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事業の目的
 近年の海上保安業務は、増加する密航、銃器薬物の密輸入事犯等外国人による組織犯罪や、マラッカ、シンガポール海峡及びインドネシア周辺海域における海賊事件への対応等治安分野での国際化が、またわが国に就航する船舶は、フィリピン等の外国人船員がほとんどであり、海上交通情報の提供等海上安全分野においても国際化が著しい。
 これら業務の的確な遂行には、第一に語学能力の向上や国際感覚の涵養など一層の強化が望まれている。
 本事業は、海上保安庁教育機関の学生、研修生を対象とした語学能力の向上のため及び国際感覚の涵養を図るため、国際的に課題とされている事案ごとに研究課題を設定して海外研修を行い、円滑・的確な業務体制の構築を支援することを目的とする。
 なお、本事業は、競艇公益資金による日本財団の助成事業として平成15年度に実施したものである。
 
 本事業は、海上保安大学校学生に対し、国際的に課題とされている事案が発生している国やそれらの課題について研究を進めている国において調査研究に挑戦する機会を付与することとし、教官、学生で構成するグループ4組が夏期休暇期間(7〜8月)に海外へ渡航し、各種調査研究を行った。
 
I 排他的経済水域における違反外国漁船に対する韓国の司法手続について
〜特にEZ漁業法における早期釈放制度について〜
渡航期間 8月4日(月)〜8月12日(火)
対象機関 ・韓国海洋警察庁(仁川) ・釜山海洋警察署 ・木浦海洋警察署
 ・釜山地方検察庁 ・韓国海洋大学校(釜山) ・木浦海洋大学校
 
II Bioremediation(生体機能を用いての環境修復)の実際と最新技術の調査研究
渡航期間 8月14日(木)〜8月20日(水)
対象機関 ・国際タンカー船主汚染対策連盟(ITOPF)(ロンドン)
 ・ハイ・バー社(ガトイック)
 ・国際海事機関(IMO)(ロンドン)
 
III 地理情報システム(GIS)の海上保安業務への活用に関する研究
渡航期間 8月12日(火)〜8月24日(日)
対象機関 ・米国コーストガード研究開発センター(グロートン)
 ・カナダコーストガード航路開発課GISサービスセンター(バンクーバー)
 
IV 海上保安機関の意義について 〜PCGの現状〜
渡航期間 7月29日(火)〜8月11日(月)
対象機関 ・フィリピンコーストガード
(本庁、教育訓練局、船舶運用指令局、第二管区本部)
 ・フィリピン商船大学校
 ・フィリピン国立警察大学校
 
〜特にEZ漁業法における早期釈放制度について〜
 
第4学年第I群 岡本泰宏
第4学年第III群 中村真弓
 
指導教官 外国語講座 田邉弘芳 助教授
後藤宏明 講師
 
韓国海洋警察庁にて
 
 日韓の漁業は、国連海洋法条約を根拠として、1999年1月に発行した所謂、新日韓漁業協定の下、新たな漁業秩序が構築されている。この日韓漁業協定中に、違反漁船に対する早期釈放制度(ボンド制度)が盛り込まれ、運用されていることも大きな特徴の一つであると思われる。
 これらにより、日韓両国とも排他的経済水域における漁業等に関する秩序の維持等を行っているものの、違反漁船等に関する刑事手続、早期釈放制度の詳細は、日韓の法体系が異なるために不明な点が多く存在した。
 これから、韓国の「排他的経済水域における外国人の漁業等に対する主権的権利の行使等に関する法律」(所謂EZ漁業法)中の違反漁船に対する早期釈放制度について、関連する刑事手続を含めて文献等により、日本の制度と比較、検討し、そこから生じた法律の運用、解釈等に関する疑問に関しては取締官庁である韓国海洋警察庁、検察庁や韓国海洋大学校を実際に訪問し、それらの解明を図ることにより、日韓両国のEZ漁業法における早期釈放制度に関連する各種法制度について総合的に比較検討し、併せて、問題点と思われる点の抽出を試みた。
 
