAスタディー
 我が国は、FSAスタディーの最終報告書(MSC75/5/2及びMSC75/INF.6)を提出し、プレゼンテーションを行った。英国からは、会期期間中に開催されたステアリングコミッティーの結果も含めた国際共同FSAスタディーの結果が説明された。
 今次会合において、我が国のものも含め、MSCに提出されているすべてのFSAスタディーの勧告から、詳細に検討することが十分に正当化されるものを抽出し、これらを国際共同FSAスタディーの費用対効果分析で検討することが合意された。この際、費用対効果が高いと認められる波、NCAFとGCAFの適切な値が300万ドルを下回ることが基準であることも併せて合意した。検討のために抽出された勧告は、次のとおり。
 
船体 閉鎖装置 オペレーション
1. 二重船側構造 1. UR-S21と同等のハッチカバー 1. ターミナルインターフェースの改善
2. 改善されたコーティング 2. フォアデッキフィッティング 2. リスクベースESPターゲッティング
3. 鋼材修繕基準 3. ハッチカバー強度強化 3. PSCトレーニング
4. 腐食予備厚の増加 4. ハッチカバー・アクセスの閉鎖の表示 4. ウェザールーティング
5. 船首楼 5. 積付/復原性情報の改善
6. ブルワーク・ブレークウォーター 6. BCコードの強制化
7. バラストシステム容量
8. フォアデッキフィッティングの保護 脱出 その他
9. UR-S12と同等のホールドフレーム 1. 浸水監視装置 SOLAS第XII章の現存船に関する規定の前倒し実施
10. 内側のコーティング 2. 個人用イマーションスーツ
11. ホールドフレーム腐食制御 3. 自動浮揚機能付自由降下型救命艇
 
(2)Derbyshire号事故報告に関連する対策
 DE45で作成された水位検知システム及びポンプシステムを設置するためのSOLAS条約の改正案(第XII章第12規則及び第13規則の新設)の検討を行い、新造船、現存船、単船側、二重船側にかかわらず、これらシステムを設置することが必要であることが合意され、改正案が承認された。我が国は、他のRCO(risk control option)との組み合わせが重要であることから、MSC76でのRCOの検討の際に技術面を更に詳細に検討する必要があるが、暫定的にこの改正を支持することを表明した。
 船首部の強化対策について、英国はRe-opened Formal Investigationの勧告を受けて実施した模型試験の中間報告を行った。また、LL条約88年議定書のハッチカバー設計環境荷重クライテリアをアップデートすべきとの英国の提案をエンドースし、SLF45に検討を付託した。これに関連し、IACSは、UR-S21の改正作業の中間報告をSLF45に提出することを表した。我が国は、FSAスタディーにおけるハッチカバー損傷確率の食い違いを指摘し、本件については、決定を行う前にFSAスタディーの結果を考慮する必要があること、LL議定書はコンテナ船等の細い船型の船もカバーしているが、バルクキャリアのための基準は、これら船舶には適用すべきでないと発言した。
 
 第76回海上安全委員会(MSC76)は、平成14年(2002年)12月2日から13日まで、IMO本部において開催された。主な審議結果は、次のとおり。なお、この会合は、バハマ籍タンカー、プレステージ号の事故の直後に開催されており、参加各国の安全対策強化に関する非常に意識が高まっていた。
 
(1)FSAスタディー
 英国は、コーディネータとして国際共同FSAスタディーの最終報告書を提出し、又英国として、同FSAスタディーの結果のうち、プライオリティの高い8つのRCMを実施することを求めた。なお、この国際共同FSAスタディーの最終報告書には、隔倉積みの禁止等、MSC75において合意されていた検討対象となっている勧告以外の新しい勧告も含まれていた。
 我が国は、FSAスタディーにおけるハッチカバー損傷確率の食い違いに関連し、ハッチカバー損傷に関する事故の総合的な検討結果を提出するとともに、透明性のある意思決定を行うために勧告を組み合わせたパッケージの費用対効果分析を実施すべきことを主張した。リベリア、中国等は我が国の意見を支持したが、英国を始め多くの国は、FSAスタディーを数年間実施して終了したこと、及び当該国際共同FSAスタディーには、MSCの多くの国・機関が参加しており透明性があることから、MSC76において意思決定を行うことを支持した。
 検討の結果、次の対策を講じること(意思決定のための勧告)が合意され、小委員会に詳細基準の作成を付託した。また、新しいバルクキャリアは、従来型のものと異なるものとなる可能性があることから、バルクキャリアの定義の見直しも併せてDEに検討を付託した。
 
