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II. 世界の造船政策
世界の造船政策
 2002年6月から欧州造船産業は、極東の造船所、即ち韓国、日本、中国の造船企業に比較して顕著に市場占有率を失いつつある。
 
 2002年と2003年の第1四半期の新造発注量の欧州の占有率は、世界的に新造発注データが記録されてから、もっとも低い数値となった。
 
 この状況の中で、欧州委員会による措置は、本質的には変化できなかった。貿易障害規則の下での公式手続きをベースとして、欧州委員会は、韓国の不公正な競争によって、欧州域内造船所が、大きな損失とひどい被害という形で悪影響を被っていることを認知した。結果的に欧州委員会は、プロダクト船、ケミカル船、コンテナ船に限定して、契約価格の最大6%の支援に関する契約をメンバー国が造船所に供与することを許す暫定保護メカニズムを採択した。またLNG船については、EU域内造船所が同じように悪影響を被っていることが、2002年の検査で判明し、これを基に、欧州委員会が確認した後、そのスキームに含められた。
 
 いくつのメンバー国がこの規則を用いるかが今後の課題である。しかし過去12ヶ月の現行の状況では、この効果では、むしろ、限界があるということである。
 
 暫定保護メカニズムは、2004年3月31日もしくは韓国に対する紛争処理が解決または保留される場合には、其の日以前に失効する予定である。
 
 2002年12月に世界の主要造船経済圏は、病んでいる世界の造船産業における過剰能力と下落船価へ対応するため、OECDにおいて交渉を立ち上げた。この目的のため、特別交渉グループ(SNG)が創設されOECDのスイス大使のWilhelm B. Jaggi氏が議長に就任した。
 
 SNGはその作業を、過去の経験から少し意欲的に、2004年末までに完了することを予定している。
 
 SNGは2002年12月と2003年4月に会合を開いた。
 
 最初の会合で、目標として造船産業における正常な競争条件に合致しない全ての措置と条件をカバーすることが述べられた。
 
 協定の範囲には、商業的造船と修繕産業が含まれ、軍用船は除かれることとなった。カバーされる船の最小サイズは未だ決定されていない。
 
 国際市場における漁船は、関連する国内漁船でも同じことが更なる検討と決定の上で問題となることから、この協定でカバーされるべきと思われる。
 
 EUは加害的廉売規律の必要性を主張した。この考えは、特にコスト以下での契約船価と戦う唯一の方法であることから、日本とほとんどの参加者に支持された。
 
 韓国は、支援措置を禁止すれば、市場の力が機能するという立場で、この提案に反対した。この会議に初めて参加した中国は、適切な分析が出来るまで、その立場を留保した。
 
 またSNGは、参加国の最低数や造船市場の最低占有率による協定発効要件について検討した。さらに正式な発効までに参加国に協定の適用を可能とするオプションも検討された。
 
 韓国は、WP6のメンバー国と非メンバーでSNGへ参加している国における支援措置の詳細インベントリー作りを要求した。他のメンバー国からは支持はなく問題は後送りされた。
 
 大勢は価格規律の挿入が好ましいとしても、韓国はあらゆる価格規律に強く反対し続け、問題は先送りされた。
 
 SNGに参加しない米国の立場に言及し、韓国は新協定への米国の参加は特にその強制に関して不可避と主張した。
 
 SNGはまた造船部門において新興経済圏に関連する特別で異なる取り扱いについて検討した。あらゆるケースで中国は、SNGが協定適用への移行期間の設定の可能性の検討を要求している。
 
 WP6の需給サブグループはカナダ政府のRichard Domokos氏を議長として、市場の進展と能力の検討作業を継続している。
 
III. 海上安全と環境保護の世界政策
IMOの海事安全
 海事安全分野のIMOの作業は、9.11の事件の影響で、広い範囲、特に、海運が国際テロリズムのターゲットになりうるという恐れへの対処に拡大された。IMO総会はすでに2001年11月に、船舶に対するテロ活動を防止・抑制し、船上と沿岸両方の保安を改善するために、既存の国際的な法的または技術的手段の見直しを呼びかける決議を採択している。IMOでの更なる議論は米国によって強力に進められた。米国提案をベースに包括的な措置のセットがいくつかの作業グループで検討され、最後に2002年12月の外交会議で採択された。その主要な要素は、新たな「国際船舶港湾施設保安規則(ISPS Code)」と「海事保安の向上措置」という表題のSOLAS新章である。鍵となる言葉としては、IMOの安全から保安への顕著なシフトであり、また海運と陸上施設間のインターフェイスについて、その活動範囲を拡大したことである。
 