(1)第3次国連海洋法会議及び海洋法条約の発効
 海洋に関する国際法の規則は、長い間、主として慣習法として発展してきた。戦前においても、海洋法に関する一般条約の作成のための努力は種々なされてきたが、具体的には条約の採択として結実するまでには至らなかった。こうした中、国連においては、国際的な海洋秩序の成文化を目指し、昭和33年、第1次国連海洋会議が開催された。領海、公海、公海における漁業及び大陸棚に関する審議が行なわれ、公海に関する条約、領海及び接続水域に関する条約、大陸棚に関する条約、漁業及び公海の生物資源の保存に関する条約のいわゆる「ジェネーブ海洋法4条約」が採択された。
 しかしながら、最大の課題であった領海の幅員については意見の一致を見ることができず、さらにその2年後の昭和35年に開催された第2次国連海洋法会議の場においても、前回同様に結論を得るには至らなかった。これにより、領海の幅員や漁業水域に関する沿岸国の主管及び管轄権についての混乱が世界的に生ずることとなり、中南米諸国を初めとして経済水域等を200海里として設定する国々が出現した。
 このような混乱した海洋秩序を背景として、昭和45年、第25回国連総会における海洋に関する広範な問題についての新制度を目指す旨の決議に基づき、第 次国連海洋法会議の開催が決定され、昭和48年から57年までの11回期にわたり行われ、昭和57年4月、「海洋法に関する国際連合条約(いわゆる国連海洋法条約)」が採択された。
 しかしながら、同条約第11部に規定する深海底開発制度については、先進国と発展途上国との利害関係の相違に基づく激しい意見の対立があり、これが同条約の発効を遅らせるひとつの理由となっていたため、平成2年国連事務総長が先進国と発展途上国を招請して非公式会議を開催し、この問題についての討論が開始されることとなり、この結果、平成6年の国連総会において、「1982年12月10日の海洋法に関する国際連合条約第11部の規定の実施に関する協定」が採択され、深海底制度をめぐる意見の対立が解消されたことから、その後は同条約を締結する先進国が増加することとなった。
 国連海洋法条約は、平成5年11月に60番目の国としてガイアナが批准書を寄託した1年後の平成6年11月16日に発効し、平成9年11月14日までに、その締結国は111ヶ国にのぼっている。
 
(2)我が国の対応
 200海里制度については、国連海洋法条約が昭和57年に採択される以前、既に国際的なコンセンサスが得られており、米国は、昭和51年、第3次国連海洋法会議での合意を先取りした形で200海里漁業水域を設定し、同水域において漁業規制を実施することとなった。
 同年、旧ソ連も米国に引き続き200海里水域を設定したことから、我が国は旧ソ連水域における我が国漁船の操業を従来どおり維持するため、旧ソ連と入漁交渉を行うこととなり、この交渉に同国と対等の立場で臨むためにも、我が国も200海里漁業水域を設定し、同水域において操業する外国漁船に対して漁業に関する管轄権を行使することとした。
 昭和52年、我が国は漁業水域に関する暫定措置法を施行し、200海里漁業水域(東経135度以東の日本海及び太平洋)を設定した。なお、同法は、主に旧ソ連漁船を対象としたものであり、韓国及び中国船については、その当時、両国とも200海里を設定していなかったこと、また、両国との間で漁業協定が存在し漁業秩序が維持されていたこと等から、両国と相対する東経135度以西の日本海、東シナ海及び太平洋の一部海域には200海里漁業協定は設定せず、さらに設定された漁業水域にあってもその適用が除外されることとなった。
 また、「漁業水域に関する暫定措置法」の施行とともに「海洋法」も施行され、我が国は、基線から12海里(国際海峡に設定された特定海域を除く。)を領海として宣言した。
 第3次国連海洋法会議における同条約採択から1年後の昭和58年、我が国としては、「条約は、海洋国家としての我が国の長期的国益に合致し、かつ、国際社会の利益に沿うもの」と判断して、同条約に署名したものの、その後の深海底制度についての問題から、暫くの間は締結に向けての進展は何ら見られなかった。平成6年11月、国連総会において「1982年12月10日の海洋法に関する国際連合条約第11部の規定の実施に関する実施協定」が採択されたことにより、我が国政府は、条約及び実施協定に基づく包括的な海洋の法的秩序に早急に参加することが重要であるとの見地から、条約、実施協定の承認案件及び関連法案を平成8年第136回通常国会に提出した。衆議院本会議においては平成8年5月28日、参議院本会議においては同年6月7日、いずれも全会一致で可決、承認され、同条約は同7月20日に、また、実施協定は7月28日にそれぞれ発効した。
 平成8年7月20日、我が国周辺海域には、国連海洋法条約の批准に伴い排他的経済水域が設定され、また、同条約に定める権利を的確に行使するため、「排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律」(EZ漁業法)等が施行され、同水域のおける外国人における漁業等が規制されることとなった。
 しかしながら、韓国人及び中国人の行う漁業については、当時の日韓漁業協定及び日中漁業協定が、自国船の取り締まりは自国のみが行うという旗国主義を内容とし、国連海洋法条約で定めた漁業等に関する一般的な主権的権利と異なる原則に基づいていたことから、EZ漁業法の適用が暫定的に除外された。このため、同条約の趣旨並びに韓国人及び中国人にも適用すべきであるという国会での付帯決議等を踏まえ、以後、韓国及び中国との間で新たな漁業秩序構築のための漁業交渉が進められることとなった。
 新しい日韓漁業協定の締結については、平成8年から交渉が続けられてきたが、両国の立場の違いは大きく合意が得られない状況が続いたため、平成10年1月23日に日本側から当時の協定を終了させる意思を通告した。その結果、協定は1年後に効力を失うこととなった。その後、交渉が再開され、平成10年9月25日に基本合意がなされ、同年11月28日には新日韓漁業協定の署名が行なわれた。新協定は、12月11日に国会で承認され、平成11年1月22日に批准、発効し、これにより、原則として我が国の排他的経済水域における韓国人による漁業等は、我が国の許可を受けなければ行えないこととなった。
 なお、新日中漁業協定については、平成9年11月に署名がなされ、平成10年4月30日に国会で承認されている。
 
韓国海洋警察庁
 
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