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5. マーシャル諸島共和国
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5-1. 概況
 マーシャル諸島共和国は赤道の北800キロ、首都のあるマジュロ環礁を中心に200万平方キロの広大な海域にある29の環礁と5つの独立した島から成り立っている。環礁島は大小さまざまな1,225余りのサンゴでできた島々で構成されている。陸地の総面積は181平方キロでほぼ霞ヶ浦と同じ大きさである。島々は輪の形を成して並んでおり、その美しさから「太平洋に浮かぶ真珠の首飾り」と呼ばれている。環礁は南北に平行して延びた2つの列島に分けられ、東側がラタック列島、西側がラリック列島と呼ばれる。
 
 マーシャルは、1947年以来、ミクロネシア、パラオ、北マリアナとともに、米国を施政権者とする国連の太平洋諸島信託統治地域の一部を構成していたが、86年に米国との自由連合国家に移行した。米国との自由連合の下で、防衛、安全保障については米国が権限と責任を有するが、外交は独自に行っている。91年には国連に加盟した。
 
 大首長という伝統的権威をも有するアマタ・カブア大統領の下で17年間内政は安定していたが、96年12月同大統領が逝去し、97年1月その従兄弟に当たるイマタ・カブア氏が、接戦の末に後継大統領に選出された。2000年1月ノートが、第3代大統領になった。新大統領も、民間セクターの開発促進やインフラ整備、外国資本導入等の路線を踏襲している。なお、国内のクワジェリン環礁には、米軍基地が存在している。
 
 経済面では、伝統的自給経済と貨幣経済が混在しており、農業(コプラ)と漁業を除き見るべき産業は存在していない。生活必需品の多くを輸入に依存しており、貿易収支は恒常的に赤字。自由連合盟約下での米国からの資金援助及び基地関連収入に依存している。同援助が継続する自由連合盟約期間(86年から15年間)の間に経済的自立を達成することを最大の目標に置いているが、国家予算の半分以上を依然米国の援助に頼っているのが現状である。2003年には米国と改訂自由連合盟約に調印した。
 
 同国の排他的経済水域(EEZ)における漁業活動は、GDPの約14%を占めている。毎年、10万tに上る高級カツオ、キハダマグロ、キントキダイ、及びビンナガマグロを求めて、主に台湾と日本から外国漁船がやってくる。
 
 マーシャルの人口(61,100人)は4つの環礁に集中している。1万9,000人以上が首都マジュロに住み、1万人が米国ミサイル基地のあるクワジャリン環礁のアバイで生活している。その次に多くの人口が見られるのはジュルイトとワトジェで、約1,000人が居住している。
 
一般事情
1. 面積 181km2(霞ヶ浦とほぼ同じ大きさ)
2. 人口 53,200人(2002年、世銀)
3. 首都 マジュロ
4. 人族 カナカ族
5. 言語 マーシャル語、英語
6. 宗教 キリスト教(プロテスタントが大部分)
政治体制・内政
1. 政体 大統領制(大統領は議員により互選で選出)
2. 元首 ケーサイ・ノート(Kessai Note)大統領(1期4年、2000年1月就任)
3. 議会 一院制 議員数33名 任期4年
4. 政府 (大統領、閣僚は議会に議席を持つ)
(1)大統領 ケーサイ・ノート(Kessai Note)
(2)外務大臣 ジェラルド・ザキオス(Gerald M, Zackios)
経済(単位 米ドル)
1. 主要産業 農業(コプラ、ココヤシ油)
2. GDP 107.8百万ドル(2002年、世銀)
3. 一人当たりGDP 2,026ドル(2002年、世銀)
4. 経済成長率 1998: 1.1%、2001: 1.7%、2002: 4.0%
5. 物価上昇率 5.6%(1985年〜1994年平均、世銀)
6. 総貿易額 (1)輸出 9.1百万ドル(00年)
(2)輸入 54.7百万ドル(00年)
7. 貿易品目 (1)輸出 水産物、コプラ製品
(2)輸入 食料品、機械・車輛、製造品
8. 通貨 米ドル
二国間関係
1. 政治関係 1988年12月日本との外交関係開設 1991年12月在本邦マーシャル諸島共和国大使館開設 1997年1月在マジュロ日本大使館開設 (大使は駐フィジー大使が兼任)
2. 経済関係 (1)我が国の対マーシャル貿易(98年、通関統計)
(イ)貿易額
 輸出 452百万円
 輸入 392百万円
(ロ)主要品目(%)
 輸出 機械類(43)、自動車(10)、鉄鋼製品
 輸入 魚介類(94)
(2)我が国からの直接投資 1社
3. 在留邦人数 59名(2001年10月現在)
 
