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投資と実行分科会
 「投資と実行分科会」では審議会が提案する海洋政策を実施するにおいて必要とされる新たな投資と実施戦略に焦点が当てられた。分科会は「他の分科会から具体的な問題に対する提言を受け取ったとして、審議会の提言を統合し、実行に移し、持続するためにはどのような連邦政府の組織構造、プロセス、または投資が必要か」という質問に対する答えを検討するものであった。「投資と実行分科会」のメンバーは以下の通りである。
 
○James D. Watkins
○James M. Coleman
○Paul G. Gaffney II
○Paul L. Kelly
○Christopher Koch
○Edward Rasmuson
○William D. Ruckelshaus
○Paul A. Sandifer
 
 上記の質問に答えるために、「投資と実行分科会」は既存の連邦プログラム計画と予算の徹底的な評価(海洋法セクション5により行政府が議会に提出することを義務付けられている)とセクション3(f)(2)(A)により定められた海洋及び沿岸施設の評価(研究・教育・海洋オペレーション分科会により調整されることになっている)の実施が必要となった。「投資と実行分科会」には以下のような具体的な質問が提示された。
 
○海洋プログラムに関する現在の連邦予算決定プロセスは、複数の連邦機関を統合し、海洋問題について法律で関与を認められているステークホルダー(州政府、地方自治体政府、マリン事業者、マリン産業、学術機関、その他の公益機関、民間機関)が適切に関与できるようにするのに十分なものであるか?
○審議会の統合的提言を実行に移すため、連邦政府はどのような組織構成を必要とするか?
○審議会の提言を実施することに関連してどのようなコスト上の影響があるか?
○将来、包括的海洋政策の定期的な見直しと軌道修正をどのように行うか?
○複数の機関を横断した管理協力を適切に実施し、関係する有権者と公衆に最も情報が行き渡るような方法で、米国政府が海洋プログラムに力を入れていることを一貫性と透明性をもって発表するためにはどのようにすればよいか?
 
<研究・教育・海洋オペレーション分科会>
 研究・教育・海洋オペレーション分科会は、海洋及び沿岸研究・教育・海洋オペレーションについての既存の知識についてのデータを入手し、これを評価した。2000年海洋法に定められた国家目標を達成するうえで十分なデータと知見があることを確認するため、分科会はこのデータを分析した。分科会メンバーは次の通り。
 
○James M. Coleman(議長)
○Robert D. Ballard
○Ted A. Beattie
○Edward B. Rasmuson
○James D. Watkins
 
 分科会は以下の概括的な分野について研究・教育・海洋オペレーションとの関連性において検討した。
 
○長期的海洋及び沿岸問題。(地球温暖化による海面水位上昇の影響、沿岸災害、沿岸域の陸地の侵食、海洋汚染と漂流ゴミ、河口域における面源汚染、その他の関連事項)
○海事輸送と港湾インフラストラクチャー。(融資、規制、税制、安全、その他の関連事項)
○沿岸観光とレクリエーション。(官民パートナーシップと政策、持続可能な観光産業を育成するための資源管理、その他の関連事項)
○沿岸域における自然災害。(規制と政策、国としての対応、その他関連事項)
○沿岸環境のクオリティ。(富栄養化、化学物質、ゴミ、輸送、開発に起因するストレス、その他の関連事項)
○海洋及び沿岸における施設及び技術。(沿岸及び海洋観察システム、海底観測所、海洋観測船、データ集積・統合施設、研究機関、実験室、及び関連事項)
○海洋及び沿岸分野の研究のための人材及び財源。
○沿岸及び海洋データの取得、分析、保管。
○海洋及び沿岸研究におけるリモートセンシング技術の現状。
○海洋及び沿岸科学におけるステークホルダー(産官学及び一般国民)の相対的な役割。
○海洋バイオテクノロジー研究。
○河口域保護に関する連邦機関及び州機関相互の意思疎通と調整。
○海洋及び沿岸の生物分布図。
○沿岸及び海洋の浚渫及び投棄。
○海洋及び沿岸科学における小中高、大学、大学院教育の調整。
○海洋学及び海洋・沿岸生態系の研究インフラストラクチャー。
○海洋探査拡大戦略、産官学のテクノロジー及び潜水艇、ROV、その他の機器の共用等。
○非従来型海洋エネルギー源。(ハイドレート、発電、その他)
 
