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第3章
チャイルドラインを担って(受け手、支え手研修)
・研修概要
・受け手研修レポート
 
 常設に伴い、「受け手ボランティア」の資質向上のため、研修を重ねてきました。「受け手」の皆さんに、5月〜12月までの研修を通しての「気付き」をレポート提出してもらい、その中から特徴的なものを、年代別に数編ずつ選び掲載しました。
 
 
<受け手 全体研修>
日時 研修内容 講師
4月14日(日)
10:00〜15:00
「主題」のつかみ方
ロールプレイ
岡山いのちの電話研修担当
森口 章さん
6月23日(日)
13:30〜16:30
「主題」のつかみ方
事例研究
岡山いのちの電話研修担当
森口 章さん
9月7日(土)
10:00〜15:00
「自分を知る」
講義&ワークショップ
チャイルドライン支援センター理事
山本多賀子さん
 
<受け手 グループ研修>
日時 研修内容 講師
10月22日(火)
10:00〜12:00
「主題」のつかみ方
事例研究
流通大学助教授
宮川数君さん
10月27日(日)
18:00〜20:00
「主題」のつかみ方
事例研究
岡山いのちの電話研修担当
森口 章さん
11月10日(日)
10:00〜12:00
「主題」のつかみ方
事例研究
岡山市立後楽館高校教諭
山口 修さん
11月12日(火)
19:00〜21:00
「主題」のつかみ方
事例研究
岡山市立伊島小学校教頭
安原こずえさん
11月17日(日)
13:00〜15:00
「主題」のつかみ方
事例研究
岡山いのちの電話研修担当
森口 章さん
※受け手を5グループ(7人〜10人)に分け、少人数での研修
 
<支え手 研修>
日時 研修内容 講師
6月23日(日)
10:30〜12:30
支え手の役割 岡山いのちの電話研修担当
森口 章さん
8月21日(水)
18:00〜
22日(木)
〜15:00
エンカウンター・グループ 岡山いのちの電話研修担当
森口 章さん
10月5日(土)
9:30〜12:30
「主題」をつかむ 岡山いのちの電話研修担当
森口 章さん
 
 
チャイルドラインを担って
人が好きになった
(20代 女性)
 チャイルドラインの研修を受けて人とのかかわりについてよく考えるようになりました。友だちとの関係や親や先生、その他の人とのかかわりの中でよく自分を客観視するようになったのです。特に人の話の聞き方です。以前は自分が話したい気持ちが強くて、「私は」、「私は」と言っていたけれど、チャイルドラインの研修を受け始めてから「あなたはどう思う?」と聞くことができるようになりました。人とのかかわりや、人の心については、このような研修に参加するなど、個人で機会を作らなければなかなか学んだり、考えたりする機会がありません。だから、この研修の時間はとても大切に思っています。自分の心を耕して、電話をかけてきてくれる子どもの気持ちに少しでも近づき、話を聞き、子どもたちの心の温泉になれたらと思っています。
 チャイルドラインで一番学んだことは「人が好き」という気持ちです。嬉しがったり悲しんだり、悩んだり。みんな一生懸命生きている。人を傷つけて悩む人、人を癒したいと思う人、自分を好きになれなくてもがいている人・・・。そんな「人」が好きなのです。これからも研修を通して人の心について学んでいきたいです。
 
受け手「全体研修」(2002.6.23)
 
 
相手の気持ちをどーんと受け入れること
(10代 女性)
 継続研修では、相手の気持ちをまずどーんと受け入れることを学んだように思います。それまでの受け手になるための研修の間は、私はとにかくどうやって電話を受けたらいいのかで頭がいっぱいで、技術的なことばかり頭にありました。相手の言ったことをくりかえす、開かれた質問をするといったことが頭にあり、「次は何と言おうか」とあせって、先に先に考えていました。また、相手の話す事柄がどんなことか、小さな部分が気になり、枝葉にとらわれていました。その事柄がわからないと相手の気持ちもわからないと思っていました。
 けれど、チャイルドラインは気持ちに寄り添うことが一番大切な電話です。相手が「つらい」と訴えていたら、つらいという気持ちを無条件で受け入れることが先だとわかりました。これは考えてみると当然のことで、私自身もだれかに話をするとき、自分の一番言いたいことをわかってもらえたらとてもすっきりします。
 自分が受け手をする上で、技術的なことはもちろん大切ですが、それ以前に、相手の中心感情(幹)をつかみ、受け入れることが、話し手との関係の第一歩と再確認することができました。
 
