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2・3・2 表示器(指示器)
(1)取付場所の選定
(a)周囲にストーブ、ヒーター等の高温物がないこと。
(b)湿気のないこと。窓際に設置した場合には、窓の防水を完全にし、視界を妨げない構造にしておかなければならない。
(c)一般には空中線部の高い方のレーダーをチャートテーブルの近くに設置しているようである。それは、自船の障害物からの反射が比較的少なく、また、第二レーダーが避けることのできない、レーダーマストの影響が全く映像に現れないからである。
(d)表示器から漏れる磁力線が磁気コンパスに影響を与える場合があるので、表示部の銘板に打刻されている安全距離は、法的に離さなければならないことになっている。
(e)表示器の取付場所は、レーダーの観測者が、そのまま顔を上げたときに船首方向を見渡せるような位置と方向を設定すること。
(f)ケーブルの入り口は、ねずみの害や湿気の入るのを防ぐため、パテ等でふさいでおくこと。
(g)保守点検に必要な空間は、あらかじめ設けておかなければならない。
 最近の表示部は前面開放型が多くなっているが、どのような形式であっても、十分開閉できるだけの余裕がなければならない。(図2・10参照)
 
図2・10 保守空間
 
(2)船体への取付方法(木台使用の場合を含む。)
(a)表示部箱体の取付台は平らで、ひずみのないことが条件である。表示器には数箇所に回転機構があるのが普通であるから、ひずんだべースに無理にナットで締め付けて固定すると、表示器全体がひずんで回転部の動きが硬くなり、種々の誤差や不具合を生ずる。大形レーダーの取付台は、鉄のアングル材を用いて溶接で仕上げるが、このためひずみがどうしても出てくる。したがって、木台をスペーサとして入れるのが望ましい。木台の厚さは20〜70mmのものを選定すればよいが、余り厚くすると表示器全体が高くなり操作しにくくなるので注意すること。小型レーダーでは、側壁付けや、テーブル付けを行うが、相手側が木製の場合が多いので、余りひずみを心配することはない。ただ、重量のある機種では、取付部が堅固でないと危険である。
(b)表示部は操舵室かチャートルーム、あるいは双方に一台ずつ設置することがある。二台装備の場合は、高い方の空中線部に接続される表示部がキールラインに近いところに置かれることが多い。向きは使用者がレーダー表示器から顔を上げたときに、船首方向が見えるようにする。小型の卓上型の表示部の場合は、熱の放散を妨げるようなものが周囲にこないよう注意が必要である。
(c)磁気コンパスヘの影響
 表示器には、種々の鉄系磁性体部品を使用しているので、磁気コンパスに影響を与える。表示部のケースには、それぞれ安全距離が明示されているが、これは磁気コンパスボウルの中心と、表示部ケースの最も近い部分までの許容された距離である。
 本件については各レーダーメーカーと相談するとよい。装備後に磁気コンパスの自差修正を行うことになっている。
(d)サービススペース
 サービススペースは、それぞれのレーダーの工事用図面に明記されているが、これは点検や保守のときの最低限必要な空間なので、可能な限り広くとった方がよい。
 安定したと称される機械であっても、これは統計的な話であって、定期的な開放点検を実施しなければならないことは論をまたず、サービススペースを十分にとることは必要なことなのである。
2・3・3 送受信部
(1)取付場所の選定
(a)送受信部やそのケーブルからの漏えい電波が無線機器等の受信機に妨害を与えることがあるので、原則として無線室内に装備してはならない。やむを得ない場合には、対策を施した送受信部であるかどうかを、事前にメーカーに相談の上設置のこと。
(b)表示器と同じように、高温、高湿の場所に設置してはならない。
(c)放熱効果をよくするため、外気と遮断されているような部屋に設置してはいけない。
(d)保守点検が容易な場所に設置すること。(階段の上などは避けること。)
(e)導波管長を短くするためには、レーダーマストの真下か、なるべくその近くに設置するのが望ましい。
(f)窓からの風が直接当たらない場所に設置した方がよい。
 
