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(2)マストの構造及び保守のためのプラットホーム、手すりなどの安全条件
(a)レーダーマストは空中線部の回転起動や船体の振動、衝撃などで簡単によじれたり傾いたりして、いつまでも動揺をするような弱い構造は避けるべきで、このようなものでは物標の方位測定時に方位誤差を生ずるばかりか、空中線部そのものを破損するおそれもある。検定レーダーの方位精度は、このようなマストの構造や、空中線部の取付精度までを含めた全構成を総合して±1度であって、これはレーダー単体としてもかなり厳しい値である。詳しくはメーカーとよく相談すること。
(b)空中線部(特に回転ふく射器)の振動に対する共振点は、空中線部の大きさや構造によって異なるので一概にはいえないが、大略12Hz前後である。したがって、レーダーマストがこれらの周波数で、共振を起こさないようにすべきである。万一、発生したら補強材などを用いて、共振周波数を上にもっていくこと。長時間の連続した共振に耐え得るように空中線部は設計され得ないからである。
(c)レーダーマストのプラットホームは空中線部の点検保守の場所であるから、できるだけ広くし、万一のことを考え、作業者が安全に作業できるように配慮する。プラットホームにはハシゴから上がる入口があるが、これには「ふた」を付ける。床板は滑り止めの模様入り鉄板とし、その端は保守や点検のときに工具などが落ちぬように縁上げをする。また、なるべく空中線ふく射器の先端まで容易に保守作業ができるようにプラットホームの周囲構築物を考えた設計をすることが望ましい。なお、ロープや信号旗などが絡み付いて回転を妨げないような配慮も必要である。
 空中線部取付台と手すりの高さは0.8m程度にすると点検調整が容易でかつ安全でもある。
 
図2・7 プラットホームの一例
 
(3)2台装備のときの注意事項
(a)2台目の空中線部の位置についても1台目の種々な条件と何ら変わるところはないが、通常1台目よりは装備条件はよくないのが普通である。
 動作中のレーダー電波によって、非動作中のレーダーの受信器のマイクロ波ダイオードが焼損することが以前にはあったが、現在ではTRリミッター、ダイオードリミッターで保護されているため、ほとんど焼損はなくなっている。
 しかし、動作中のレーダーによる干渉や、空中線による偽像が発生することがある。干渉は信号処理で除去が可能であるが、偽像除去は技術的、コスト的な問題があるため、現状では互いの見合せ角度(図2・8のγ)をできるだけ広くとることにより偽像防止が必要である。
 
図2・8 見合せ角
 
(b)前方のマスト等により、どうしても視界が妨げられるときに、2台装備であれば1台は後に残し、1台はフォアマストに移動することも考えられる。
 
図2・9 方探の装備図
 
(4)基準(又は操舵)磁気コンパスその他の機器との関係
(a)基準(又は操舵)磁気コンパスとの距離は、空中線部ペデスタルに記載してある安全距離以上離す。コンパスはレーダーの装備が終了後自差修正を行う。
(b)方探の場合は、ループ空中線をレーダー空中線垂直ビーム幅の中に置かなければよいが、方探メーカーによっては独自の制約を設けていることがあるので、詳細は方探メーカーと相談すること。装備後誤差カーブを取っておくこと。(図2・9参照)
(c)GPS
 GPSの空中線は、方探と同様にレーダー空中線垂直ビーム幅を避けて装備すること。詳しくはメーカーとよく相談すること。
(d)ロランC、その他
 これらの空中線はレーダー空中線部から可能な限り離して装備することが望ましい。それぞれのメーカーに相談した方がよい。







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