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「参考資料1」
東京アピール
 今次会合に参加した各国及び地域(以下単に「各国」と表記するが、地域を含むものとする。)の政府機関、船会社その他の参加者は、海賊及び船舶に対する武装強盗事件の発生件数が、ここ数年増加傾向にあり、特に東南アジア海域においてハイジャック事件のような凶悪かつ組織的事件が発生していることを深く懸念し、また、かかる状況が、乗組員の人命及び船舶の運行の安全確保上極めて大きな脅威となり、アジア地域全体で真剣に取り組むべき問題となっていることを認識し、1995年5月にMSC(海上安全委員会)で採択されたIMO(国際海事機関)の勧告の実施を目指し、その中で旗国の役割と責任を認識しつつ、海賊及び船舶に対する武装強盗対策をとるに当たっては、まず、海賊及び船舶に対する武装強盗事件の実態を正確に把握することが必要であることを確認し、自国の内水又は領海で海賊及び船舶に対する武装強盗が発生した国(以下「沿岸国/寄港国」という)による迅速、的確な海賊及び船舶に対する武装強盗事件の取締りのためには、被害が発生した場合にその事実を直ちに関係当局に通報することが不可欠であることを考慮し、また、被害にあった船舶の中には、予防措置が不備なものもあり、船側の対策のさらなる徹底を求めていく必要があることを考慮し、海賊及び船舶に対する武装強盗を防止するためには船会社自身の自覚と取組が基本であることをあらためて確認するとともに、被害を被っている船舶の旗国及びその他の実質的利害関係国の海事政策当局における海賊及び船舶に対する武装強盗対策の取り組みの根幹をなすのは、自国の船会社(が所有し、又は運航する船舶)が事件の通報を含む適切な海賊及び船舶に対する武装強盗対策をとるよう指導、監督し、及び環境を整備することであることを認識し、他方、沿岸国/寄港国のとるべき措置は、海賊及び船舶に対する武装強盗事件の予防及び取締り並びに事件が発生した場合における人命等の救助及び犯罪の捜査であることを認識し、近年の船舶に対する武装強盗のほとんどはいずれかの国の内水又は領海で発生しており、その領海内等で事件の発生している沿岸国/寄港国による取締りの強化がまず何よりも必要であることを強調し、港内又は港の付近で停泊又は漂泊中の船舶が被害を受けるケースが多く、港内又は港の付近における船側の警戒の強化とともに、当該領域を管轄する当局による対策の強化が必要であることを考慮し、他方、関係機関の取組みが互いに連携、協力することなしには真に有効な対応となり得ず、また、海賊及び船舶に対する武装強盗事件が、他の船舶関連の事件と同様、船舶の旗国及びその他の実質的利害関係国並びに事件の発生海域の沿岸国、船舶の寄港国、関係国が多数に及ぶものであることを確認し、近年、国際シンジゲートによるハイジャックのような凶悪事件が増え、複数の国にまたがるような事態が増加してきていることにより、関係国による地域ぐるみの連携、協力体制の強化の要請が益々高まってきていることに留意し、これに対処するための法的枠組みとしては、IMOの下で策定された、1988年ローマ条約が有効と考えられることを強調し、そして、海賊及び船舶に対する武装強盗問題は、関係機関、ないし船舶の旗国及びその他の実質的利害関係国や沿岸国/寄港国がそれぞれの立場で単独で対応して解決できる問題ではなく、それぞれの立場を超えて相互に連携、協力してはじめて有効な対応が講じられるものであることを確認し、以上より、
1 海賊及び船舶に対する武装強盗対策のため、互いに協力しつつ、可能な限りあらゆる対策を講じていくとの固い決意をあらためて表明する。
2 これらを踏まえ、以下を主な要素として、それぞれアクションプランを作成し、速やかに適切な措置を講ずる。
3 ハイジャック等、凶悪かつ組織的な事件を念頭に置いた船側の自主警備策(位置通報システムの導入等)の実施及び強化
4 事件発生時に沿岸国/寄港国が迅速・的確な措置をとれるように、被害を受けた船舶から沿岸国/寄港国の関係当局への報告を徹底させるための環境の整備
5 被疑者の的確な訴追を遂行するための沿岸国/寄港国による法的枠組みの整備
6 関係機関が一体となって的確且つ機動的な対応をとるための体制の構築
7 国際的な情報連絡、連携を促進するべく、従来からの外交ルートを通じた情報連絡とともに、専門的知見を有する各国の関係機関が、相互間の情報連絡窓口を設定しこれを活用することにより、総合的な情報ネットワークを形成
8 船舶の自主警備策の強化や、関係機関による行方不明船舶の早期発見に資するべく、海賊及び船舶に対する武装強盗事件に係るデータを共有・活用
 
「参考資料II」
アジア海賊対策チャレンジ2000
 ブルネイ、カンボジア、中国、香港、インド、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、韓国、シンガポール、タイ、ベトナムの海上警備機関責任者による会合(2000年4月27日から29日、東京)
1 ブルネイ、カンボジア、中国、香港、インド、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム(以下単に「参加国」と表記するが、参加地域も含む)の海賊及び海上武装強盗(以下「海賊・海上武装強盗」という)の取締り並びにその被害者及び被害船舶を支援する任務を有する政府機関(以下「海上警備機関という」)の長又はその代理者から構成されている代表団は、2000年4月27目から29日の間、東京で開催された標記会合に出席し、海賊・武装強盗対策に関する国際協力・連携の必要性と可能性について議論した。同会合は極めて友好的な雰囲気の中で行われた。
2 同会合において、各参加国海上警備機関は、海賊・海上武装強盗問題の傾向を分析・検討しこの問題が同海域における船舶の安全航行にとって大きな脅威となっているとの認識で一致するとともに、その有効対策を確保するため、可能な限り相互協力・連携を推進・強化していくとの意図を表明した。なお、これら将来的に可能となる連携を含む適切な対処措置は、それら参加国の国内法制、関係条約に則り、かつ当該連携を維持するために十分な資源が利用可能である場合に限り、実施できることであることは言うまでもない。
3 このため、各参加国海上警備機関は、3月7日から9日の間シンガポールで開催された海上警備機関部長級準備会合において作成された24時間機能する「海賊・海上武装強盗対策情報連絡窓口」を利用して、以下に掲げる事項を含む海賊・海上武装強盗関連情報の交換を関係する参加国の海上警備機関間で迅速に行うとの意図を表明した。
1)発生情報(蓋然性のある段階にある場合を含む)
 発生日時・位置、船名、船舶の特徴、被害船舶・者の被害状況
2)継続報告
 襲撃方法、人数、保有武器、海賊・海上武装強盗の詳細情報
3)事件措置報告
 捜査、訴追、処罰等に関する事件処理情報
4)その他関連情報
4 参加行政府の海上警備機関は、「官、民全ての海事関係者による海賊及び船舶に対する武装強盗対策に関する国際会議」(2000年3月28日から30日、東京)で承認された「東京アピール」及びその中に示してある海賊及び船舶に対する武装強盗を予防及び鎮圧するため海事政策関係者及び他の関係機関によりなされた決意を歓迎する。「東京アピール」においては、色々な重要な事項が挙げられているが、その中の一つは、沿岸国/寄港国への襲撃された際及び襲撃された後の迅速な通報に関することである。参加行政府の海上警備機関は、そのような迅速な通報であれば、海上警備機関が時期を失することなく必要な対応をとることができ、且つ、それら通報のデータを分析することにより、効果的な対策がとれるということを認識し、上記国際会議で作成された「事件発生時における通報及び発生後の通報の受領先リスト」を高く評価する。
5 さらに、各参加国海上警備機関は、最近頻発している、アンナ・シェラ号事件、ペトロ・レンジャー号事件、テンユウ号事件、アロンドラレインボー号事件等の海賊・海上武装強盗が、国際シンジゲートと関わっていると思われること、そのため、凶悪化、かつ、一参加国の機関の管轄を越えた範囲にその活動が行われていると考えられることにかんがみ、以下の1)から6)を含む本分野に係る協力・連携を強化していくこと、及び、そのうち、可能かつ適当な場合には、今後、直ちに協力可能な分野から迅速かつ効果的な協力・連携を開始する必要があるとの見解を共有した。
1)海賊・海上武装強盗取締り強化
 各参加国のそれぞれの海上警備機関は、海賊・海上武装強盗に対する取締りを強化する。
2)海賊・海上武装強盗の発生情報(蓋然性のある段階にある場合を含む)を受けた際の措置
2)-1 被害船舶・者の支援措置
各参加国海上警備機関は、海賊・海上武装強盗の発生情報を入手した場合には、直ちに被害船舶・者に対し可能な支援を与えるための措置をとる。
2)-2 停船及び拿捕措置
各参加国海上警備機関は、被襲撃船舶又は海賊・海上武装強盗供用船舶が発見された場合には、当該船舶等の停船措置及び拿捕を行うため、可能かつ適切な措置をとる。
2)-3 連携措置
2)-1又は2)-2の措置をとるに際しては、3の連絡窓口を利用して関連情報を関係する他の参加国の海上警備機関、特に当該事件又は当該容疑者に関係する他の参加国の海上警備機関へ通報し、連携行動の可能性につき検討するとともに、実施可能な場合には、当該海上警備機関と連携して措置をとることができよう。
3)停船及び拿捕後の措置
 参加国の海上警備機関は、公海その他のいずれの国の管轄権にも服さない場所において容疑者を確保し又は海賊・海上武装強盗に供用された船舶を確保した場合は、外交ルートを通じ、その取扱いについて関係参加国、特に、当該事件又は当該容疑者に関係する他の参加国の海上警備機関と協議することができよう。
4)捜査共助
 参加国の海上警備機関は、必要に応じ、外交ルートにより捜査共助の要請を行う。捜査共助の要請を受けた参加国の海上警備機関は、当該要請に応じるよう最大限の努力を払う。
5)連携活動の推進
 各参加国の海上警備機関は、連携活動の有効性をテイクノートし、将来そのような協力を探究する可能性について適切な会議において検討されるであろうことにつき見解を共有した。
6)技術協力
 参加行政府の海上警備機関は、本分野における各行政府及び各海上警備機関の個々の能力を向上させる必要性を認識し、次のことに関する技術援助を要請する海上警備機関に対し支援を行う可能性を探究しようとする日本の意思をテイクノートした。
6)-1 人員を訓練すること
6)-2 関係する技術、資材及び施設を利用することができるよう確保すること
6 各参加国海上警備機関は、本会合のフォロウアップを含む各国海上警備機関間のさらなる協力・連携を推進するため、専門家による会合を開催すべきであり、その日程、場所等の詳細は外交ルートで調整すべきであるとの見解を共有した。
7 各参加国海上警備機関は、適当な場合には、海上取締り活動の不要な重複は避けられるのが望ましく、参加国の関係当局により、アジア海賊対策チャレンジ2000に係る事項を海上における薬物及び銃器の密輸・密航の取締り活動に利用することの可能性について検討されることが適当であるとの見解を共有した。







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