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3. 審議会の活動
 設立以来、海洋政策審議会の主たる活動は一連の公聴会の開催であった。これらの公聴会から得た情報と、そこから発生する政策のオプションと提言をまとめるために、審議会は数多くの文献を作成している。
 
3-1. 公聴会
 2001年9月から2003年4月にかけて、審議会は全部で15回の公開会議を開催した。政策オプション検討に関連した大部分の会議はワシントンD.C.で開催されたが、会議日程の眼目は全米各地で行われた9回の地域公聴会であった。これらの地域公聴会はワシントンD.C.の海洋政策関係者だけから意見を聴取したのでは必ずしも反映されない利害関係者(stakeholders)から情報を引き出すことを意図したものであった。公聴会の内容の分析については後に詳説する。
 
 公聴会の概略を日付順に以下に示す。
 
2001年9月17-18日、ワシントンD.C.
 海洋政策審議会の設立第1回会議。James D. Watkins海軍大将(退役)が議長に選出された。ワーキング・セッションを経て審議会は「ガバナンス」、「スチュワードシップ」、「研究・教育・海洋オペレーション」、「投資開発」の4分科会構成を採用した。会議では、Donald L. Evans商務長官、James Connaughtonホワイトハウス環境クオリティ諮問委員会委員長、Paula Dobrianskyグローバル問題担当国務次官、Christine Todd Whitman環境保護局長が演説を行った。
 
2001年11月13-14日、ワシントンD.C.
 海洋政策審議会第2回会議。審議会は議会メンバー、全米レベルの組織、連邦機関代表から意見を聴取した。同会議では、審議会が協調的及び包括的国家海洋政策の提言をまとめるにあたって、海洋関係者が懸念する問題点、関心事に焦点があてられた。
 
2002年1月15-16日、サウスカロライナ州チャールストン
 審議会第3回会議である南東地域会議は1月15日、16日にサウスカロライナ州のチャールストンで開催された。
 
2002年2月22日、フロリダ州セントピータースバーグ
 審議会第4回会議であるフロリダ・カリブ海地域会議は2002年2月22日にフロリダ州のセントピータースバーグで開催された。
 
2002年3月7-8日、ルイジアナ州ニューオリンズ
 審議会第5回会議であるメキシコ湾地域会議は2002年3月7、8日にルイジアナ州ニューオリンズで開催された。
 
2002年4月18-19日、カリフォルニア州ロサンゼルス
 審議会第6回会議である南西地域会議は2002年18、19日にカリフォルニア州サンペドロで開催された。会議では、「海洋クオリティと人類の健康」「海洋バイオテクノロジー」「海洋保護区域政策」「生息環境と生物資源」「海洋科学施設」「沿岸及び外洋大陸棚管理」の問題に焦点があてられた。
 
2002年5月13-14日、ハワイ州ホノルル
 審議会第7回会議であるハワイ・太平洋諸島地域会議は2002年5月13、14日にハワイ州ホノルルで開催された。会議では、「国際生物資源管理」「観光、開発、沿岸管理」「サンゴ礁」「海洋と気候」「海洋利用と管理」の問題に焦点があてられた。
 
2002年6月13-14日、ワシントン州シアトル
 審議会第8回会議は2002年6月13、14日にワシントン州シアトルで開催された。この会議は審議会が全米各地で開催する9回の地域公聴会の6番目にあたる。会議では「太平洋北西部における生物資源管理」「水産養殖」「海洋科学、探査、教育」「海洋ガバナンス」「海洋区域管理と資源調整」「複数の視点」「漁業管理における科学と政策の対話」の問題に焦点があてられた。
 
2002年7月23-24日、マサチューセッツ州ボストン
 審議会第9回会議は2002年7月23、24日にマサチューセッツ州ボストンで開催された。公聴会では北東地域にかかわる沿岸、海洋問題に関する証言が行われた。地方自治体や地域政府機関、非政府組織代表が証人として招かれた他、一般からもコメントが寄せられた。
 