<スチュワードシップ分科会>
 「スチュワードシップ分科会」(SWG)は沿岸及び排他的経済水域、そして世界の海洋における生物海洋資源、非生物海洋資源の米国のスチュワードシップの現状を評価した。SWGは地球温暖化及び海洋との関係についての知識、温暖化対処戦略の見直しを行った。分科会はまた、抽出利用できない資源としての海洋の重要なクオリティについての提言を行うことになっている。分科会は米国の接続水域とその資源、そして世界の海洋システムを、責任を持って、持続可能な方法で利用するために、米国国民に何ができるかということに焦点を当てる。スチュワードシップ分科会メンバーは次の通りである。
 
○Paul A. Sandifer
○Ann D'Amato
○Paul G. Gaffney II
○Paul L. Kelly
○Frank Muller-Karger
○James D. Watkins
 
 「スチュワードシップ分科会」は抽出できる資源及び抽出できない資源の利用と現状、水質、人間の健康、大気の作用による現象と気象、ステークホルダーの観点、規制上の決断とその影響、利用と規制の生態学的、経済的、社会的、政治的影響、科学、技術、管理、規制への投資等の分野における様々なトレンドを検討し、本審議会での議論のためにいくつかの選択肢を特定、評価した。
 
 分科会は次の10の分野で海洋利用、保護、管理、回復、執行等の広範囲にわたる問題を検討した。
 
i)教育/監視
 海洋利用に関する強い管理責任(スチュワードシップ)倫理を育成するためには海洋及び気象について米国民を十分に教育する必要がある。
 
○海洋管理責任(スチュワードシップ)を果たすための絶え間ない努力への一般国民の関心を引くにはどのような方法があるか?
○海洋/沿岸に関する問題について一般国民が理解をもって行動し、投票できるようにするために、政府は効果的に時間・労力・熱意を投入しているか?
○科学の価値と不確実性の重大さを理解できるように一般国民を啓蒙しているか?
○変化が起きているかどうか、変化の方向、規模、予想される原因を判断することができるように、沿岸及び海洋環境とそれらに繋がっている上流域の生態系の継続的、長期的監視に十分な努力を払っているか?
○一般国民は海洋、気象、気候が関連していることを理解しているか?
○一般国民は海洋の健全性と人類の健康の関係を理解しているか?
○米国は教育と訓練により国際的リーダーシップを担う機会を追求しているか?
 
ii)規制の科学的裏付け
 個々の資源を管理するうえで他の生物種や資源への影響を考慮することが必要不可欠である。米国は海洋において複雑に絡み合ったシステムを認識し、それに基づいた管理を行わなければならない。
 
○広範囲の海洋資源の利用を統制している米国の法規は利用可能な最高の科学的知見及びデータに基づいたものであるか?
○海洋環境のよき管理者となるために必要なツールを米国は保有しているか?
○資源分布図の作成に最も適した戦略は何か?
○米国が責任ある持続可能な資源利用慣行を定義するにおいて、大気と海洋の間の物理的、化学的、生物学関連性について十分な理解があるか?
○陸上開発や海洋内での変化に関連して、感染病や汚染のリスクを含む人間の健康への影響を国民は理解しているか?
○米国はこれらのリスクの監視を支援するための新たなツールを開発しているか?
○特に、スチュワードシップや資源管理の意思決定を裏付けるに足る信頼性のある知識体系が存在するか?
○その知識体系は適切に利用されているか?
○米国と国際社会の科学的努力の調整、統合の必要があるか?
 
iii)ガバナンス(管理体制)
 米国は海洋の責任ある利用を妨げるのではなく奨励するために法的、地理的にすべてを包括する明確で明快な政府組織構造を構築する必要がある。
 
○現行の組織、規制、行政制度は、複数の無関係な、または重複し、時には矛盾しているように見えるものから成り立っており、これが非効率的な海洋管理に繋がっている。これらをどのように調整(コーディネート)することができるか?
○連邦政府、州政府、地方自治体政府、民間部門の適切な役割とは何か?
○米国の政府機関相互及び連邦−州管理メカニズムはスチュワードシップの観点から見て十分に機能しているか?
○既存の管理体制は付託されている権能に矛盾があることから機能を十分に発揮できていないということがあるか?
○規制力の観点から、どのようなポジティブな奨励策、抑止規定、または双方の組み合わせを、持続可能な資源利用を拡大するために海洋管理体制下で利用することができるか?
 