図2・11
 
(g)送信管(マグネトロン)に強力なマグネットが取り付けられているので、コンパス安全距離は指定通り守らなければならない。
(h)送受信部の出口に方向性結合器を取り付ける場合は、天井からその長さの分だけ下げなければならないが、将来ユニットの性能点検のためにも脱着可能の長さ以上に余裕をもって装備しておいた方がよい。
(i)しばしば表示器と関連して調整することがあるので、前記各項を勘案しながら、できるだけ表示器に近いところに装備した方がよい。
(2)船体への取付場所(3ユニットタイプのみ)
 送受信部は、空中線部との接続に、導波管やケーブルなどを使用するが、特に導波管は電波の伝送損失を小さくするため、最短距離で配管するとともに、ベンド類は極力少なくし、かつ、ツイスト導波管を使わなくても済むようにする必要がある。したがって、送受信部はマスト近くの船内で、ツイストを使わなくても済むような壁面に設置するのがよい。2・3・5にも詳述してあるが、ツイスト導波管は損失が一番大きいので、これを使わないで、かつ、ベンドの使用数が少ないのは良好な装備法といえる。
 また、送受信部は少なからず発熱しているし、マグネトロンを用いているので、寿命の点から熱がこもる狭い場所に設置するのは避けたい。同様に、他の発熱体の近くに置かないようにする。
(3)導波管との関連
 送信機の送信電力や周波数その他の特性を測定するために方向性結合器を必要とする場合がある。このときは、送受信機のケースから出たところに方向性結合器を装備すればよい。ただ、この場合は、天井とケースとの間に適当な空間が必要となるので、その寸法等については、レーダーメーカーと相談して決めた方がよい。なお、方向性結合器が付いていない場合でも、点検保守のために、天井とケースの間は中形ドライバーが入るぐらいは、空けておく必要がある。
(4)サービススペース
 各レーダーの工事用図面に指示されているサービススペースは、保守のために必要なものであるから、極力これに協力すること。前項でも述べたが、ケースが天井に寄り過ぎているのは、導波管を点検するときのことや、通風のことを考えると好ましくない。できれば300mm程度は空けたい。
(5)磁気コンパスヘの影響
 送受信部は、強磁界であるマグネトロンを持っているので、磁気コンパスヘの影響も大きく、したがって、安全距離もまた大きい。設置完了後に、磁気コンパスの自差修正をする。
(6)無線機器などへの影響
 レーダーの構成ユニットの中で、送受信部が最も無線雑音を出す。したがって、各レーダーメーカーとも十分対策を行っている。しかし、万一のことを考えて、表示部、送受信部及び空中線部間等の接続ケーブルは、無線機器相互接続ケーブルと、極力別系統にする。また、無線機器の近くを通過させないようにする必要がある。
2・3・4 電源部
(1)取付場所の選定
(a)電源部は発熱するものなので、熱のこもらない場所か、むしろ空気の流通のあるところに設置した方がよい。したがって、発熱の大きな装置の近くや、熱のこもる場所、納戸の中などは避けるべきである。このためには、電源部の発熱量がどの程度あるのかを、あらかじめ知っていると場所も考えやすい。
(b)回転形あるいは静止形のインバータは、いずれも大きさに違いはあるが、可聴音を発するので、操舵室や居住区近くには置かない方がよい。
(c)回転形では回転軸がキールラインに平行になるように装備するのがよい。
(d)サービススペース、放熱への注意
 電源部は、船内電源が不安定な場合でも、これをレーダー用の安定な電源に換えるために常時電力を消費し、熱を出している(直列安定化電源の場合)ので相当に熱いのが普通である。したがって、放熱スペースや空気の流通についての配慮が必要である。また、メーカーの工事用図書に記載されている。サービス・スペースも十分に取った方がよい。これは、回転形の場合は回転子などの点検のためにも是非必要である。
(e)磁気コンパスヘの影響
 電源部は回転形、静止形を問わずトランスなど鉄心を多量に使用しているので、磁気コンパスの安全距離は通常は大きい。これはケースなどに明示されている。
 メーカーへ問い合わせること。
(f)無線機器などへの影響
 電源部の中でも、特に静止形はその出力波形によって種々の無線雑音を発生する。各メーカーは十分対策を行っているが、念のため接続ケーブルは無線機器の近くに布設しない方がよい。







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