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3. 韓国における司法手続き
(1)不法操業現認から逮捕まで
 海上において不法操業等の違法行為を現認した場合、当該船舶に司法警察員を乗り込ませ捜査をする必要が生じる。このため航行中の形態等の場合、まずは当該船舶を停船せしめることが必要となってくる。
 不法操業を現認した場合、大韓民国の排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律(以下、EZ法という。)27条1、2項ではL旗を掲げ、かつ汽笛による停船命令を行う。この他、海洋警察はマイク等を弾力的に運用しているようである。
 嫌疑漁船が当該停船命令措置を受け入れ停船した場合は、臨検を実施し嫌疑の確認を行う。
(立入検査)
 停船しない場合、高速ゴムボート等を使用し、司法警察職員を移乗させる。逃走する漁船を高速ゴムボート等にて捕捉した場合は、遅滞なく事実関係および犯罪事実の確認を行うために綿密な捜査を実施する。その際、漁船に搭載している航海計器・航海日誌・漁業許可水域等の関係書類の確認を行うことも重要となる。
 また、犯罪を現認していない場合にあっては、臨検を実施し任意で調査を行う。臨検を実施した結果、漁船の嫌疑が明らかとなった場合は拿補することとなる。
 
(2)担保金の決定、告知
 担保金の決定は検察官が行う。現場官庁である海洋警察庁に担保金決定権が無いため、港まで回航し検察官の指揮を受けて捜査書類を作成し、その捜査書類を根拠に検察官は担保金を決定することとなっており、現場の警備艦上では検察官へ情報をファックスで送り、担保金額決定の準備をする等、合理的な捜査が図られているようである。
 告知方法は検察官が陸上で告知を行う。担保金の洋上での告知は想定されていないようであり、早期釈放制度としての問題は残る。
 
(3)告知から担保金の提供
 担保金を受け取る事ができるのは、検察官のみであるため、海上で拿捕されたとしても、海洋警察庁が指示する港まで引致し、検察官に担保金を提供しなければならない。今後日本と同じ制度つまり、海洋警察官が直接担保金を受け取れるような制度も行われるようである。また、担保金の提出を補償する書類の提供を受けた時には遅滞なく船長その他違反者を釈放し押収物を返還しなければならない。
 
(4)出頭期日及び場所の指定
 被疑者を逮捕し、担保金の額が決定した場合、被疑者に告知を行う。同時に証拠物の還付の告知、再出頭期日、場所の通知も実施される。
 担保金はそもそも裁判への出席、身柄を担保するものであるから担保金を提出し釈放された後、検事又は司法警察員が指定した期日および場所に出頭し当該担保金が国庫に帰属する前に裁判所において、宣告された罰金額が納付された場合には、法務部令が定める所により担保金を返還しなければならない。
 
(5)判決
 被疑者が指定期日及び場所に出席していなくとも、略式裁判が行われる。
 
(6)罰金等納付
 判決で出された罰金を納める。被疑者が不出頭で罰金が提出されない場合、担保金が罰金に充当される事となる。
 韓国では担保金をそのまま罰金に当てるという明確な規定はない。原則論で言うと、被疑者が出頭した場合でも、罰金の納付後に担保金の返還が行われることとなっており、結果的に担保金の2倍の金額を被疑者が用意しなければならないという問題があり、非常に違反者の負担を大きくしている。
 
(7)担保金返還
 罰金の納付後、担保金が返還される。
※なお、韓国刑事訴訟法上に規定する捜査方法については、警察が検察の指示を受けて逮捕した場合と、検察が独自に逮捕した場合によって次のように異なる。(以下、条文要旨)
・警察が検察の指示を受けて逮捕した場合は、逮捕から48時間以内に、拘束令状を請求しなければならず、その期間内に拘束令状を請求しないときには、被疑者を即時釈放しなければならない。(法200条の2)
・司法警察官が被疑者を拘束した場合は、10日以内に被疑者を検事に引致しなければ、釈放しなければならない。(法202条)
・検事が、司法警察官から被疑者の引致を受けた場合は、10日以内に、公訴を提起しなければ、釈放しなければならない。(法203条)
・検事の請求により、捜査を継続することに相当理由があると認定した場合は、10日を超えない限度において、拘束期限の延長を許可できる。(法205条)
 つまり、逮捕から、公訴の提起まで最大30日間の期間がある。
・検察が独自に逮捕した場合は、上記同様、逮捕から48時間以内に拘束令状の請求若しくは釈放しなければならず、その後、検事が被疑者を拘束した場合は、10日以内に公訴を提起しなければ、釈放しなければならない。(法203条)
 相当の理由があると認定されたときには、拘束期間の延長が許可されるため、検察が、独自に逮捕した場合は、逮捕から、公訴の提起まで最大20日間の期間がある。
 
