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刊行によせて
 当財団では、我が国の造船関係事業の振興に資するために、日本財団から競艇交付金による助成を受けて、「造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業」を実施しております。その一環としてジェトロ船舶関係海外事務所を拠点として海外の海事関係の情報収集を実施し、収集した情報の有効活用を図るため各種調査報告書を作成しております。
 
 本書は、社団法人日本中小型造船工業会及び日本貿易振興機構が共同で運営しているジェトロ・シンガポール・センター船舶部のご協力を得て実施した「タイ国におけるフェリー網整備に関する調査」をとりまとめたものです。
 関係各位に有効にご活用いただければ幸いです。
2004年1月
財団法人 シップ・アンド・オーシャン財団
 
はじめに
 タイ国は、近年急速な経済発展を達成し、世界の中で中堅工業国としての地位を築きつつある一方、その弊害として地域間所得格差、首都圏への経済の一極集中化などの問題が顕在化している。なかでも輸送インフラの未整備に起因する問題は深刻であり、バンコク首都圏における激しい交通渋滞、都市の蓄熱、排気ガスによる大気汚染、騒音に加え、過積載の車両通行による道路への深刻なダメージを引き起こしている。この状況は、あらゆる輸送モードの中で道路輸送の占める割合が圧倒的に多く、タイ国全体の貨物輸送量の90%以上を担っている一方で、海上輸送はわずかに5%しか取り扱っていないというタイ国特有の輸送状況が問題を更に深刻化している。タイ国経済が今後健全な発展をしていくためには、効率的な輸送システムの構築が極めて重要であり、バランスのとれた輸送システムの構築はタイ国政府が解決すべき喫緊の問題となっている。
 タイ国政府は、この深刻な状況に鑑み、2000年6月には国会で議決された海運開発マスタープラン”The Master Plan for Maritime Development”を作成、続いてタイ国運輸省により2001年5月にもモーダルシフト振興のための提案がなされている。
 このような流れを踏まえ、ジェトロ・シンガポール・センター船舶部は、2000年度にタイ国内でモーダルシフトの可能性がある航路、就航船舶の種類、大きさ等を具体的につかむためのフィジビリティースタディを実施し、「タイ国におけるモーダルシフトに伴う新規造船需要に関する調査報告書(2001年6月)」としてまとめ、この中で、タイ国内の数航路においてRO-RO船を用いたモーダルシフトが可能であることを明らかにした。また、2002年度に、具体的航路、船の大きさ、隻数等について調査し、「タイ国におけるモーダルシフトに伴う新規造船需要に関する調査(2003年3月)」としてまとめ、特定航路では内国輸送の運賃低下によるタイ国内製品の国際競争力を向上できること、新造船の就航が中古RO-RO船に対しても十分競争力があることを示した。
 同船舶部が、タイ国運輸省、タイ国営海運会社であるTMN(Thai Maritime Navigation)と議論を重ねてきたところ、TMNがモーダルシフト実現に向けて日本の経済協力案件として事業を具体的に検討していきたいとの意思表示があった。本調査は、一刻も早くモーダルシフト実現のための事業開始を希望し、我が国の協力を要請しているタイ国側からの要請に基づき実施したものであり、運航事業計画の作成、港湾施設等の詳細、事業収益の予測等を精査し、事業の必要性をできる限り定量的に証明しようとしたものである。また、本報告書は、RO-RO船を用いたモーダルシフト事業を迅速に開始できるよう、日本の公的資金援助スキームに対するタイ国政府からの正式要請書として利用可能なように作成している。
 本調査がタイ国向け造船需要の指針となるとともに、RO-RO船導入により海上輸送の増強、改善が期待できる他の東南アジア諸国等においても造船需要開拓の調査指針として活用されれば幸いである。
ジェトロ・シンガポール・センター 船舶部
Director 上園 政裕
 