 ISPS Codeの主要目的は、船舶と港湾施設の保安を確保するため、リスク評価の基準化された枠組みを提供することである。
 Codeの第A部は行政府、港湾当局、海運会社への要件が含まれている。これらの要件はSOLAS条約新第XI-2章(海事保安向上のための特別措置)の下で強制化されることとなる。
 Codeの非強制部分である第B部は、これら強制要件にどのように合致すればよいかという指針を含んでいる。
 港湾施設に関するリスク評価としては以下を含んでいる。
・重要資産とインフラ施設の認識と評価、
・資産に対する実際の危険の認識
・潜在的な弱点の認識
 リスク評価完了後、それら港湾施設は、以下の事項を要求するかどうかが決定されねばならない。
・「港湾施設管理者(Port Facility Officer)」の指名
・「港湾施設保安計画(Port Facility Security Plan)」の作成
・定義された保安レベル(保安レベル1から3で、それぞれ通常状態、中程度の危険状態、高い危険状態に対応する)における運用的または物理的保安手段の実施
 
 これらの港湾施設内あるいは近傍に位置する造船所については、文書内に何の言及もなく「港湾施設」という言葉の定義もない。船の保安に関しては、海運会社は「社内保安管理者」と各船ごとに「船舶保安管理者」を要求される。
 「船舶保安計画」には、保安レベル1(低危険)で船舶がいつも実施する運用的及び物理的保安手段と、保安レベル2(中危険)または保安レベル3(高危険)の場合にとる迅速な実施のための追加的措置を示さねばならない。
 要件への適合は「国際船舶保安証書」に文書化される。この文書は船上に保持し、船舶は様々な監査やPSC制度における検査に従わなくてはならない。
 
 SOLAS条約の改正に関しては、これらは「海事保安向上のための措置」という表題で、SOLAS条約新第XI-2章に含まれる。この新章は、国際航海に従事する高速船、移動式沖合い掘削リグを含んだ全旅客船と500GT以上の全貨物船、並びにこのような船が利用する港湾施設に適用される。
 新章の第3規則は、新ISPS Codeに言及し、SOLAS条約のもとでそのCodeを強制化している。新章の第5規則は、全ての船舶に船舶保安警報システムの装着を要求している。タイムテーブルとしては、2004年には義務船のほとんどはこれに準拠するであろうが、2006年の時点でも未準拠船が残ると見ている。
 SOLAS条約第V章(航海の安全)の修正では、自動識別システム(AIS)の設置が前倒しされている。旅客船とタンカー以外(で5万トン以下の船舶)は2004年7月1日以降の最初の設備検査もしくは2004年12月までのいずれか早い時までにAISを設置しなくてはならないこととなった。(旅客船とタンカー及び5万トン以上の船舶は2004年7月1日までに措置することが過去に決定済み)
 既存のSOLAS条約第XI章(海事安全の向上措置)は、第XI-1章と番号変更された。本章第3規則は、船舶識別番号を恒久的に船体もしくは船楼に見えるように示すことを要求している(旅客船においては空中から見えるように水平表面にマークすることで十分となっている)
 本章第5規則は、継続履歴記録(CSR)を要求している、これは特に船主と船舶登録の全ての変更を文書として船上に提供することを意図している。
 SOLAS条約の改正は、タシット受け入れ手続きと呼ばれる方法で2004年7月1日に発効する予定である。
 
 IMOでは、保安関連措置に重点が置かれていたが、海事安全についても2つの重要な問題について、IMO作業計画として最終化され、また重大な決定が行われた。
 これは、国際海事危険物規則(IMDG Code)が強制規則になったこととSOLAS条約第II-1章の全てのタンカーの貨物区域への接近手段に関する改正についてである。
 この改正は、500GT以上のタンカーと2万トン以上のバルクキャリヤーに、2005年1月1日までに貨物タンクとバラストタンクヘの恒久的接近手段を要求するものである。
 この手段は「船舶構造アクセスマニュアル」に文書化されなくてはならず、これはこれらの船舶の検査と保守を容易にするものである。
 
