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IV. 欧州造船業の進展
欧州造船業の進展
 今日造船に従事する全労働力は表に示されるものより遥かに多い。1975年から今日まで、造船と修繕における直接雇用労働力はとても小さくなっている。しかし同時に、凄まじい外注工程が発生し、関連の産業に振り向けられた雇用を刺激している。
 結果として今日、造船と修繕産業は、電気産業や製鉄、鉄鋼、素材、機械、化学、電気、プラスティック、エネルギー変換、陸上輸送、通信、研究開発、海洋資源、教育などの他産業や業務部門と重要なリンクを持つようになった。
 AWES国内の造船と関連産業と修繕業の直接・間接雇用者は35万人を越えると予測される。
 直接・間接雇用はとても重要ではあるが、関連産業に振り向けられた雇用にとって、特に欧州ヤードの多くが、その地理的位置が問題となる。主要産業(造船)がその地域に存在していないとならないのである。
2002年AWESメンバー国の労働力
  1975 2002
  Total Newbuilding Total Newbuilding
Belgium 10,245 6,586 0 0
Croatia     10,957 8,464
Denmark 18,900 15,300 3,360 2,820
Finland 18,000 17,000 6,150 6,000
France 40,354 24,938 6,800 5,200
Germany 105,988 71,598 23,300 16,800
Greece 10,159 2,316 3,000 750
Ireland 1,633 1,427 0 0
Italy 36,260 21,460 13,438 9,606
Netherlands 39,850 20,850 9,000 3,800
Norway 29,000 16,500 5,266 3,707
Poland     20,132 15,073
Portugal 17,100 7,000 2,350 1,284
Romania 47,000 27,800 20,400 19,100
Spain     7,876 6,234
Sweden 31,500 25,000    
United Kingdom 55,999 48,272 7,000 2,500
Total 461,988 306,047 139,029 101,338
注 Newbuilding人数には新造商船と新造オフショアを含む
注 NorwayについてAWESメンバーヤードのみ
 
クロアチア
一般状況
統計局、財務省、商工会議所、国家銀行、その他関連機関による予測に従うと、2002年の基本経済データは以下のとおり。
・GDP 224億米ドル
・国民一人当たりのGDP 5570米ドル
・人口(2001年) 約450万人
・インフレ率 2.2%
・失業率 22.5%
・外貨準備高 58.9億米ドル
 
行政優先課題
経済と財政の安定維持
為替レートの安定
GDPの継続成長
製造と生産率と輸出の増加
海外直接投資(FDI)の刺激、環境への低付加、公的支出・税新負担・失業者の減少
 
特に強調したい事項として、
国家投資の民営化の完結
公的部門のリストラと民営化
雇用の増加
年金再構築(世界銀行の支援)
健康保険再構築
継続可能な財政原則
 
 造船、価額、繊維(布)、食品、機械、電気設備の産業でクロアチアの輸出の97%を形成する。産業部門がクロアチア経済のリーダーであることが示されている。
 
 ユーロ(と国内通貨)に対する米ドルの下落は恐らく造船と修繕産業を含む輸出産業にとって利益をもたらす要因とはならない。クロアチア産業は2001年との比較で2002年は5.4%成長した。また2003年は更なる成長が期待される。産業部門には27万人の雇用者が従事しクロアチアのGDPの20%に貢献している。
 
造船
 クロアチア造船業の一般的状況として、すでに船台(造船能力)は2004年末まで埋まっており、場合によっては2005年の前半まで決まっている状況。現在交渉が進められているのは、2005年と2006年に引き渡されるものである。世界の市場動向と新造船価の若干の上昇傾向によって、次期においては将来へのゆっくりではあるが楽観的機運がでている。
 
 クロアチア造船協会(HRVATSKA BRODOGRADNJA - JADRANBROD d.d.)が政府によって創立され、以下の6つの主要造船所の協会として現在活動している。
 
ULJANK SHIPYARD 新造船のみ
3. MAJ SHIPYARD 新造船のみ
SHIPYARD V. LENAC 修繕、改造、オフショア、特殊新造船
KRALJEVICA SHIPYARD 新造船と時々修繕
BRODOSPLIT SHIPYARD 新造船と特殊新造船のみ
BRODOTROGIR SHIPYARD 新造船と修繕部門には125人のみの作業員
 
 クロアチア造船協会の主要任務は、クロアチア造船産業のリストラ過程と近代化計画に対し専門的なモニタリングを行い、クロアチアの造船所において現在建造されている新造船の構造(品質)を監督し、その他共通的な重要事項に関する調整を行う。
 
 他の主要な活動として、必要に応じ、販売、促進、市場活動の調整、または融資や造船所と関係の深い戦略物資の販売の調整を行う。
 
デンマーク
一般状況
 デンマーク経済は、2001年の1%から2002年には1.5%に成長した。今後の成長は国際経済の不況にも係わらず、2002年12月にOECDが、2003年に2%、2004年に2.5%と予測している。デンマークの経済は比較的しっかりしており、主に個人消費と投資の間の健全なバランスによって、安定的な成長が期待される。しかし、継続する国際経済の弱さからこれらの期待も楽観主義に終わるとも見られている。
 
 デンマーク経済の成長は、ユーロ圏における経済が2001年1.5%成長から2002年0.8%成長にスローダウンする中で、国際経済の影響が大きいと見られている。過去10年で最低だった2001年の0.3%成長から脱却した米国は、2002年にはGDP成長2.3%と急増している。
 
 デンマーク経済の成長は個人消費の増加による刺激と非常に重要である輸出の成長によって2002年に徐々に増加した。2001年11月の総選挙の後、新自由連合政府は、社会民主党により指導されてきた旧政府を引き継いだ。新政府は全ての税金アップを止めることを公約しており、これは最近出された2004年からの税収入カットの提案によって確認された。
 
 労働力と総雇用者は2001年から2002年に若干減少した。失業者比率は2001年と2002年で大体4から4.5%程度となっており、このレベルにとどまるか、さらに下がることが期待されている。2002年の消費者物価のインフレは前半の1.5%から後半の1.8%へ増加した。OECDは2003年には2.1から2.5%程度のインフレ率を予測している。
 
 国民投票を受けて、2000年にデンマークは欧州統一通貨EUROに参加しないことを決定した。しかし政府と国家銀行では、長期的な貨幣政策は変わることなく維持することを宣言しており、これは実際には、デンマークの貨幣と経済発展はEURO圏の発展に極めて密接にリンクするということである。
 
造船
 2001年にデンマークの造船所は、13隻の商船を建造し、トータルで35.5万GT、25.4万CGTとしていたところ、2002年には、デンマーク造船協会のメンバーは、15隻の商船を完成し、トータルで43.1万GT、31.6万CGTとなった。しかし完成した船舶の契約価額としては、2001年の47億DKKから2002年の36億DKKに下がった。
 
 2002年末の造船所の直接雇用者は3360名でその内、新造船部門は2820名であった。これは2001年末に造船所の労働力が4320名でその内新造船部門で3680名であった状況に比較し減少している。これに加え、2002年末までに造船所で従事する200から300名が新造船の下請け労働者に代わることとなる。
 
 ロシアで操業するために発注されたトロール工船の引渡しの問題によって、Orskov Chri
stensen Steelshipyard Ltd.は2003年春に新造事業を廃業し、修繕事業は新会社Orskov Yard Ltd.に移転された。
 
 補助金とその他の貿易歪曲措置は造船業の国際競争力の障害となっている。過去、国際的合意を通じてそのような歪曲措置を止めようとしたが成功しなかった。しかし、其のような合意は、貿易の歪曲措置なしに自由でオープンな市場をリードし解決するためには必要な要素と思われる。また合意発効後、全ての参加国から規律が尊重されることも重要である。それ故、そのような合意を確立しようとするOECDのフレームワークでの新交渉は歓迎されるものである。
 
修繕
 デンマークでは2箇所の修繕ヤードが、200m以上の長さの船舶向けにドック能力を提供している。一方、より小さい船向けに多くの他の修繕ヤードがドック能力を提供している。船舶の修繕改造市場は極度に競争的で特に小型船の修繕市場は、この地域の小型船の数が減り続けており市場規模の縮小で、過酷を極めている。
 
 2002年の修繕と改造の活動レベルは前年に比べ減少した。需要に比べ余りに大きい能力が災いし、価格は抑制され続けている。
 
 デンマーク造船協会のヤードではトータルで、2002年12月31日現在、修繕と改造向けに約540名を直接雇用しており、1年前の状況と比べて30名減少した。また追加の比較的多人数の下請け労働者が雇用されている。







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