No 合意された意思決定のための勧告 適用 小委員会 審議回数 終了目標
新船 現存船
1 Ship/terminal interface improvement 政府、船主、オペレータ及びターミナルオペレータにBLUコードの適用を要請するMSCサーキュラー案の作成と共に、このRCMに内在する懸念を払拭することの検討をDSCに指示。 Yes Yes DSC 1 2003
2 Improved loading/stability information Loading/Unloading時の縦強度及び復原性に関する詳細、網羅的、かつ、ユーザーフレンドリーなガイドラインの作成をSLF及びDEに指示。 Yes No SLF/DE 2 2004
3 Mandatory BC Code DSCに対し、BCコード強制化のフィージビリティーを検討することを指示。 To be further considered DSC 1 2003
4 Alternate hold loading ban 状態評価の実施を前提として、ある船齢以降の高比重貨物の隔倉積みの禁止が重要であろうということが合意され、この件に関するDE及びDSCに検討及び助言を要請。(DE46の報告に基づき、MSC77で再検討。) No Yes DE/DSC 2 2004
5 Guidance on early abandonment 隔壁が1区画浸水に耐えられない船舶に関し、船主に対して、船員に早期退船の必要性のガイダンスを出すことを要請するとともに、運航会社と旗国の責務を喚起するMSCサーキュラー案の作成をDE及びNAVに指示。 No Yes DE/NAV 1 2003
6 PSC officer training 老朽バルクの構造的に脆弱な部分に関するPSCオフィサーの訓練を実施するため、FSIにMSCサーキュラー案の作成を指示。 Yes Yes FSI 1 2004
7 Double side skin construction(二重船側構造) 150m以上の新造バルクの二重船側化。(18: 5)DEに規則案の作成と共に、二重船側の役割、内壁の強度等の検討を指示。 Yes No DE 2 2004
8 Performance standards for protective coatings 新造船の二重船側内の専用バラストタンクとvoid spaceの塗装に関する国際的な性能基準の作成をDEに指示。 Yes No DE 2 2004
9 Strengthening of hold frames to be equivalent to UR S12 by means of UR S31(船側構造の強化) UR-S31をIACS船級以外の船舶にも適用するためのMSC決議案を作成することをDEに指示。 No Yes DE 1 2003
10 Protection of fore deck fittings and small hatches 関連するURをIACS船級以外の船舶にも適用するためのMSC決議案を作成することをDEに指示。 Yes Yes DE 1 2003
11 Application of structural standards in SOLAS chapter XII(二重船側構造へのXII章の適用) 二重船側構造の船に、1区画浸水を考慮した構造要件(XII/5)を適用するため、規則から“of single side construction”を削除することをDEで行うXII章の見直しに含めることを指示。 Yes No DE 2 2004
現存船については、全隔壁の強化は費用対効果が悪いことから、高比重貨物の積載禁止等の代替措置を検討することをDEに指示。(DE46の報告に基づき、MSC77で再検討。) No Yes
12 Steel repair standards and shipbuilding practices 船舶は、船級協会の要件等に適合するよう保守されなければならないということを、船主とオペレータにリマインドするためのCircularの作成をDEに指示。 Yes Yes DE 1 2003
13 Standards for hatch cover securing mechanisms(ハッチカバーのセキュアリングの強化) UR-S21を議論の開始ポイントとして、ハッチカバーのセキュアリング基準の作成をDEに指示。 No Yes DE 1 2003
14 Performance standards for water ingress alarms 浸水監視装置の性能基準の作成をDEに指示。 Yes Yes DE 1 2003
15 Immersion suits 乗船者全員分を積付けるよう、SOLAS第3章及びLSAコードの改正案の作成をDEに指示。 Yes Yes DE 1 2003
16 Free-fall lifeboats with float-free capability 新造船にフロートフリー型の自由降下型救命艇を積付けるよう、SOLAS第3章及びLSAコードの改正案の作成をDEに指示。 Yes No DE 2 2004
 
