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4-3. 政府による援助と産業促進
 2000年に策定された総合的な国家開発計画は、2000年から2003年に実施することを目的としている。この計画に関する概要は付録5に添付する。総合計画の中の運輸開発計画では、電気通信や空港の基幹施設の改善及び交通・車両規定の整備に重点を置いている。また国内における海上輸送が適当なレベルで行われるよう、人々の住む全ての離島において、適切な設備が整備し、波止場やドック施設を建設することが必要であるとしている。
 
 クリスマス島における人工衛星追跡基地の需要を満たすために日本が出資して建造した大きな桟橋以外は、政府資金が不足していたためこの計画は完全には実行されなかった。
 
 キリバス政府は、ベシオから離島まで輸入品を出荷する費用の一部を補填するため、米等の基本的生活物資を除く輸入品に対して、CIF(運賃保険料込み価格)ベースの2〜3%の政府手数料を課している。
 
 また、競争入札を通して民間企業に免許を取得させ、離島への船便の運行に参加させようとする政策に関してもほとんど進展がない。
 
 ベシオ港、波止場、及びコンテナヤード施設の大規模な改良工事は1990年代に終了したが、こうした改良はいずれも港が必要とする基準をはるか下回っている。
 
4-4. 海上輸送産業
 キリバスの船籍は情報通信運輸省の海事部が管理している。この船籍には長さ10mの小型の上陸用舟艇から1,000tの貨物船/客船まで、異なる規模の船24隻が登録されている。
 
 国有の海運企業、キリバス・シッピング・サービス社(KSSL)は、主な3つのグループの離島間を行き来する貨物船/客船を3隻所有し、運行している。
 
 3隻の船のうち2隻は300GRTの沿岸船で、「MV Nei Mataburo」と「MV Nei Momo」であり、もう1隻は1,000GRTの「MV Nei Matangare」で離島間を運行するとともに、フィジーまで航行している。またKSSLは上陸用舟艇「MV Tebetiraoi」を運行している。各船の運航状況は次のとおり。
 
(1)「MV Nei Matangare」は20フィートコンテナ50個と60〜70名の甲板船客を取り扱うことができる。この船は毎月ベシオからクリスマス島まで、定期的に運行している。
(2)300GRTの船2隻はベシオを出発してギルバート・グループ周辺を運行しており、時折クリスマス島へも航行している。定期便はなく、需要と供給に基づいて運行している。バナバ島には毎月、これら2隻の300GRTの船のうちのいずれか1隻が運航している。
(3)KSSL船の乗客輸送における平均原価は、クリスマス島への7日間の船旅の場合、50豪ドル(甲板船客)から150豪ドル(船室利用客)である。
 
 また、合計15社の民間海運業者がベシオと離島の間で、貨物や乗客を輸送している。そのうち、ベシオから船を運航している主要民間企業3社は以下の通り。
 
(1)ファーン・シッピング・カンパニー社(Fern Shipping Company)
 不定期にベシオとライン・グループの間を航行する300GRTの船を所有、運行する。
(2)キリス・インターアイランド・シッピング・カンパニー社(Kiris Interisland Shipping Company)
 不定期にて300GRTの船を運行
(3)WKKシッピング社(WKK Shipping)
 700GRTの船を運行。ライン・グループとフェニックス・グループの島々の間で貨物や乗客を輸送している。
 
 その他、地元の個人が所有する船が20隻ある。通常、これらの船はタラワと近くのアバイアン島、マイアナ島及びマラケイ島の間を運行し、少量の貨物と数人の乗客を輸送している。これらの航路で使用されている船の大部分は、単一の船外機をもつ長さ7mまでの小型のカヌーか、長い「バナナボート」である。これらの船の大部分は登録されておらず、通常村の協同組合が所有し、物資をタラワからの輸送と、子供たちの学校へ送迎のみを目的としている。これらの船は、小規模な浅い港を行き来するのに最も適している。
 
 同国への輸入品は全て、地元の島間を結ぶ船で国内に運ばれる前に、ベシオに荷揚げされる。タラワで消費されるのは輸入品の約50%、輸入品を他の地域へ運ぶためには、ベシオ港で積み替えを行わなければならない。また、輸出品(50kgの袋に詰められたコプラを含む)についても、ベシオ港で積み替え、輸出される。
 
 2002年には、約1万1,000tのコプラがキリバスから輸出された。同年、約3,500個の20フィートコンテナと6,000tのバラ積み一般貨物が輸入され、離島、特にクリスマス島に運ぶためにその約半分がベシオで積み替えられた。
 
 キリバスには貨物を取扱う船積み代行店が5社ある。これにはキリバス港湾局(貨物輸送の取扱い認可を取得)とキリバス・シッピング・サービス社(Kiribati Shipping Services Ltd)が含まれている。またベシオに拠点を置く民間の運送業者/船内荷役請負会社が3社ある。これらはキリバス社、モアエル社、及びネイ・タエアン・エンタープライズ社の代理店である。
 
 キリバスを訪れる旅行者の数は、域内の島国の中で下から2番目である。ここには地元で所有されている観光船/クルーズ船は存在しない。第二次世界大戦の遺跡訪問を切望する海外からの観光客が時折タラワにやってくる以外は、観光産業はほとんど無に等しい。
 
4-5. 海事産業
 ベシオには、最大40tの小型船のみを取り扱う造船台がある。この造船台は、国有企業のベシオ・シップヤード社(Betio Shipyard Ltd(BSYL))によって運行、管理されている。その他の修理や乾ドックヘの入渠は全て、フィジー等他国で行われている。
 
公共部門と民間部門の海運業者の両方を支えていくために、BSYL社は船やボートの建造及び管理サービスを提供する責任も担っている。同社の造船台の能力には限界があり、造船所周辺の水深が浅いにもかかわらず、BSYL社は小型の地元漁船を含め、沿岸あるいは島間の海上輸送に使用される小型ボートや船を設計、建造、保守点検を行ってきた。
 
 タラワにある国有の海洋研修センターは、労働雇用協同組合省によって管理され、海洋研修分野に経験のあるドイツ人の専門家が運営している。同センターは船員の訓練要件、資格基準等に関する国際条約(STCW95)の必要条件を満たしている。
 
 研修生が「二等水夫」として認可されるには、15カ月の基礎訓練を受ける必要がある。毎年約40人の研修生が同センターを卒業している。海上で2年間を過ごした後、研修生は大学院に進み、上等水兵、運転士、あるいは有資格スチュワードとして卒業することができる。卒業生は、特にドイツ系船舶によってすぐ雇用が決まるが、常にキリバス出身の船員2,000人が外国船に勤務している。また、近隣の島国ツバルからも研修生を受け入れている。
 
4-6. 港湾設備
 ベシオの主要港には最大2,000GRTの小型船のみを取り扱うことができる、喫水4.5mの波止場がある。この波止場は長さ80mで、日本の援助で建造された。ベシオの波止場では20フィートコンテナ600個を取扱うことができ、容積10,000m3の倉庫設備がある。
 
 クリスマス島では、1万GRTまでの船を停泊させることができる桟橋が2002年3月に完成した。日本の援助で建造されたこの港湾設備は、日本の人工衛星追跡基地の需要に応えることが主な目的である。
 
 キリバスには他に波止場が存在しない。島間で貨物を輸送する際には、沖合の錨地と艀(バージ)が使用されている。
 
4-7. 経済協力の現状
 キリバスでは、79年に燐鉱石が枯渇して以来主要な輸出産品はコプラと魚類であるが、天候等の要因により大きく影響を受けるため経済状況は安定していない。政府は旧宗主国である英国からの財政援助と、燐鉱石枯渇後に備え設立していた収入均衡準備基金等により国家財政を支えてきたが、英国からの経常予算に対する財政援助が1986年に打ち切られたことから、援助源の多元化を図っている。
 
 現在、キリバスへの主要二国間援助供与国は、日本(インフラ関係)、オーストラリア(離島における水・衛生、人材育成)、ニュージーランド(人材育成)である。多国間援助は、アジア開発銀行、EU、国連開発プログラム(UNDP)等が実施している。
 
図6. キリバスへの国際援助
Kiribati
 
Receipt 1999 2000 2001
Net ODA (USD million) 21 18 12
Bilateral share (gross ODA) 94% 83% 83%
Net ODA / GNI 23.5% 21.8% 17.5%
Net Private flows (USD million) 8 0 -
 
