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2-3-2 海事関係のODA実績
 従来はインフラと機材整備中心の開発方針であったが、今後は水産資源管理及び人材育成を重視する方針である。漁業政策でも、最優先課題は危機にある資源の管理強化とし、フレームワーク・ペーパーと緊急行動計画を作成して、既に零細漁業の規制法も施行済みである。今後は、増産からa)資源管理(研究・調査及び規制)、b)付加価値向上、c)人材育成に転換を図る。零細漁業振興については、生産の増加から、水産物の質の向上、生産ロス(損失)の削減、伝統的魚加工業の振興、流通の整備等に焦点を移している。
 資源管理、資源開発(既存資源の加工改善等)、人材開発を柱とした資源開発・管理のための長期プログラムを作成する計画であるが、自国の漁業資源を明確に把握するための専門的調査を実施する必要性が認識されている。しかしながら、省内に適当なレベルの専門家及び財源が不足していることから、国内・海外の専門機関からの技術・資金援助が必要と思われる。
 
セネガル零細漁業振興計画1987度、1993度
(1)プロジェクトの概要
 ミシラ村はセネガル南西部ファティック州に属し、首都ダカールの南東約210kmにある州都ファティックから南に約60kmに位置する大西洋に望む漁村である。同村に水揚げされる漁獲量は全国漁獲量の0.45%である(1991年)。1987年計画当時、ミシラ村の状況は概略次のようであった。人口は約1,300人、電気、水道、通信等は未整備で、幹線へのアクセス道路は未整備で雨期には通行に支障をきたした。飲料水は塩分が多く含まれる浅井戸に依存していた。1980年以来漁業の発展がみられ、周辺サルーン諸島の漁船や、移動ピローグ漁船の集積及び補給基地としても利用されていた。
 本計画はミシラに漁業支援のためのセンターを建設し、セネガル南部の漁業拠点の一つとすることをめざしたものであった。日本政府は1987年度計画によってセンターの建設のため資金協力を行い、またその運営のための機材供与と技術協力を実施した。1993年度計画ではセンターの老朽設備の修理改善と漁業機材の新規購入を行い、技術協力を継続した。
 
<1987年計画の概要>
1. 資金形態:無償
2. 交換公文締結日:1988年4月22日
3. 供与額:7.71億円
4. 引き渡し日:1989年3月
5. 先方関係機関:漁業・海運省
 
(a)目的
・漁業センター建設による産物流通網の改善
・漁具資材・試験機材導入による零細漁業生産の増加と生産物の品質向上
・地域の経済開発と漁民の生活水準改善
・国民への動物性タンパク質の供給増加
(b)協力内容
施設建設:
管理棟、ワークショップ、網修理場、薫製棟・乾燥場、製氷施設棟、桟橋、道路・橋梁
機材供与:
製氷機(2)、冷蔵庫(2)、発電機(4)、ピックアップ(1)、保冷車(1)、ワークショップ機材、貯氷コンテナー1トン(5)、加工機材、漁具試験船(6)他
関連技術協力:
専門家(2名)、協力隊(1名)
 
<1993年計画の概要>
1. 資金形態:無償
2. 交換公文締結日:1994年5月26日
3. 供与額:1.62億円
4. 引き渡し日:1995年3月
5. 先方関係機関:漁業・海運省
 
(a)目的
・ミシラ漁業センターの施設・設備の維持
・地域漁民・加工人等への指導・支援活動の補充・拡充
・地域の漁業振興
(b)協力内容
資機材供与:
製氷機、発電機用予備品(1)、給水車及び貯水タンク(1)、カヌー型FRP漁船(8)、ディーゼル船外機(1)、漁具資材(1)、加工用機器(1)、航海・漁労用器具・安全器具(1)、防熱コンテナー(12)、保冷車(1)
関連技術協力:
専門家2名、協力隊1名
 
