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インドネシアにおける海上安全及び海洋環境保護に関する規則
1. 序章
1-1 インドネシアにおける海上交通の役割
 インドネシアは、17,000を超える島々が5,800km2の海域に広がる世界最大の群島国で、その海岸線は全長約81,000km2に及び、カナダについて世界で2番目に長い。また、インドネシアは、約3百万km2の群島と領海を有し、この他にも、約3百万km2の排他的経済区域(EEZ)と大陸棚を有する。こうしたことから、インドネシアは、東南アジアで戦略的に優位な位置にあり、太平洋とインド洋を結ぶ重要な海上交通路を掌握している。こうした広範な海運地帯からインドネシアが得られる経済発展の可能性は計り知れない。
 
 さらに、インドネシアは、豊富な天然資源、巨大な熱帯雨林、肥沃な土壌に恵まれ、300を超える部族、異なる言語、多様な文化を有する2億2千万人もの人々が住んでいる。
 
 
 こうした条件下にあって、海上輸送は、インドネシアの経済、社会文化、政治の進展、そして自助努力による発展を達成する上で非常に重要な役割を担っている。
 
 第一に、海上輸送は、経済分野でインドネシア国民の生活向上とバランスを取る上で、商業、経済等にサービスを提供し、また支援する手段として(取引のサポート)、また開発の遅れている地域の経済を活性化させ、促進させる手段として(商業の促進)、さらには国産品の競争力を支える手段として、商品や人々を移送しているのである。
 
 第二に、海上輸送は、国民の移動と社会文化の交流を深める点で、社会文化の側面でも重要である。
 
 第三に、海上輸送は、政府の行政を支援する手段としての役割を果たしており、また国の統合と団結を強める上で、インドネシアの全地域と人々のかけ橋となる役割も果たしている。
 
 第四に、海上輸送は、インドネシアの自衛手段のひとついえるが、特に海においては、海軍を最大限に援護して国民を守り、国の統治権を維持する手段となっている。
 
1-2 インドネシアにおける海上輸送の発達
1-2-1 国家海上輸送システム
 海上輸送は、インドネシアの輸送システムの中核となる部分である。実際には、以下の要素を構成する国家輸送システムのサブシステムが海上輸送である。
 
(1)海運業。これには、内外の海運業のシステムとネットワーク、インドネシアの船舶団の拡大、及び船積み業務とその操業が含まれる。
(2)港湾。これには、全国の港湾の配備、内外の港湾業務のネットワーク、港湾の開発、及び港湾の管理と運営が含まれる。
(3)海上安全。これには耐航性と航海に対する規制と検査、及び国際条約の実施が含まれる。
(4)航海援助。これには、安全な航海を支援するシステムとネットワーク、灯台及び浮標の運用、海上電気通信、並びに政府の航法船が含まれる。
(5)警備・救助。これには、海上の安全に関する法律・規則の施行、海洋環境保護の検査・対応、及び捜査と救助が含まれる。
 
 このうち、海上安全、航海援助、警備・救助の3要素は、海上安全サブシステムを構成している。
 
図1 インドネシアにおける海運システムと機能
「出典:東南アジア海事専門家会議資料」
 
1-2-2 海上保安システム(ISPSコードに関する海上保安)
「ISPSコード2002(2002年国際船舶港湾施設警備規約:International Ships and Port Facility Security Code 2002)」は、2002年12月12日に開催された「外交会議」で162の国際海事機関(IMO:International Maritime Organization)加盟国が採択したもので、2004年7月1日から世界中で施行される。
 
この規約は以下の船舶に適用される。
1. 海外を航行する以下の種別に該当する船舶
-高速の乗客船を含む旅客船
-500総トン以上の高速船を含む貨物船
-移動式沖合掘削機
2. 海外を航行する船舶にサービスを提供する港湾施設
 
 ISPSコードの施行による職務と範囲は以下のとおりとなる。
 
図2 ISPSコードの導入に関する分野と責任
「出典:東南アジア海事専門家会議資料」
 
インドネシアにおけるISPSコードの施行の概略は次のとおり。
1. インドネシア政府(管轄行政機関であるインドネシア共和国通信省海運総局)は、全国にISPSコードの実施を発表するものとする。
2003年8月14日、インドネシアのISPSコードに関連する1974年海上人命安全条約(SOLAS: Safety of Life at Sea)の修正の施行について通信省令第KM33/2003号が発布された。
2. すべての関連機関からの十分な支援を受けているISPSコード2002の完全かつ継続的な施行については、国の政治的な支援と取り組みが必要である。
3. ISPSコード2002の施行により以下が必要となる。
-港湾やターミナルの整備、及び国際取引を行う船舶の準備に国家予算をさらに投入する。
-乗客、商品、貨物・コンテナの審査・検査に対してISPSコード2002で求めている最低限の設備を提供する。
 
 ISPSコード2002を施行しない場合、海外を航行する船舶と国際取引を行う港湾への次のような影響が懸案となる。
1. 外国の船がインドネシアの港に入港しなくなる。
2. インドネシアの国旗を掲げて海外を航行する船は、外国の港に入港できなくなる。
3. インドネシアが「闇の領域」として見なされ、インドネシアと他の国との間で国際貿易の取引がなくなる。
4. こうした状況から国の経済状況が悪化する。







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