 
一番大きな気持ちに気づくこと
(10代 女性)
 私は高校生の時に、初めて新人受け手研修を受けました。その後、何度か研修を受けるたびに、いつもまだまだ勉強が足りないと感じてしまいます。特に森口先生のお話を聞くと、毎回「なるほど」と納得してしまいます。「子どもの気持ちをつかみ、共感するためには、かけ手の心にある一番大きな気持ちに気づいてあげることだ」という先生の言葉が、いつも心にはあるけれど、肝心なときに気をつけているだろうかと反省することがあります。だからそのように大切なことを常に心に留めておくためにも、研修を受けていきたいと思っています。特に長時間話を聞く講義だけではなく、グループ討論やワークショップ、事例研修、これから入ってくる新人の受け手の方との研修の中で、もっと子どもたちが相談しやすい受け手になりたいと思っています。
 今までの研修で印象に残っているのは、ロールプレイで、自分がかけ手の立場になった時です。受け手がどんな風に言ってくれるだろうかという、かけ手のもつ緊張感がわかりました。ワークショップのような体験的な研修は、相手の気持ちを理解するのに一番よい方法だと実感しました。
 そして、特に印象に残っているのは、最近のことだからということもありますが、同じ世代の受け手の方と行なったグループ研修です。みんなが持っている不満や悩みを知ることができ、みんなの悩みを聞いて、確かにそんなことがあるなあと、気づくことができました。特に「性」に関する電話の研修をしたとき、どれだけ相手の悩みを冷静に受け止められるかがとても大切だということが分かりました。また、優しい言葉かけや共感する態度から、刺激を受け、私もがんばらなければと思うことができました。
 とにかく、研修で学んだことを忘れないように、一生懸命相手の気持ちに添うことができるように、一回一回大切に電話を受けていきたいです。
 
 
主役は子どもたち
(30代 女性)
 チャイルドラインの受け手講習は、休まずに受けていたのですが、受け手になってから、仕事の都合で時間がとれず、全体での研修には欠席ばかりで、グループ研修でしか学ぶことができませんでした。研修では講師の先生にアドバイスを頂きながら、現代の子どもたちの心理を教えてもらいました。大人には測り知れないことがいっぱいあること、今の社会のゆがみが子どもたちへの悪い環境を与えていることを感じさせられています。
 このチャイルドラインを通して、子どもたちの心の叫びを少しでも聴いてあげられるようにと受け手になりましたが、電話の向こうの子どもたちの表情が見えないので、本当にこちら側の言葉かけのむずかしさと同時に、聴いている時に子どもの思いになって聴いているだろうかと、毎回反省させられます。
 先生からの「こちら側が子どもに対して言葉を提供するのではなく、子ども自身の思いをしっかり聴いてあげて解決する糸口をみつけられたらよい」というアドバイスを受けて、「主役は子どもたち」という思いを強くもって受話器をもたないといけないと思いました。
 また、「主題と子どもたちが何を訴えたいか、その時の気持ちを読むことが大切」とも言われ、ポイントをしっかり押さえて、自分の感情で事柄を思い描かず、白紙から一つ一つかみくだいて理解していかねばならないことにも気づかされました。
 これからの研修には出席して、少しでも子どもの話を冷静に受け止めて聞けるよう学んでいきたいと思います。
 
 
自分を発見する機会
(30代 女性)
 チャイルドラインの受け手として、参加して以来、心の中にずっと、ある不安が居座っています。
 私には、受け手としての資質があるのか、子どもの話を本当に受け止められるのか、という不安です。これらが受話器の前に座るたびに胸に迫ってきます。
 研修を受けるたびに、新たな不安が出現しますが、同時に、自分という人間の「ものの見方、考え方」を発見する機会をもらえるのも事実です。
 また、自分の内面を振り返り、掘り起こし、自分の考え方や、受け取り方の傾向を知る必要性を教えていただきました。同じ「事例報告」を題材にしても、自分がこだわったり、ひっかかるポイントが、他の人とは違うポイントであったりして、大きな気づきをしました。自分の傾向を知ることで、電話の向こうにいる「かけ手」の話を、自分のフィルターを通さずに、そのまま受け止めることにつながるということも学びました。
 継続的に研修を受けることで、絶えず、自分の中にあるものを見つめ直し、気持ちを新たにすることができます。今はまだ、電話がつながった子どもたちに、「受け手が私でごめんね。」と、思いながら対応していますが、今後も研修を続けることで、少しでもより良い受け手として成長することができれば、と思っています。
 
