II-4)プランクトンの異常発生の推移
水産庁九州漁業調整事務所で集計されている橘湾の赤潮発生件数の経年的な推移を図 2.2.8に示す。発生件数は全体に少なく、また年によって変動はあるが、1980年代に比べて1990年代には件数が若干増加してきていることが分かる。したがって、この項目の診断結果は「不健康」とした。
物質循環の円滑さ
基礎生産
●プランクトンの異常発生●
図2.2.8 橘湾における赤潮発生件数の経年的な推移
II-5)底質環境
橘湾の底質については、1967年6月に西海区水産研究所によって詳細な調査が実施されているが、それ以降、まとまった形で調査されておらず、最近の状況には不明の点が多い。そこで、現地における関連調査の一環として、2002年10月に湾内の15地点で採泥した試料について、ガイドラインに沿って臭気・色調などを調べるとともに・詳しい化学分析を試み過去の結果と比較してみた。
図2.2.9には、調査時の海況(水温と塩分の分布の概況)を、また図2.2.10(1)と(2)には・底質各項目の分析結果を図示した。湾奥部には含泥率が高く、有機部を多く含む底泥が分布していることが分かる。硫化物含有量では水産用水基準値を越える場所はないが、CODについては湾奥部一帯で基準値以上を示している。実際に・湾奥部の底泥の一部は、黒色でわずかながら硫化水素臭を示した。また、過去の結果と比較すると、湾奥部の有機物含有量の多い場所が西方の江の浦沖あたりまで広がってきているように見える。したがって、この項目については、、「不健康」という診断を下すことにした。
II-6)底層水の溶存酸素濃度
さきに図2.2.7に示したように、橘湾の湾奥部の底層には溶存酸素濃度の低い水塊が出現しているが、まだ無酸素化する場所は検出されていない。したがって、この項目の診断結果は「健康」とした。
II-7)底棲系魚介類の漁獲推移
底棲系魚介類の漁獲量の経年変化(1996〜2000年)を図2.2.11に示した。どの分類群についても減少が見られ、とくに貝類の減少は著しい。ガイドラインにしたがって最近10年間の平均漁獲量と3年間の平均漁獲量を比較すると、それぞれ1134トンと960トンであり、その減少幅は174トン(10年間の平均漁獲量の15.3%)である。基準は20%以上減少しているかどうかであるから、その意味ではこの項目の診断結果は「健康」となるが、減少傾向は最近とくに顕著であり、今後の動向に注意することが必要と考えられることから「要注意」とした。
図2.2.9 橘湾の調査時の水温・塩分分布の概況
観測日:2002年10月1日
図2.2.10 (1) 橘湾の底質分布(1)
T-N(mg/g)
T-P(mg/g)
TOC(mg/g)
T-C(mg/g)
硫化物(mg/g)
COD(mg/g)
図2.2.10(2)橘湾の底質分布(2)
含泥率(%)
含水率(%)
強熱減量(%)
物質循環の円滑さ
除去
●底棲系魚介類の漁獲推移●
図2.2.11 橘湾における底棲系魚介類の漁獲量の経年的な推移
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