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2. 海洋政策審議会の運営
 海洋政策審議会の作業日程は2000年海洋法で定められた予定から大幅に遅れており、設立から2年以上経過したものの、審議会は大統領と議会に対して報告書をまだ提出していない。2003年6月に報告書の目次草案を公表して以後、報告書に関する新しい発表はない。
 
2-1. 海洋政策審議会の構成
 海洋政策審議会の16人の委員の経歴は海洋探査、資源開発、海運、海洋学、政策、法律まで様々な分野にわたっている。審議会委員は連邦、州、地方自治体レベルで行政経験を有している。委員の海洋問題に関する経験は、海軍、資源管理、学術調査、また民間部門の分野に及んでいる。
 
 審議会委員は以下の通り。
 
○James D. Watkins(議長)
○Rober Ballard
○Ted A. Beattie
○Lillian Borrone
○James M. Coleman
○Ann D'Amato
○Lawrence Dickerson
○Paul G. Gaffney II.
○Mark Muller-Karger
○Edward B. Rasmuson
○Andrew A. Rosenberg
○William D. Ruckelshaus
○Paul A. Sandifer
○Thomas R. Kitsos(事務局長)
 
 各審議会委員の略歴は以下の通り。
 
James D. Watkins海軍大将(退役)(メリーランド州)
海洋政策審議会議長
 James D. Watkins大将は最近「海洋研究教育コンソーシアム」(CORE)7の理事長を引退した。Watkins大将は米国海軍士官学校を卒業し、海軍軍人としては最高のポストである海軍作戦部長として40年近くの軍歴の最後を飾った。1989年にはジョージ・ブッシュ大統領(当時)により第6代エネルギー長官に指名された。指名前にはHIV(AIDS)に関する大統領諮問委員会の委員長を務めていた。1993年Watkins大将は海洋地学研究の国際化をはかる海洋学研究所連合(JOI)8の理事長に就任し、COREを創設した。
 
Robert Ballard博士(コネチカット州)
 Robert Ballard博士は30年間、ウッズ・ホール海洋研究所で海洋学者として勤務し、同研究所で深海潜水実験室を創設した。ウッズ・ホールに在籍中に、有人潜航艇の活用に道を開き、中央海嶺の初めての有人探査により、プレート=テクトニクス説の裏付けに貢献し、熱水噴出孔とその周辺の生物を発見した。博士はまた、遠隔操作の海底探査システム、アルゴ/ジェイソンの開発に参加、これがタイタニックの発見につながった。後に、彼はジェイソン教育財団を創設した。これはインターネットをベースにした遠隔学習プログラムであり、現在、世界中で130万人の生徒と、3万人の科学の教師がこれに参加している。1997年、彼はコネチカット州ミスティックに探査研究所(Institute for Exploration)を創設し、深海考古学という新たな調査研究分野を作り上げた。その結果、最大のローマ帝国の沈没船群、深海で発見された最古の古代船が発見された。現在、博士は米国地理学会の客員探検家(Explorer-in-Residence)であり、新たに創設された潜水研究所(Immersion Institute)の理事長(president)である。同研究所は、米国海洋保護区に対する「ライブ」の一般アクセスを提供している。2002年にBollard博士はロードアイランド州のNarragansettのロードアイランド大学海洋学大学院の海洋学教授、考古海洋学研究所所長に任命された。
 
Ted A. Beattie(イリノイ州)
 Ted A. Beattie氏は、シカゴのジョン・G・シェッド水族館の館長でありCEOである。同水族館は世界最大の屋内海洋水族館であり、年間入館者数は200万人を数える。Beattie氏は現在、米国動物園水族館協会の理事長を勤めている。同協会は全米で7,000人の専門家メンバーと、196の公認動物園、水族館をその会員としている。23年にわたる動物園・水族館キャリアで、Beattie氏はテネシー州ノックスビル、テキサス州フォートワースの動物園のディレクターを務めた。
 
Lillian Borrone(ニュージャージー州)
 Lillian Borrone氏は2000年に27年間務めたニューヨーク・ニュージャージー港湾管理公社(Port Authority)を退職した。最後のポストは、アシスタント・エグゼクティブ・ディレクターであり、その前職として12年以上にわたり港湾通商担当ディレクターを務めた。港湾管理公社に入社する前は、コンサルタント及び運輸省の上級行政官を務めた経歴を持つ。同氏は米国科学学会9の米国エンジニアリング・運輸研究委員会の会員であり、1995〜1996年には議長を務めた。現在はパナマ運河局の諮問役員会及びEno運輸財団10役員会のメンバーである。業界団体の活動にも積極的に参加しており、1998年には米国港湾管理者協会の会長を務めている。
 
