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1.3 船舶のシステムと装置
 製品開発と革新を支援するため、幾つかの船舶システムおよび装置の性能の改善にR&Dの努力が特にされなければならない。
 これらの努力の一部は標準化の推進および設計段階におけるモジュール化取り組みを目的としなければならない。
 しかしながら、主な部分は、他の分野からの技術/装置の海事化と、また航海機器、主機および推進システムに使用されているもののような幾つかの装置の鍵となる項目、を扱うべきである。
 増大しつつある安全と環境問題の強調はすべての将来作業において考慮される必要があるであろう。
 
1.3.1 一般的な技術的発展
 資格のある上級船員を確保するという挑戦のため、新しい技術の開発と導入が強調される
べきである:
●配置および操作の単純化
●信頼性
●船上保守と交換の容易さ
 
 すべての装置の性能は、操作者の経験を設計に統合し最適化されうる。個々の構成要素の信頼性と同様にシステム信頼性を増すことが本質的である
 船載装置とシステムのR&Dは、船員に新たな特別の技能を要求あるいは追加増員を必要とないような、技術を開発また試行することを目指さなければならない。
 船舶の経済的生涯を延長しようという潮流がある。そしてこの潮流は設計工程に考慮されなければならない;それ故、R&Dの努力の一部は標準化および設計段階の作業のモジュール化の推進を目指さねばならない
全てのR&Dは他の分野からの技術/装置の海事用化を扱うべきであり、また主機と推進システム、航海用ツールその他の、いくつかの装置要素の個々の性能の向上をも扱うべきである。
 
1.3.2 モジュール化と標準化
 設計者、運用者および装置供給者間の初期のまた強化された協働により、より良い設計とよりコスト効率のよい生産方法が達成され得る。これらの合理的な努力は、基礎的な構成要素/機能レベルから直接にシステムレベル/モジュール化取り組みまで、実施されなければならない。
 設計に使用されるEDIツールの標準化の課題は§3.2.1で扱われる。
 これらの目的を達成するため、装置と材料分野における特別のR&D努力が、下記に述べられるように実行される必要がある。
 
構成要素の標準化
 設計工程を改善しまた開発時間を短縮するため、全ての主たる構成要素は、船舶との標準化されたインターフェイスを持たねばならない。これは、あるフレームサイズ内のあらゆる場合において明らかにされ、船体基礎、パイプ結合および他のインターフェイスのような要素に対する要求につながる。したがって、標準要件が発展される必要がある。
 
システムの標準化
 ストレスの多い状況における人間的エラーを回避するため、全ての非常に重要な装置(即ち、船橋、主機制御室、安全装置、その他)の配置および運転/操作は、理想的には全ての船舶で同一であるか、あるいは少なくとも似ていなければならない。そうすれば、操作者は、標準の操作および運転手順を有する装置が同じ場所に置かれ、似た機能を持つ装置であることを知るであろう。目的は、乗員に追加の特殊化された技能を要しない、または乗員の増加配乗を必要としない技術を開発、導入および試行することでなければならない。
 これは、設置される装置の取り扱いに対するのと同様に、最も重要な操作場所の配置に対する標準の開発を必要とする。
 
特別な必要性のものは:
●操作者に対する表示装置の、または他の手段で与えられる情報の標準化
●簡単そして信頼ある統合された船舶制御システム(ISCS)の使用。国際的に利用可能な海事情報技術標準に基づいているもの。ISCSは最小数のセンサーを持ち必要かつ十分な情報を監視中の乗員に与えなければならない。
 研究は、増大するサービス速度の要件を考慮に入れ、究極の標準を作り出すことを目指すべきである。
 
モジュール化
 ポンプ、バルブ、フリンジ、電動モーター等々の、より小さな構成要素の標準化は、過去に試みられた時には困難であった。しかし、特定機能用に設計された単純モジュールとしてグループ化し得るものとして、油水分離機、重油処理機、淡水化システムと空調機用冷水装置等々、数えるのが出来ないくらい多くの項目がある。そのようなモジュールの外形寸法は、船舶への全てのインターフェイス(基礎、電力、制御、給排気媒体)の立場と同様に、厳密に標準化されなければならない。そのようなモジュールを確立するため、また標準化された寸法と空間のためのデータ、重量と体積、を決定するため、研究が開始される必要がある。
 