 バラ積み液体・ガス小委員会(BLG)は10度10度のジグザグテストの要件変更を含む船舶操縦性基準の改正に合意した。
 船舶の停止能力については、BLGはAWESのイニシアティブをベースに、近年の韓国と日本のサブスタンダード新船の能力に合わせようとする基準の緩和を拒絶した。
 しかし、権利放棄条項で大型排水量船(VLCC、ULCC)に対して主管庁がテスト基準を修正することが許されており、基準としては船舶の最大停止距離は20船長を越えないということに制限された。(しかし主管庁の権限でこれを守らないところが出てくる。)
 
 バルクキャリヤーの警戒すべき喪失数は一般に広く伝えられていない。これらの事故では多くの人名が失われるため、原因解明が困難となっている。MSCは2002年12月にこの問題に対応し、バルクキャリヤーの安全を改善する包括的な措置を採択した。
 これらの措置は最新のリスクアセスメント評価をベースとして、運航にかかわる問題と基準に関係する構造や設備、特に船体や閉鎖装置と脱出装置などに対する要件が含まれる。造船所の観点から最も重大な提案は長さ150m以上の全ての新造バルクキャリヤーに対する二重側壁の要求である。
 他のリスク制御オプションは、浸水警報、貨物倉の一つおき積載の禁止、ハッチカバーの強化、防護塗装の改善、フリーフォール型救命艇、個人用救命器具で構成される。
 技術的な詳細作業は、時間的に厳しいスケジュールで所轄のIMO小委員会へ委託された。それ故、この措置は2005年中に発効すると見られる。
 
 バルクキャリヤー安全問題は、IMO理事会が特定の船型によらない一般的な政策問題として決定された新しい作業計画を派生させることとなった。IMO戦略計画の策定に関して、バハマとギリシャ代表は船級間の加速する競争が新造船の品質を低下させる傾向にあるため、新造船を建造する構造基準を決定する大きな役割をIMOが果たすべきであると提案した。この政策的アプローチは、延長した保証期間に対するハイテン鋼の使用禁止議論から派生した「頑丈な船の建造」のための特定の技術的・商業的提案によって補足された。
 AWESはこの進行中の議論に2方向アプローチで活発に参加している。一つは、AWESは欧州と極東間のダブルスタンダードの状況に関し、造船基準への準拠状況の調査結果を確認しており、IMOを通じて関連情報を整理することを提案している。もう一方は、AWESは船舶運航のための船主の義務を再想起することを呼びかけ、船主と造船所間の契約関係に対するIMOの関与と、設計自由度の無い技術規則によるメンテナンスフリー提案を拒絶している。
 
IMOにおける海洋環境保護
 船舶の有毒防汚システムの国際条約が2001年の外交会議で採択されたが、この問題はまだMEPCの議題に残っている。MEPC48は防汚システムの検査と証書指針を採択した。この指針は国際航海に従事する400GT以上の船舶に適用される。国際防汚システム証書が最初に発給される時は、初期検査が新船と現存船に対し行われる。
 防汚システムの25%以上に影響する修繕には、検査が要求される。
 現場検査は全てのケースで実施されなくてはならない。しかしサンプリングは全てのケースで要求される必要はない。
 しかしこの条約は2カ国(デンマークとアルゼンチン)のみが現在までに批准しているが、近い将来の発効は期待できない。
 
 今のMEPCの議題で重要な項目は、船のリサイクリングの問題である。2003年秋のIMO総会での採択するという観点で、船舶リサイクル指針の策定が主要タスクとなっている。現行の案は船舶のライフサイクルを通じた全ての関係者へ助言を与えようというもので、関係者としては、行政(旗国、寄港国、リサイクル国、造船国)、国際機関(ILO、バーゼル条約)、産業(船主、造船、修繕、解撤ヤード)となっている。
 そういう活動の中で、例えば「グリーンパスポート」のように新造船の設計建造に関係する問題も取り扱われている。これは、船舶に含まれる危険物質のリストを船の生涯を通して携帯し全ての変更を記録するというものである。また指針案では、新造船の構造に関する更なる要件も言及されている。例えば、安全にリサイクルできる材料の使用や、健康や環境に潜在的な危険があるとわかっている材料の使用の最小化や、サンドイッチパネルなどの特定物質又は構成物が後で分離困難となるような材料に対する使用の制限と、そのような材料の除去を容易にする手段の採用などである。
 AWESは活発にこの問題の作業に参加している。AWESはコレスポンデンス(連絡)グループに対し、ガイドラインは、リサイクルを容易にすることにまで焦点を当てるのではなく、主として危険物質をどうするかを取り扱うべきとの強い意見を提出している。さもなければ、これは造船技術やサンドイッチパネルなどの新材料の開発の後退を引き起こしかねないからである。サンドイッチパネルは最新のクルーズ船の構造にとって必要不可欠である。
 
 グリーンハウスガス(GHG)を削減する戦略の枠組みの中で、船からの大気汚染問題(特に船からのC02である)に関するIMO作業が現在集中的に行われている。
 これは2003年秋のIMO総会で採択される関係で急がれている。
 現行案は、GHG排出ベースラインの設定と船のGHG効率(GHG指標と表現されている)を表す手法の開発を通じて、グリーンハウスガスの削減を達成しようとしている。
 2005年までに指針を最終化し2010年までにモニタリングすることを狙いとしている。さらに指針には、費用対効果分析や確認手段を含めて、技術的で運用的な実態に則した解決策の評価を基本に、実際にGHG排出指標を適用することが求められている。
 MARPOL条約付属書VI(船からの大気汚染)に関して、いくつかのEUメンバー国は、本付属書の批准を通報している。それ故およそ2004年央には発効するものと期待できる。
 
 MARPOL条約付属書I(油汚染防止)と付属書II(有害液体物質のバラ積み輸送)の改正はBLG小委員会でまもなく最終化される。付属書Iの改正案は、運航要件から構造設備規則を分離し、1983年に発効したMARPOL条約の発効以来採択された全ての新船と現存船に対する要件(油タンカーの二重船殻要件の順次導入など)が含まれる。これには5000GT以上の油タンカーに対する、確率論的手法による油流出解析を通じて得られる平均油流出パラメーターをベースとした規制も含まれる。
 
 さらに小委員会は、浮体式製造・貯蔵・荷揚げ施設(FPSO)と浮体式貯蔵施設(FSU)へのMARPOL条約付属書I要件の適用指針に関するMEPC回章案に合意した。
 BLGはFPSOとFSUは油タンカーよりも浮体式プラットホームと考えられることを明確にし、したがって第21規則を修正した(固定または浮体式プラットホームヘの特別要件)。掘削リグ、FPSO、FSUは油タンカー以外の400GT以上の船舶に適用される付属書Iの要件に従わなくてはならない。二重船殻要件については、原則的に13F規則が適用されないFPSOとFSUには掛からない。これは指針で明確化した。それ故フェーズアウトしたシングルハルタンカーのFPSOやFSUへの改造は、許されることとなった。
 
 化学物質の安全・汚染危険物評価については、小委員会は、IBC Codeの改正として、輸送要件の指定規則と、汚染分類ならびに汚染分野の船型の定義規則を最終化した。BLGは、汚染分類システム(PCS)についてコンセンサスが得られなかったため、有害液体物質の汚染管理のためのMARPOL条約付属書IIの規則案として2つの案に合意した。
 汚染分類システム(PCS)の2つの選択肢については(すなわち、欧州地域から提案された全ての貨物を規制するx、y、zの3分類方式と、太平洋地域から提案されたIBC Code 18章の第III分類製品(この規制は緩やか)が含まれたA、B、C、D、IIIの5分類方式)MEPCで決定されねばならない。選択されたシステムは「さらい」限界(荷揚げ後のタンク内に残される製品の量に関係する)と排出基準に関する最終規則にも影響する。植物油輸送と国内での化学品輸送に対する汚染分類による潜在的インパクトを考慮して、MEPC49で本件が議論されることが期待される。







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