James M. Coleman博士(ルイジアナ州)
 James M. Coleman博士は1966年にルイジアナ州立大学から地質学で博士号を取得。現職はルイジアナ州立大学の沿岸研究所教授。専門は、三角州、沖合い海域におけるプロセス、形状、堆積物特性の関連性。米国科学学会海事委員会の元委員長。ロシア自然科学学院会員でもある。科学者として多くの賞を受賞しており、石油化学の分野への貢献を認められロシア科学学会からカピッツア名誉章を授与された。
 
Ann D'Amato(カリフォルニア州)
 Ann D'Amato氏は、ロサンゼルス市で、同市のRocky Delgadillo新検察官の首席補佐官を務めている。D'Amato氏は最近まで前市長であるRichard J. Riordanの下で副市長を務め、コミュニティ問題、政府関係を担当し、市、州、ワシントンD.C.における市長の立法イニシアティブの監督を行っていた。彼女はまた、コミュニティ問題、地元市民サービス、ボランティア・プログラム、プロトコル、渉外を担当した。D'Amato氏の一族は、3代にわたりカリフォルニアにおいて漁業に従事している。
 
Lawrence Dickerson(テキサス州)
 Lawrence Dickerson氏は、ダイアモンド・オフショア・ドリリング社の社長兼最高運営責任者(COO)である。同社は、大水深掘削請負業者であり、45基のオフショアリグ(セミサブ30基、ジャッキアップ14基、掘削船1隻)を保有する。ヒューストンを拠点とする同社は、世界7大洋のうち、6大洋の海域で作業をしており、自社で広範なエンジニアリングの専門知識を有している。Dickerson氏は現在、国際掘削請負業者協会(IADC11)の書記/会計、ディレクターを務め、米国海洋産業協会(NOIA12)のエグゼクティブ・コミッティーの会員であり、ディレクターでもある。また、石油業界代表として米国海洋パートナーシップ・プログラム(NOPP13)の海洋調査諮問パネルのメンバーにもなっている。
 
Paul G. Gaffney II海軍少将(退役)(ニュージャージー州)
 Gaffney少将はニュージャージー州ウェスト・ロング・ビーチのMonmouth大学学長である。2003年6月に米国防衛大学の10代目学長を退任した。1996年から2000年の間、海軍研究局長を務めた。同少将はまた海軍における上級海洋学専門家であり、1994年から1997年には海軍気象・海洋学司令部長を務めていた。彼は海軍研究所(Naval Research Laboratory)所長、その他の科学、海洋学の行政職を歴任している。1968年に米国海軍学校を卒業、機械工学(海洋)の修士号をカトリック大学で、MBAをジャクソンビル大学で取得している。
 
Marc J. Hershman教授(ワシントン)
 Marc J. Hershman氏は教授であり、弁護士であり、ワシントン大学海洋学部のディレクターである。地球の気候変化、統合沿岸区域管理、港湾・運輸、生物海洋資源管理、海洋保護区域、その他の海洋問題の教育、研究を行っている。Hershman教授は、海洋・沿岸政策研究の分野で30年以上の経験がある。1972年にワシントン大学で沿岸管理専門誌『Coastal Management Journal』を創刊し、以来、編集長を務めている。彼は、沿岸学会(The Coastal Society)の理事長を務めたことがあり、また海洋問題及び政策協会14の共同創始者であり、海洋ガバナンス研究グループ15の現役メンバーである。
 
Paul L. Kelly(テキサス州)
 ヒューストンに本社を置く国際的な海洋掘削会社であるRowan Companiesの特別プロジェクト担当常務。同社は、世界的にオフショア掘削及びオフショア・ヘリコプターサービスを提供している。米国オフショア安全諮問委員の委員を7年間務め、USCGから公共奉仕に対する賞を授与された。2000年には国際掘削業者協会により最優秀業者に選ばれた。Kelly氏は内務省の外洋大陸棚政策委員会の石油業界代表委員であり、1994年から1996年には議長を務めた経歴もある。エネルギー政策に関して広範に執筆しており、World Oil誌の論説委員会の委員も務めている。
 
Christopher Koch(バージニア州)
 Christopher L. Koch氏は、世界海運協会(World Shipping Council)の理事長であり、CEOを務める。同協会は、米国の輸出入に携わる国際定期海運会社からなる業界団体であり、海運及び海洋環境に影響を与える政府政策に関心を持っている。Koch氏は、元シーランド・サービス社の常務であり、CSX社で役員を務めたこともある。1990年から1993年まで、ブッシュ(父)大統領の指名により、FMC(Federal Maritime Commission)の長官を務めた。その前は上院通商・科学・運輸委員会の米国海洋政策研究顧問職に就いており、またSlade Gorton上院議員、John McCain上院議員の首席補佐官でもあった。
 
