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3-3-2 海事関係のODA実績
海上通信網整備計画
<案件概要>:
1. 協力形態:無償資金協力
2. 協力金額:3億1,000万円
3. 交換公文署名日:1986年12月19日
4. 相手国実施機関:文化・通信省
5. プロジェクト概要:以下
 
 群島国であるカーボヴェルデでは、人の住む主要な島々は、200km間隔で点在している。そのため島間の交通手段及び生活物資の購入は一部小型飛行機によるものを除き、大部分が船舶による海上輸送で行われていることから、物資の安全かつ円滑な輸送は国民生活・経済により極めて重要となっている。しかも島々は漁業基地及び遠洋航海路の中継基地として重要な役割を果たしている。
 同国は、こうした地理的条件を活かした漁業振興及び周辺海域を航行する船舶に対する各種サービスの供与を通じて国家開発をめざしているものの、同国の海岸局の無線機は1960年代の旧式なものである等、必要な海上通信網の整備は立ち遅れていた。本プロジェクトは、既存の海上無線設備を近代化により、遠洋及び沿岸航行船からの通信に対応するとともに、航海の安全確保を目的として実施された。
 
<評価概要>
(1)プロジェクトの維持・管理状況
 今回の評価では、サオ・ヴィセンテ海岸センター局と同島モンテベルデ(海抜750m)にある無線中継所を対象に実施した。
 市内より5km離れた所に位置する海岸センター局は、独立前に建設されたものとは思えないほどきれいに保守されている。オペレーションルームには我が国から供与された機材が整然と配置されており、3人のオペレーターと技術者が、無線の応答、機材のチェック等の作業を行っている。同室はオペレーター8人、技術者7人が3グループに分かれて6時間交代勤務の体制が取られている。
 センター所長によれば、これまでのところ供与機材が故障したことはなく、すべて順調に稼働しているとのことである。また、供与機材のスペアーパーツも十分ストックされているとのことであった。
 また、モンテベルデ中継所には、海上無線中継機以外に電報、電話、TELEX等の一連の中継用機材が並んでおり、これらは技術者一名が一週間交替で勤務している。
 いずれの施設においても、供与機材は順調に稼働しており、スペアーパーツも十分確保されていることから、同局員のスタッフの保守、運用、管理レベルに全く問題ないものと思われる。
(2)プロジェクト選定・形成の適正度
 国民の生活物資の大部分を船舶による海上輸送で行われていること、遠洋航路の中継基地になっている等を考慮すれば、海上安全確保と海上サービスの改善を図ることを目的とした本プロジェクトの選定・形成は十分妥当なものであったということができる。
(3)当初目的の達成度及び効果
 本プロジェクトの目的は、既存の海上無線機を近代化し、遠洋・沿岸航海船からの無線サービスに対応できるようにすることであった。本件の実現によってこれまで以上に広範囲にわたっての無線通信が可能となったことから、本プロジェクトの目的は十分達成されたものと思われる。(1992年1月、在セネガル日本大使館)
 
零細漁業開発計画
<案件概要>
1. 援助形態:無償資金協力
2. 協力金額(億円):453億円
3. E/N署名日:1987年10月15日
4. 相手国実施機関:漁業開発研究公社(INDP)
5. 協力内容:カーボヴェルデの零細漁業の開発のため、漁業生産機材、流通機材、教育用機材等を供与。
<評価要旨>
(1)案件の維持・管理状況
 供与機材は有効に使用されており、維持・管理状況は良好である。機材は比較的丁寧に扱われ、またワークショップでの修理もこまめに行われているので機材の使用の仕方としては問題ないと思われる。しかし、財政の逼迫から消耗品以外の部品をストックする余裕はほとんどなく、早急な修理が必要な場合でも部品類を日本に発注すると入手までに3ヵ月から6ヵ月もかかる等、部品類の供給体制には問題が残っている。
(2)案件の選定・形成の適正度
 船外機取付けにより動力化された漁船での漁獲、新しい漁具の供与による各諸島の零細漁民の漁法の向上・活性化、漁船を使っての新漁法の開発・研修等の実績から見ると、本供与はカーボヴェルデの零細漁民の向上のために適正であった。
(3)当初目的の達成度及び効果
 零細漁業における1991年の動力化率は46%に上昇しており、また1991年の漁獲高は1987年(供与実施前)に比べ22%増加している。本供与の当初目的は完全に達成されているとはいえないが、INDPの漁民教育・研修による漁法・漁具の向上、動力化された漁船のメンテナンス等が零細漁民に与えた効果は大きいと思われる。
(4)WID(開発における女性)への配慮
 供与漁具のうち、保冷ボックスは、捕った魚を市場に運搬する上で、女性に非常に重宝がられている。
(5)今後必要とされるフォローアップないしアフターケア
 維持・管理体制が比較的整っているにもかかわらず、部品調達に要する時間・コストの両面から供与機材の継続的使用に支障が生じる可能性もあり、今後部品供与を考慮する必要がある。(1993年10月、在セネガル日本大使館)
 
