日本財団 図書館


3. 国内輸送に従事する船舶の海上安全及び海洋環境保護に関する現在の規則
3-1 タイの海上安全に関する法律
(1)B.E.2456(1913)年 タイ水域航行法 修正版
(2)B.E.2522(1979)年 船舶衝突防止法
(3)B.E.2526(1983)年 タイ船舶法
(4)B.E.2534年 商品海上輸送法
(5)船舶検査規則第1-29号
 
 「B.E.2456(1913)年 タイ水域航行法」は、タイにおける海事法の包括的な法律であり、大きく分けると3つの部分で構成されている。第1部は6つの章に別れており、碇泊領域、船舶の航路、木製いかだの安全性、停泊・抜錨等について規定している。第2部は10章に分かれているが、特に第2章から第5章は検査と証明書に関連するIMO協定の実施について規定している。その中でも重要な規則を以下に示す。
第138規則 証明書の取り消し
第155規則 定員を超える乗客輸送の禁止
第158規則 旗国管理及び施行条項
第162規則 検査及び証明書:管轄当局は、検査終了証明書の提示を受けて、船舶が安全で、12か月間の航海に適することを証明する船舶証明書を発行する。
 第3部は、主に危険物資を輸送する場合の特別な規則、及び法律に違反した場合の民事・刑事制裁措置を含む規則の実施に関するものである。
 
 「B.E.2522(1979)年 船舶衝突防止法」は、COLREGをタイ国の法律に合わせて実施するための法律である。この法律にある規則は、すべてCOLREGの要件に従って定められている。
 「B.E.2526(1983)年 タイ船舶法」は、船舶の登録に対する要件、及びタイ国籍の船舶への国家法の適用に関するものである。
 「B.E.2534年 海上商品輸送法」は、商品の海上輸送における安全に対する要件を定めている。この法律には、船舶が遵守すべき安全条件と運転制御等が規定されている。
 「船舶検査規則第1-29号」は、「B.E.2456(1913)年 タイ水域航行法」によって海事局に法的権限が与えられた二次的な規則で、検査を迅速に行い、法的機関での処理にかかる時間の短縮を目的としている。主な規則は以下のとおりである。
−「船舶検査規則第15号」は、タイの領土内でSOLASを実施するためにある。また、この規則には、ABS、BV、DNV、LR、NK等、認定機関である分類協会への権限委譲についても記述されている。船舶の種類、規模、航海領域に基づいて、計画の承認、構造、エンジン、電気設備、救命器具、救命ボート、安全装置と火災防止、火災報知、消火機器に関する詳しい要件と説明が求められる。さらに、この規則には、タイ国旗艦の積量を決める標準化に向けて、積量の測定法がまとめられている。本規則の「G部」にはSTCW協定が含まれているが、これは規則第25号によって改定された。
−「船舶検査規則第19号」は、主に島の水路(河川及び運河)を航行する乗客船に関するものである。この規則は、旅客船の規模と種別によって異なる安全装置と衛生システムを規制するためにある。
−「船舶検査規則第20号」は、タイ国籍船舶に対する満載喫水線協定の適用に関するものである。
−「船舶検査規則第25号」は、1995年に改正されたSTCW78の施行に関するものである。
−「船舶検査規則第27号」は、MARPOL73/78の施行に関するものである。
 
3-2 タイの海洋環境に関する海事法
−B.E.2456(1913)年 タイ水域航行法 修正版
−B.E.2534年 商品海上輸送法
−船舶検査規則第27号
 
 「B.E.2456(1913)年 タイ水域航行法 修正版」は、国内輸送における海洋環境保護にとって施行規則の基礎となる法律で、特に第3部(規則第189〜208号)では、水上輸送による商品の安全な輸送に関する規則を規定している。環境を破壊する可能性のある商品は、最も安全で環境に優しい輸送手段を念頭に置いて厳しく規制される。さらに国内輸送では、水上交通による商品の輸送の要件を定めている「B.E.2534年 商品海上輸送法」と連動して、運転制御を含むより安全な輸送の条件が整いつつある。最後に、タイは「船舶検査規則第27号」によりMARPOL 73/78を批准する予定であり、この規則の実施が徹底すれば、汚染のない環境に対する一歩進んだ管理と規制が行われる。
 
