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2-3 海上輸送部門における二国間協定並びにその他の海外・国際協力
二国間、地域の協力
1. AIDA(オーストラリア・インドネシア開発地域:Australia-Indonesia Development Area)
2. リボルビング基金
3. マラッカ・シンガポール海峡、等
 
地域の協力
1. APA(アセアン港湾協会:ASEAN Ports Association)
2. FASC(アジア海商審議会連盟:Federation of ASEAN Shipping Council)
3. FASA(アジア船舶所有者協会連盟:Federation of ASEAN Shipowners Association)
4. AFFA(アセアン貨物発送協会:ASEAN Freight Forwarders Association)
5. AFASA(サービスに関するアセアン包括協定:ASEAN Framework Agreement on Services)
6. 港湾状況管理に関する地域協力(Regional Cooperation on Ports State Control)
7. APEC(アジア太平洋経済協力:Asia Pacific Economic Cooperation)
8. ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会:Economic and Social Commission for Asia and the Pacific)
9. AFTA(アセアン自由貿易地域:ASEAN Free Trade Area)等
 
世界・国際の居力
1. WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)
2. GATS(サービスの貿易に関する一般協定:General Agreement on Trade and Services)
3. IALA(灯台管轄者国際協会:International Association of Lighthouse Authority)
4. ITU(国際電気通信連合:International Telecommunication Union)
5.IAPH(国際港湾協会:International Association of Ports and Harbors)等
 
 現在、「インドネシア海商法31/1992」は変更の過程にある。海上安全と海洋環境保護にかかわる国際条約の修正は増え、その修正のスピードも速くなることから、インドネシアの法律も、こうした変更に対応していく必要がある。
 
 ただし、インドネシア政府は、海上安全及び海洋環境保護に対する国際基準の施行及び実施を、2-1節で触れた技術ガイダンスの階層構造のうち「その他の命令」に分類した規則に従って行っている。これらの規則は、規則の成文化を待つ間は、国際基準の実施の手段となっている。また、こうした規則は、海運総局からの「指示書」の形式をとるものがほとんどで、これに「技術ガイダンス」として技術的な詳細がつくが、この中にはSOLASやMARPOL条約と全く同じものもある。
 
 国内輸送に従事するインドネシア国籍の船舶については、既に在来船や非在来船を対象とする規則がある。在来船は、船舶の種別を問わず、海上安全及び海洋環境保護の要件に従う国際基準によって規制されている。
 
 インドネシア船籍の非在来船で、インドネシア水域を航行する船については、既に船舶の種別ごとに規則がある。この例としては、「インドネシア水域を航行するインドネシア船籍の船に対する満水喫水線に関する規則」、「エンジンを装備した500総トン以下の帆船に対する海上安全要件」等がある。
 
 在来船と非在来船に対する海上安全及び海洋環境保護の要件に関連する「海事管理」の取り扱いは基本的に同じである。これは、国際基準が求めている内容に可能な限り従うものとなっている。
 
 たとえば、堪航性は、以下のような文書で証明されなくてはならない。
1. 船舶国籍証明書
2. 船舶測定証明書
3. 船舶安全性証明書
4. 船舶無線設備証明書
5. 船体・機械証明書
6. 石油汚染防止対策証明書
7. その他の証明書
 
 インドネシア国籍の船の建造から解体までの間に行われる船舶検査と証明書発行も同じ手順を踏む。
1. 新たに建造する船舶または改造する船舶の図面の承認
2. 船舶の測定及び測定証明書の発行
3. 船舶の法的地位証明書の発行
4. 新規に建造された船舶、改造された船舶の安定性テスト
5. 救助艇、硬質救命いかだ、ゴム製救命いかだ、救出ボート、救命胴衣等、船舶の安全性と海洋環境保護に対する検査及び証明書の発行
6. 火災消火器
7. 船舶無線・電子装置の検査
8. 海洋汚染防止装置
9. 建造、構造、機械、安全装置等、船舶の安全性検査の実施と証明書発行。
−新規の船の建造時、または船舶の地位が変わる改造時に実施する初回検査
−年次検査
−2年、5年目に行う中間検査
−5年ごとに行う総合検査
−必要に応じて行う追加検査
10. 検査が終了し、船舶が安全性と海洋環境保護に対する必要な条件をすべて満たすと見なされた時点で、船舶の種別と積量に従って証明書が発行される。これには、以下が含まれる。
−耐航性の証明
−満載喫水線の証明
−貨物船の安全な建造に関する証明
−貨物船の安全装置に関する証明
−貨物船の安全無線設備に関する証明
−客船の安全性に関する証明
−削除証明
−漁業船の安全性に関する証明
−フェリーの安全性に関する証明
−ダイナミック・サポートを装備した船舶の安全性に関する証明
−船舶の無線による安全性に関する証明
−海上における遭難対応システムに関する証明
−危険物資を輸送する船舶の適合性に関する証明
−ガス・タンカーの安全性に関する証明
−石油汚染防止に関する証明
−有害液体物質による海洋汚染防止に関する証明
−タンク洗浄に関する証明
−保険に関する証明
11. 船員の検査に関する文書
−能力に関する証明
−技能に関する証明
−増員に関する証明
−安全確保のための適切な要員配置の証明
−船員規則書
12. 船舶及び船会社の安全管理に関する検証
−企業に対する法遵守に関する文書
−船舶に対する安全管理の証明書
 
