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4. 海上安全及び海洋環境保護に関する現行の規則
(1)ベトナム海事規約
 ベトナム海事規約(Vietnamese Maritime Code)の第2章セクションBには、海の安全航行及び環境汚染防止について以下の通り定められている。
第17条
 外航船は、登録の際の申告内容で、建造、常備されている器具や装置、補足書類及び乗組員の能力のすべての点において運輸大臣の定義する船の安全航行、海における生命の安全、及び環境汚染の防止に遵守している場合にのみ使用されるべきであると定義している。
第18条
1. ベトナムの外航船は、ベトナム船舶登録局(Vietnam Register of Shipping)、あるいはその船が船籍登録国で認可された船級協会が点検、確認を行った後で、技術的な安全性の証明書が付与されるものとし、その場合の技術的な安全性とはベトナムの国家基準、あるいは同国が調印または認証する国際条約に基づくものとする。
2. 技術的な安全性の証明書にはその有効期間を指定するものとする。この期間は、船が指定された港において定期点検を受けるために寄港することができない場合や、その船舶の技術的条件が安全であると証明された場合には、90日まで自動延長される。ただしこの自動延長期間は、船が点検指定港に寄港した際に直ちに消滅するものとする。
3. 技術的な安全性証明書は、船の技術的な安全性を危うくするような改修が行われた場合には自動的に無効となるものとする。
4. 船の安全性に関する技術的条件について揺るぎなき疑いの根拠がある場合には、ベトナム海上安全検査官は一時的にその船の運航を中止させることができる。検査官自身またはベトナム船舶登録局は、要請に応じて、その船が正統な安全性証書を有している場合にも、技術的条件について点検を行うものとする。
第19条
1. 船舶の所有者及び船長は、航行上の安全及び船の技術的条件に関する点検を行うために最適な条件を整えるよう配慮しなければならない。
2. 船の運航を再開する前に、船主及び船長はベトナム海上安全検査官またはベトナム船舶登録局の要請があった場合、安全な航行のための修理あるいは条件の追加を行わなければならない。
第20条
1. 海上または外航船に開かれた航海可能な内陸水路では、ベトナム軍の軍用船、内陸航行船、及び水上飛行機を含む航洋船は、運輸大臣の定める海上における衝突防止を目的とした規則を遵守しなければならない。
2. 海上及び外航船の航行や運航に開放されている内陸水路では、運輸大臣の定める海上警戒信号に関する規則に適切に準拠した、十分な安全警報装置を装備しなければならない。
第21条
1. ベトナムの内陸水路及び領海内では、ベトナムと船籍国との協定で定められていない限り、ベトナムの海上航行の安全規則は外国籍の航洋船にも適用されるものとする。
2. 外国籍の外航船がベトナムの内陸水路や領海を航行している際に、ベトナム海上安全検査官がその船の耐航性を疑う十分な根拠がある場合や、ベトナムの海における安全な航行に関する規則に違反した場合には、その検査官は点検を行い、その船の違反に関し行政処分を行う権限をもつものとする。
第22条
 海における安全な航行のための点検や現行の規約に準拠した外航船の技術的条件に関する点検、及び船上における調査は、関連法規に従って船の耐航性に損害を与えることなく実施しなければならない。
第23条
1. ベトナム籍及び外国籍の外航船がベトナムの領海を航行する際には、ベトナムの環境保護に関する規則や同国が調印または認証する国際条約に準拠しなければならない。
2. 港湾水域やその他のベトナムの可航水域を航行するベトナム籍及び外国籍の外航船が、石油製品あるいは他の危険物の輸送に専門的に従事する場合には、環境汚染に関する船主の民事責任を保護するための保険をかけなければならない。
3. 首相による許可なしに、原子力を動力とする外国籍の外航船がベトナムの内陸水路や領海を航行することを禁ずる。
第24条