Frank Muller-Karger博士(フロリダ州)
 Frank Muller-Karger博士は、南フロリダ大学海洋科学部教授であり、同大学の海洋遠隔探査研究所(Institute for Marine Remote Sensing)のディレクターでもある。沿岸区域の科学教育と海洋学的研究、大陸縁辺、海洋環境の地球炭素循環における役割に関心を持っている。同博士の研究は、観測時間系列、衛星データ、高速演算、その他の新技術を使い、大規模な海洋学上の現象を計測するという手法を取っている。Muller-Karger博士は、海洋観察向け衛星技術開発支援に貢献し、NASAから表彰されている。海洋科学及び海洋管理の学位を持っており、70以上の科学文献を執筆または、共同執筆している。プエルトリコ、ベネズエラ、ドイツ系の血が混じっていおり、スペイン語も堪能である。
 
Edward B. Rasmuson(アラスカ州)
 Edward Rasmuson氏は実業家であり、慈善事業家である。同氏の一族は3世代にわたりアラスカ開発に影響を与えてきた。祖父はアラスカ・ナショナル銀行の前身を創設した。Rasmuson氏は、1975年に同銀行の社長兼CEOに就任し、1985年には会長となった。彼はまた、Rasmuson財団の理事長であり、同財団はアラスカ住民の生活の質を向上させる非営利団体を支援している。事業と慈善活動に加えて、同氏は教育に力を入れており、多くの役員会、財団、審議会のメンバーを務めている。銀行家として35年以上の経歴を通して、水産業及び海洋に関連した問題において、知識と人脈が豊富である。
 
Andrew A. Rosenberg博士(ニューハンプシャー州)
 Andrew Rosenberg博士はニューハンプシャー大学の生命科学・農学部の学部長である。2000年6月に学部長に就任する以前は、米国海洋大気局(NOAA)の米国海洋漁業局(NMFS)の副局長であった。彼はまた、4年間NMFSの北東管区長を務めていた。同博士は、国連食糧農業機構(FAO)、北西大西洋水産機構に米国代表として参加していた。海洋生物学、生物海洋資源保護の専門家であり、USCGや世界野生動物基金(WWF)といった多様な組織から評価されている。
 
William D. Ruckelshaus(ワシントン州)
 William D. Ruckelshaus氏は、Madrona Venture Groupの戦略部長であり、World Resources Institute16の役員会会長である。Browning-Ferris Industriesの会長でありCEOであったこともある。Ruckelshaus氏は1970年から1973年まで、環境保護庁(EPA)の初代長官を務めた。レーガン大統領の要請で、1983年から1985年に再びEPA長官を務めた。Ruckelshaus氏は、FBIの長官代行、司法省の副長官を初めとし、公共部門、民間部門で様々なポジションを歴任している。また、いくつかの大企業の役員も務めた。太平洋サケ協定では、特別公使となり、1993年から1997年まで、持続可能な開発についての大統領諮問委員会のメンバーでもあった。現在は、Washington Salmon Recovery Funding Boardの議長を務めている。
 
Paul A. Sandifer博士(サウスカロライナ州)
 Paul Sandifer博士は、サウスカロライナ州天然資源局(SCDNR)17局長である。1972年に入局以来、最初の25年をチャールストンの海洋資源センターで、助手、準研究員、上級海洋科学研究員として務め、その後、海洋資源研究所のアシスタント・ディレクターとなった。1984年に、博士は海洋資源部門のディレクターに就任し、1997年7月1日に、SCDNR局長に指名された。海洋資源部門在任中には、同局の水産養殖研究開発プログラム開発と、James M. Waddell, Jr海中養殖研究開発センターの創設を担当した。Sandifer博士は世界水産養殖学会の元理事長であり、名誉生涯会員である。彼は、海洋生物学、水産養殖、沿岸エコロジーの分野で多数の科学的、専門的文献を執筆、共同執筆している。
 