5-2. 政府の海上輸送に関する方針
 政府関係機関と専門組織が輸送分野における責務を共有している。運輸通信省(運輸通信省)が公式に運輸に関する最高機関であるが、道路や道路交通に関しては権限を有していない。運輸通信省の役割は港、船舶輸送、及び航空輸送の一部に限られており、方針策定における役割はそれほど大きくない。運輸通信省は国内及び海外の船舶輸送に関する規則、及び政府が保有する船舶の運行管理を管轄している。
 
 運輸通信省の海運部は国内船舶条例、マーシャル諸島港湾条例及び海運条例を管轄している。また、国内船の船籍の管理も行っている。
 
 海上輸送に関する詳細な政策は現在のところ存在せず、以下の総合的政策がこの業界の指針となっている。
 
(1)総合開発政策
・自己依存型経済の推進、政府財政の安定化と財務管理の改善
・政府内の効率性の向上、政治的干渉のない公益事業、民間事業の奨励
・長期信託基金の設立
(2)離島の開発
・離島の地方自治体が行政管理や支出管理にあたり必要な能力の開発
・必要な能力やアカウンタビリティーが十分であるとみなされた場合、公共資産の管理を地方自治体へ移管
・社会計画に対しより安定した財政基盤を供給するため、離島信託基金を設立
(3)運輸部門
・最低限の国庫補助と公共/民間部門とのパートナーシップにより、信頼できる国内航空輸送及び海上輸送を整備
・政府による輸送インフラの維持と安全に関する規制の強化
・安定した海上輸送スケジュールの確立
・輸送の効率化と運行の信頼性向上のために、離島の寄港地における貨物の集中化を促進
 
 マーシャル諸島共和国の信託会社は運輸通信省の管轄下にある。この信託会社は海上輸送業界におけるコーポレートプログラムの調整を行っており、マーシャル諸島の旗を使用する国際航海船舶500隻以上の便宜置籍国船舶登録を有している。これには国際輸送に従事する1,500万GRT以上の船が登録されており、世界で9番目に大きな便宜置籍国船舶登録である。船籍の登録数は2004年末までに2,000万GRT以上に増加することが見込まれる。
 
 マーシャル諸島共和国の便宜置籍国船舶登録は適切に管理されている。マーシャル諸島共和国で登録された船は、国際的な海事協定に従って船の点検を行う域内組織が保有する抑留船舶リストに現れることはめったにない。マーシャル諸島政府は、同国の旗を揚げる船の管理により大きな役割を果たしていくことを計画している。現在、内国貿易に従事している船は国内船舶条例によって保護されており、便宜置籍国船舶登録に記載されておらず、ここに登録された船と同じ法律や規則による管理が行われていない。運輸通信省は同国の旗を揚げているすべての船の取り締まり及び管理に積極的に関与していくことを検討している。
 
 マジュロ、アバイ、及びジャルイトの主要港に関する輸送インフラは、マーシャル諸島共和国港湾委員会(MIPA)によって提供、管理されている。離島の船舶輸送に関する基幹施設の建設は、マーシャル諸島海洋資源局(MIMRA)や各地域の地方自治体等の政府関係機関と直接契約を結んだ民間企業が引き受けている。
 