1.序章
 タイ国は1985年以来急速な経済発展を達成し、世界の中で中堅工業国としての地位を築きつつある。一方、急速な経済発展の結果、弊害として地域間所得格差、経済活動のバンコク近隣への一極集中化、及び輸送インフラの未整備等の問題が顕在化し、将来のタイ国経済の持続的成長を担保するために解決すべき重要な問題となっている。現在タイ国内貨物の約90%は道路により輸送されており、その結果激しい渋滞、都市の蓄熱(ヒートアイランド現象)及び排気ガスによる温暖化、大気汚染、騒音及び振動等の公害を引き起こしている。更に、過積載の車両通行による道路への深刻なダメージは政府の道路維持予算上大きな負担となっている。タイ国の経済の健全な発展のためには効率的な輸送システムの構築が極めて重要であり、バランスの取れた輸送システムの構築は政府が解決すべき喫緊の課題となっている。
 “モーダルシフト”は一般に貨物及び旅客の形態毎に旧来からの主流輸送システムをより最適な輸送モードに変更する意味として周知されているが、実際には道路輸送から海上(水上)輸送又は鉄道輸送への変更として認知されている。
 上記のとおり、近年では道路輸送は渋滞の原因、排気ガスによる大気汚染、騒音、交通事故等を引き起こし、又エネルギー・燃料の大量消費等様々な問題を抱えている。これら道路輸送に起因する様々な問題は物資の輸送効率に悪影響を与え費用の損失を招いているのみならず、人間の寿命と自然及び資源を脅かすため、道路輸送に変わる代替輸送モードの必要性が出てきた。
 海上輸送及び鉄道輸送の輸送能力の改善及び利便性の向上に加え、効果的なモーダルシフトを達成するためには、各輸送モード間の円滑な中継が必要である。この鍵となるのがトラックへの効果的な荷物の積替えである。複数の輸送システムを経由して輸送される貨物流通を複合輸送と呼んでいる。“インターモダル輸送”は貨物が一つの輸送モードから他の輸送モードに効率的且つ円滑に移行する意味を内包している。複数の輸送システムを経由する事は特に貨物の積み降ろしに多くの時間と多大な費用を伴う。これらのマイナス要因を可能な限り縮小する事が実際の効率的物流の実現に重要であり、モーダルシフトのゴールである。
 このような状況下、ロールオン/ロールオフ(RO-RO)船は世界の海上輸送に活用されており、道路輸送網と繋がる最適なインターモダル輸送システムの一つとして知られている。インターモダル輸送を容易に導入するための投資環境作りとそれに必要な投資をタイ国政府は実施すべきであろう。
 タイ国の既存の港湾施設を検証すると、RO-RO輸送ネットワークに対応するための施設整備が速やかに必要とされており、タイ政府は第1段階としてRO-RO船を導入しパイロットプロジェクトとしてタイ国海運公社(Thai Maritime Navigation Company(TMN))に運航させ、引き続きRO-RO船の導入よりモーダルシフトを実現する計画である。
 本調査報告書はタイ国のモーダルシフト導入のために必要な最適な短期及び中期的事業計画を提示するものである。
 
2. 事業の背景
2-1 タイ国経済概況
2-1-1 タイ国経済構造と特徴
 タイ国は1997年の通貨危機が発生するまでの1960年代から1996年まで年平均成長率7.6%という安定した経済発展を享受して来た。
 タイ国の経済構造は1950年代後半までは伝統的な農業国として留まっていたが、1960年代初頭より工業及びサービス分野が高収入と大きな雇用を生む産業として農業を補完し始めた。1980年代には外国からの直接投資が大量に流入し工業化が進み、今日ではタイは製造業及びサービス業を中核とする工業国へと変貌を遂げた。
 今日でも、就業人口から見ればタイは依然として農業国であり、農業従事者は就業人口の約57%を、国家収入の約12%を占めている。しかし、近年では工業及びサービス業分野の生産が全国内総生産(GDP)の中でそのシェアを伸ばしている。
 農業分野のGDPにおけるシェアは1980年には23.2%であったが2000年には9.1%に落ち込んでいる。一方製造業分野は急速にそのシェアを拡大し、GDP比率で1960年には21.5%であったが2000年には33.5%を占めるに至った。輸出金額における農業生産物のシェアは1980年の51.1%から2000年には10.6%に減少しているが、工業製品は1980年の32.3%から2000年の74.9%と農業とは対照的に増加している。
 GDPの伸び率および寄与度を見ると、1997年に通貨危機が発生する以前の経済成長は活発な民間消費と民間及び公共投資に牽引されてきた。しかし通貨危機後民間投資は減少し始め余剰生産能力の問題は多くの産業分野に共通の課題である。また国際通貨基金(IMF)による政府の緊縮財政等により民間及び公共投資共に急激に減少した。このような経済状況の下、タイの企業は低迷する市場を再活性化するために輸出品目の拡大をめざした。
 必然的に、国際貿易はタイ経済にとって非常に重要となり、今日輸出入に伴う生産高はGDPの60%を占めるに至った。これはタイ国経済が主要貿易相手国であるアメリカ合衆国及び日本等の経済に過度に依存している事に他ならない。2000年のGDP前年比伸び率1.8%時の輸出総額の伸び率が4.6%であったのに比較し、2001年には輸出総額は前年の6.9%もの大幅な減少をした。このタイ経済の減速は主にアメリカ経済の減速に端を発する世界経済の低迷による負の影響に起因するものである。
 人口の一定した増加にかかわらず、人口一人あたりのGDPは経済成長に比例し過去10年間で2倍となった。現在価格において一人あたりのGDPは1990年に1,530米ドルであったが1996年には3,040米ドルへと増加している。しかし通貨・経済危機及びタイバーツの下落の影響により2000年の一人当たりのGDPは1,960米ドルへと減少した。
 加えて、個人所得の格差と地域間の所得格差も無視出来ない問題である。最低限レベルの生活を強いられている人口は1996年の680万人から1999年には990万人へと増加している。地域間の所得格差はバンコクとその周辺が最も裕福な地域であり、1998年の国民一人当たりのGDPが1,830米ドルなのに対しバンコク及びその周辺地域及び貧しい北東部の一人当たりのGDPはそれぞれ4,990米ドルと638米ドルであった。
 
表2-1: タイ国経済主要指標
1996 1997 1998 1999 2000 2001
GDP及び主要構成費目(%、年毎の増加率を示す:特記以外)
名目GDP額(10億米ドル) 183.26 150.86 111.83 122.41 122.13 114.65
実質GDP 5.90 -1.37 -10.51 4.43 4.64 1.81
消費 N.A. N.A. N.A. N.A. N.A. N.A.
民間消費 5.8 -1.4 -11.5 4.3 4.9 3.4
政府消費 12.1 -2.8 3.9 3.2 2.6 1.9
投資 N.A. N.A. N.A. N.A. N.A. N.A.
民間投資 3.4 -30.4 -52.3 -3.2 17.2 5.1
政府投資 28.93 10.2 -28.7 -3.1 -9.9 -6.6
商品及びサービスの輸出 -0.20 29.80 21.90 7.40 19.60 -6.90
商品及びサービスの輸入 2.30 4.30 -10.50 17.00 31.40 -2.80
政府予算及び対外債務(% GDP)
予算収支 1.61 -1.33 -2.58 -2.84 -2.31 -2.69
貿易収支(10億米ドル) -16.15 -4.62 12.24 9.27 5.47 2.53
流動勘定収支(10億米ドル) -14.35 -3.11 14.29 12.47 9.33 6.21
資本勘定収支(10億米ドル) 19.50 -4.34 -9.74 -7.91 -10.27 -5.53
経済指標(%、年毎の増加率を示す:特記以外)
GDP変動率 3.9 4.3 9.2 -4.5 1.7 2.1
消費者物価指数 5.9 5.6 8.1 0.3 1.5 1.6
M2 12.7 16.4 9.5 2.1 3.7 4.2
短期金利(Repurchase rate) N.A. 22.36 13.59 1.48 1.28 2.07
為替レート(1997=100とする) 109.2 102.4 90 93.5 86.9 79.48
失業率 1.5 1.5 4.4 4.2 3.6 3.36
総人口(百万人) 59.9 60.5 61.17 61.78 62.40 63.10
出典:1. 国家経済開発委員会、2. 労働社会保証省
 
図2-1: 2001年度産業別国内総生産
 
図2-2: 2000年度地域別総生産
 
2-1-2 2002年度タイ国経済概況
 2002年度のタイ経済は当初の予想以上に成長し、GDPの伸び率は約4.8%と推定されている。これは年度後半の順調な国内消費の伸びと高い輸出の伸びに支えられた結果である。経済も同様に低いインフレ率、安定した貿易と貿易黒字及び極めて堅調なタイバーツにより安定している。
 国内需要の成長は主に不動産の再活性化政策、地方(村興し)基金等を含む大幅な政府予算不足に対応した政府の経済刺激政策により始まった。しかし公共分野の支出においては第2四半期から投資、物資及びサービスの調達ともに減少した。民間の消費及び投資は目覚しく復活している。2002年度の民間消費は約4.4%の伸びと推定され、民間投資は11.9%もの高い伸びを示しており、なかんずく建設分野単独での投資の伸びは20.0%にも達している。
 前年度に比較し2002年の下期からタイバーツ高(対ドル)及び輸出高は約8.0%減少しているにもかかわらず、米ドル建ての輸出は引き続き伸びている。この継続的な輸出の伸びは世界的な電化製品需要の好転を要因の一部とし、更に主要貿易相手国であるアメリカ合衆国及び日本の経済の持ち直しがタイの輸出の伸びを支えている。この伸び率は5.8%と推定される。
 国内需要と輸出の伸びは輸入の伸びにも繋がり4.6%の伸びを示している。しかし輸出の伸びに比較し若干伸び率は低い。この結果、貿易と財務の収支差額は2001年より多くなっている。
 注目すべき点は2002年の経済成長は未だに小幅であり、特に製造業、鉱業、建設業及び公共施設等の幾つかの分野においてその傾向が見られる。一方高い伸び率を示しているのは商用自動車、二輪車、テレビ、集積回路(IC)等である。これらの状況から経済成長は現時点では持続的なものとは言いがたい。
 
2-1-3 2003年度以降の傾向(2003〜2006)
 湾岸戦争による最悪のシナリオ、即ち燃料を中近東からの輸入に大部分依存しているタイへの大きな打撃は避けられたが、他方、安価なコストを提供可能な国々、特に中国との価格競争への圧力は続き、自動車及びその部品産業、鉄鋼生産、電化製品等の余剰生産設備を抱える他開発途上国との競争は引き続き厳しい。
 アジア開発銀行は東南アジア諸国におけるデフレの危険性を指摘しているが、アメリカによるイラク占領の長期化とアメリカ国内及び東南アジア地域の経済の不確定要素は為替レートの不安定さを結果として招き、これはタイの経済成長にとって主要な障害となる。
 これらの不安要素にもかかわらず、低金利政策の継続と金融機関相互間の競争激化、民間消費および民間投資は急速には衰えない事から2003年以降のタイ経済の見通しは明るいと言える。
 アメリカ及び日本経済の回復への信頼は上向き、経済の伸び率は予想を上回り、アジア自由貿易圏(AFTA)の枠組みの中での自由貿易の推進により輸出は増長されると期待される。
 これらはタイの輸出を2002年度より更に拡張ならしめるものである。世界の石油価格は下がり、世界経済の好転、低金利政策の継続と金融機関相互間の競争激化により民間消費および民間投資は著しく増加すると予想される。これらの結果、タイの経済成長率は通貨危機後、最も高く年平均4.4%に達すると予想される。
 
(1)実質国民総生産
 国家経済社会開発庁(NESDB)によると、国内外ともに需要は回復するとされ、これによってタイの年平均経済成長率は4.4%と期待されている。国内需要は現在政府の景気刺激策と継続的な低金利政策の結果回復している。
 当該期間の民間消費は年平均4.5%の成長が見込まれている。旺盛な消費意欲と低金利の環境が民間消費増加を支える要因となるであろう。民間投資も同様に2001年より明らかに高い、年平均5.9%の伸びが期待されている。政府の不動産分野への刺激策及び低金利政策の結果、建設分野は民間投資の牽引役となり、更に機械、設備投資も過剰な生産設備が多くの経済分野で残っているが、2002年以降若干の範囲で回復が見込まれている。
 この期間、政府の財政支出は経済発展に重要な役割として留まり、政府による公的消費と投資はそれぞれ8.0%と2.0%の伸びが期待されている。さらに、貿易相手国の経済の回復は将来の経済発展の支えとなり、総輸出額は2001年の-6.9%に比較し年平均6.7%への拡大が予想されている。輸入に関しても消費、投資及び輸出と並び回復が期待され、輸入額は2001年の-2.8%に比較し7.3%の年平均伸び率と予想されている。
 
(2)インフレ
 2001年にはタイバーツは10.0%以上下落したにもかかわらず、名目インフレ率は2000年の1.5%を僅かに上回る1.6%を記録した。このインフレの抑制はタイ経済の減速と石油価格の低下による。2003〜2006年の間の名目インフレ率は主に変動しやすい石油価格下げ圧力により、平均2.5%と予想されている。
 
