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(7)自由討議
 各国からの報告が一巡した後で、フィリピンのMs.Soniaの司会により、本会議の議題についての追加の質問、確認などの質疑・討論が行われた。議題とされた項目は以下のとおり。
1)内航船の解撤の問題
2)河川と沿岸域を航行する船舶に対する規制と、探索救出オペレーションと犯罪取締りの問題
3)河川を利用した国際間航行の船舶規制に関する問題
討議、意見交換及び情報の要旨は次のとおり。
●小型船については各国統一した規則・規制はないと言える。
●海事関連を管轄する組織図についての疑問点や詳細情報は、各国の参加者が担当する。
●リサイクル政策の観点から、日本における古い船舶の市場からの撤退、船舶の解体についての質問があった。これについて、国土交通省の石田課長から、次のような説明があった。
・船舶のリサイクルは、大型船と小型船で異なる。
・大型船については、外航船ということで、国際条約で取り決めることになっており、IMOでもシップリサイクリングを取り組んでいる。解体はインドなどのアジア諸国で行っている。しかし、解体が環境に悪影響を及ぼしたり、ワーカーが劣悪な環境で働いているなどの問題もあり、国際的に処理体制の構築が必要と言われている。国際機関で議論が行われているが、IMOでは、建造するときに解体を考えて、船にどのような有害物質が含まれているかリストを作成し、購入した船会社がそのリストを管理する、また中古船として売却する際にはそのリストも購入者に渡して、最終的に解体する時に、その船舶にどのような物質が含まれているか明確にわかるようにする、などといった対策を検討している。また、政府、船主などのそれぞれの責任分担についても協議している。バーゼル条約では、有害物質が国境を越えてはならないと規定されているので、この規定に沿って話し合いが行われている。
・小型船については、日本では強化プラスチック(FRP)船が問題になっている。FRP船は耐久性が高いが、処理できない物質が含まれているため。国土交通省が中心となって、リサイクル、リユースの観点から新しい処理方法を研究している。FRPはセメントの原材料になることが研究の結果、判明している。小型のFRP船を切断、ブロック化したものを粉砕し、それをセメントの焼却炉に入れて処理することを想定している。数年以内にFRPの処理ができるかどうか、結論が出る見込み。
●タイは機構改革により、以前の港湾局は、海事局と名称がかわった。
●ベトナムには、海事管理が、外洋と国内水路を担当する2つの組織に分かれている。どこを外洋の基点とするか、2つの組織の管轄範囲が不透明な部分もある。これについては、他の参加国では同様の問題は見られなかった。唯一日本では、水上警察と海上保安庁があり、構内岸壁近くは水上警察、遠い場合は海上保安庁が管轄している。河川の場合は、かつては、海に一番近い橋を境に、内陸側は建設省、外洋側は運輸省が管轄していたが、完璧な役割分担は難しかった。現在では、運輸省と建設省が統合して、国土交通省となった。
●タイからは、東南アジア地域のマルチ・モーダルトランスポートの将来的な発展を鑑み、内航船の規則を統一してはどうかという提案があった。
●シンガポールの参加者から、シンガポールにおける海事関連の政策、技術、IT、トレーニング、船舶輸送などについて、下記のような説明があった。
・海事港湾局(MPA: Maritime Port Authority of Singapore)は、港湾局(PSA: Port of Singapore Authority)の民営化に先立ち、国家海事局(NMB: National Maritime Board)の海事部と、港湾局の港湾部が合併して1996年に設立された。NMBは、船員のトレーニングと福利厚生を管轄していた。
・合併により、MPAは港湾における活動、港湾での労働従事者へのトレーニング、海運、海上汚染などの規則を管轄する政府機関となった。
・シンガポールは600平方キロメートルの小さな島国で、他の海洋国と異なる特徴を持つ。シンガポールには内陸水路はない。国内航行は、港湾内の行き来を指す。港湾の外に出ると、すぐに近隣諸国の領海あるいは国際水域に入ってしまい、そこでは国際航行の規則が適用される。
・シンガポールは国際シーレーンの交差地に位置している。シンガポールの港湾には、常時800籍程度の船舶が停泊している。平均して、年間14万件程度の寄航がある(複数回寄航する船もある)。従って、シンガポールにとって、海難非常に大きな事項である。
・シンガポールはIMOの主な条約はほとんど批准している。ABS、BV、CCS、DNV、GL、LR、NK、KR、RINAの9つの船級協会全てが、シンガポール政府に変わって船舶を検査し、証明書を発行する権限を持っている。シンガポールは内航船サイズ以下の船や、乗客船についても規則がある。
・シンガポールは、IMOコードを積極的に取り入れていく。船主に対しては、早い時期にISPSに沿うよう指導している。ABS、BV、CCS、DNV、GL、LR、NK、KRの8つの船級協会は、ISPSコードに基づく、シンガポールの認定安全機関(RSO: Recognised Security Organisations)として認められている。すでに1籍が認定されている。2004年1月から、ポートステートコントロール担当官は、外国籍船を検査する際、ISPSコードヘの準拠状況をチェックリストに加えることになっている。準拠していない船の船長には、なるべく早く準拠するよう要請し、2004年7月1日からは準拠していない船舶はシンガポールの港湾に入港できなくなる。
●国内及び内陸水路の安全規制についての討議の中で出てきた情報:IMOは、バンコク、ムンバイ、テヘランでセミナーを実施した後、1997年に「内航船の安全規制」を出版した。
●最後にインドネシアの参加者から、日本海上保安庁の設立の経緯、水上警察と海上保安庁の機能の分担について説明を求めた。
 
11月20日(木)
(8)海上安全と海洋環境保護に関する情報交換
 国土交通省の石田課長の司会のもと、次の項目について各国の動向の紹介や意見交換がされた。
a. 重油(Heavy Grades Oil)を運搬する小型タンカー(600〜5000DWT)二重船殼規制
b. AFS条約
c. 船の排気ガス(MARPOL Annex VI)
d. 漁船の安全性(トレモリノス条約/プロトコール)
e. ISPSコード(SOLAS cbapter X1-2)
f. 海難の統計
g. IMO審議への対応
h. 検査官とPSC担当官
 
次回の会議の議題としては、次の項目が提案された。
i)船舶と港湾の技術革新が安全、環境規制に及ぼす影響
ii)検査官やPSC担当官の研修制度
iii)ISPSコードの実施
 
5. まとめ
 ジェトロ・シンガポール(上園)の司会の下、参加者は会議議事録の内容を確認した。議事録は全員一致で採択され、次の点が再確認された。
 
●参加国が国際条約に参画するかしないかに関わらず、各国の現状にあわせて海上安全と海洋環境保護をすすめる努力は重要である。
●東南アジア諸国間の海事関連情報交換を促進するために、参加者は国境を越えた同胞意識の下、専門家会議を開催する重要性を認識した。さらに、会議の結果を参加者それぞれ各国に持ち帰って同僚などに伝えることとする。
 
 参加者は、日本財団、シップ&オーシャン財団、日本中小型造船工業会の支援に感謝を述べるとともに、今後このような海事関係に関する専門家会議が継続して、あるいは定期的に開催されることへの期待を表明した。







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