零細漁業開発計画
<プロジェクト概要>
1. 援助形態:無償資金協力
2. 協力年度:1991年度
3. 協力金額:6.80億円
4. 相手国実施機関:地方開発水産省
5. 協力内容:水場・準備岸壁、防波堤壁、荷捌き棟、漁民用漁具倉庫棟の建設により、国際機関(アフリカ開発銀行等)の協調融資により建設された冷凍施設をより有効に活用できるようにして、操業の効率化と安全性の向上を確保する。これにより、零細漁業が近代化されるとともに国民への動物性タンパク質の安定供給を向上する。
 
<評価要旨>
(1)目標達成度
 プライア漁港の完成により零細漁業の安定性が向上し、国際機関の協調融資により建設された冷凍設備も恒常的に使われるようになった。また、国民への安定した動物性タンパク質供給も可能になった。
(2)インパクト
 製氷施設が十分に活用されることで、動力付き小型漁船の操業範囲が拡大するとともに、水揚げ高もあがり零細漁業が活性化した。国民への動物性タンパク質供給量も向上した。
(3)妥当性
 国際機関の協調融資による冷凍設備が整備されることを前提としており、実際に本計画が同施設の有効利用も促したことや、政府、零細漁民、日本側の要望がそれぞれ合致していることから、プロジェクト選定は妥当であった。
(4)自立発展性
 プライア漁港の岸壁、事務所、漁具倉庫、防波堤は、それぞれ常に利用され運営状態はよく、同漁港への入船料は入船する度に事務所で運営委員会が徴収している。徴収金は施設の修理、維持に使われ自主管理されている。
(5)今後必要とされるフォローアップ
 網等の漁具を修理、手入れできる作業場があると、さらに利用度の高い漁港となることが期待できる。
(6)将来他のプロジェクトを実施する場合に教訓として活かされるべき事項
 本計画は国際機関の協調融資による冷凍設備が整備されることを前提としていたにもかかわらず、実際は同設備の整備は大幅に遅れ、本計画完成後も暫く設備は利用できなかった。今後協調案件を実施する場合は、協調案件相手の信頼性を十分に調査するとともに、最悪の場合、相手が頓挫してもある程度の効果が発現する計画を策定する必要がある。(1998年3月、在セネガル大使館)
 
カーボヴェルデ島嶼間輸送船供与計画
<プロジェクト概要>
1. 援助形態:無償資金協力
2. 協力年度:1992年度
3. 協力金額:7.79億円
4. 相手国実施機関:アルカヴェルデ(船舶公社)
5. 協力の内容:群島国であるカーボヴェルデの島嶼間の貨物輸送のため、載荷重量約500トンの輸送船を供与
 
