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図 3.3.10 L line全測点での水温とDOの相関関係
(上):2002年、(中):2003年、図中に相関係数と観測日を記した。
横軸は水温(℃)、縦軸はDO(mg/L)
 
2002年
 
2003年
 
 そこでそれに関与する物理過程の一つとして、湾口部の混合水が湾内に流入するプロセスに注目してさらに検討を行った。まず、湾口部に最も近く鉛直的によく混合しているL1の平均密度を湾口部の混合水の密度とし、2002年と2003年について調査時ごとの密度変化を図3.3.11に示した。一方、この混合水が流入すると考えられる湾内のL5で混合水の密度と等しい密度の海水が存在する深さを湾口部混合水の流入深度と定義し、その時期による変化を図3.3.12に示した。これらによれば2002年は湾内に流入する混合水の密度が大きかったために混合水は湾内の底層付近に流入する傾向が強かったのに対して、2003年は主に湾内の中層(15m深付近)に流入しており、その下層に孤立した低温(高密度)水塊が存続しやすかったことが分かった。9月には2003年についても混合水が底層に流入する傾向が強まったが、これは9月に入ると底層の貧酸素域の中心が湾奥側に移動する傾向を示すこと(図3.3.5d,eおよび図3.3.6f参照)とよく対応している。図3.3.13は、6月、7月と9月について全域でデータが得られた場合(それぞれ2例)について、海底直上のDO濃度の水平分布を示したものであるが、9月には主に湾奥〜湾東部に貧酸素水が分布していることが分かる。
 
 
図3.3.11 湾口部(L1)における平均密度の時期による変化
青が2002年、赤が2003年を示す。横軸は月、縦軸はσt(kg/m3
 
 
図3.3.12 湾口部混合水の湾内への流入深度の時期による変化
青が2002年、赤が2003年を示す。横軸は月、縦軸は深さ(m)
 
 
図3.3.13 海底直上のDO濃度(mg/L)の経月変化(6月〜9月)
(左):2002年、(右):2003年
 
(3)まとめ
 湾口部で鉛直混合した海水は湾西部から流入する際、その密度に応じて湾内に流入する深さが変化する。湾内で貧酸素化が進行するためには、底層の低温水塊が孤立した状態で存続することが必要と考えられるので、この流入深度の変動は貧酸素水塊の発達や消滅に大きな影響を及ぼす可能性がある。すなわち、湾口部の混合水が湾内の中層に流入する傾向が強いときほど貧酸素水塊は発達しやすい。9月−10月には表面から冷却が進むとともに塩分が増加するため湾口部の混合水の密度が増加し、底層への流入傾向が強まるため、貧酸素水塊は湾の西側から消滅しはじめるものと考えられる。
 2002年夏季は2003年に比べて成層が全体的に弱かったことに加え、塩分が高めで推移したため湾口部の混合水の密度が相対的に大きく、中層よりも底層付近に流入する傾向が強かったことが分かった(図3.3.12)。おそらくこのことが2002年には貧酸素水塊の発達を抑制したものと考えられる。
 なお、伊勢湾では小潮期に湾口部の鉛直混合が弱まるため混合水の密度がそれほど低下せず、混合水が湾内の底層に流入する傾向を示すことが報告されている。大村湾でも小潮期には湾口部の鉛直混合が弱まり上・下層の密度差が相対的に大きくなったが、湾口部の混合水の流入深度を大潮と小潮で比較した結果、大村湾では流入深度に大きな違いは認められなかった(図3.3.14)。おそらく大村湾には外海水が直接ではなく佐世保湾を通じて流入するため伊勢湾に比べて湾口部底層水の密度が小さいこと、湾内に大きな河川がないため湾内水の塩分が伊勢湾ほど低下しないことなどのため、湾内水と湾外水の密度差が伊勢湾の場合ほど大きくないことが両海域の違いの原因と考えられる。
 
図3.3.14 湾口部(L1)における平均密度の時期による変化(大潮期と小潮期の比較)
赤が大潮期、青が小潮期を示す。横軸は月、縦軸はσt(kg/m3







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