 
最初の5分間が大事
(40代 男性)
 チャイルドラインの当初の研修会で、私は無謀にも参加者の前でロールプレイをしました。そのときの聴き取りは「堂々巡り」で会話に深まりが全くありませんでした。少しカウンセリングの勉強をしていたので、ほんのちょっと傾聴することに自信があったのですが、ものの見事に打ちのめされてしまいました。
 それから2年。そのときの気づきを忘れずに少しずつ努力してきました。研修会にはすべて参加し、レベルアップに努めてきました。それでも実感としてまだまだ「聴く力」がなかなか向上しないなぁ、というのが本音です。
 研修の中では、11月11日の研修が最も印象に残っています。山口先生は常に参加者のコメントを否定することなく、その発言のいいところをすくい上げて褒めてくださいました。これはできるようでなかなかできないことだと感じました。われわれ初心者にとっては、ケーススタディに合ったコメントをすることは至難の業です。そんな中で先生はそのコメントのエッセンスを好意的にすくい上げてくださったのです。
 11月の研修会で「クライアントの主感情・テーマは最初の5分間に出てくる。人生に関わること、身体感覚に関わること、感性に関わることなどで、考え方は主題にはならない」とおっしゃったのが大変印象に残っています。そして、「事柄にとらわれることなく傾聴する。繰り返し出てくる言葉の中に問題解決の要素が含まれている。その要素を見逃すことなく掬い上げて、クライアントに明確化する」、また「カウンセラーの心と体は、自分自身の手段(=道具)として、クライアントに関わることが大切だ」、「会話が深化するに従い、受容・共感・自己一致が生じてくる。その前提条件としては、受け手は自分の気持ちにとらわれることなく自由に解き放たれていないといけない」とも言われました。
 受け手主導になることなく、クライアントの心から発露される言葉に耳を傾ける。これは大変困難なことですが常に心がけるようにと教えられました。
 
 
ありのままの自分を受け入れること
(40代 女性)
 チャイルドラインの常設化にともない、月に一度受け手をさせていただくようになりました。夏休み前、夏休み中は、一度も電話のベルが鳴らない日がありました。学校へ行かなくてよいということが、こんなにも子どもたちの気持ちを楽にさせているのだろうか、「それっていったい何なんだろうか」とあらためて、学校について問いたい気持ちでいっぱいになりました。
 そして、9月。学校が始まった途端に鳴り響きだした電話。子どもたちは、痛々しいくらいに目の前にある現実に向き合おうとしているんだなあと感じました。そして言葉の奥にある気持ちをつかみ、受け止めることの難しさを感じました。
 研修で学んだことを、実際に自分の中に活かしていくことは容易でなく、私の中にどこか研修で得たことを上手に表現しなければという気持ちが強かったのかもしれません。そんな時は大切にしなければいけない子どもの気持ちや心に沿えず、すまない気持ちでいっぱいになります。
 私にとって継続研修で学んだことは、実際に受話器をとり、即、実行できるような手法ではなく、いかに自分と向き合い自己のいらない衣を脱ぎさり、まったく素の自分を表現することがどんなに大切かということを気づかせ、近づけてもらうものだったと思っています。「ありのままの自分を受け入れられることが、よりありのままの子どもを、受け入れられることなんだよ」と知らされるようでした。
 これからも、受け手としての私自身の自己改革につながる研修にさせていただくよう、研修でより自分を出していきたいと思います。また、他の方の気持ちや考えに共感できる自分になれるよう努めたいと思います。
 
 
自分のクセを意識できた
(40代 女性)
 研修を重ねるうち、言葉の向こう側にある子どもの気持ちをつかみとることの重要さと難しさをますます感じています。
 答えを出すのは子どもたち。自分の気持ちや感情も、子どもたちが自分で気づく。ただ、それをサポートするだけ、と思いながら受話器をとる。けれども、性の問題になると心がざわめく。とりわけ、性交や性暴力の話は学年が低ければ低いほど、どうしても伝えたいことや知っていて欲しいことが頭の中を去来する。研修を通じて、そういう私のクセを意識することができたことはとても大切なことだった気がします。
 知っているようで、本当はよく解っていない自分のことを知ることは、受け手として本当に必要なことだったと思います。自分のクセを自覚しながら子どもたちの心に寄り添い、子どもたちの言葉の奥に隠された気持ちに焦点をあてて耳を傾けていきたいと思います。
 また、「冷たいようだけれど、『今、悩んでるんだよね』と、客観的に聴く。距離を置いて聴くことも必要です。」とおっしゃられた先生の言葉も私にはとても大切なものとなりました。
 受話器を置いて、これでよかったのかと思うこともしばしばです。自問自答を繰り返しながら、研修を続けながら、もっともっとスキルアップしていきたいと思います。







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