<評価要旨>
(1)案件の維持・管理状況
 アルカヴェルデでは、機関、船体の保守・整備は技術者が、中規模以上の修理・点検は造船所において実施しており、1994年11月、1997年1月の造船所における船底検査は、塗装、板金とも異常なしとの結果が報告されている。一般の交換部品についても欧州諸国から購入が可能であるため、維持管理上の問題は発生していない。
(2)案件の選定・形成の適正度
 カーボヴェルデでは、地方分権化が国家開発計画の目標の一つに掲げられており、本輸送船供与は、島民への食糧・日用品の定期的供給による島民の生活安定化と島嶼間格差の緩和に寄与し、さらには農業機器・漁具の供給、観光開発・社会基盤整備のための資機材の搬入等、島嶼間輸送を強化することによる地方振興、経済発展への貢献も期待され、本プロジェクトの選定・形成は適正であった。
(3)当初目的の達成度及び効果
 輸送船の供与により、老朽化した別の輸送船が廃船となり、維持管理費削減、輸送力強化、輸送効率向上等の目標が達成された。
 また、カーボヴェルデでは食糧自給が不可能であるが、本輸送船により援助や輸入された食糧の各島への輸送が迅速且つ増強され、島民の生活基盤が向上したとともに、外国姿本の新たな参入により、ホテル建設、軽工業、中規模製造業等の分野の振興も見られ、本プロジェクトの効果は徐々に現れ始めている。
(4)今後必要とされるフォローアップないしアフターケア
 現在のところ問題は生じていないが、今後の課題として、欧州で調達できない特殊な部品の管理・調達が挙げられる。
(5)将来他のプロジェクトを実施する場合に教訓として活かされるべき事項
 本プロジェクトでは、運搬船を供与する前後に技術者の研修を行っていることが、運搬船の良好な維持管理に結びついている。機材供与をする場合には、派遣専門家による指導を含め、技術者の訓練を十分に行うことができれば、中・長期的な維持管理問題には、比較的容易に対応できるものと思われる。(1993年、在セネガル日本大使館)
 
カーボヴェルデの「プライア漁港拡張計画(1/2期)」に対する無償資金協力
<案件概要>
1. 援助形態:無償資金協力
2. 協力金額:9.8億円
3. E/N署名日:2001年12月28日
4. 協力内容:以下
(1)日本政府は、カーボヴェルデ共和国政府に対し、「プライア漁港建設計画(1/2期)(Projet d'Extension du Port de Peche de Praia)」の実施に資することを目的として、9.8億円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が2001年12月28日、セネガル共和国のダカールにおいて、古屋昭彦在カーボヴェルデ大使(セネガルにて兼任)と先方ラウル・ジョルジュ・ヴェラ・クルズ・バルボサ在セネガル・カーボヴェルデ大使(Raul Jorge Vera Cruz Barbosa, Ambassadeur de la Republique du Cap-Vert au Senegal)との間で行われた。
(2)カーボヴェルデでは、水産業は外貨獲得源として重要な産業であり、また、国民への動物性蛋白源の供給源として重要視されている。同国の漁業インフラの整備は遅れているため、現在、水産物の水揚げは、主に水揚げ施設や製氷施設が整備されたミンデロ漁港及びプライア漁港で行われている。中でも、プライア漁港は後背に国内最大の人口を有するプライア市を抱え、年々水揚げ量は増加しており、同国水産物の流通拠点として機能している。このため、プライア漁港岸壁では水揚作業、氷、水等の補給、休息等が同時に行われるため、漁船が3重から5重に係留されており、水揚げ作業、補給の待ち時間の増加による各作業の効率低下を招いている。また、既存の漁港施設も存在するが増大する漁獲量に対応しきれておらず、岸壁、通路等で漁獲物の取引、漁具の修理等が行われ、漁港構内が非常に混雑するとともに衛生上の問題も生じている。
 このような状況の下、同国政府はプライア漁港における水産物流通の効率化を図ることを目的とする「プライア漁港拡張計画(1/2期)」を策定し、この計画の実施のための防波堤、岸壁、荷捌き施設等の拡大に必要な資金につき、日本政府に対し、無償資金協力を要請してきたものである。
 この計画の実施により、プライア漁港における漁獲物の効率的な流通が可能となり同国の漁業振興が図られるとともに、同国国民に品質のよい水産物が供給されることが期待される。
 
上2枚<ミンデロ漁港>
 
上2枚<プライア漁港拡張計画により整備中のプライア漁港>







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