日本財団 図書館


(4)潮流と波とが組み合った場合の抵抗
 実際海面(海水)で潮流と波とが組み合わさった海域にオイルフェンスを設置した場合、オイルフェンスに働く力を概算してみよう。
 まず、図II-8.13、図II-8.15及び図II-8.17から、平水中の潮流力、波浪と潮流が重ね合わさった場合の平均抵抗及び波による抵抗の変動量を読みとる。
 次に、次式によりそれぞれの値を計算する。
 
イ 潮流力 図II-8.14
 
ロ 平均抵抗 図II-8.16
 
ハ 抵抗の変動量
 
 ここで、fRW/RTは図II-8.18から読みとる。
 
 そして、ロで求めた平均抵抗値を中心にして± fRWを加えて抵抗の上限と下限が決まる。
 
例:オイルフェンスの長さ 40〜60m
開口比 0.4〜0.8
流速 0.2〜0.5m/s
波長 10.0m
波高 0.30m
 
について求めた結果を図II-8.20に示す。この図を用いれば、係留ラインの限界力さえ与えれば、オイルフェンスの長さ、開口比、限界流速などが求められる。
 
図II-8.20 実際海面(潮流+波)におけるオイルフェンスに作用する力
 
(3)海上実験
a オイルフェンスの固定に使用する各種錨について、底質、錨索の長さに対する把駐力を調査する。
b 水槽実験結果及びa項の海上実験結果をもとに海上においてオイルフェンスを展張、係止し、風・潮流によるオイルフェンスの移動及び展張形状の状況を調査し、各種錨の効果及び適否を調査する。
1)錨の把駐力実験
 錨単体の把駐力実験は横須賀構内の底質が砂、泥、水深15mで実施した。
(1)実験資機材
錨の種類と爪の角度
ストック型 25kg 50度
ダンホース型 25kg 60度
ダンホース型 15kg 39度
四叉型 6kg 72度
錨索の長さ
水深の3倍、4倍及び5倍
 錨の把駐力実験の模式図を図II-8.21に示す。
 
図II-8.21 錨の把駐力実験の模式図
 
(2)錨の把駐力実験結果
 錨の海上実験の資料に基づいて、錨が走錨している状態であると思われる個所における平均張力及び錨が海底土質に食い込んでいる状態であると思われる個所における平均張力を読みとり、これを錨重量または錨に取り付けた鎖の重量を加えた重量にて割って錨の把駐計数を求めた。
 次に、水深と索長とから索の引張り角度を求め、これを錨の爪の開き角度(Fleke角度)にて割った値を求めた。その結果を図II-8.22〜図II-8.24に示す。
 
イ 海底土質が砂である場合の錨の把駐係数
 図II-8.22は海底土質が砂の場合である。
 この図から、次のことがいえる。
(a)四ッ爪型
 四ッ爪型の場合は走錨とも食い込みとも判断できないが、今回の場合は走錨状態であると仮定した。
 把駐係数の面からは、索長が水深の3〜5倍の範囲では索長を長くすると把駐係数は大略3.2程度である。
(b)ストック型
 ストック型は、索長を水深の5倍程度にすべきであり、索長を4倍以下にすることは把駐係数の面から好ましくない。
 索長を水深の5倍にした場合、把駐係数は、走錨状態では2.5程度、食い込み状態では3.6程度である。
(c)ダンホース型
 ダンホース型は、海底土質が砂の場合には錨のシャンクに鎖を取り付けても把駐係数を向上させる効果を期待することができない。また、索長を水深の3〜5倍の範囲ではあまり把駐係数を向上させる効果は期待できない。
 なお、索長を水深の4〜5倍程度にした場合、錨と鎖を含めた重量に対しての把駐係数は、走錨状態では1.1程度、食い込み状態では1.9程度である。
 以上から、錨の把駐特性としては、索長を水深の5倍程度にし、把駐係数を見ると四ッ爪形、ストック型、そしてダンホース型の順であり、海底土質への食い込みを考慮するとストック型、四ッ爪形そしてダンホース型の順である。また、シャンクに鎖を取り付けても鎖の重量だけしか把駐力が増すだけで錨自身の把駐力を向上させる効果が現れていない。
 
ロ 海底土質が泥である場合の錨の把駐係数
a 走錨状態
 図II-8.23は海底土質が泥の場合で錨が走錨している状態における錨の把駐係数である。
 この図から、次のことがいえる。
(a)四ッ爪型
 四ッ爪型の錨の場合は、海底土質が砂であっても泥であっても錨の把駐係数は大差なく、索長を長くすると把駐係数は大略3.2程度である。
(b)ストック型
 ストック型の錨の場合でも海底土質が砂の場合と泥の場合とで大略同様であり、走錨時の把駐係数は2.5程度である。
(c)25kgダンホース型
 ダンホース型錨の場合、海底土質が砂から泥に変わったことにより走錨状態であっても錨が多少海底土質に食い込み把駐係数が高い値を示し、索長を水深の5倍程度にした場合、把駐係数は2.0である。シャンクに鎖を取り付けても、鎖の重量だけしか把駐力は増すだけで鎖自信の把駐力を向上させる効果は現れていない。
(d)15kgダンホース型
 15kgダンホース型の把駐係数は、ストック型及び25kgダンホース型よりも高い値を示す。その理由としては爪の開き角度によるものと考えられる。
 15kgダンホース型の錨は、索長を水深の4〜5倍程度にすることが望ましく、その時の把駐係数は2.8程度である。
 15kgダンホース型の錨に鎖を取り付けると多少把駐係数は向上するが、その範囲は索長が水深の4倍以下の場合だけであり、錨の把駐係数にとっては鎖の効果があるとはいえない。
b 食い込み状態
 図II-8.24は海底土質が泥の場合で錨が食い込んでいる状態における錨の把駐係数である。
 錨が海底土質に食い込んだ場合には、錨の把駐係数は当然の結果として高い値を示す。
 高くなる割合は、15kgダンホース型が特に顕著であり、続いてストック型、四ッ爪形そして25kgダンホース型である。
 以上から、錨の把駐係数の面からは、海底土質が砂よりも泥の方が有利である。このことは、一般的な常識と一致している。
 なお、錨の把駐係数を向上させるためには、爪の開き角度を小さくすると良さそうであるが、今回の海上実験の範囲からはその角度を選定することが困難である。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION