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タイにおける国内航行船舶の安全・環境基準
1. 序章
1-1 タイの位置と地勢
 タイは、ミャンマー、ラオス、カンボジア、マレーシアと国境を接し、総面積51万4,000平方キロメートルの国土を持つ。国土はおおまかに、北部山岳部、肥沃な中央部、乾燥した北東高原部、南部半島部の4つに分けられる。
 
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2. 海事関連の組織
2-1 運輸省(MOT)
1)運輸省(MOT: Ministry of Transport)のビジョン
1.1 便利で迅速、効率的、公正で遅延がなく、すべての層の人々が平等に利用できる輸送交通システムを開発する。
1.2 タイ国の潜在能力を高める支援を行うため、輸送ネットワークの連携システムを開発し、国が地域の輸送と交通のハブとなるようにする。
2)運輸省(MOT)の戦略
 国家開発を支援する戦略は以下のとおりである。
第1戦略−国家開発戦略に対応するものとして価値があり、また広範なものとなるように基盤システムと輸送サービスの能力を高める。
第2戦略−通勤者と商品の流通で利用する大量輸送システム・ネットワークと公共輸送システムを統合し、それらを接続して平等に輸送手段を利用できるようにする。
第3戦略−生活の質を向上させるため、安全で環境に優しい輸送を実現する。
第4戦略−これまでの輸送ネットワークを十分に活用する。
第5戦略−公共サービスの質を向上させるために一般市民の参加を促すことにより、経営、管理、適切な統治を強化
 
図4 タイ国運輸省の組織図
「出典:東南アジア海事専門家会議資料」
 
2-2 運輸交通政策企画室(OTP)
1)背景
 運輸省の管轄下にある運輸交通政策企画室(OTP: Office of Transport and Traffic Policy and Planning)は、「B.E.2545(2002)年政府省庁再編法(Government Agencies' Restructuring Act)」、及び「B.E.2545(2002)年国王勅令政府省庁再編法に伴う政府行政機関の行政、職務、権限、管轄の再任命」によって設立された。
 これらの法律は、以下に挙げる政府3機関の統合を承認した。
●国土交通管理委員会
●運輸通信政策企画局
●海事産業振興委員会事務局
 
2)運輸交通政策企画室(OTP)のビジョン
 経済性と社会の利益を総合的に考慮しながら、輸送と交通に関する政策を策定し、その計画を速やかに実施し、便利で迅速、経済的、かつ安全な通行や輸送の実現に取り組む。
 
3)運輸交通政策企画室の使命
 国家開発戦略に沿って交通と輸送に関する政策の策定、計画の立案、(陸上、航空、鉄道、水上・海上等すべての移動手段を網羅する)交通手段と輸送の安全計画の調整を行う。
 
4)主要な職務
 運輸交通政策企画室(OTP)は、政策を統合する目的から総合基本計画に沿った輸送、交通、輸送の安全に関する政策の勧告及び計画の立案を行う。
 
運輸交通政策企画室の業務、権限、管轄
1. B.E.2545(2002)年の運輸省運輸交通政策企画室の内部機関指定行政規則に従って、以下の業務を遂行する。
(1)輸送と交通に関する調査と分析を行い、政策を勧告し、計画の立案と調整を行い、運輸省のプロジェクト実施計画と割り当てられた予算を分析し、国家経済社会開発計画や政府の政策に合うものとする。
(2)輸送と交通に関する調査と分析を行い、その総合基本計画を作成し、実施に向けて調整を行い、政府の政策を起草して内閣に提出する。
(3)計画、プロジェクト、及び割り当てられた予算に照らし合わせて、実施状況の監督、促進、監視、評価を行う。
(4)輸送政策や交通管理に関して、国内輸送と交通に関連する法律や、それに影響を及ぼす法律の修正や発布について委員会に意見を述べる。
(5)輸送と交通に関する報告書を作成するとともに予測を発表し、輸送交通データベースと情報システムを管理する目的から、その経済性と安全の課題について研究、分析、調査を行う。
(6)国際機関や地域の組織間で、国境を越える輸送に関連する職位や施策を採用するにあたって、関連する機関や団体と協力するとともに組織間の調整を行う。
(7)輸送交通政策企画室の管轄と考えられる職務、省庁または内閣から任命される職務を遂行する。
 