 政府はベトナム海上安全検査官及びベトナム船舶登録局の業務に関し、組織、及び活動範囲を決定するものとする。
 
(2)1994年2月25日付法令13/CP号。ベトナムの港湾及び領海における船の運行管理規定の発行に関する政令
第4条
 港湾局長は当規定及びその他の責任領域に関する条件に基づき、海の安全と船による汚染防止に関する具体的な規則を採用する。
第5条
 いかなる種の船舶も、海の安全や汚染防止条件、及びベトナムの法律が定めるその他の条件をすべて満たした場合にのみ、港湾や海事領域での航行を許可されるものとする。
第26条
 港湾あるいは強制水先案内水域に入港あるいは出港する1,000GT以上のいかなる種の外国籍船及びベトナム籍船は、ベトナムの水先案内人による水先案内に従わなければならない。
セクションE 秩序及び衛生に関する規則
港における船の運航と衛生について8つの条項で規定されている。
セクションF 船の火災、爆発及び汚染防止
以下について、8つの条項で詳細が定められている。
・船上における火災及び爆発防止装置の設置。
・危険領域で勤務する船員に対する消防トレーニング。
・爆発防止及び消防計画。
・船の安全航行。
 
(3)1999年9月4日付法令92/1999/ND-CP号。海運業における管理規則の違反に対する制裁に関する政令
第14条 船の安全、秩序、衛生に関する規約の違反に対する制裁
1. 警備担当の士官あるいは乗組員が指定されたユニフォームあるいはバッジを身につけていない場合には、警告あるいは5万ドン以上10万ドン未満の罰金が課されるものとする。
2. 以下の違反に対しては、警告あるいは10万ドン以上50万ドン未満の罰金がそれぞれ適用されるものとする。
(a)指定されたベトナム国旗が掲げられていない。
(b)港湾局の許可なしに、慶弔旗を掲げること。
(c)港湾局の許可なしに、港内で警笛を鳴らすこと。
3. 以下の違反に対しては、50万ドン以上200万ドン未満の罰金が課されるものとする。
(a)港内で煙突の掃除を行ったり黒煙を排出すること。
(b)波止場に船の装置や私物を無秩序に配置したり、乗組員が無用に動き回ること。
(c)港湾局の許可なしにチッピングを行ったり塗装すること。
(d)港湾局の許可なしに船の修理や機械の試運転や警笛の空打ちを行うこと。
(e)港で泳いだり雑音を出すこと。
(f)規則に違反してVHFチャンネルを使用すること。
(g)規則に違反あるいは衛生及び環境保護に関する条項に従わず、あるいは所轄官庁の許可を得ずに、ゴミや廃油を収集すること。
(h)不適切な場所で船の薫蒸を行うこと。
4. 以下の違反に対しては、200万ドン以上500万ドン未満の罰金が課されるものとする。
(a)所轄官庁の許可なしに、港内に竹のネットやその他の魚釣り用設備を設置した場合、及び/または、それらの設置が不適切な場所や時間に行われた場合。
(b)航路にジグザグに竹のネットを設置したり、移動性の竹のネットや捕獲網あるいはその他の魚釣り用設備を使用して、船の航行を妨げた場合。
(c)港湾局の許可なしにダイビングを行ったり水中で他の作業を行ったり、指定された通りに警告の掲示をすることなくこれらを行うこと。
(d)港湾局の許可なしに、港でスポーツイベントや不適切なゲームを行うこと。
(e)港湾局の許可なしに、スポーツや観光を目的とした船あるいはボートを港湾区域で航行すること。
(f)港湾局の許可なしに、港湾区域で調査、浚渫、ブイや航路標識燈または他の構造物を設置するための専用船を運航すること。
(g)指定された通りに警告の掲示をすることなく、港湾区域で調査、浚渫、ブイや航路標識燈または他の構造物を設置するための専用船を運航すること。
(h)待機中の引船の援助を適切に受けることなく、貨物取扱いのために本船あるいは波止場にプロペラのない船を横付けしたり、港湾局からの移動命令に対し遅滞があった場合。
(i)指定された警告の掲示を行わなかったり間違った掲示を行った場合。
(j)海における衝突保護のための規則を遵守しなかった場合。
5. 本条項の第1項及び第4項の(f)及び(g)に明記された各違反行為が、重大な場合は、500万ドン以上2,000万ドン未満の罰金が課されるものとする。
6. 公共の健康管理に関する規則への違反に関する制裁について政府が定めた1996年8月6日付の法令46/CP号の第7条に従い適用される、その他の国境における検疫に関する行政規則に違反した場合。
7. 補足的な制裁と他の行政措置:
(a)本条項の第4項(a)、(b)、及び(c)に明記された違反行為の実行を示す証拠物件やこれに使用された設備の押収。
(b)本条項の第4項(a)及び(b)に明記された行政規則の違反によって状況が変化した際、これを強制的に回復すること。
第15条 船の火災及び爆発規制の違反に対する制裁
1. 禁煙エリアにおける喫煙に対し、10万ドン以上50万ドン未満の罰金が適用されるものとする。
2. 以下の違反に対して、それぞれ200万ドン以上500万ドン未満の罰金が適用されるものとする。
(a)消火施設が使用できる状態になっていない。
(b)火災や爆発が発生しやすい場所に警戒標識や指示がない。
(c)船内に火災制御図や火災制御作業の分担表がなく、火災制御に関する指示が行われていない。
3. 以下の違反に対して、それぞれ500万ドン以上1,000万ドン未満の罰金が適用されるものとする。
(a)ベトナムの法律やベトナムが調印した関連の国際条約によって要求されている消火設備が不十分な場合。
 港湾局による点検及び許可が付与される以前に要求された消火設備が十分に装備されていない場合。
(b)故障した携帯用消火器の使用。
(c)消火設備が船内の適当な場所に設置されていない。
(d)乗組員が火災制御設備を適切に使いこなすことができない。
(e)港や港湾区域、あるいは海域で発生した船の火災制御に協力するよう港湾局から要請があったにもかかわらず、これに従わなかったまたは対応が遅れた場合。
(f)港湾局による点検及び許可が付与される前に、デッキや船倉、及び機械室で火花を発生させるような作業を行った場合。
(g)消化専門の設備を他の目的のために使用すること。
(h)不適切な救命装置の整備点検。
(i)緊急時対応のための行動計画を一切練っていない。
4. 本条項の第1項から第3項に明記された各違反行為が重大な場合、2,000万ドン以上5,000万ドン未満の罰金が課されるものとする。
5. 他の行政措置の適用
 本条項の第1項、第2項、第8項に明記された各違反行為によって生じた結果を打開したり、損害を補償させるために、強制的な手段を講じること。
第16条 船の環境汚染規制の違反に対する制裁
1. 以下の違反に対して、それぞれ20万ドン以上100万ドン未満の罰金が適用されるものとする。
(a)機械室のバラストタンクの水量調節を記録していない。
(b)港湾区域または波止場に船からゴミやその他のものを廃棄する。
2. 以下の違反に対して、それぞれ200万ドン以上500万ドン未満の罰金が適用されるものとする。
(a)ベトナムの現行法及び同国が調印した国際条約により要求されている十分な燃料やバラストのフィルター装置を装填していない。
(b)オイルフィルタが機能していない。
(c)燃料補給時に、技術的要求項目を満たしていないホース、栓、及び接合部品を使用。
(d)燃料補給時、現場に担当者がいない。
(e)燃料記録が残されていない、あるいは不適切に行われている。
3. 指定された流出油回収計画が作成されていない場合には、200万ドン以上1,000万ドン未満の罰金が適用されるものとする。
4. 船から港湾区域にゴミや汚水、または石油や他の危険物質によって汚染された廃水を廃棄した場合には、500万ドン以上2,000万ドン未満の罰金が適用されるものとする。
5. 本条項の第4項に明記各違反行為が重大な場合、500万ドン以上1,000万ドン未満の罰金が適用されるものとする。
6. 他の行政措置の適用
 本条項の第1項及び第4項に明記された違反行為によって生じた結果を打開したり、損害を補償させるために、強制的な手段を講じること。







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