(2)漁業センターの運営について
 1987年度計画はセンターを「開放型」の施設と位置づけている。それによれば、センターが生産・流通に関与することは最小限にとどめ、「基盤施設や加工場を漁民、加工人、仲買人に提供」し、彼らによる生産・流通拡大を支援する。センターは彼らへの援助事業(技術指導、施設提供)にみずからの役割を限定する。民間が提供できない一部サービス(修理・部品と漁具の販売、既存ルートにのらない魚種の流通)は例外的にセンターが実施するとしている。1987年度計画は同時に「センター自身の収益で、その運営を賄える計画とすることが必要である」と述べている。上記2点は、セネガルが実施し始めていた構造調整政策、具体的には緊縮財政、公的部門の縮小と民間活力の支援という政策にそったものであった。
 1993年度計画はこの方針が具体化していないことを指摘し、センターの開放施設型機関への早急な転換と、仲買業務からの撤退、職員数の半減による独立採算達成という劇的な措置を提案している。
 財政自立の達成によって、センターの公的目的と、経営体としての性格の間に矛盾が顕在化してきた。具体的には、民間支援の弱まり、民業との競合、経営の透明性の3点である。
(a)民間支援の弱まり
 施設の開放、民間支援の弱まりは、センター経営の好転と裏腹の現象である。理由は、経営の改善努力は、利益部門への努力の集中を求めるが、利益のでない外部向けサービスである研修、普及等の活動を刺激するものではないからである。その結果、研修、普及は日本の専門家に任せてしまう現象がみられる。しかし、開放型からの乖離をセンター幹部の責任に帰すことはできないだろう。財政自立(補助金の打ち切り)は政府の方針であり、センターがこれを実現しようとすれば、利益のあがる部門に資源を移転するのは当然であろう。
(b)民間事業との競合
 センターの「財政自立」は、主要スタッフ(公務員)賃金の政府負担と、日本の援助に支えられ、かつ納税義務がないという特権に支えられている。こうした特権は、事業体が民間の提供しえない公共財を提供することと引き換えにあたえられているものである。センターが自らの基盤施設や加工場を漁民、加工人、仲買人に提供するといういわば公共財提供の任務を十分果たさず、営利活動を柱とするなら、一般漁民や民間流通業者と不当に競合し、圧迫している可能性もある。
(c)経営の透明性
 透明性現行の「財政自立」方式は、政府の補助金打ち切りと引き換えに、幹部に利益を自由に処分できる権利をあたえているフシがある。つまり幹部に経営改善のインセンティブはあたえるものの、幹部による利益配分、公益目的の部門の放棄、住民の「搾取」等の危険をともなうことも考えられる。
 
漁業調査船建造計画
<案件概要>
1. 援助形態:無償資金協力
2. 協力金額:7.12億円
3. 交換公文締結日:2002年2月4日
4. 協力内容:施設機材提供
 
カオラック中央魚市場建設計画
<案件概要>
1. 援助形態:無償資金協力
2. 協力金額:7.12億円
3. 署名日:2002年2月4日
4. 協力内容:以下
 
 セネガルでは、漁業は国民への重要な動物性タンパク質の供給源であるのみならず、雇用機会の提供等同国経済を支える重要な産業であり、漁業の開発・振興が国家開発計画の優先項目の一つとなっている。カオラックは、セネガル第二の都市で、周辺人口を合わせると110万人を擁する大消費地となっている。また、内陸部及び隣国ガンビア等への交通の要所となっており、水産物の中継市場としても重要な機能を果たしている。
 しかし、既存の魚市場には、日中の最高気温が40度を超すこともある過酷な気候条件にも拘わらず日除けや施氷といった最小限の鮮度維持手段さえない上、排水設備は未整備であり、かつ、ハエが大量に発生している等劣悪な衛生状況になっている。このような環境の中、水産物の劣化速度は加速され水産物に対する需要があっても食用に適する鮮魚が住民に行き届かない状況となっている。
 このような状況の下、セネガル政府は、同国内陸部及びカオラック州内に流通する水産物の品質劣化防止、鮮度保持の向上及び水産物の安定供給を目的とする「カオラック中央魚市場建設計画」を策定し、この計画のための水産流通施設、関係機材の購入に必要な資金につき、我が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
 この計画の実施により、カオラック周辺及びセネガル内陸部に新鮮な水産物が安定的に供給されることが期待される。
 
2-3-3 既供与船舶の現状及び新造船需要動向
現地調査実施機関:ジェトロ・パリ・センター
現地調査実施期間:2003年11月17日〜26日(セネガル、カーボヴェルデ、ガンビア3カ国)
 セネガルに対しては、我が国政府開発援助(ODA)により1983年度案件として漁業調査船「LOUIS SAUGER」及び1999年度案件として漁業調査船「ITAF DEME」(2000年9月竣工)が供与されており、当該船舶については、CRODT(国立ダカール・チラロエ海洋調査研究所)が管理・運航を行っている。CRODTは、基本的に1隻の漁業調査船を運航する能力(人員、予算)しか有しておらず、最新の「ITAF DEME」も「LOUIS SAUGER」の代替船として、大多数の船員を引き継いで運航していることから、セネガルにおける将来の造船関係ODA案件としては、少なくとも水産無償に関しては当面実現の可能性は低いものと思われる。
 また、かつてドイツ政府が供与したフェリー「ジョーラ号」は、首都ダカールと南部のカザマンスを結ぶ貨客船として重要な役割を担っていたが、2002年9月に過載により沈没した。本船の代替船については既にドイツが中古船を供与する方向で協議が行われている模様。
 
(ダカール港海軍基地にて)
<旧漁業調査船「LOUIS SAUGER」号:係留中、廃船予定>
 
(ダカール港海軍基地にて)
<漁業調査船「ITAF DEME」号:係留中>







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