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2-3 日本政府によるODA実績
2-3-1 日本の援助実績
 日本政府は、セネガルが西アフリカの中心国の一つとして政治的に大きな発言力を有しており、仏語圏アフリカ諸国の中で中心的な役割を果たしていること、1976年以来複数政党制を採用し、アフリカ有数の民主主義国家として政情が比較的安定していること(2000年3月の大統領選挙でも平穏裡に政権交代が行われた)、1979年より世界銀行・国際通貨基金(IMF)の支援の下、構造調整・経済再建に積極的に取り組んでいること、人口増加率の高さ、砂漠化等多くの開発課題を抱えており、援助需要が大きいこと、日本政府との関係も緊密で日本政府の対西アフリカ外交の中心国の一つであること、具体的な開発目標を掲げ、経済社会開発のための主体性(オーナーシップ)を持って行っているセネガルの開発政策は、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)新開発戦略の趣旨にも合致し、セネガルにおいて新開発戦略の実施を重点的に支援しうる状況にあること等から、援助の重点国の一つとして位置付けている。
 日本政府は、セネガルにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び1995年3月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議、2000年6月のプロジェクト確認調査におけるセネガル側との政策対話を踏まえ、次の分野を重点分野として援助を実施していく方針である。
 
(1)生活基盤の改善
(a)生活用水
 セネガルでは安全な水へのアクセスが不足しているので、衛生状況の改善、女性の水汲み労働の軽減のため、地下水開発等による生活用水の確保を支援する。特に村落給水分野でのプロジェクトの可能性を検討する。
(b)教育
 基礎教育の遅れが深刻なセネガルにおいて、ハード・ソフト両面から基礎教育の充実に向けて協力を実施する。
(c)基礎的保健・医療
 プライマリー・ヘルス・ケア、公衆衛生等の基礎的保健・医療体制の整備を支援するとともに、ポリオ、エイズ等の感染症対策の協力も検討する。
(2)環境(砂漠化防止)
 砂漠化の進行、土壌の劣化が深刻な問題となっていることから、地域住民が主体となって村落資源の利用・管理を行う村落林業・村落振興の普及モデル開発を目的とした「総合村落林業開発計画」を1999年度から実施中である。
(3)農水産業
 国土の砂漠化、旱魃等の厳しい条件の下、輸出用換金作物のモノカルチャー型の農業生産を行っており、穀物の対外依存度が非常に高くなっている。従って、食糧作物の生産性向上のための食糧増産援助、灌漑施設整備等の協力を実施する。また、水産品が最大の輸出品目となっており、食料供給面においても重要であることから、零細漁業の振興等を支援する。
 
 無償資金協力については、農業分野、水産分野、水供給分野、保健・医療分野、教育分野等の基礎生活分野を中心に幅広く協力を行っている。
 研修員受入、青年海外協力隊派遣等の技術協力については、農林水産業、保健・医療等の分野を中心に、開発調査については、社会経済基盤等の分野を中心に実施している。また、同国の技能労働者育成に貢献するため、1983年度から1992年度に「職業訓練センタープロジェクト」が実施され、1999年度からは第2期の「職業訓練センター拡充計画」として実施中である。
 2000年3月には、西アフリカ地域内に於ける安全な水の確保をテーマとするセミナーを実施した。
 有償資金協力については、セネガルが既に債務削減措置の適用を受けている上、重債務貧困国(HIPC)として、ケルン・サミットでの合意に基づいて成立した「拡大HIPCイニシアティブ」に基づく債務削減措置が適用されることとなっていることから、新規の円借款による協力は困難である。また、日本政府は、同国の構造調整努力を支援するため、1999年度までに合計121億円の円借款及び合計130億円のノン・プロジェクト無償資金協力を供与した。1999年3月には、4億円の環境・社会開発セクター・プログラム無償資金協力を実施した。
 その他、緊急援助分野では、1999年の洪水災害に対して、緊急援助物資(1,787万円相当)を供与した。
 同国政権は、「貧困削減戦略ペーパー(PRSP: Poverty Reduction Strategy Paper)」(暫定版)を作成済みであるところ、今後は、完全版のPRSP作成に向けて、日本政府としても積極的に貢献していく方針。
 