 批准された規定を正式に国家法へ取り込む作業については、担当者が一貫して行わない場合が多いこと、あるいはその他の問題により、国家法としての正式な手続にかなりの時間を要している。
 
 現在のところ、地方自治体に関するインドネシア法の施行にともない、政府は、7総トン以下の船舶については、海上安全の管理を含めて地方自治体に委託し始めている。
 
3. 海上安全・海洋環境保護の関連組織・機関
 船舶の海上安全、及び船舶による海洋環境汚染を管轄する政府機関で最高の権限を持つ海運総局(SEACOM)は、インドネシアにおける海事管理を国際的に認められており、インドネシアの海上輸送システムを運用する基準や規則は技術局が制定している。
 
 港湾管理は港湾管理者がインドネシアの港湾で行うが、各港湾では、港湾管理官が実務を行っている。したがって、問題は実際の業務を行う管理官の職務能力にかかっている。
 
 ただし、海運総局は、このシステムの運用業務にかかわる多くの組織と協力する必要がある。
 
 海事通信に関しては、海運総局は郵政局と協力する必要がある。
 
 通信省の教育機関、すなわち海上通信教育センター、特にインドネシア海事アカデミーは「船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約(STCW)条約」を実施する機関である。
 
 海運総局と共同で作業を行うその他の組織には、港湾公社、インドネシア分類局、インドネシア船舶所有者協会がある。
 
 環境省、海洋漁業省、国営石油会社、地域環境機関、海軍、警察は、大規模な石油染が生じた場合には協力して事態に対処している。
 
 ISPSコードの実施については、海運総局が調整役となっており、国家海事安全保障委員会が設立される予定である。
 
図3 SEACOM組織図
「出典:東南アジア海事専門家会議資料」
 
4. 石油流出対策
4-1 緊急時の対応
 インドネシア国内における石油の流出に対する対応は、国家石油流出時緊急時対策計画に基づいて行われる。さらに、マラッカ海峡やロンボク・マカッサル海峡といった高リスク領域で石油が流出した場合に備え、各地域の2つの管理運用規定には遵守すべき段取りが概説されている。
 
 インドネシアにおける海洋汚染の防止及び管理責任は海運総局(SEACOM)にあり、海運総局本部の国家石油汚染司令センターが統括している。始動時には、命令系統は適切な通信設備を備えた海運総局の9支局と港の3つの副支局を介して、現地の指揮官と港の管理者に伝達される。国営の石油・ガス会社(プルタミナ)は、他の関連の政府機関及び業界の公共機関とともに、緊急対策活動を支援する。環境影響管理庁(BAPEDAL)は、環境被害とその評価の管理機関として指定されている。これらの各支援組織に対し、標準共同作業手順が確立されている。港によっては各地における緊急時対策を策定しているが、特定地域を対象とした緊急時対策は存在しない。石油を取り扱う施設では、独自の流出対応計画を準備している。
 インドネシアはサンゴ礁が豊富に存在し沿岸水域の水深が浅いため、機械を使用した流出油の回収が適している。適当と判断される場合には、国家の緊急時対策で承認されている通り、流出油処理剤を使用することができる。
 
4-2 装置
 流出油回収用装置の大部分は、プルタミナ社とその生産設備共有企業(Production Sharing Companies)が保有している。これは基本的に、自社の事業運営において石油流出が発生した場合に備えることが主な目的であり、地域内あるいは国家的規模の石油流出に対応する能力は備えていない。しかし、SEACOMは大規模な流出が発生した場合には、これらの装置を活用することができる。群島の周りに位置する様々な海洋石油施設には、ブームや、油回収船、及び流出油処理剤用装置を主とする小規模な備畜がある。プルタミナ社は、装置の配備の際に利用可能な補給船を運航している。さらに海運総局は、ブームや油回収船を保有している。
 
 日本の国土交通省は、OSPAR計画(アジアの油汚染に対する準備及び対応に関する国際協力計画)を通じ、インドネシアに流出対応用装置を提供した。これらのブーム、油回収船、携帯用のストレージタンク及び流出油処理剤スプレー装置等の設備は、バリクパパンに設置されている。さらにこれらとは別に、石油連盟(PAJ)がジャカルタに、重油及び真空油回収船、ブーム及び携帯用のストレージタンク等の緊急対策用装置を設置した。インドネシアはまた、フィリピンに拠点を置くスラウェシ海ネットワークの装置も利用可能である。
 
4-3 過去の石油流出事故
 スマトラ島の海岸は、昭和丸(1975年、4,000トン)、長崎スピリット(1992年、1万3,000トン)、マースクー・ナビゲーター(MAERSK NAVIGATOR)(1993年、2万5,000トン)等による、過去数回の油流出に見舞われた。この際には石油が海に自然に分散したために、ほとんど浄化作業は必要とされなかった。さらに数回にわたり、バリクパパンとマドゥラ沖の油井が爆発事故を起こしている。
 
4-4 地域間及び二国間協定
●国境の海に関するオーストラリアとの二国間計画
●マラッカ海峡とシンガポールについての、マレーシア、シンガポールとの三国間計画
●マレーシアとフィリピンとの間のスラウェジ海ネットワーク協力協定
●他のアセアン諸国と日本の協力によるASEAN石油流出対応策計画(ASEAN-OSRAP)
●ASEAN諸国、中国、韓国の間の東アジア海域海洋汚染管理・防止地域プログラム







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