(1)不法操業現認及び停船措置
 不法操業をしていたと思料される不審な外国漁船を発見し、当該漁船を立入検査するために停船させる場合には、「立入検査及び質問をする旨を表示・告知」して、停船命令を行うものとなっている。この場合、外国漁船が停船命令を了知していることが明らかであるにもかかわらず、逃亡する場合には、合理的な理由がある場合除き、漁業法第141条第2号の立入検査忌避罪に該当し、現行犯として強制措置もとることが可能であり、合理的な手段により、停船措置がとられることもある。
 
(2)担保金の決定、告知
 取締官は、所要の捜査を行った後、法第24条第2項の規定に基づき、政令で定めるところに従って、担保金の額を決定する。
 担保金の告知等に関して取締官は、法第24条第1項の規定に基づき、拿捕に係る船舶(以下「違反船舶」という。)の船長及び違反者に対し、書面を手交し書面により、次の事項を告知する。
(1)担保金(本邦通貨に限る。以下同じ。)又はその提供を保障する書面(以下「保証書」という。)が10日以内(取締官がやむを得ない事由があると認める場合は、最大20日以内。)に提供されれば、遅滞なく違反者は釈放され、及び違反船舶その他の押収物(以下「押収物」という。)は返還されること。
(2)提供すべき担保金の額
 
(3)担保金の提供
 違反船舶内において直ちに担保金の提供の申出があった場合は、歳入歳出外現金出納官吏に所属する出納員(以下「出納員」という。)は、提供者に担保金提供書を提出させ、本庁等の指示に従い担保金を受領し、保管金受領証書を交付する。
 違反船舶内において直ちに保証書の提供の申出があった場合は、本庁等の指示に従い保証書を受領するとともに違反者を釈放し、押収物を返還し、保証書を受領する。
 洋上において直ちに担保金又は保証書の提供の申出がない場合は、違反船を港に回航し、取締官は逮捕、押収を継続したまま捜査手続を行うこととなる。
 担保金又は保証書の提出期限(次項によって延長された場合は、延長後の提出期限。以下この項において同じ。)までに担保金又は保証書の提出の申出があった場合は、前述の手続をとる。また、この場合、事件が検察官に送致されているときは、法第25条第1項の規定に基づき、国土交通大臣から、取締官及び検察官に通知がなされる。
 
(4)担保金等の提供期間の延長
 取締官は、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律施行令(以下「令」という。)第8条の規定に基づく期間の延長につき、申請書により申請がなされた場合には、やむを得ない事由が有るか否かを判断し、延長を認める場合には延長後の提出期限を原則として書面により、申請を行った者に通知する。
 
(5)出頭期日及び場所の指定
 担保金提供等の手続がとられた後、取締官は、違反者に対し、書面により出頭期日及び場所を通知し、出頭期日通知受領書に署名させてこれを提出させた後、法第25条第2項の規定に基づき、遅滞無く、違反者を釈放し、及び押収物を返還する。
 この場合において、返還する押収物について再提出を求めることが特に不可欠であると認める場合、押収物の返還を受ける者に対し、書面により提出すべき押収物、提出期日及び提出場所を通知する。
 
(6)出頭期日及び提出期日の変更
 出頭を求められた違反者又は押収物の提供を求められた者が、法第26条第2項ただし書に規定する特定の日に出頭し又は押収物を提出する旨の申出を行おうとする場合は、原則として書面により行う。
 
(7)検察官への送致
 司法警察員は、所定の捜査を終えた後、事件を検察官に送致する。但し、担保金が提供され被疑者が釈放等されている場合は、担保金の国庫帰属後、検察官に送致する。
 
(8)国庫帰属
 出頭期日の変更の申請がない場合は、担保金について、違反者及び押収物が求められた期日及び場所に出頭せず又は提出されなかったときは、法第26条第2項の規定により、当該期日の翌日から起算して1月を経過した日に国庫に帰属する。
 また、出頭期日等の変更の申請が有る場合は、出頭期日等の翌日から1月を経過するまでに、3月を経過する日以前の特定の日への変更の申出があった場合は、当該特定の日に違反者の出頭、押収物の提出がない場合は、法第26条第3項の規定により、当該申出に係る特定の日の翌日に国庫に帰属する。
 
(9)担保金の返還
 本件に係る手続が終結し、罰金及び訴訟費用の納付がなされた場合には、それを証明する書面により担保金は担保金提供者に返還する。
 被疑者が死亡した場合には、死亡診断書等の証明により担保金は担保金提供者に返還される。
 
(10)検察官との連絡
 取締官は、事件の処理にあたり、検察官と常に密接な連絡を取ることとなっている。
 違反者が求められた期日(その期日の変更の申出があったときは、変更後の期日)に出頭し証拠物等が提出されたときは、事後の刑事手続が円滑に進むよう検察官と特に密接な連絡をとることとなる。
 