1.3.3 発電、推進システムおよび他の装置の最適化
 “Green ship”(2.3.4を参照)を次世紀における海事産業のための挑戦の一つとする。重要な優先事は船舶からの操業公害を制限することである。事業の一つは、船舶輸送により排出される空気中および海中への排気物を定性的および定量的に明確にすることである。
 第二の目標分野は、エンジニアリングシステムの信頼性の向上、および乗員レベルと保守努力を削減することが可能な自動化の採用を増大することにより、海上輸送のコスト効率を強化することでなければならない。
 
排出削減(NOxCO2SOx、その他)およびコスト効率強化
 次の分野が開拓されなければならない:
●エンジン効率の改善;例えば、過渡的および低速条件における燃焼CFDモデリングによる改善。
●二重燃料エンジンの開発と試験
●現存の触媒式排(出)ガス浄化装置と中速エンジンの規模と排気体積における排気制御の改善
●燃料電池の開発、再使用可能エネルギーの使用、および閉メタノールC02サイクルによる推進のための伝統的エネルギー源の立替物の開発
●次に挙げる完全に新世代のものの開発:
○主発動機−より軽量かつより少ない燃費のもの
○PODSのような推進システム、およびそれの船舶の一般配置、効率、安全操船および信頼性に及ぼす影響の評価
 
他の装置:揮発性有機化合物(VOC)、CFCおよび排水処理/処分
 この分野の研究では、次のような事項に取り組まなければならない:
●気体および液体排出物を削減するための廃棄物焼却工程の改善
●船−陸結合を含む石油積み込み/積み下ろしの際のVOC削減
●冷凍機および消火装置におけるCFCとハロンの置き換え
 
保守の改善および船の生涯にわたる機能向上の可能性
 これらの対象が考慮される必要がある:
●新材料
 例えば、主構成要素(装置、パイピング、その他)に対し総点検の間の平均時間を倍にし、保守の簡素化の機会を与えるような新材料
●船舶の機能向上
 船舶の生涯を通じ、商用要件、技術、安全性要件、その他は、多かれ少なかれ変化する傾向がある。
 
 運航の効率(質とコストにおける)のために、経済的に可能な限り変化する要件を満足するため、船舶が機能向上できることは重要である。当初取り付けられた装置の多くは、船舶の生涯スパンを通じ操作において存続が期待され得ない。装置とモジュールの交換は船舶機能向上の部分である。これは国際的に受け入れられたインターフェイス、および装置と機能の相互結合における標準の開発を必要とする。
 将来の装置の交換は、船上の装置の設計と取り付け、およびある程度の船体構造設計を考慮しなければならない。統合化されたシステムに対する標準化は重要な役割を果たし得る。
 生涯ライフサイクルを通じ、装置交換およびいかなる構造機能向上をも支援するために使用される船上データの登録、評価と貯蔵のための信頼できるシステムの開発に対する要件があるであろう。
 
1.4 船舶のスクラッピング
1.4.1 現状
 船舶の経済的生涯は、運賃市場の局面と同様に個々の建造様式、保守と運航経歴によりかなり変化する。船舶はスクラッピング施設に入れられる時でも十分運航可能であろう。
 スクラッピング施設では、船舶の全ての装置は取り外され、再使用のため売却される、一方、船殻は解体され鋼材および他の材料はリサイクリング用に売却される。多くの船はある船齢、一般的に1985年以前に建造されたものであり、多くが船体建造の統合部分としてある量のアスベストそして多分他の危険物質を含んでいる。スクラッピング工程は極度に労働集約的であり、大部分のスクラッピング施設は、労働集約的経済活動において比較的優位性を持つ国に位置している。現在、世界のスクラッピングの80%近くはインド、バングラデッシュおよびパキスタンにある。
 多くの船舶が老齢化するに従い、造船産業はスクラッピング施設の不足に直面している。そしてそれが存在する場所は、適用されている技術において貧弱であり、また社会的/安全面の条件においてもそうである。この状況は世界的もの代として増大しつつある関心を呼び起こしている。
 この話題は環境保護側面と関連しているが、近い将来において大きくなる経済的重要性と影響となることが予測され、それゆえに単独のR&D課題として考慮される価値がある。
 
1.4.2 R&Dの必要性
 必要とされるR&Dに関する限り、このトピックはその揺藍期にある。現在次のような一般的な事項が研究の主な分野のために指摘される:
●スクラッピングの容量と需要の分析
●スクラップ場所における廃棄物のタイプの性質と廃棄物の取り扱い
●スクラッピングに関する、現存のおよびモニターされている世界的規模および局所的に適用可能な開発要件の分析
●安全かつ効率的なスクラッピングのための技術と訓練
●スクラッピング施設に対する最適な、そして/また代替となる場所
●設計段階における(安全性および環境の側面からの)最終のスクラッピングおよび処理の考慮







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