2・3・5 導波管の布設
(1)導波管等の種類
航海用レーダーの信号伝送路として一般的に使用されているもの及びその伝送損失の一例を<表2・2>に示す。
表2・2 導波管等の種類及び伝送損失
種類 |
(単位) |
9GHz帯 |
3GHz帯 |
矩形 導波管 |
直線部 |
[dB/m] |
0.072 |
0.02 |
Eベンド |
[dB/個] |
0.15 |
- |
Hベンド |
[dB/個] |
0.15 |
- |
ツイスト導波管 |
[dB/個] |
0.3 |
- |
フレキシブル導波管 |
[dB/m] |
0.1 |
0.11 |
楕円導波管 |
[dB/m] |
0.098 |
0.03 |
同軸管 |
[dB/m] |
- |
0.09,0.11 |
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矩形導波管は、9GHz帯、5GHz帯、3GHz帯のすべてのレーダーに最近まで使用されてきた。その布設工事には高度な技術と豊富な経験が要求され、また材料が嵩張り(かさばり)、特に3GHz帯のものは大きくて重いため布設作業は困難が伴っていた。
最近では、矩形導波管に代わる低損失のフレキシブル導波管や楕円導波管、同軸管が開発され、これらが使用されることが多くなり、布設工事は容易になった。
しかしながら、送受信部や空中線部との接合部には矩形導波管が使用される場合も多いので、これに関する知識は必要である。
(2)矩形導波管のエネルギーロス
導波管内の減衰は、管内の誘電体による損失と、管壁を流れる電流によるもの(オーム損)が考えられるが、管内は一般には中空で、誘電体が空気の場合には損失は極めて小さく無視できる。
ただし、雨水が管内に浸入した場合には、減衰は急激に増大する。
導波管壁が完全導体であれば、導電率は無限大で、すなわちオーム損はないが、実際には、どのような導体でも導電率は有限で、必ず幾らかの抵抗をもつものである。したがって、導波管の管壁に電流が流れれば熱を発生する。これは伝搬する電磁波エネルギーの一部が熱エネルギーに変わったもので、管軸に沿って電磁波は減衰する。
図2・12 導波管装備要領例
導波管ロスはレーダーの性能にどのように影響するかを考えてみよう。いま、仮に直線導波管の全長が7.5mで、ベンドを5個使用して50kWの送受信部を装備したとすると、
0.1(dB)×7.5(m)=0.75(dB)
0.15(dB)×5(個)=0.75(dB)
0.75(dB)+0.75(dB)=1.5(dB)
となる。この1.5dBの損失は送信時に減衰したものであるが、レーダーの場合は受信時にも同じ導波管内を伝搬してくるから、往復で損失は倍になり、実に3dBの減衰となって、50kWの出力が半分の25kWの送信出力を持つ2ユニット型と同等の能力となってしまう。
このような理由から、第1レーダーに50kWの3ユニット型、第2レーダーに25kW2ユニット型を装備しても、導波管の布設のやり方次第では、第2レーダーの方がよく映る結果になるのは明らかである。
上記の導波管ロスは、内部にさびやごみのない、全く新しい導波管の場合であって、漏水等によるさびの発生や、管壁の汚れ等によって減衰量は更に増加する。
(3)矩形導波管のレイアウト上の注意事項
(a)ベンド1個は直線導波管1m以上の損失に相当するので、できるだけ使用しないようにする。
(b)水平部分の導波管の布設長さが短くできるように送受信機の位置を設定する。
(c)直線部分はできるだけ規格品を使用し、接続箇所は極力少なくすること。
(d)ツイスト導波管は損失が大きいので、極力使用しないように布設方法と送信部の取付方向を検討する。
(e)天井裏に布設する場所には、布設部の天井板が容易に取り外せるような構造にしておく必要がある。
(f)導波管の直線区間には、必ず1箇所現場合わせを設けなければならない。(強引に結合させるとひずみを生じ、漏水の原因になる。)現場合せは作業性のよい場所を選択すること。
(g)導波管の損傷防止のため、レーダーマストの下部の甲板への布設部の全面に保護カバーを設けなければならない。なお、これは導波管を点検できるように取り外しが可能な構造にしておく必要がある。
(h)隔壁・甲板の貫通
防水隔壁・甲板を貫通する箇所には、レーダーメーカー支給品であるバルクヘッドフランジ(導波管貫通金物)を使用する。(図2・13参照)
船体へのバルクヘッドフランジの取付けに当たっては、メーカーの工事用図書にある取付寸法等を示し、造船所にコーミングの取付けを依頼する。
図2・13
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