4. 海上安全及び海洋環境保護に関する政策
4-1 海上輸送に関する国の政策
−輸出部門に資する海運を促進する。
−タイ商船団、及びそれに関連する海上活動を強化する。
−国際基準に沿った深海港を開発する。
 
4-2 海上・水上輸送に関する国の政策
−隣国との競争に備え、港湾の管理と業務の効率を国際水準に引き上げる。
−レム・チャバン港からICDラドクラバングヘの鉄道輸送を促進する。
−港湾の民営化計画を推進する。
−レム・チャバン港の建設と経営への民間部門の参入を促進する。
−タイ商船団を拡大する。
−規則や規制を法律に沿うように変更する。
 
4-3 運輸通信総合基本計画
 運輸通信省(現在の運輸省)は、タイ開発調査研究所(TDRI: Thailand Development Research Institute)に委託して、1997年から2006年を対象とする運輸通信の総合基本計画に関する調査と策定を行った。同計画の主な目的は以下のとおり。
 
(1)全国の輸送通信システムの効率向上をめざして、政府の行政目標を実施に移し、標準的な質のサービスが妥当な価格で適切に提供されるようにする。
(2)すべての輸送手段を一元化したシステムに調整・統合し、安全、環境への影響、限りある資源の活用を考慮に入れながら、サービスのコストとエネルギーの消費が総合的にみて効果的に削減されるようにする。
(3)輸送と通信を、国内開発とその他の部門の経済、特に特殊な分野の開発を促進・支援する要素として位置づけ、国内の地域格差をなくしていく。
(4)輸送通信サービスのシステムを1997年から2006年の間で予想される需要に合うように拡張し、この開発によって、タイの輸送通信ネットワークが近隣諸国のネットワークと接続し、東南アジア地域でタイが経済的に優位に立てるようにする。
 
4-4 運輸省1997〜2006年総合基本計画の中の安全と環境に関する内容
(1)輸送システムの安全強化
 具体的な内容は以下のとおり。
●道路や車両の利用者、特に酒気帯び運転をする運転者や、危険な薬物を使用する運転者に対しては法律で厳重に取り締まる。
●道路と鉄道間の横断を規制して減らし、世界で実施されている例にならって保護設備や警告標識を設置する。
●道路輸送よりも安全な鉄道輸送への支援を強化するとともに、都市部の大量輸送システムの建設を促進する。
●管理や監督が十分に行える最新の施設を提供することによって水上輸送の安全基準を引き上げ、規則の他に規制を設けて水上輸送の効率を向上させる。
●検査を行い、適切な措置を講じ、特に民間会社の参入を考慮に入れながら、航空機やターミナルの安全を確保する。
 
(2)輸送が環境に及ぼす影響の低減
 具体的な内容は以下のとおり
●車両が排出する煙や騒音の検査を実施し、基準を超えないように規制する。
●電車を使用することで、煙や騒音が基準を超えないように抑える。
●バスやトラックで使われるエンジンとして、Europe IやII等の最新式エンジンを導入する。
●規制と厳しい措置を講じることにより、水路や海の水質を汚染のない状態に保つとともに原油流出を防ぐ。
●適切なコンテナを車両に装備することによって、鉄道貨車から廃棄物を取り除く。
 
4-5 海上輸送安全に関する総合基本計画とアクションプラン
1. 水上輸送における安全の分析、改善、処理を行う。
2. 船舶の航路を改善し、灯台による安全強化をはかる。
3. 事故の防止と捜査を行う。
4. 現在の船舶及び今後の船舶の両方に対する安全基準を厳しくする。
5. 港湾及び施設の基準を厳しくする。
6. 海事要員の訓練を行う。
7. 水上輸送や海上輸送における環境の保護を行う。
8. 法律・規則を施行する。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION