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2-2. 州及び地方の制度
 米国SBA(Small Business Administration)は、ROP(Rural Outreach Program)やFAST(Federal and State Technology)Partnership Programを通じて、アウトリーチ、教育訓練、技術に関する大きな支援を州に提供している。
 
2-2-1. FAST(Federal and State Technology)
 FASTは、各州が提供する様々なSBIRプログラム支援サービスに資金を提供する競争方式の助成金プログラムである。FASTプログラムは、2005会計年度に予算が承認されている。州内の個人、組織、事業体はすべてFASTプログラムへの参加資格を有する。
 
(FASTにより提供されるサービス)
 FASTプログラムへの参加州が提供できるサービスとしては、次のようなものが提案されている。
(1)中小企業による技術研究開発
(2)大学の研究から技術力ある中小企業への技術移転
(3)中小企業に役立つ技術の配備と普及
(4)事業体、組織、または個人からなるコンソーシアムの設立または運営を通じた中小企業の技術力の強化
(5)技術力を持つ中小企業のうちSBIRプログラムに参加しているか、または参加を検討している企業を対象として行うアウトリーチ活動、または資金及び技術援助
(6)企業を対象として、SBIR提案開発コストの一部または全額を給付または融資するサービス
(7)FASTプログラム内の助言ネットワークの設立及び運営−FASTプログラム参加者、SBIRプログラム責任者、SBA、またはSBIRやSTTRプログラムについての知識を持つその他の事業体が、これらのプログラムの有望な候補者であり、助言によって恩恵を得ると考えられる中小企業を識別し、これらの企業を支援するために、事業上の助言やカウンセリングを提供する
(8)SBIR資金によって開発された技術の事業化推進
 
(FAST手続き)
 FAST法案では、資金獲得のためにSBAに提出できる提案は各州1つのみとなっている。提案には、最低限、次の基準に沿った内容が盛り込まれていなければならない。
 
(1)その州のSmall Innovative Business Communityが未対応のニーズ
(2)その州の中小規模技術開発企業の数を増やし成功を促す必要があるという綿密な論証
(3)FAST計画
(4)FAST年次実績指標
(5)組織及びスタッフの資質
(6)費用
 
 提案の評価は、中小企業のオーナー、州レベルの代表者、連邦SBIRプログラムの責任者及び実業会と学界の代表者で構成された委員会が行う。評価パネルが推薦した提案を、さらにSBA、国防総省、全米科学財団が共同で審査し、その提案のメリットに基づいて助成金が拠出される。各参加州は、活動費用のうち、連邦資金以外の見合い資金(matching funds)を拠出する必要がある。
 
 見合い資金の要件は、次のとおりである。
(1)対象者がSBIRフェーズI助成金の受給件数が最も少ない18州のどれかに所在している場合は、連邦資金1ドル当たり50セントを州が拠出する
(2)対象者がSBIRフェーズI助成金の受給件数が最も多い16州のどれかに所在している場合は、連邦資金1ドル当たり1セントを州が拠出する
(3)上記2つに該当しない場合は、連邦資金1ドル当たり75セントを州が拠出する
 
2-2-2. ROP(Rural Outreach Program)
 ROP(Rural Outreach Program)は、SBIR(Small Business Innovation Research)及び中小企業技術移転(STTR; Small Business Technology Transfer)のアウトリーチプログラムとも呼ばれている。ROPの目的は、教育訓練、カウンセリング、アウトリーチを通じて、小規模なハイテク企業がSBIRやSTTRプログラムに参加し成果を上げることができるようにするため、州が設立または拡張するプログラムを支援することである。ROP助成金は次のようなサービスに充当できる。
 
(1)教育訓練活動や1対1のカウンセリングによってSBIRとSTTRのプログラムやその運用方法についての情報を提供するサービス−教育訓練活動や1対1のカウンセリングを通じて、SBIRとSTTRのプログラムにおけるSBA、参加機関、プログラムマネージャーの役割を明確に説明
(2)1対1のカウンセリングによるSBIRとSTTRの提案の開発と作成
(3)公開データベースの開発と維持−小規模ハイテク企業の研究開発を必要とする連邦、州、地方、民間の事業体を対象として、小規模ハイテク企業の技術支援に役立つ情報を提供
(4)電子形態またはハードコピーまたはその両形式でのニューズレターの編集、発行、配布
(5)このプログラムの主旨に沿った、ハイテク技術/経済開発サービスを提供するプロバイダの基盤の拡大
(6)SBIRに関する実績目標の確立
 
2-3. 民間資金
(ベンチャーキャピタル)
 ベンチャーキャピタルとは、事業の成長または拡大に必要な資金を会社の株式と交換したいと考える企業のための資金調達方法である。ベンチャーキャピタルは、技術分野だけでなく、あらゆる種類の事業を対象とする。また、起業時のシードマネー(起業資金)から、後期のメザニン型資金調達(劣後債の引き受け等事業が軌道に乗ってきた段階での投資)まで、投資段階も様々である。
 
 ベンチャーキャピタル企業は通常、投資に対して高い利益率を求め(年に20%強)、一般的な投資額は50万ドルから数百万ドルの範囲である。
 
 ベンチャーキャピタル専門企業はたいてい民間のパートナーシップか(株式会社等とは異なり経営に関与する者を限定した)閉鎖系の企業であり、公共及び民間の年金基金、寄付基金、財団、法人、個人資産家、海外投資家、またはベンチャーキャピタリスト自体の資金で運営されている。
 ベンチャーキャピタリストの一般的な特徴は次のとおりである。
・急成長している新興企業に資金を提供する
・持株証券を購入する
・新しい製品またはサービスの開発を支援する
・積極的に関与して企業に付加価値を与える
・ハイリターンを求めてハイリスクを取る
・長期的方向性を持つ
 
 このように、ベンチャーキャピタルはその事業形態からしてハイリスク・ハイリターンのビジネス分野を指向するため、その資金の大部分は、投下資金の回収の早い情報産業等(この中には、海事関連の情報システム開発会社等も含まれる)に投資される。ベンチャーキャピタル企業の組織であるNVCA(National Venture Capital Association http://www.nvca.org)によると、2003年前半には1,350件の取引で86億ドルのベンチャーキャピタル資金が調達されたという。したがって、1件当たりの調達額は約640万ドルになる。以下のグラフは、最近10年間におけるベンチャーキャピタル資金のパターンを示したものである。インターネットバブル経済の最盛期であった2000年に約1,100億ドルの最高額に達したが、その後は、調達額も件数も大きく下降している。
 
米国のベンチャーキャピタル資金(1993〜2002年)
出典:NVCA
 
(エンジェル投資)
 エンジェル投資家と呼ばれるグループは、民間資本の大きな財源であり、新設企業へのエンジェルマネー(起業資金)の投資を頻繁に行っている。一般的にエンジェル投資家は、ベンチャーキャピタリストほど、投資先企業に支配権や迅速なハイリターンを求めないが、投資先企業の選択基準はベンチャーキャピタリストと同様である。
 
(IPO)
 新規株式公開(IPO; Initial Public Offering)とは、公開市場を通じて会社の株式を一般の人々に提供することである。会社のIPOは、創設者やベンチャーキャピタルの投資家等、初期段階の投資家にとっては大きな流動資金を得る機会となる。
 米国のIPO件数は1990年代後半にピークに達し、それ以降、減少している。2003年の米国IPO件数は11月12日現在40件である。前年同時期には62件であった。しかし、IPO市場は経済回復の徴候を示し始めているとみる専門家も多い。
 
IPOの件数(1999〜2002年)
出典:http://www.IPOhome.com







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