For reference 1999 2000 2001
Population (million) 0.09 0.09 0.09
GNI per capita (Atlas USD) 1000 940 830
 
Top Ten Donors of gross ODA (2000-01 average) [USD m]
1 JAPAN 5.1
2 AUSTRALIA 5.1
3 NEW ZEALAND 1.6
4 AS. D B SPECIAL FUNDS 1.3
5 EC 0.7
6 UNITED STATES 0.6
7 UNTA 0.4
8 UNDP 0.2
9 UNFPA 0.0
10 GERMANY 0.0
 
Due to insufficient coverage, sectoral breakdown is not available for this country.
 
 
Source: OECD, World Bank.
出所:OECDウェブサイト
 
4-8. 日本の経済協力の現状
 日本とキリバスとは、キリバスが広大な200海里経済水域を有しており、日本のかつお・まぐろ漁業にとり重要な漁場になっていること、2000年2月に宇宙開発事業団とキリバス政府の間でHOPE-X(宇宙往還技術試験機)着陸実験計画のため、キリバスのクリスマス諸島の土地利用契約が締結されたこと等関係は深い。経済援助はこれまで、水産分野、人材育成及びインフラ整備に対する協力を中心に実施してきている。
 
 LLDCであるキリバスは、地理的に国際市場からの隔絶性及び国土の拡散性が極めて高い。かつての主要輸出品であった燐鉱石が枯渇した現在、水産業が同国の主要産業として経済を支えている。
 
 こうした状況に鑑み、無償資金協力では、広大な200海里経済水域に恵まれ、また基幹産業である水産業の底上げを図るべく、水産無償を供与してきており、99年度には、「総合水産施設建設計画」を実施し、水産加工施設及び機材の整備を行っている。また、97年度から4カ年にわたる「ベシオ港整備計画」が実施されており、同国の島嶼国海上輸送の改善を目的として、岸壁、スリップウェイ及び陸上施設の整備を行っている。さらに、2001年には「タラワ環礁電力供給施設整備計画」を実施した。また、草の根無償協力で、2000年には、「マイアナ島及びアバイアン島漁獲物運搬船供与計画」、「クリスマス島漁船供与計画」が実施された。
 
 技術協力については、研修員受入を中心に実施しているが、98年3月より漁業分野の広域専門家を派遣しているほか、99年度からは輸出振興、投資促進分野の広域専門家を派遣している。また、2002年10月には、クリスマス島沿岸漁業振興計画の調査を実施した。この計画は、造船台、岸壁、加工場等と関連機材(漁船、製氷機等)を整備するものである。
 
 国際機関を通じる援助としては、日本は91年より94年まで国連開発計画(UNDP)への拠出を通じ、太陽光発電を基礎にした電力供給システムの構築に協力した。98年1月には、アジア開発銀行(ADB)主催の支援国会合を東京で開催した。
 
 なお、1991年の多目的貨客船建造計画では、財団法人海外造船協力センターが調達業務全般を行っている。
 
図7. キリバスに供与された多目的貨客船
出所:社団法人海外運輸協力協会ホームページ
 
図8. キリバスヘの援助額推移
出所:ODA白書
 
4-9. 日本の経済協力の可能性
 日本の援助は既にベシオの波止場施設の改良資金として使われ、人工衛星追跡基地の需要に応えるためにクリスマス島に新しい桟橋が日本政府によって建設された。
 
 キリバスには、以下の通り日本政府が参加可能な2つの経済協力プロジェクトがある。
 
(1)ベシオにおける波止場の更なる改善。
 この波止場では、最大9mの喫水が必要とされているが、現在のところは4.5mまでしかない。現在ほとんどの航洋船は波止場に立ち寄ることができず、貨物はバージによって船から持ち運んでいる。ベシオの波止場を改良すれば、港の効率性が向上し幅広い輸入品の取扱コストが下がることにより経済発展に貢献すると思われる。
(2)国有海運業者に大型船を供給。
 KSSLが運行している小型船はベシオとクリスマス島間の貨物輸送の需要に対し効率的に対応することができず、困難が生じている。今後入手する船は、1,000GRT以上で乗客を輸送する施設を備えている必要がある。







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