2. B.E.2521(1978)年国土交通管理委員会、及び(第2回)B.E.2535(1992)年の改正に従って、以下の職務を遂行する。
(1)内閣に政策と総合基本計画を提案する。
(2)総合基本計画に沿うように検証しながら、承認を得るために計画、プロジェクト、予算を選抜し、海外から融資を必要とするプロジェクト、及び交通管理にかかわる政府機関から提出される民間部門投資に関する提案を評価する。
(3)内閣に提出する国土交通管理に対する技術標準を定める。
(4)既に定めた施策、政策、及び総合基本計画に沿っていることを確認しながら、道路交通に対する解決策の標準を定め、実施状況を監督する。
(5)内閣または首相からの任命に従い、国土交通管理にかかわる案件を選別する。
(6)内閣または首相からの任命に従い、国土交通管理を実施する。
(7)国土交通管理に関連する法律、またはこれに影響を与える法律の時機を得た改正を助言する。
(8)委員会の管轄と見なされるその他の業務を遂行する。
 
図5 運輸交通政策企画室の組織図
「出典:東南アジア海事専門家会議資料」
 
2-3 海事局(Marine Department)
1)背景
 タイ国政府は、ラマ五世の治世にJohn Buch船長をタイの水上輸送を確立するための責任者として採用することに合意し、B.E.2402(1859)年8月5日、契約書に署名した。当初の港湾部は「Kromata」と呼ばれ、それ以来、この部署は150年以上にわたってタイ国民のために業務を行ってきた。しかし、この構造と管理体制は、現在の世界情勢に合わせて再編成し、現状に適応させることが条件となっている。そこで「B.E.2545(2002)年国王勅令政府省庁再編法に伴う政府行政機関の行政、職務、権限、管轄の再任命」に沿って港湾部は再編され、新たに行政、職務、権限、管轄、及び政府機関が任命された。
 これらの法律では、以下の2つの政府機関を統合することを認めた。
●港湾局
●海事産業振興委員会事務局
 
2)海事局(MD: Marine Department)のビジョン
 経済性と社会の利益を総合的に考慮しながら、便利で迅速、かつ経済的で安全な通行と輸送を支援するための海上輸送と交通にかかわる政策及び計画を策定し、その効果的な実施に取り組む。
 
3)海事局の使命
 人々の利益を考慮しながら、政策の提案、計画の立案、海上輸送と他の輸送手段との調整、通行者と商品の輸送、港湾、造船所、修繕所の開発、タイ商船団の拡大、並びにその他の課題に取り組む。
 
4)重要な業務
 海事局(MD)は、政策を統合する目的から、総合基本計画に沿った輸送、交通、輸送安全の計画に関する政策の勧告、及び計画の立案を行う。
1. 国内輸送を行う船舶に法律を遵守させる。
(1)B.E.2456(1913)年 タイ水域航行法 修正版
(2)B.E.2522(1979)年 船舶衝突防止法
(3)B.E.2526(1983)年 タイ船舶法
(4)B.E.2534年 商品海上輸送法
(5)船舶検査規則第1-29号
2. 他の機関と協調するとともに国際協定に参加する。
3. 国内の海上輸送における安全の規制、管理、強化を行う。
4. パイロット活動:規制対象のパイロット領域で船舶の入出港を監視する。
−バンコク港
−スリランカ−レムチャバン港
−サタヒップ港
−ソンクラー港
−プーケット港
−マブ・タ・プッド港
5. 船舶の検査を行う。
−法律に沿って船舶の検査を実施する。
−騒音がある船舶、煙の出る船舶、及び法律で定めている基準よりも速度が出る船舶の検査を実施する。
−海岸、河川、運河での停泊を規制する。
−水域内の交通量を規制して航行する船の事故を防止する。
−法律に違反する船舶を取り調べ、罰金を課す。
6. 免許及び証明書を発行する。
−国際協定に従って、外国船の検査(港湾国管理)を実施する。
7. 船舶の登録
8. 水質の管理及び規制
−船舶の航行により排出される物質の環境に及ぼす影響の追跡、検査、及び評価を行う。
−河川の通行から生じる排出物の内容を検査する。
−チョアプラヤー川、主な河川、沿岸の水質を検査する。
−原油による汚染、事故、使用済み燃料や油性廃棄物の投棄を追跡し、監視する。
 
図6 海事局組織図
「出典:東南アジア海事専門家会議資料」







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