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1・5・3 不導体
 不導体は絶縁物ともいい, 殆んど電流が流れないものである。これは完全なる真空の場合のように, 電子及びイオンが全く存在しないか, 又は電子及びイオンが存在しても本来の位置に閉じこめられて, その運動が制限されているためといわれている。しかし, 強い電界が作用すれば, この位置はくずれ, 変位を起こす電気現象が行われて1・3で述べたようなクーロンの法則が絶縁物の間で成り立つ, 絶縁物をこのようにみる場合, これを誘電体と名づける。
 絶縁物には電圧を加えても殆んど前に述べたように電流は流れないが, 電圧上昇がある度を越すと, 絶縁物を貫通して火花放電が起こる。そして電流が流れ絶縁物としての機能がなくなる。このような現象を絶縁破壊といい, その破壊にまでいたらない, 耐えうる最大電圧を耐電圧という。
 半導体は通常の状態では, 導体と不導体との中間的の電気低抗をもっている。いろいろの物質について電気抵抗率を示せば図1・8のとおりである。
 
図1・8 いろいろな物質の抵抗率〔Ωm〕
 
 シリコン(Si), ゲルマニウム(Ge), セレン(Se), テルル(Te)などの元素は半導体である。
 不純物をまったく含まない半導体を真性半導体といい, 例えば, 不純物を含まないけい素やゲルマニウムはこれに属する。これと違って不純物を加えた半導体を不純物半導体といい, 不純物の種類によっては電気伝導が主として電子によって行われる場合をN形半導体, また, 正のあな(正孔)による場合をP形半導体という。前記のけい素やゲルマニウムは不純物を加えて用いられる。
 
図1・9 真性半導体ゲルマニウムの結晶
 
 真性半導体の電気伝導がなぜ行われるか簡単に説明する。
 真性半導体のゲルマニウムの結晶では隣りあったいくつかの原子が, それぞれの外側の軌道上の電子を図1・9に示すように共有して結合した結晶をつくっている。
 この結晶力はやや弱く, 常温でもこの電子は結晶を離れ, 伝導電子として働く性質がある。(1・9図に於いて電子の抜けた孔は正孔となり電子と同様結晶内を動きまわる。また, 熱エネルギーが与えられると電子が抜けでる。抜け出た電子は自由電子となり結晶の中を動きまわる。)
 それゆえに, 結合にたずさわっている電子は熱や光などのエネルギーを受ければ, 容易に結晶原子の束縛を振り切って飛び出して伝導電子となり, また, 電子が飛び出したあとに正孔ができる。これらの両者は結晶内を自由に動くことが可能であるから, 電界を加えれば結晶内で電気伝導に役立つことになる, これが絶縁物と違った点である。そして伝導電子と正孔とは電気伝導の役目をするので, 電荷の運び屋という意味でキャリアという。この状態を図示すれば図1・10のようになる。
 半導体に外部電源を加えれば正孔は電界の方向即ち外部電源の(−)に, 電子は電界と逆方向即ち外部電源の(+)に向って移動して電気伝導が行われる。
 
図1・10
 
 図1・11に示すように, 正電荷を多くもっている導体Aと負電荷をもっている導体B又は大地(大地は零電位)とを導体で結べば, その瞬間, 電荷は負電荷へ移動して中和し, また, 零電荷へ移動して消える。このとき導体中に電流が流れる。これはA導体がB導体又は大地より電位が高いからであっていいかえればこの2点間に電位差があるからである。
 
図1・11
 
 電位差が零であれば電流が流れなくなる。
 これを図1・12で説明すれば, A池とB池との間に水位の差があるのでA池の水は導通管を通じてB池に流れ込む。(図では50mの差がある。)この水の補充は高所の水源池から絶えず補われているとする。また, B池の水位は海面から150〔m〕の位置を保っている。
 
図1・12
 
 A池とB池との水位の差には水源池からの水の補給があるから変化はないものとする。
 この関係は電気についてもそのままあてはめて考えられる。電位差(図でいえば50〔m〕)を持続させるような機能を起電力(図でいえば高所からの水の補充とB池の一定水位)といい, この起電力を発生する装置を電源という。(図でいえば水源池)電位差の大きさを表わす単位にボルト(単位記号V)が用いられる。
注:「1〔V〕とは単位正電荷1クーロン〔C〕を移動させるに必要な仕事が1ジュール(単位記号J)のときの電位差をいう」
 起電力の大きさも, その生ずる電位差で測られるから, 単位には同じくボルトが用いられる。このように電位差も起電力もその大きさは共通の量即ちボルトをもちいて測るので, これらを総称して電圧といっている。また, 2点間に起電力を加えることを「電圧を加える」といい, また, 2点間に生ずる電圧差を「電圧」と単にいっている。
注:(1)1ジュール〔J〕は物体に1ニュートン〔N〕の力が作用し, その物体を力の方向に1メートル〔m〕だけ動かすときの仕事量をいう。
   (2)1ニュートン〔N〕とは1〔kg〕の物体に働いて1〔m/s2〕の加速度を生ずるような力のことである。







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