(2)Derbyshire号事故報告に関連する対策
 MSC75で承認された水位探知システム及びポンプシステムを設置するためのSOLAS条約の改正案(第XII章第12規則及び第13規則の新設)が、一部修正の上、採択された。
 LL条約88年議定書の改正については、DE45において作成された改正案のうち、英国が実施した模型試験の結果をベースにハッチカバー荷重式を修正し、又我が国から実施不可能である旨指摘した船首部予備浮力に関する要件を修正した上で承認された。
 
 第77回海上安全委員会(MSC77)は、平成15年(2003年)5月28日から6月6日まで、IMO本部において開催された。主な審議結果は、次のとおり。
 
(1)合意された意思決定のための勧告
 MSC76で合意された対策(意思決定のための勧告)について、DE46での検討結果について審議を行ったところ、次のガイドライン等が承認された。
・水位探知装置の性能基準(決議MSC.145(77))
・SOLAS第XII章第13規則の解釈(MSC/Circ.1069)
・非IACS船級船に対するUR-S26、S27、S30及びS31の適用勧告(決議MSC.146(77))
・修理時の品質管理ガイドライン(MSC/Circ.1070)
・ハッチカバーの検査と船主の検査と保守のガイドライン(MSC/Circ.1071)
 ハッチカバーの検査については、強制化することが必要不可欠であるとする英国の主張により、DE47で実施中の検査強化プログラム(A.744(18))の改正に、ハッチカバー検査を含めるよう指示した。
 隔倉積みの禁止については、SOLAS条約第XII章第5規則及びIACS UR-S12に適合していれば禁止の適用除外となる案が合意され、DE47で詳細規則を作成することとなった。
 二重船側構造の要件について、最小クリアランスのトランスシステムで600mm、ロンジシステムで800mm(800mmの中にパイプやラダー等を含んでもかまわない。)という要件を始め、いくつかの要件が合意された。
 バルクキャリアの定義については、現行第IX章の定義から、「貨物区域においてシングルデッキ、トップサイドタンク及びホッパーサイドタンクを一般的に伴って建造される船舶」という部分を削除する案が暫定的に合意された。
 また、英国が強硬に主張していた現存船のバルクヘッドの強化策については、我が国から、これまでに合意された他の対策で十分リスク低減が期待でき、費用対効果の高い具体的な提案が提案されていない以上、検討は出来ず、更なる対策の検討は必要ない旨を主張したところ、多くの国が我が国の主張を支持し、これが認められた。
 また、新造船の13の安全対策のパッケージにより、平均値として75%リスクが低減しているとの検討結果が報告され、我が国もこれが信頼できる値であると述べると共に65〜85%程度の幅があることも指摘した。これについては、このような手続きをFSAガイドラインに附録として添付することが適合であろうことが合意された。
 
(2)長さ150m未満のバルクキャリアのFSAスタディー
 サイプラス及び英国から提出された長さ150m未満のバルクキャリアのFSAスタディーの報告書については、リスクモデルの問題があること、150m以上の対策で合意されたもののうち150m未満のものまで要求されるものが考慮されていないこと等の問題点の指摘があり、関心ある国及び機関は、必要な作業を行いMSC78に提出することが求められた。
 なお、英国からのLoading/Stability計算機の搭載に関する提案については、SLFで検討を行うこととなった。
 
(3)Derbyshire号事故報告に関連する対策
 MSC76で承認されたLL条約88年議定書の改正については、論理的な一貫性を保つための修正(英国提案)及び式の誤りの修正(中国提案)を行った上で、改正が採択された。







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