2002年8月21-22日、アラスカ州アンカレッジ
 審議会第10回会議は2002年8月21、22日にアラスカ州アンカレッジで開催された。公聴会ではアラスカ地域にかかわる沿岸、海洋問題に関する証言が行われた。地方自治体や地域政府機関、非政府組織代表が証人として招かれた他、一般からもコメントが寄せられた。
 
2002年9月24-25日、イリノイ州シカゴ
 審議会第11回会議は2002年9月24、25日にイリノイ州シカゴのJohn G. Shedd水族館のPhelps公会堂で開催された。公聴会では五大湖地域にかかわる沿岸、海洋問題に関する証言が行われた。地方自治体や地域政府機関、非政府組織代表が証人として招かれた他、一般からもコメントが寄せられた。会議では、「天然資源」「非点源汚染」「ガバナンス」「外来種」「教育」「気候予測」の問題に焦点があてられた。
 
2002年10月30日、ワシントンD.C.
 米国海洋政策審議会は2002年10月30日水曜日に協調的国家海洋政策ための提言をまとめるにあたっての意見聴取と議論のための会議を開催した。これは審議会第12回目の会議である。会議では「国際パネル」「衛星とデータ管理」に焦点が当てられた。
 
2002年11月22日、ワシントンD.C.
 米国海洋政策審議会は実態調査段階を完了し、2002年11月22日にワシントンのロナルド・レーガン国際貿易センター講堂で開催された会議では次の段階に入った。会議では16名の委員により、包括的かつ協調的国家海洋政策の策定に関連した主要な問題点に対処するための様々な政策オプションについて話し合いが行われた。審議会第13回会議となる第1回政策審議会議で、審議会は全米の沿岸地域を網羅する9回にわたる地域会議を含む10ケ月にわたる事情調査段階から審議段階に移った。
 
2003年1月24日、ワシントンD.C.
 米国海洋政策審議会は2003年1月24日にワシントンD.C.のロナルド・レーガン国際貿易センター講堂で第14回公開会議を開催した。会議では包括的かつ協調的国家海洋政策の策定に関連した主要な問題に対処するための様々な政策オプションについての議論が行われた。これは2回目の政策オプションに関する公開会議であった。
 
2003年4月2-3日、ワシントンD.C.
 米国海洋政策審議会は2003年4月2-3日にワシントンD.C.のジョージ・ワシントン大学で会議を開き、協調的国家海洋政策のための提言の作成について話し合った。会議では、政策オプションの草案、一般コメント募集期間について話し合われた。これは第15回公開会議であり、3回目の政策オプションに関する公開会議であった。
 
3-2. 分科会
 海洋政策問題を分析する上で、審議会はアドバイスと分析のための以下の4つの分科会を設立した。
 
○ガバナンス
○投資と実行
○研究・教育・海洋オペレーション
○スチュワードシップ(海洋管理)
 
 各分科会は担当分野に該当する問題点を検討、分析し、その所見を本審議会に報告することとされた。
 
 審議会によれば、「分科会は地域公聴会の結果を最大限に活用し、審議会が検討すべき主要な問題点を特定するため必要不可欠な役割を果たす」ものである。分科会のメンバーは、各地域での公聴会において偏りのない広範なテーマについて説明を受け、2000年海洋法に定められた要件を満たすために必要な情報を確実に収集するよう求められた。
 
 公聴会で収集した情報をもとに、分科会は重要な問題点を特定のうえ検討し、これらの問題点に対処するため選択肢の概要を作成し、具体的なテーマについて、より詳細な情報を提供して、公式報告書をとりまとめるために何が必要かを決定する。各分科会で作業中の事項については、審議会最終報告書及び提言の統合性と一貫性を確保するために、検討の過程を通じて他の分科会と情報を共有することとした。
 
 審議会のスタッフ(職員)は分科会を補佐することを意図した構成となっている。上級スタッフであるアソシエート・ディレクターに加えて政策担当者が各分科会に配属される。さらに米国科学学会(NAS)の学術研究会議(NRC)の海洋研究委員会と相談のうえ、科学諮問パネルが召集され、各分科会が作業に使う情報の質の確保に努める。各分科会の担当した分野は以下のとおり。
 
