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分野 議題 件数
生物海洋資源 水産養殖 25
野生資源 5
生物多様性 6
管理種の現状 30
非管理資源の要件 47
科学と情報の充足性 47
管理組織とツールの種類 105
海洋利用計画と生態系ゾーン化(Zonation) 53
矛盾する法定義務 21
効果的な執行 13
その他 4
汚染・水質 海洋汚染源:点源、面源 52
監視 5
陸海空のインターフェース 18
ガバナンス 海洋ガバナンス権限のスコープ 37
海洋政策問題に対する連邦政府の対応 68
協調体制の改善 39
代替的ガバナンス制度とモデル 83
海洋ガバナンスにおける役割 46
沿岸域管理 沿岸管理(CZMA問題を含む)における政府の役割 42
人口増と開発プレッシャー 28
科学技術の利用 12
市民の参加 5
海洋及び沿岸資源の経済的貢献 16
非生物海洋資源 管理のための調整と責任 19
新しい利用及び活動に関する連邦政策 23
非生物海洋資源活動から得られた連邦歳入の評価、配分、使用 11
環境問題 15
国際問題に関する米国の政策 10
研究・開拓・監視 研究要件の設定 64
海洋探査 13
海洋・沿岸監視 12
知的所有権問題 17
教育 K-12海洋カリキュラム 12
既存の海洋教育プログラム間の調整 9
教師の訓練と準備 5
海洋リテラシーと国民啓蒙 25
海洋教育における連邦政府の役割 15
海洋学における学術機関と教育者の訓練 5
その他 10
技術・海洋オペレーション 国家のニーズを満たすための技術開発戦略 17
新たなセンサーシステムと海で働き、生活するためのプラット 5
協調して運用する海洋観測予報システムの開発 31
将来の衛星センサーシステム 3
各連邦機関の海洋オペレーションを統合 13
統合的海洋関連通商及び運輸分野の戦略と実施計画 24
投資と連邦政府組織 連邦政府組織 25
連邦予算プロセス 14
 
 生物海洋資源の分野に最も関心が集まった。コメント数が最も多かった10の議題のうち、生物海洋資源の分野に関する議題が4件を占めた。「生物海洋資源」分野では、「管理」の問題が最も関心を集めた。100以上のコメントがこの項目にあてはまり、他のどれよりも多かった。
 
 「ガバナンス」分野も上位を占めている。トップ10の議題のうち、2位と3位を含む3つの議題がこの分野であった。これらの3つの議題の内容を考慮すれば、関心を集めるのは当然といえよう。たとえば「代替的ガバナンス体制及びモデル」には、海洋資源をどのようにして管理すべきかに関する考察と意見が含まれる。「ガバナンス」の分野で上位だったもうひとつの議題は「海洋政策問題に対する連邦政府の対応」であった。この項目には、連邦政府の活動を評価するものと非難するもの、及びどのように変更するかについての提案がふくまれる。「ガバナンス」分野の最後の議題は、「海洋ガバナンスにおける役割」である。トップ10にこの議題が入ったということは、基本となる「構成要素」文書において、審議会の検討の対象は政府だけにとどまらないという審議会の権限声明を、民間部門が真剣に受け取ったことを物語っている。「役割」の項目には、誰が何をすべきであり、誰が何に対して責任があるかについての議論がふくまれる。
 
上位10位の議題
議題 カテゴリー 件数
管理組織とツールの種類 生物海洋資源 105
代替ガバナンス体制とモデル ガバナンス 83
海洋政策問題に対する連邦政府の対応 ガバナンス 68
研究要件の設定 研究・探求・監視 64
海洋利用計画と生態系ゾーン化(Zonation) 生物海洋資源 53
海洋汚染源:点源と面源 汚染・水質 52
非管理資源の要件 生物海洋資源 47
科学と情報の充足性 生物海洋資源 47
海洋ガバナンスの役割 生物海洋資源 46
沿岸管理における政府の役割 沿岸域管理 42
 
4-5. トピック分野別議論概説
 本セクションでは、公聴会実施期間に審議会に提示された議論及び提言のうち主要な議題に関するものを要約する。ここで提示する情報は本報告書に添付した付録をもとにして要約したものである。さらに、委員会の報告書「政策トピック別証言ハイライト」もまた貴重な資料となった。
(1)生物海洋資源
<水産養殖>
 審議会では常に経済と環境に関する議論が持ち上がった。「生物海洋資源」分野はこの2つの議題に関する数多くの議論がすれ違った。経済的側面と環境資源保護の側面の均衡のとれた海洋開発管理は、審議会が絶えず直面する課題であった。公聴会における証言のほとんどは経済的発展の立場と環境保護の立場のいずれかに分類することができる。この2つの観点の均衡を図るための有効な枠組みを提示する証言はほとんどなく、均衡をとる必要があるという結論を強調するにとどまった。
 
 水産養殖に関する議論がこのパターンを代表している。発表の内容は、一方は環境破壊の危険性があることを鑑みて警戒を怠らないようにする必要があるというものであり、環境に害を及ぼす結果を避ける必要があることを認めながらも経済的な可能性を最大限に追求しようとする議論がもう一方にあった。
 