日本のODA実績
(単位:百万ドル)
贈与 政府貸付
無償資金協力 技術協力 支出総額 支出純額 合計
1996年 51.54 7.12 58.66 0.69 -0.67 57.99
1997年 18.25 7.88 26.13 0.72 -0.74 25.39
1998年 25.67 8.50 34.17 0.19 -0.58 33.59
1999年 50.25 10.16 60.41 0.44 -1.31 59.10
2000年 38.14 13.45 51.60 -3.10 48.49
2001年 12.17 14.15 26.32 -3.90 22.41
出典:「日本政府の政府開発援助、セネガル」
 
2002年度までの累計
・有償資金協力:178億8,400万円(交換公文ベース)
・無償資金協力:832億円(交換公文ベース)
・技術協力:208億8,200万円(JICA実績ベース)
 
年度別・形態別実績
年度 無償資金協力 技術協力
90年度までの
累計
347.89億円 77.37億円
研修員受け入れ 168人
専門家派遣 51人
調査団派遣 406人
協力隊派遣 185人
機材供与 853.2百万円
プロジェクト技術協力 1件
開発調査 7件
91年 51.07億円
苗木育成場整備計画/地方給水施設改善計画/小学校教室建設計画/ノンプロジェクト援助/食糧援助/食糧増産援助/国立教育開発研究所への印刷機材/草の根無償
7.26億円
研修員受け入れ 21人
専門家派遣 2人
調査団派遣 32人
協力隊派遣 32人
機材供与 42.4百万円
プロジェクト技術協力 1件
開発調査 2件
92年 45.52億円
小学校教室建設計画/地方給水施設改善計画/グェルタペ市場改修計画/村落給水計画/地方都市給水網整備計画/ダンテック病院医療機材整備計画/沿岸漁業振興計画/食糧援助/食糧増産援助/草の根無償
10.71億円
研修員受け入れ 24人
専門家派遣 5人
調査団派遣 64人
協力隊派遣 16人
機材供与 183.7百万円
プロジェクト技術協力 1件
開発調査 1件
93年 56.64億円
デビ地区灌漑改修計画/地方都市給水網整備計画/地方給水施設整備計画/零細漁業振興計画/ノンプロジェクト援助/食糧援助/食糧増産援助/草の根無償
9.95億円
研修員受け入れ 24人
専門家派遣 1人
調査団派遣 59人
協力隊派遣 24人
機材供与 35.6百万円
開発調査 2件
94年 29.57億円
小学校教室建設計画/地方都市給水網整備計画/デビ地区灌漑改修計画/地方給水施設整備計画/食糧援助/食糧増産援助/草の根無償
9.79億円
研修員受け入れ 42人
専門家派遣 3人
調査団派遣 81人
協力隊派遣 29人
機材供与 30.5百万円
開発調査 2件
95年 60.25億円
地方給水施設整備計画/地方給水施設拡充計画/地方都市給水網整備計画/苗木育成場整備計画/デビ地区灌漑改修計画/小学校教室建設計画/ノンプロジェクト援助/食糧援助/食糧増産援助/国立
7.30億円
研修員受け入れ 52人
専門家派遣 4人
調査団派遣 31人
協力隊派遣 15人
機材供与 50.6百万円
開発調査 2件
96年 31.22億円
小学校教室建設計画/地方給水施設拡充計画/苗木育成場整備計画/食糧増産援助/食糧援助/草の根無償
7.33億円
研修員受け入れ 51人
専門家派遣 1人
調査団派遣 28人
機材供与 60.0百万円
協力隊派遣 25人
開発調査 1件
97年 51.55億円
小学校教室建設計画/地方給水施設拡充計画/小学校教室建設計画/地方村落給水計画/ノンプロジェクト援助/ダカール中央卸売市場拡充計画/草の根無償/食糧援助/食糧増産援助
10.47億円
研修員受け入れ 54人
専門家派遣 1人
調査団派遣 71人
協力隊派遣 29人
機材供与 67.5百万円
開発調査 1件
98年 31.08億円
ティエス地方病院整備計画/ノンプロジェクト無償/小学校教室建設計画/食糧援助/食糧増産援助/草の根無償/第三次苗木育成場整備計画/地方村落給水計画/ダカール・ジルベル・カオラック文化センター
9.51億円
研修員受け入れ 48人
専門家派遣 8人
調査団派遣 73人
協力隊派遣 32人
機材供与 62.4百万円
開発調査 6件
99年 45.08億円
小学校教室建設計画/地方村落給水計画/ティエス地方病院整備計画/漁業調査船建造計画/食糧援助/食糧増産援助/国立ダニエル・ソラノ劇場への音響視聴覚機材/草の根無償
12.87億円
研修員受け入れ 72人
専門家派遣 18人
調査団派遣 42人
協力隊派遣 24人
機材供与 195.6百万円
プロジェクト技術協力 2件
開発調査 2件
2000年 3,814万ドル
母子保健強化・マラリア対策計画/沿岸地域植林計画/カヤール水産センター建設計画/食糧援助/食糧増産援助/柔道器材
1,345万ドル
プロジェクト技術協力 4件
2001年 1,217万ドル
沿岸地域植林計画/第四次小学校教室建設計画/国立保健医療・社会開発学校整備計画/カオラック中央魚市場建設計画/食糧援助/食糧増産援助/柔道器材
1,415万ドル
注)「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力については交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベース
 
