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1・4 SOLAS条約の注意点
 改正されたSOLAS条約は、審議が十分になされないまま決められたきらいがあって、各国の解釈に食い違いを残している。これらの点はこれからもIMOで審議されるであろうが、現在注意すべき点を挙げてみると概略次のような点であろう。
(1)2・1・1項の標準磁気コンパスは、IMOのA.382に述べられている標準に適合するもの(これを受けて技術的に定められたISO449に適合するもの)で、適正に自差修正がなされていることが求められている。適正とは、一般に操舵室内に設置された磁気コンパスは、磁気的環境が悪く完全に自差がなくなるまでは自差修正が不可能な場合が多く、数度の自差が残存するので、技術的に可能な方法で可能な範囲の自差に抑えることを指している。この残存自差は、2・1・3項で残存自差表又は残存自差曲線として備えておくように求められている。
(2)2・1・2項の方位測定用のペロラス(方位盤)又は同等装置は、360°の水平視界のある場所に設置されるか又は複数の装置で合計して360°の水平視界が得られるように設置することが求められている。これは、ジャイロコンパスの方位測定用のレピータでもよいように性能が定められることが必要である。
(3)2・1・3項では、残存自差の表又は曲線だけでなく、偏差もすぐ分かって改正できるように備えていなければならないことになっている。
(4)2・2・1項の予備の磁気コンパスは、2・1・1項の操舵用の標準磁気コンパスと交換可能なものでなければならない。
(5)以上のほか、備付けが規定されているもので具体的な動作性能要件が決まっていないものがあるので、各国におけるポート・ステート・コントロールで船が困らないように次の項目に注意すべきであろう。
 2・1・9項、2・5・4項、2・9・1項。
(6)4項の故障を最小限にするような据付け方法、試験方法、機能の維持手段の基準が未定である。
(7)この搭載設備要件には入っていないが、他のコードや条約で必要な航海装置があることに注意しなければならないであろう。
 例えば、
・気象観測のためのもの・・・気圧計、風向風速計。
・天文航法のためのもの・・・六分儀、時計、天測暦、航海暦、天測計算表(STCW条約では国際航海船の船舶職員資格試験必須項目との整合)
・遭難時に船長が取るべき処置の指針(MERSAR MANUAL)
・操船指針を与える操船ブックレット、船橋ポスター及びパイロット・カード
・見張りのためのもの・・・双眼鏡、海図記入用具等
 これらの中には、今まで必要は認めていても、言い訳けとして船員の常務と片付けられていたものもあるが、最近のように外国人船員が多くなってきた現状においてはすべてを規則にリストアップする必要がある。
 
1・5 SOLAS条約第V章によるレーダー・EPA・ATA・ARPAの搭載要件のまとめ
 
表1・4 SOLAS条約第V章第19規則のレーダー・EPA・ATA・ARPAの搭載要件
項目 設備 備考
2・3 トン数に関係なく全旅客船、及び300GT以上の全船舶、に搭載
2・3・2 9GHzのレーダー[又は同等設備]  
2・3・3 電子プロッティング装置(EPA)[又は同等設備] 電子的な物標プロット装置
2・5 500GT以上の全船舶(ただし2・3・3を除く)、に搭載
2・5・5 自動物標追跡装置(ATA)[又は同等設備]
(2・3・3の代替)
10以上の物標を追尾し危険関係を予測可能
2・7 3,000GT以上の全船舶、に搭載
2・7・1 第2のレーダー[又は同等設備] 3GHzレーダー、主管庁の承認により9GHzレーダーでも可
2・7・2 第2の自動物標追跡装置(ATA)[又は同等設備] 2・5・5項のものとは独立した機能のもの
2・8 10,000GT以上の全船舶(ただし2・7・2を除く)、に搭載
2・8・1 自動衝突予防援助装置(ARPA)[又は同等設備](2・7・2の代替) 20以上の物標を追尾可能で危険関係予報を試行操船可能
 
 以上をまとめると、レーダーについては、
(1)全旅客船、及び300GT以上の全船舶に、9GHzレーダーを搭載すること。
(2)3,000GT以上の全船舶には、第2のレーダー(3GHz)を搭載すること。
ただし、第2のレーダーは主管庁の承認を得て9GHzでもよい。
 EPA・ATA・ARPAについては、
(1)電子プロッティング装置(EPA) Electronic Plotting Aids
 全旅客船、及び300GT以上の全船舶(ただし、500GT以上の船舶を除く)に備え、その主要性能は電子的な物標プロッティングの、装置である。
(2)自動物標追跡装置(ATA) Automatic Tracking Aids
 500GT以上の全船舶の第1レーダー及び3,000GT以上の船舶の第2レーダー(ただし、10,000GT以上の船舶の第2レーダーを除く)に備え、その主要性能は、10以上の物標を追尾し危険関係を予測可能な、装置である。
(3)自動衝突予防援助装置(ARPA) Automatic Radar Plotting Aids
 10,000GT以上の全船舶の第2レーダーに備え、その主要性能は、20以上の物標を追尾し危険関係を予報し試行操船が可能な、装置である。
注 2つのレーダーがともに9GHzの場合、第1第2の区別は実質的にはないので、300GT未満の旅客船及び300GT以上500GT未満の全船舶はEPAを備えたレーダーを搭載すること。
 500GT以上3,000GT未満の全船舶はATAを備えたレーダーを搭載すること。
 3,000GT以上10,000GT未満の全船舶はATAを備えたレーダーを2台搭載すること。
 10,000GT以上の全船舶はATAを備えたレーダー1台と、ARPAを備えたレーダー1台の計2台を搭載することとなる。
 
第1章 練習問題







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