Thomas R. Kintos博士(事務局長)
 米国海洋政策審議会の事務局長に選ばれる前は、内務省鉱物管理局の局長代理を務めていた。鉱物管理局時代は、外洋大陸棚上の天然ガス、石油その他の鉱物資源の効果的管理、外洋大陸棚及び陸上の国有地、インディアン所有地からの鉱物資源開発による歳入の収集、分配を担当していた。入局前は、20年間にわたり下院海運漁業委員会のスタッフをつとめ、米国の海洋・沿岸問題、オフショア・エネルギー開発政策、環境及び海洋資源管理立法についての分析を担当した。委員会における最終ポストは主席顧問であった。イリノイ大学から政治学で修士号と博士号を取得しており、海洋、沿岸その他の公共政策問題に関して30ほどの論文を発表している。
 

7Consortium for Oceanographic Research & Education(CORE)は米国の海洋研究機関、大学、研究所、水族館を会員とする協会である。同協会のミッションは海洋学における研究、教育の支援、知識の伝播であり、海洋学関係分野における研究・教育プログラム運営のアドバイスを行い、米国の研究者、連邦、州、地方レベルの政府機関の間の情報と知識の交換を促進することを目的とする。国民の海洋及び海洋学上の問題に対する関心と理解を高め、海洋学が米国の国家安全、経済発展、生活の質の向上、教育についての米国の政策上の目標と切り離せないことを国民が認識するような環境を育成し、学術機関、連邦政府研究機関、産業における海洋学、技術、研究の間の繋がりを強化する。同協会は海洋学問題の中心的組織となることをめざしている。海洋学、技術の分野で積極的に研究、教育活動を行っている米国の学術機関を会員とし、政府及び民間から補助金を受けて、海洋学研究・教育におけるパートナーシップの育成を支援する。政府機関、学術機関、海事産業を結ぶ重要な橋わたしとして、民間部門にCOREに対するアドバイス、参加を求める。海洋学研究・教育に関する政策制定者及び意思決定者と積極的に協力する。COREは立法活動にも関心を持っており、議会公聴会でも何度か証言を行っている。海洋法の立法化も支持してきた。
8Joint Oceanographic Institutions: 1976年に民間の非営利団体として創設された米国海洋関係学術機関コンソーシアム。参加機関はフロリダ州立大学、コロンビア大学Lamont-Doherty地球観測所、オレゴン州立大学海洋大気学部、ペンシルバニア州立大学地球鉱物学部、ニュージャージー州立大学ラトガーズ校海洋沿岸学研究所、カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋研究所、スタンフォード大学地球科学部、テキサスA&M大学地球科学部、カリフォルニア大学サンタクルツ校、フロリダ大学、ハワイ大学海洋地球科学技術学部、マイアミ大学Rosenstiel海洋大気学部、ミシガン大学文科芸術学部、ロードアイランド大学海洋学大学院、サウスフロリダ大学海洋学部、テキサス大学オースティン校地球物理学研究所、ワシントン大学海洋水産学部。
9National Academy of Science(NAS):民間、非営利の学術団体。
10Eno Transportation Foundation: 1921年にWilliam Phelps Enoにより創設された非営利団体。すべての運輸モードにおける交通管理と安全性の向上を図ることを目的とする。
11International Association of Drilling Contractors(http://www.iadc.org/
12National Ocean Industries Association(http://www.noia.org/
13National Ocean Partnership Program: 米国海洋学パートナーシップ法(公法104-201: 1997会計年度国防予算権限法)によって制定されたプログラム。監督官庁は海軍省。プログラム運営のオフィスは海洋研究教育コンソーシアム(CORE)オフィス内にある。同プログラムは、海洋、沿岸区域の理解を高め、米国が海洋学の分野で指導的地位を確立し、海洋学に関する研究、教育リゾースをシェアする公式のメカニズム作りの必要性から生まれたものである。同プログラムは、海洋に関する知識を高めることにより、経済開発、国家安全保障、生活の質、科学教育・コミュニケーションといった国家的目標を促進し、データ、リゾース、教育、コミュニケーションという点で、連邦政府機関、学術機関、民間企業、そのたの海洋学関係者の間のパートナーシップ確立の可能性を探求し、それを実現することを目的としている。同プログラムは、毎年、議会に対する報告を義務づけられている。(http://www.nopp.org/
14Marine Affairs and Policy Association: 1992年に創設された海洋・沿岸専門家や学者からなる団体。海洋問題、政策の分野の高等教育、研究の促進を目的とする。
15Ocean Governance Study Group: 1991年に組織された。米国全土の学術機関の30名以上の海洋政策リーダーの同盟。OGSGの活動は主にシーグラントにより支援されている。
16World Resource Institute: 環境シンクタンク(http://www.wri.org/
17National Centers for Coastal Ocean Science: 商務省米国海洋大気局内の組織。NOAAが所掌する沿岸スチュワードシップ分野について、モニター、研究、評価、支援を行う。







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