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IV. 議事録
(日本語)
 
東南アジア船舶安全・環境に関する専門家会議
議事録
 ジェトロ・シンガポール・センター船舶部の主催により、東南アジアの水域における船舶安全及び環境保護について意見交換を行うための「東南アジア船舶安全・環境に関する専門家会議」が下記のとおり開催された。
 
1. 月日:2003年11月19〜20日
 
2. 場所:マリーナ・マンダリン・ホテル、シンガポール
 
3. 議題
1)会議参加国の国内輸送に従事する船舶に対する規則の現状
2)船舶安全及び海洋環境保護についての情報交換促進
 
4. 議事録
 
11月19日(水)
(1)開会
 ジェトロ・シンガポール・センター船舶部(上園)から、会議の目的と討議分野について説明
(2)オブザーバー紹介と日本中小型造船工業会挨拶
 ジェトロ・シンガポール(上園)による会議オブザーバーの紹介。その後、日本中小型造船工業会の石渡博会長から次のような挨拶があった。
■日本中小型造船工業会は、日本で造船・修繕に従事する企業が集まった団体である。
■東南アジアで航行する船の中には、日本中小型造船工業会の会員企業が建造したものも多い。
■従って、東南アジアの船舶安全、環境保護の状況を理解することは非常に重要である。
■各国の関係者が参加する会議に参画できて光栄に思う。
 
(3)シップ&オーシャン財団挨拶
 シップ&オーシャン財団の工藤栄介常務理事から、参加者が活発に意見を交換し、議論が今後の東南アジアにおける国際協力に資することを願うとの挨拶があった。
 
(4)基調講演
 日本国土交通省海事局安全基準課の石田課長による基調講演が行われた。
 
 国土交通省海事局は、船舶安全及び海洋環境保護に関し、船舶建造・機器の基準の制定を担う。これは、他の関連省庁、日本海事協会(NK)などの船級団体との協力の下に行われる。海上技術安全研究所(National Maritime Research Institute)は、安全な海上航行、先進的な海上交通及び海洋環境保護についての研究を行っている。日本造船研究協会(The Shipbuilding Research Association of Japan)は、民間の研究機関で、IMOでの協議項目についての研究検討を行っている。
 現在の船舶安全についての重要な項目は、バルク船の安全向上とIMOの機能の拡大である。環境保全については、船舶による大気汚染、石油汚染の防止、有害な水生生物の運搬の防止、生物付着防止剤使用の禁止が重要な問題点である。
 
(5)議事進行
 ジェトロ・シンガポール(上園)の提案により、参加者は、プレゼンテーションごとに、議長を持ち回りで担当することに合意した。
 
(6)各国プレゼンテーション
 
 議題1として、各国がプレゼンテーションを行った。
 
(6)-1 インドネシア
(議長はフィリピンのMs.Sonia)
 
プレゼンテーション
●海上安全(海洋汚染防止、海洋汚染への対応を含む)は、海上交通システムの中に組み込まれており、海上交通局(Sea Communications)の局長(Directorate General)が、海事問題に関連する国際基準に従って、管轄している。
●インドネシアは旗国、港湾国としても規模が大きく、国内船舶に関する独自の規制を制定しているが、国際基準に即したものとなっている。
●ISPSコードに関しては、インドネシアでは既に、その実施のために交通大臣令No.33/2003を発布し、国家海上保安委員会によって実行される。
 
質疑応答
Q1 タイ
 ポートステートオフィサーの能力の問題にどう対処しているか。彼等はどのようにポートステートコントロールを実施しているか。
Ans 船主への啓蒙活動を行っている。海上貨物ビジネスにおける安全性の問題に関わるという点を強調している。
Q2 シンガポール
 ISPSコードを導入する上での問題、特に船員へのトレーニングについて
Ans インドネシアはISPSコードを批准する準備をしているが、船員の問題がある。この問題は海上輸送に関わる多くの関係者に影響が大きい。2004年7月までに、多くの国からISPSコードの導入を延期してほしいという要請が出される可能性もある。インドネシアには国際交易に開放された港が140港あり、ISPSコードが求めるアセスメント業務を行うために人員を雇用し教育するコストが、政府及び民間企業にどの程度の負担となってくるのか理解する必要がある。
 これに対して、フィリピンからは、ISPSコードの導入の延期は無理であろうという意見が出された。
Q3 フィリピン
 インドネシアではどのようにバラスト水処理を行っているか。
Ans 問題は港湾にバラスト水を受ける施設がないことである。インドネシアでは、石油を運搬する船については、より厳しい規制をしいている。
Q4 日本
 船舶とプレジャーボート間の事故はSOLASでは規定されていないが、日本では問題となっている。インドネシアにおける船舶とプレジャーボートの事故の実態はどうなっているか。
Ans データを調べる必要がある。
 
(6)-2 フィリピン
(議長:タイのMs.Wanna)
 