 クワジャリン環礁のアバイに米国海軍基地があることで、米国政府による開発当局への財政援助やアバイ港の建設等が実施され、この地域の発展が促進された。この環礁はマーシャル諸島政権の管轄下にあるが、実際には多くの面で独立している。開発当局とアバイ港湾委員会は、海上輸送に関する基幹施設の供給と管理において重要な役割をもっている。
 
5-3. 政府による援助と海運産業の振興
 マーシャル諸島政府は、離島に対する海上輸送整備計画を策定した。この計画の主な内容は以下の通り。
 
(1)航行補助装置の改善
 マジュロとクワジャリン環礁へ寄港するために備えられた主な暗礁地帯における既存の標識を除けば、環礁間及び環礁内の船が利用可能な航行補助装置はごくわずかしかない。航行補助装置の不足により、大半の航行は潮流や天候及び日中の明るさが好条件な場合のみに制限されている。
 これら暗礁地帯の主要航路や上陸地に太陽電池で点灯される航路標識灯が建設されれば、船舶運航時間が大幅に短縮され、船舶を小型化するか船の運行頻度を増やすかのいずれかが可能となる。
 
(2)ドック、桟橋、及び航路の改善
 これらの施設は、大量の貨物や乗客を輸送したり、人口がかなり集中しており、かつ小型ボートを使って貨物や乗客を船と岸の間で輸送することができないほど水深が浅い地域で整備されることになる。もう1つの検討条件は天候である。東部地域は陸によって保護されておらず、波の状況によってアクセスが困難となる場合がある。
 この計画は、各地域の状況に応じて船のドックやボート用の桟橋のいずれかを建設するか、あるいはこの両方を建設するために、暗礁地帯に小型ボート用の航路を掘削することを目的としている。
 
(3)倉庫施設
 ドックや桟橋、ボート用の航路が整っている単一の地点に貨物が集中すれば、多数の場所に少量ずつ荷揚げすることなく、船が到着する前にコプラや他の生産物を集約することができる。このためには必需品が保管できる倉庫や、通信装置やワークルーム等の公共施設の収容場所を確保する必要がある。また、それぞれの倉庫の所有、管理及び保守に関する支援体制の構築も検討されている。
 
 マーシャル諸島には、26の主要な環礁があるが、運輸通信省では、その中でも水深の深い港7つに限ってより頻繁な運行を行うことにより、外側の環礁への運行を合理化するという長期計画をもっている。現在、4隻の国有船は、需要と供給に基づいて非定期で年に6回の航行しか行っていない。
 
 長期的には、運輸通信省予算への負担を軽減するために政府による船便の運行を民営化することに積極的である。民営化により以下の問題の解決が見込まれる。
 
(1)公共部門の従業員に対する賃金率の増加と、労働生産性の改善に対するインセンティブの不足
(2)運行に適さず、管理維持に費用がかさんでいる既存の船の交換
(3)政府の指示により運行スケジュールを変更することで発生する多額の費用
(4)政府が営業経費や定期メンテナンスの支払いのために現金を確保することが困難
 
 6年にわたる民営化計画により、政府は船舶の運行から完全に手を引く結果となると思われる。必要であれば民間の海運業者と契約を結び、離島への非商用船舶の運行が提供される可能性もある。
 
 2002年12月に、アジア開発銀行は外側の環礁や島々への交通手段の改善を目指し、700万米ドルのローンと25万米ドルの技術支援パッケージを承認した。このプロジェクトはMTOCが推進しており以下の点が改善される。
 
(1)離れ島における港の基幹施設(ドック、桟橋、及び航路)
(2)航法補助装置(航路標識燈、ブイ、及び陸の照明)
(3)港への貨物輸送用トラック
(4)貨物収納のために倉庫
 
 技術支援プロジェクトは、離島への船舶輸送及び航空輸送管理における政府当局の役割を拡大する。アジア開発銀行からのローンは、8年の支払猶予期間を含め最大32年間にわたる払い戻しが可能で、1年あたりの金利も1%から1.5%と低率である。







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