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参考資料
ケース・スタディ3例
ケース・スタディ1: MAN B&W
 MAN B&W Diesel Group(本社ドイツ、アウグスブルク)は、船舶推進システム用、及び発電所向け出力80MW級大型ディーゼル・エンジン製造の最大手である。同社の2ストローク及び4ストローク・エンジンのシェアは、ライセンス製造を含めると、世界の大型船舶の約50%に達する。同社は発電所向けディーゼル機関分野でも世界最大手のひとつである。ドイツ、デンマーク、英国、フランス、シンガポール、オランダに製造拠点を持ち、総従業員数は約7,300名、2002年度の総売上高は15億ユーロである。
 
 MAN B&W Diesel Groupは、ミュンヘンに本拠地を置くMAN AGの子会社である。親会社MAN AGは、商業用車両製造、機械エンジニアリング、プラント・エンジニアリングの欧州有力企業で、年間売上高は約160億ユーロ、総従業員数は77,000名である。
 
 中国造船所向けディーゼル・エンジン分野でも、MAN B&Wが最大手で、2000年度に中国に輸入された舶用ディーゼル主機でのシェアは61%に上る。
 
 MAN B&Wは、極東地域拠点を香港から上海に移転し、中国市場での情報交換や製造拠点への供給ルートの改善に努める等、市場リーダーとして中国ビジネスへの明確なコミットメントを打ち出している。この戦略は、競合するエンジン・メーカーWärtsiläが、中国市場での営業、機器設置、サービス等の業務監督を現地ディストリビューターに完全委託していることとは対照的である。
 
 MAN B&Wは、中国エンジン・メーカーに常に新造船情報を提供、また柔軟な販売戦略等により、現地顧客サービスに努めている。
 
ケース・スタディ2: Solar Solve Marine
 1998年創業のSolar Solve Marine(本社英国サウス・シールズ、総従業員数20名)は、舶用高性能サンスクリーンの設計、開発、製造の世界最大手で、業界賞も受賞している。主要製品は、高性能反射防止サンスクリーン、船舶居住区用ローラー・ブラインド等である。同社の反射防止、熱伝達防止機能を持つ舶用サンスクリーンSOLASOLVTMは、安全航行のためのブリッジ環境を定めたISO8468「船舶のブリッジ・レイアウト及び関連機器に関する要求とガイドライン」(1995年)に準拠している。同社製品は最新技術を用いた高品質で、顧客の仕様要求にも柔軟に対応している。
 
SOLASOLVTMの特徴は以下の通り。
●光反射を93%カットし、クリアな視界を実現、航行安全に寄与する。
●陽光の熱伝達を87%カット。
●有害なUV光線を97%以上カット。
●電子地図画面の反射を抑える。
●実際の色に近い配色を再現し、海上目標物の認識を容易にする。
 
 SOLASOLVTMの反射・熱伝達防止フィルムは、各フィルム・タイプの性能を確保するため、厳重に管理された製造工程のもとで生産されている。製造工程は、2層以上のポリエステル・フィルムをラミネート加工し、そのうち一層には超薄膜アルミニウム加工を施し、赤外線を反射させるというものである。また、ポリエステル・フィルム層は光線伝達を抑えるために染色される。フィルム製造の各工程で品質がチェックされ、全作業員の工程は品質保証マニュアルに定められている。
 
 全製品は、サイズ、仕様等の顧客要求に基づくカスタムメイドである。通常の製品発送は世界中どこでも5営業日、緊急の場合には24時間以内の発送が可能である。午前10時以前に受け付けた少数注文には、同日発送サービスも行っている。
 
 同社の顧客リストには、Global Marine、Bernhard Schulte、BP Shipping、Everard、Cunard Line、Princess Cruises、P&0、Royal Caribbean Cruises、Novo Ships、Tidewater Marine、Vela、英国海軍等、世界の大手船社、組織が名を連ねている。
 
 1988年の創業当時には、同社事業は欧州市場に専念しており、他地域の市場進出の意図はなかったという。その理由は以下の通りである。
●極東市場よりも欧州市場の方が、物理的に顧客へのアクセスが容易。
●欧州では言語の問題が少ない。
●極東地域での時差の問題。
●欧州地域では文化的相違が少ない。
 
 事業拡大に伴い、同社は欧州以外の市場への進出を検討したが、閉鎖的な日本舶用市場では同社製品への十分な需要を見出すことができず、一方、潜在需要のある韓国では製品が模造される懸念があった。1988年当時には、中国市場の可能性は考慮さえされなかった。
 
 今日では、同社の韓国での売上げは総売上げの50%、中国での売上げは7%で、特に中国向けビジネスは着実に伸びている。日本での売上げは僅か1%である。同社製品を使用したことのある欧州船主が韓国、中国への新造船発注を加速し、船主の多くが製品指定したこと、また現地ディストリビューター網の整備が、その成功要因である。
 
 Solar Solve Marineは、上海の Marintec見本市を初めとした主要国際見本市に出展することで、同社製品を幅広い顧客層にアピールし、現地ディストリビューターへのサポートを行っている。
 
 韓国での同社のディストリビューターは、同国では両社でほぼ100%のシェアを独占する舶用げん窓製造の2大メーカーである。1990年の韓国進出以来のSolar Solve Marineの成功は、韓国造船業におけるこの2大メーカーのビジネスに便乗したことが大きい。少なくとも年に1回は、同社役員が韓国を訪問し、同社の優先サプライヤーとしての地位を確保し、競合韓国現地メーカーの追従を許さないよう、ディストリビューターとの関係を深めている。
 
中国戦略
 Solar Solve Marineは、1995年に中国市場に進出したが、これは戦略的決定というよりも、同社のシンガポールの中国人ディストリビューターが中国市場でのビジネス機会を提供したことによる。中国市場に詳しい同ディストリビューターは、中国造船所で建造される船舶の搭載機器リストの中にSolar Solve Marineが優先サプライヤーとして挙げられていることに着目、同社に中国市場進出への可能性を打診し、自ら中国における最初のディストリビューターとなった。
 
 現在では、同社は中国に5カ所のディストリビューター網(上海3カ所、大連、広州)を確保しており、これ以上拡大する計画はないとしている。
 
 同社は中国市場における大規模なディストリビューター・ネットワーク確立の理由として、以下を挙げている。
(1)地理的理由:中国市場の規模と造船所数を考慮した場合、ディストリビューター1社ではその広大な地域をカバーすることは不可能。
(2)個人的コンタクト:それぞれのディストリビューターが、異なる造船所に個人的コンタクトを持っているため、その分ビジネス・ベースが拡大する。
(3)依存度の拡散:中国造船所は、少数の特定ディストリビューターに依存するのではなく、ビジネスを拡散することを好む傾向がある。複数のディストリビューターを有することで、この問題に対処できる。
 
 現地ディストリビューターの役割は、販促活動に加え、船舶の窓サイズの採寸、ときには製品設置を行うこともある。採寸は製品のフィットに重要な項目であるため、同社はディストリビューターに対して特別なトレーニングを施している。
 
 近年、中国メーカーの製品も出てきたが、中国市場の規模と成長率を考えると、市場シェアが多少低下したとしても、引き続き今後もビジネスは発展するとSolar Solve Marineは予測する。現時点では、中国メーカーの製品は型式承認を取得しておらず、同社製品の優位は今後も続くだろう。
 
 中国市場での自社製品の模造品に関しては、たとえ同社が中国に進出していなくても、その危険は常に存在するため、今のうちに中国市場ビジネスの可能性を最大限に利用するというのが同社の戦略である。







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