プレゼンテーション
 フィリピン政府は、海運産業局(MARINA)とフィリピン海上保安庁(PCG)が中心となって、安全で効果的な船舶運行、汚染のない海という目標を達成するために、IMOやその他の地域機関がすすめている規則、規制、政策の導入をサポートしている。フィリピン籍船に適用される国際条約や国際規則は導入されており、内航船にも実用的なものは適用している。国家規約もいくつかは交付され、また、汚染防止、海洋環境保全のための規則も導入された。石油流出・海洋汚染の事故や事件が起こった際の拡大防止策も定められた。国内航行における安全性を高めるため、国内用小型船に対する安全対策も導入された。SOLAS Chapter X1.2やISPSコードに従った海事安全対策も導入するよう、現在努力をしているところである。
 
質疑応答
Q1 日本
 木造船の段階的廃止によって、これらは強化プラスチック製(FRP)の船などに切り替わっていくのか。
Ans FRP船は1つの代替案となる。フィリピンでは現在、社会的経済的影響も考慮しながら、木造に代替する船舶建造技術を模索している。
Q2 シンガポール
 フィリピンには船級分類には船舶のサイズによって上限があるか。
Ans 上限があるかどうかはわからない。
Q3 シンガポール
 NSM(National Safety Management)とISMの違いはなにか
Ans NSMは国内の水上輸送の安全性を高めるために作成された。NSMでは、機能及び経済的な必要事項が網羅されており、ISMよりも簡潔な内容となっている。
Q4 日本
 フィリピンには多くの島があり、国内の海上輸送は発達していると思う。海上の交通網をさらに整備しようとしている。一方、今年はじめ30人犠牲者のマニラ沖旅客船事故が発生した。大統領も海上安全対策強化を打ち出したと聞いている。これについて、事故をうけて旅客船に対する安全規制がどのように強化されたか。
Ans フィリピンでは、安全な航行、海上衝突予防法などについての定期的な基礎トレーニングを導入している。また、木造船を段階的に廃止することも解決につながる。
Q5 日本
 環境問題についての規制について、小型船ほど反対が多いが、フィリピンでは、小型船オーナーからMARPOL導入について反対はあるか?
Ans それほどたくさんの反対意見は出ていない。反対意見の例としては、400GTの漁船に装備することになっている油水分離機のコストが挙げられる。
 
(6)-3 タイ
(議長:ベトナムのMr. vu The Quang)
 
 タイの最近の戦略計画により、交通省(MOT)は、関連法規の改正と制定して、生活の質を向上するための安全で且つ環境にやさしい交通手段の提供を目指している。特に、国内交通に関しては、海事局がタイ水系法における航行に関する規則の改定、船舶検査についての新法の制定などの重要な役割を担うことになった。これらの法律は、よりよい海上保安、環境保全に貢献することをめざしたもので、めまぐるしく変化する現代社会に沿ったものである。タイは、安全な国内航行は社会に有益であり、また国家経済の発展にも役立つと考えている。
 
質疑応答
Q1 インドネシア
 バンコクでは小型船による汚染問題としてどのような問題があるか。またそれらにどう対処しているか。
Ans 小型船による汚染は通常、バンカーオイル、廃棄物によるものである。タイ政府はこれに対応する規則を発表している。
Q2 ベトナム
 Koraの水路プロジェクトは近い将来に始まると聞いている。プロジェクトの環境への影響はどうなのか。
Ans プロジェクトはタイ政府が再検討している。定期的にミーティングを開いて、環境への影響を研究、評価している。結論はまだ出ていない。
 
(6)-4 ベトナム
(議長:インドネシアのMr.Rusman)
 
プレゼンテーション
 ベトナムの発表は、ベトナムの位置、地理的特徴、商業港のシステム、商船隊、ベトナム領海内での事故と海洋汚染について説明が行われた。また、海洋及び内陸水路の管理については、港湾各局、海上保安庁、海上保安検査官、海上捜索及び救難コーディネーションセンター、船舶通信及び電子企業などの各機関の組織機構、主な役割などの点から説明が行われた。さらに、海上安全と海洋環境保全について、国内輸送に従事する船舶を対象とした規則についても説明した。最後に、国内輸送に従事する船舶の安全と海洋環境保全政策について説明した。
 
質疑応答
Q1 フィリピン
 事故の主な原因は何か。またどのようなタイプの船舶が事故にあっているのか。
Ans バルク船などに多い。原因は、船員の不注意が多い。
Q2 インドネシア
 沿岸警備隊(Coast Guard)についての発表がないが、海洋環境保護のために、Coast Guardを強化する必要はないか。
Ans Coast Guardは4年前にできたばかりで、人材や設備の面でまだ限界がある。
Q3 フィリピン
 石油流出防止計画はないか。
Ans 2年前に枠組みは策定されたが、その決定を実行するアクションがとられていない。
Q4 日本
 河川を航行する小型船に対する規制を管轄する機関はどこか。
Ans 海上まで航行できるもので100トン以上のものはVinamarineが管轄する。







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