(11)両罰規定の措置
 両罰規定の対象となる者が、違反船舶に乗船している場合には、当該者に対しても被疑者と同様の措置をとるものとする。
 
(1)逮捕について
 日本も韓国もほぼ同様であり、以下の停船信号を用いて、停船命令を行う。
(1)サイレン、汽笛等の音響又は発光信号の「L」の信号
(2)違反漁船の該当国籍言語を用いた、拡声器、無線を利用した通告
(3)国際信号旗「L」
 以上の停船命令に従わなかった場合、日本では合理的手段により停船措置を行う。
 また、日本と韓国では、警察官(海上保安官)の立場が異なる。日本では刑事訴訟法第189条により、司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。となっているが韓国では、刑事訴訟法第195条より、検事は犯罪の嫌疑があると思料するときは、犯人、犯罪事実及び証拠を捜査しなければならない。と定められており、刑事訴訟法第196条1項より司法警察職員は検事の指揮を受けて捜査をしなければならないと規定されている。つまり、日本では海上保安官に与えられている権限が、韓国においては全て検事が有している。したがって、違反船舶を発見した現認した場合、現行犯は韓国においても何人でも逮捕できることになっているがその措置についてまず検事に報告し指示を受けているようである。
 
(2)担保金の取り扱い
 担保金の決定においても、取締官である海上保安官は、所要の捜査を行った後、EZ漁業法第24条第2項の規定に基づき、政令で定めるところに従って、担保金の額を決定する。しかし、韓国では司法警察官吏(日本の司法警察職員に該当)に担保金の決定権は与えられておらず、担保金の金額は大統領令が定める基準により検事が違反事項の内容その他情状を考慮し定めることとなっている。
 告知の内容は両国とも、担保金又はその提供を保障する書面が提供されれば、遅滞なく違反者は釈放され、違反船舶その他の押収物は返還されるという趣旨の内容及び提供すべき担保金の額となっている。ただし、日本では提出先が主務大臣となっているが、韓国では検事に対して提出することになっている。
 日本では、洋上での担保金、保証書の受け取りが可能であるが、韓国では、担保金の金額決定、担保金の受け取りは検事となっており、海洋警察庁の職員が洋上で受け取れるという手続きは無いようである。韓国では拿捕した場合、違反船を全て一旦港に回航する。被容疑船を港に回航する場合、逮捕、押収を継続したまま捜査手続きを行うが、これは日韓ともに同様である。
 
(3)担保金提出後の事件処理
 担保金又は保証書の提出期限までにそれらの提出の申出があった場合は、違反者を釈放し、押収物を返還する。これは両国とも共通である。
 ただし、日本では担保金の受け取り者が主務大臣となっており、また、事件が検察官に送致されているときは、EZ漁業法第25条第1項の規定に基づき、国土交通大臣から、取締官及び検察官に通知がなされる。韓国では、担保金が取締官に提出されるのではなく、検事に直接提出される。また、検事は取締官に対する担保金の受け取りの通知義務はない。
 
(4)検察官への送致
 担保金又は保証書の提出期限までに、担保金又は保証書が提供されない場合においては、日本では取締官は必要な捜査を行った後、事件を検察官に送致する。韓国において捜査は検事主体で行なわれるため、事件(書類、証拠物)の送致というものではなく、検察が所定の捜査を終えた後、検察に身柄を引致する。
 
(5)裁判
 日本では、担保金を提供し、釈放、押収物返還を受けた後、出頭期日までに再度出頭した場合のみ裁判へと進む。再出頭した場合、被疑者の身柄は刑事手続きへと移行し、必要な場合には再度拘束される。次に検察へ送致され、その後、起訴となる。韓国においては、釈放、押収物の返還を受けた後、出頭期日までの出頭の有無に関わらず、刑事手続きへと移行し検察は起訴を行う。被疑者が出頭していない場合でも同様の手続きとなる。
 
(6)国庫帰属
 出頭期日の変更の申請がない場合、担保金については、日韓両国とも、違反者及び押収物が求められた期日及び場所に出頭せず又は提出されなかったときは、当該期日の翌日から起算して1月を経過した日に国庫に帰属するとなっている。
 日本では、出頭期日等の変更の申請が有る場合、日本では出頭期日等の翌日から1月を経過するまでに、当該出頭期日の翌日から3月を経過する日以前の特定の日への変更の申出があった場合で、変更された出頭期日に違反者の出頭、押収物の提出がない場合は、EZ漁業法第26条第3項の規定により、変更された出頭期日の翌日に国庫に帰属することとなっている。韓国では、EEZ漁業法24条より、国庫帰属の前日までに船長その他違反者が指定出頭期日の次の日から3月が経過する前(国庫帰属予定日から2ヶ月)特定期日に出席又は押収物を提出する旨の申請がある場合はこの限りではない(担保金の国庫帰属は、変更された出頭期日の次の日)と定められており、日本の規定と同様となっている。
 
(7)担保金の返還
 日本と韓国において手続きの差異はほぼ見られない。
 
釜山地方検察庁にて







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