 たとえば、環境保護団体であるEnvironmental DefenseのRebecca Goldburg博士は、2002年7月23日の公聴会で、EPA(環境保護庁)は水産養殖が「海洋資源に深刻な害を及ぼさない」という基準に基づいた水産養殖施設向けの排水ガイドラインを設定すべきであると証言した。他方、ワシントン大学の西部地域水産養殖センターのKenneth Chew博士は、2002年6月13日の証言で、水産養殖産業の初期の段階で無計画な開発、利用が行われてきたことを認めて、連邦政府による一貫したガイドラインが有益であることに同意したが、同時に水産養殖の経済的可能性を認識するべきであり、ガイドラインは将来の水産養殖業の成長を抑制するようなものであるべきではない、とした。何人かの発表者はまた、養殖魚及び生物工学的操作を施された魚が誤って自然環境内に放流された場合の予想される環境への影響について発表した。
 
 発表者の大部分は、問題点を明確にし、連邦の政策と州政府の政策の調整を助けるためには監督官庁を一本化する必要があるという点で意見が一致している。現在水産養殖問題は、NOAA(米国海洋大気局)、USDA(農務省)、NMFS(米国海洋漁業庁)で監督責任を分け合っている。様々な未解決の問題を明確にするためには研究開発費の拡大が助けとなるという点では全員の意見が一致した。
 
<野生動物相>
 生物海洋資源の議論において審議会は野生動物相の問題を検討した。太平洋北西部の環境保護を目的としたBullitt財団のDenis Hayesは野生動物の保護に真剣になるべきと述べた。氏はNMFS(米国海洋漁業局)とUSFWS(米国魚類野生生物局)の調査で、メイン州サケ養殖場からアトランティック・サーモンが逃げ出したことが天然アトランティック・サーモンの回復の大きな障害となっているとが確認されたことを指摘した。Environmental DefenseのGoldburg博士は、この問題を防止するための適切な手段が、NMFSとUSFWSによりすでに提案されているので、これを支持するようにと、審議会に促した。
 
<生物の多様性>
 「生物の多様性」に関して審議会が出す結論は今後の海洋政策に最も長期的な影響を及ぼすと考えられる。審議会が生物の多様性をどのように考えているか、また生物の多様性における各種利害のバランスを保つうえで政策策定者が使用する基準として審議会がどのようなものを提案するかは、今後の公共政策策定に重大な影響を与えるであろう。海洋環境保護団体Marine Conservation Biology InstituteのElliot Norseは審議会に対して、生物多様性の問題が環境保護運動を動かす力として浮上してきたにもかかわらず、画期的な立法であった1996年のマグナソン・スティーブンス法においてこの問題が全く言及されていない事実を指摘した。ニューイングランド地域の環境保護団体Conservation Law FoundationのPeter Shelleyはすべての連邦機関に海洋資源管理の権限を委ねるように提言した。
 
 管理の対象とされている種が危機に瀕している例として、サンゴ礁、海ガメ、モンクアザラシ、海綿、その他の多様な海洋生物種にスポットライトをあてた発表が続出した。審議会が特に関心を持ったのは、商業水産資源量の衰退に伴う経済的ファクターである。この点は他の議題の検討においても論点となるからである。
 
 漁業団体であるPacific Coast Federation of Fisherman's AssociationsのGlen Spainは「生息環境の喪失と破壊により生物海洋資源の再生産力が破壊されれば、漁業資源管理に実際的な意味はなくなる」と述べた。今日すでに海岸線における生息環境の破壊、特に湿地の喪失と河口域の劣化による漁業の損益は270億ドルに達している。生息環境の破壊により「生物の再生産力は絶対的な涸渇に向かっているが、原状復帰は可能である」と彼は結論した。「生息環境への投資は本質的にわが国の将来の経済に対する投資である。」
 
 しかし、生物多様性の議論において、「特定の生物をさらに保護する必要がある」という意見以上の具体的な提案をおこなった発表は驚くほど少なかった。
 
<非管理資源の要件>
 何人かの発表者が非在来種の侵入と拡散を抑える必要性について発言した。この問題について具体的にどのような措置をとるべきかについて、意見は分かれている。具体的には、シカゴ市代表とUSFSの代表は、規制を必要とする分野としてバラスト水排出、特に五大湖に入る船舶からの排出を挙げた。五大湖海運協会の代表は、USCGは船主が対応可能な基準を定める必要があるとし、USCGと船主が協力して、これらの基準を満たすための建設的な解決策を考案できるような柔軟性を認めるように審議会に要請した。ワシントン州知事室のRon Schulzは各港湾の闘で規則の適用にばらつきがあることに注意を促し、USCGがこの問題に効果的に対処するためには、財源の拡大が必要であると述べた。
 
 「民間部門の参加を仰ぐことにより革新的なアプローチが生まれるすばらしい可能性がある。政府機関と省庁(連邦・州政府)の間の密接な協力を促進し、首尾一貫した費用効果の高い、効率的な規則と管理を生み出すすばらしい可能性がある。そして、海洋侵入種政策と管理において米国が世界のリーダーとしての役割を果たすすばらしい可能性がある。」Williams大学のJames Carlton博士が2002年9月24日の公聴会でおこなった証言は、他の証言と対照的であった。
 
 証言のほとんどは、様々な事項に関して情報、データ、そして理解を拡大することにより問題点がより明確になるという点で意見の一致を見た。データ収集システムは不十分であり、範囲が狭く、予算不足であり、信頼性が低いとされた。包括的海洋観測システムの開発から、大学、NOAA、そしてその他の連邦政府の予算を拡大し、新たなデータ収集事業を実施するというものまで、様々な提案が出された。
 
 状況が不明確な場合の意思決定について審議会がどのような声明または提言を作成するかがこの議論における重要な要素であった。問題の中には最後まで答えが出ないものもあれば、十分なデータの集積が不可能なものもある。そのような場合、特定の行動を禁止するか、実施するかという点は公共政策において最も複雑な問題のひとつとなる。







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