iv)スチュワードシップ投資
○米国は資源を涸渇させることのない海洋利用という観点から自己評価するにたる知見を得るための十分な努力を払ってきたか?
○変化の有無、変化の方向、規模、予想される原因を判断することができるように、沿岸及び海洋環境とそれらに繋がっている上流域の生態系の継続的、長期的監視に十分な努力を払っているか?
○これらの努力は、大気、海洋、人間社会、生物資源の間の関連性を検討するために適切な範囲のものであるか?
○どの資源が良好な状態にあり、どの資源に問題があるかを国民が見分けることができるか?
○米国はこれらの問題の原因をはっきりさせ、解決策を生み出せるか?
○国民は水産資源やその他の生物海洋資源についての米国の管理責任(スチュワードシップ)の現状、及びそれらの資源の生存にとって必要不可欠な生息環境を理解しているか?
○連邦政府及び州政府の水産資源管理メカニズムは対象魚種及び非対象魚種について効果的な管理責任(スチュワードシップ)を果たしているか?
○米国の海洋環境における海中文化資源の管理及び保護についての国家政策と計画を作成する必要があるか?
 
v)沿岸開発
 現在、新規の商業開発、宅地開発の40%以上が海岸沿いにおけるものであり、2025年には米国人の約75%が沿岸地域に居住するようになると推定されている。米国はこのような成長を管理し、人間の活動の原動力となる海岸線を維持するための戦略を開発する必要がある。野放しの沿岸開発とそれに関連した面源表流水、非沿岸地域からの表流水、そして侵食は沿岸及び海洋環境とコミュニティ全体に及ぶ深刻な問題となる。同様に、沿岸地域の観光、沿岸地域への人口移動は、沿岸環境から得られる経済的価値や発展に関連した海洋環境への影響に対する主要な要因である。
 
○経済の原動力としての米国の沿岸地域の活力を維持しながら、問題を軽減し、よりよく管理するために国家政策の点で米国に何ができるか?
○米国は沿岸開発及び観光に関連した包括的管理戦略と構造を開発することを検討すべきか?
 
vi)執行
 管理責任(スチュワードシップ)の成果をあげるうえで規則や法令の効果的執行は必要不可欠な要素である。
 
○米国は管理責任法規を効果的に執行する手段を保有しているか?
○国土安全保障の重要性が増している現状で、どのようにすれば国家安全保障関連業務に影響を与えることなく管理責任法規の執行の質を向上させられるか?
○管理責任法規の執行を補助するための新たなテクノロジーの開発が行われているか?
○生物海洋資源及び生息域に対する影響を最小限に抑えながら、国防という使命を効果的に果たすために、国防総省は既存または新たな保安システムをどのようにテストし、海洋における訓練をどのようにして行うことができるか?
○米国の沿岸及び海洋環境における管理責任規則の執行を強化するために、どのようにして連邦政府、州政府、地方自治体が協力することができるか?
 
vii)海上輸送
 競争力のある港湾を含む活気のある海上輸送システムは米国の経済的将来のために必要不可欠である。
 
○港湾開発、管理、拡張、再建、そしてこれらの活動が周囲の沿岸コミューティと海洋環境に与える影響を国家というコンテキストのなかでどのように管理することができるか?
○米国陸軍工兵隊やその他の連邦、州、地方自治体機関の事業は、地域の生態系の必要条件と管理責任(スチュワードシップ)の倫理と一貫したものであるか?
○港湾インフラストラクチャーの近代化において陸海空路を考慮に入れた統合的な国家運輸政策を策定することができるか?持続可能な方法で天然資源を利用することにより、これを実施することができるか?
○公海における輸送に関連した管理責任(スチュワードシップ)の問題が存在するか?
○バラスト水やその他の排水に関連した生物学的及び化学的汚染の問題を最小限に抑えるための海運産業に対する奨励策が存在するか?または、そのような奨励策を策定することが可能か?
○これらの産業における管理責任(スチュワードシップ)を促進するうえで何が効果的かという点で、どのようなことを学んだか?







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