セネガルの援助受入機関
 セネガルの援助受入窓口は、資金協力や開発調査については経済・大蔵・計画省が担当し、技術協力については国家近代化省が担当している。ただし、プロジェクト方式技術協力の要請については経済・大蔵・計画省の審査を経て、国家近代化省から発出される。
 経済・大蔵・計画省については、経済協力局にアジア・カナダ・米国担当官を配置し、同担当官が責任者となって日本からの援助受入に関する諸手続きを行うとともに、関係省庁間の調整を行っている。一方、国家近代化省は、同国公務員のレベルアップを図るための機関であり、同目的達成のため、日本の技術協力を活用している。
 援助受入窓口機関及び実施機関を含め、同国における政府機関の組織制度整備については、世界銀行及びIMFの支援の下で「良い統治プログラム(Good Governance Program)」を実施中であり、これにより対外競争力強化及び外国資本導入拡大をめざしている。具体的には、a)行政の効率改善、b)経済運営能力の向上、c)司法・立法制度改善、d)NGOをはじめとする市民社会支援、e)地方分権化の推進を戦略として掲げている。
 特に、同国政府は、地方分権化により草の根レベルで持続性のある開発を推進していくには、現地ニーズを汲み取り、プロジェクトのオーナーシップを根づかせることが重要であることを認識し、「住民に近い政府」作り並びに市民団体及びNGO等の強化を図る方針である。地方分権化による開発を進めるに当たって、地方自治体の組織強化は必須であり、案件形成・計画策定能力、実施・運営能力等の拡充が必要である。
 両省とも、責任ある立場には優れたテクノクラートが配置されており、総じて適切な対応がとられていると評価でき、また、日本側援助関係者とも友好な関係が維持されている。ただし、地方分権化については、様々なレベルでの組織強化が計画されているものの、どこまで権限を委譲するのか、また、コミュニティによる村落開発をどのように支援するのか、具体策は明らかにされていない。
 
援助の案件形成・計画策定体制
 案件形成については、セネガル側で独自に案件形成し、要請を上げてくるケースがあるものの、実際にプロジェクトとして審査の対象となるレベルのものは少なく、日本の専門家、コンサルタント等の支援に頼るところが大きい。また、案件形成を行うセネガル側の実施機関において、日本の援助システムを把握しているスタッフの数が限られている。しかしながら、徐々に優良な案件をセネガル側が独自に形成してくるケースも見られ、セネガル側に案件形成能力が育ちつつあることも確かである。
 また、現在の日本側のシステムでは、日本から派遣される案件形成及び基本設計調査等の調査団に対してセネガル側関係者の参加の度合いが低い。今後は、プロジェクト形成調査、事前調査、開発調査、基本設計調査等、様々な案件形成及び計画策定のための調査団が派遣された場合、これらの調査プロセスにセネガル側が一層深く関わるよう配慮、すべきである。これにより、案件の形成から実施に至るまでの期間に、対象案件の内容が、現地の実状やニーズに適合しなくなってしまう可能性を最小限に止めることが可能となる。セネガル側には、政府機関を含め、NGO等優秀な人材が育っていることから、案件形成調査及び基本設計調査における同国側の関与の頻度あるいはレベルを上げ、理解とコンセンサスを得ながら進めていくことが必要である。







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