ガバナンス分科会
 ガバナンス分科会は連邦政府、州政府、地方自治体政府の海洋問題における現在の役割を検証、推奨する改革または改善策のオプションを審議会に提言するものである。ガバナンス分科会のメンバーは以下の通り。
 
○William D. Duckelshaus(委員長)
○Lillian Borrone
○Lawrence R. Dickerson
○Marc J. Hershman
○Christopher Koch
○Andrew A. Rosenberg
○James D. Watkins
 
 ガバナンス分科会は以下の一般的な分野についてガバナンスにどのような関連性をもつかを検証することを求められた。
 
<領海と排他的経済水域ガバナンス制度>
 米国は海岸線と距岸12海里の間が米国領海であり、主権を有する領土であると宣言した。海岸線から距岸3海里までは沿岸州の法域であるが、3海里を超えた部分の連邦政府の権利は漁業、鉱物開発、水質に関する特定の法律によって規定されているだけである。この海域に関しては通則的法律もガバナンス制度も存在しない。
 
 1983年、米国は基線から200海里までの領海に接続する海域を排他的経済水域と宣言した。この海域において米国が行使する権利及び履行する義務については、特定の資源を扱う法律によって規定されているだけである。国有林、牧草地のような陸上の公有地についての米国の義務は法律により定められているが、国際的に保留された権利が存在するこの広範なオフショア海域に広く適用される統括的法律は存在しない。統括的法律が制定されれば、広範な目標の制定、調整メカニズム、研究/海図製作、その他の機能を推し進める手段となりえる。
 
<直接的及び間接的に海洋問題に責任を有する連邦政府機関の間での調整の改善>
 近年、矛盾、重複を回避し、無駄を減らすために、沿岸及び海洋に関する政府のプログラム及びサービスの調整の改善を要求する声があがっている。一貫性の向上は、意思疎通の改善から機関の統合までの様々なレベルで実施することが可能である。1960年代末には海洋諮問委員会が存在した。最近では、米国海洋パートナシップ・プログラム(NOPP)が設立された。州レベルでも、さまざまなレベルの成功を収めた沿岸及び海洋調整プログラムの例が存在する。新たに調整機関を設けることの可能性と、その結果生じる恩恵と費用を考慮の対象とすべきである。
 
<連邦主義:連邦政府、州政府、地方自治体政府の共通部分の管理>
 沿岸及び海洋について議論する場合、ほとんどすべての面で州と連邦政府の間での権力と責任の分割、分担という「連邦主義」の問題が絡んでくる。連邦権と州権にかかわるすべての問題は法律、財政、政治の3つの観点から論じることができる。これは、米国の海洋ガバナンス制度を反映している。連邦権対州権の問題は論じられているテーマとそれに適用される法律により様々な形をとる。連邦政府と州政府の関係を向上させた沿岸域管理法18のような行政ツールの例もある。連邦政府と州政府のパートナシップと協力体制の成功例と成功の理由にさらに関心を払う必要がある。
 
<ステークホルダー(利害関係者や出資者)が参加する地域に根付いた協力的意思決定プロセス>
 米国の海洋ガバナンス構造は複雑であり、数多くの機関が関与しており、各機関がそれぞれに個別の権限を委任され、独自の実施スケジュールで動いている。加えて、個人が行政プロセス及び司法プロセスに相当な権利を認められており、個人の市民的自由及び財産権は慎重に保護されている。あらゆる意思決定プロセスにおいて乗り越えるべきハードルが高いため、ステークホルダーの間の協調的意思決定の仕組みが導入されている。これらのプロセスは多用されており、これをさらに広く利用する可能性が存在する。ステークホルダー間の協調的意思決定の方法とテクニックの制度化、また沿岸及び海洋環境を管理し保護することを趣意とするプロセスの適用の拡大は十分に検討に値する。
 
<国連海洋法の批准を含む、海洋問題における米国による国際的リーダーシップ>
 
 前述の分野に加えて、検討を要するより具体的な問題の一部を以下に挙げる。
○海洋汚染の軽減。
○沿岸区域開発の管理。
○生物資源管理の向上。
○オフショア石油・ガス開発計画。
○都市港湾の保護と刷新。
 

18Coastal Zone Management Act







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