(3)対外貿易勘定
 2001年にタイの輸出は世界経済の減速により、ドル建てで-6.9%の急激な下げを経験した。輸出超過の状態でありながら2001年の貿易収支は輸入の2.8%の減少により25億米ドルの貿易黒字に留まった。サービス分野の収支は僅かに減少し2000年の39億米ドル超過から2001年は37億米ドルの超過となった。したがって当座勘定は61億米ドルの超過(GDPの5.3%)となり、2000年の93億米ドルの超過(GDPの7.6%)から減少した。
 タイ貿易の2002年の黒字額は9億米ドルに減少すると予想されているが、経済が持ち直すにつれ、輸入は4.5%の伸び、輸出は同様に1.7%の伸びが期待されている。旅行及びこれによる収入も支出以上に伸びが期待されている。このため2002年の当座勘定は貿易黒字のまま44億米ドル、GDPの3.6%で留まると期待されている。
 
2-1-4 中期経済概況
 中期的な経済概況として、政府は年経済成長率5.0%から6.0%、インフレ率は年率3.0%以下、当座勘定のGDP1.0%から2.0%の黒字、及び適量の国際通貨留保を含んだマクロ経済の大枠を制定した。
 政府は2002年からの5年間、財政拡大の実施を継続するつもりであるが、政府財政の持続性を維持するために、政府予算の不足を継続的に減少させなければならない。第9次国家経済社会開発計画によれば政府の経常支出の伸びは2002年の8.0%から2003年には5.0%に、2004年から2006年の間は4.0%に維持され、政府の資本支出(固定費)の伸びは年3.0%に維持されると予想されている。本中期計画の間、消費者物価のインフレ率は2.4%から2.6%と予想されている。
 世界経済の回復が期待され、政府の国内景気刺激策が有効になり、GDPの伸び率は継続して伸び、2005年と2006年にはそれぞれ5.0%と5.5%に達すると見込まれている。民間消費及び民間投資も同様に改善が期待され2003年から2006年の間に4.5%から5.9%の伸びが予測されている。
 
表2-2: タイ国中期経済概況
2003 2004 2005 2006 平均
実質 GDP 成長率(%) 3.0 4.0 5.0 5.5 4.4
GDP(時価、10億バーツ) 5,564.8 5,926.5 6,377.0 6,893.5 6,190.5
   (10億米ドル) 123.7 131.7 141.7 153.2 137.6
消費の伸び率(%、1988=100) 3.5 4.0 5.1 5.3 4.5
 民間 3.2 4.0 5.3 5.5 4.5
 公共 5.0 4.0 4.0 4.0 4.3
投資の伸び率(%、1988=100) 3.6 3.7 5.5 6.5 4.8
 民間 4.0 4.2 7.0 8.5 5.9
 公共 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0
消費者物価インフレ率(%) 2.4 2.5 2.6 2.6 2.5
輸出額の伸び率(%、1988=100) 5.0 5.7 7.5 8.7 6.7
輸入額の伸び率(%、1988=100) 5.7 6.5 7.9 9.0 7.3
貿易差額(% of GDP) 0.4 0.0 -0.2 -0.3 0.0
当座勘定(% of GDP) 2.3 1.5 1.1 0.8 1.4
出典:National Economic and Social Development Board, as of March 18, 2002.
 
 貿易相手国の経済状況の改善と国内経済の改善により輸出及び輸入の伸びは数年の間持続すると見られている。しかし、輸入の伸びは輸出の伸びより大きくなれば、貿易黒字の減少に繋がり、貿易収支は2005年には赤字になると見られている。しかしこれにもかかわらず、サービス分野、特に観光産業の収入により2003年から2006年の間、経常収支は平均でGDPのプラス1.4%に留まると見られている。
 経済改善策及びそれによる経済の好転の結果、2002年の目標のタイ株価指数(SET)は段階的に増加すると考えられる。上半期の6ヶ月タイ株価指数は389.1ポイント、総出来高1兆3,350億6千100万バーツであった。一日の出来高は昨年の同時期と比較し倍に増えている。この証券市場の好転は民活およびマッチングファンド(見合い基金)等様々な政府の施策の結果2002年を通して続き、成果が出るものと期待されている。
 
表2-3: タイ国経済予測要約
(% 前年比変化率)
項目 2002年 2003年
公式* IMF ADB 公式 IMF ADB
実質 GDP 3.5-4.0 3.2 3.7 3.0 4.0 4.2
輸出 1.7 1.8 N.A. 5.0 6.0 N.A.
輸入 4.5 2.9 N.A. 5.7 9.1 N.A.
消費者物価インフレ 1.3 1.7 N.A. 2.0. N.A. N.A.
出典:NESDB, as of June 17, 2002.







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