グラフ(4)苦情及び相談の内容別分類(n=858件)
苦情及び相談の内容ごとの件数でもっとも多かったのは「サービスの質」であった。「料金など金銭に関する相談」「怪我、病気など身体に関する相談」が続いている。
その他の回答は以下の通り。
・事業者やケアマネジャーにサービス利用をしつこく勧められ不快。
・不当表示。
・退所勧告。
・入所待機、入所あっせん。
・ヘルパーの医療行為等。
・制度に関する苦情。
・プランの内容および作成に関すること。
・他県の特養の入所状況について。
・勤務体制および人員体制。
・医療保険について。
・事業所選択に関する相談。
・人権侵害。
・施設のモラル。
・介護保険の行政の窓口が不親切である。
・他の利用者との関係。
・苦情受け付けの範囲について(県国保連と運営適正化委員会への苦情)。
・介護保険に関する第三者評価について。
グラフ(5)相談の申し出者(n=846件)
苦情・相談の申し出者で最も多いのは「家族」で半数以上を占めている。「その他」としてあがっていたのは、知人、公的機関、ケアマネジャー、民生委員、市町村職員、医師、地域相談員、市民団体等、障害者相談員など。
グラフ(6)相談結果(n=915件)
上記以外に、「連合会から行政への情報提供」「意見要望」「謝罪」「回答求めず」など。
最後に、介護保険制度に関する意見を自由記入で求めた。以下に紹介する。
・ヘルパー、ケアマネジャー、事業者それぞれが契約の意味(契約の相手は利用者であること)をもう少し深く認識してほしい。
・介護保険で利用できるサービスの種類等を把握されている利用者は多い。しかし実際、利用しているサービスについて契約書を取り交わしているかどうか、はっきり覚えていなかったり、内容を理解していない利用者が多い。
・現在は介護保険の苦情窓口が多数存在するため、本会にも契約に関する案件が寄せられる可能性がある。また、一人の相談者が複数機関に相談を持ちかける場合もあるので、今後、関係機関との連携あるいは、棲み分けが必要と考える。
・契約するということ自体に利用者が不慣れである。契約内容が複数多岐にわたっていることから、事業所としては重要なことから説明し理解をしていただくことが大切。
・県から事業管理者への教育をお願いしたい。
・入所待機者が多く、入所できると決まった時、入所した後で出されたくないという気持ちもあり対等に契約できる環境とはいえない。また介護福祉施設においては入所希望者に選択の余地はない状況である。
・介護保険契約上のトラブル防止については、運営基準に基づく事業者の的確な対応を望む。
・利用者とくに入所者は順番待ちの状態であるために契約書の内容を確認しないで、契約書にサインするケースが多いようだ。後になって苦情に至らないためにも契約時の十分な説明と利用者(家族)の理解の必要性を感じている。
・痴呆等、判断能力の十分でない方々への適正な利用契約を実現するため、「福祉サービス利用援助事業」の利用の促進と、利用者とその家族のみならず広く住民に対して相談苦情機関の周知をはかる必要がある。
・利用者の痴呆や介護の重度化に伴う問題、感染症に絡む問題、利用者側の要求過多と思われる問題等、当初の契約であまり想定していなかった事例の苦情が発生している。あまり契約項目を複雑にすることも問題であるが、よく事例を研究し、より適切な契約内容を研究する必要があると感じている。
・介護サービスの利用者の中には痴呆性高齢者も多い。従って、介護契約は家族が契約をすませている場合が多い。介護保険の法令上は、契約書の作成は義務づけられていないが、介護契約にも適用がある「消費者契約法」で事業者に「消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるように配慮する」ことを求めている。「明確かつ平易」な介護契約書の普及を図るため、厚生労働省等において「善悪モデル契約書見本」を作成し、全国の介護サービス事業者に配布してはどうか。
・高齢者において、契約行為が浸透・理解されていない、事業者も契約時の説明が十分されていないケースが多い。よってサービスを開始してから苦情となってくる。
●調査及びアンケート送付先●
北海道国民健康保険団体連合会
青森県国民健康保険団体連合会
岩手県国民健康保険団体連合会
宮城県国民健康保険団体連合会
秋田県国民健康保険団体連合会
山形県国民健康保険団体連合会
福島県国民健康保険団体連合会
茨城県国民健康保険団体連合会
栃木県国民健康保険団体連合会
群馬県国民健康保険団体連合会
埼玉県国民健康保険団体連合会
千葉県国民健康保険団体連合会
東京都国民健康保険団体連合会
神奈川県国民健康保険団体連合会
新潟県国民健康保険団体連合会
富山県国民健康保険団体連合会
石川県国民健康保険団体連合会
福井県国民健康保険団体連合会
山梨県国民健康保険団体連合会
長野県国民健康保険団体連合会
岐阜県国民健康保険団体連合会
静岡県国民健康保険団体連合会
愛知県国民健康保険団体連合会
三重県国民健康保険団体連合会
滋賀県国民健康保険団体連合会
京都府国民健康保険団体連合会
大阪府国民健康保険団体連合会
兵庫県国民健康保険団体連合会
奈良県国民健康保険団体連合会
和歌山県国民健康保険団体連合会
鳥取県国民健康保険団体連合会
島根県国民健康保険団体連合会
岡山県国民健康保険団体連合会
広島県国民健康保険団体連合会
山口県国民健康保険団体連合会
徳島県国民健康保険団体連合会
香川県国民健康保険団体連合会
愛媛県国民健康保険団体連合会
高知県国民健康保険団体連合会
福岡県国民健康保険団体連合会
佐賀県国民健康保険団体連合会
長崎県国民健康保険団体連合会
熊本県国民健康保険団体連合会
大分県国民健康保険団体連合会
宮崎県国民健康保険団体連合会
鹿児島県国民健康保険団体連合会
沖縄県国民健康保険団体連合会
北海道社会福祉協議会
青森県社会福祉協議会
岩手県社会福祉協議会
宮城県社会福祉協議会
秋田県社会福祉協議会
山形県社会福祉協議会
福島県社会福祉協議会
茨城県社会福祉協議会
栃木県社会福祉協議会
群馬県社会福祉協議会
埼玉県社会福祉協議会
千葉県社会福祉協議会
東京都社会福祉協議会
神奈川県社会福祉協議会
新潟県社会福祉協議会
富山県社会福祉協議会
石川県社会福祉協議会
福井県社会福祉協議会
山梨県社会福祉協議会
長野県社会福祉協議会
岐阜県社会福祉協議会
静岡県社会福祉協議会
愛知県社会福祉協議会
三重県社会福祉協議会
滋賀県社会福祉協議会
京都府社会福祉協議会
大阪府社会福祉協議会
兵庫県社会福祉協議会
奈良県社会福祉協議会
和歌山県社会福祉協議会
鳥取県社会福祉協議会
島根県社会福祉協議会
岡山県社会福祉協議会
広島県社会福祉協議会
山口県社会福祉協議会
徳島県社会福祉協議会
香川県社会福祉協議会
愛媛県社会福祉協議会
高知県社会福祉協議会
福岡県社会福祉協議会
佐賀県社会福祉協議会
長崎県社会福祉協議会
熊本県社会福祉協議会
大分県社会福祉協議会
宮崎県社会福祉協議会
鹿児島県社会福祉協議会
沖縄県社会福祉協議会
札幌市社会福祉協議会
仙台市社会福祉協議会
埼玉市社会福祉協議会
千葉市社会福祉協議会
横浜市社会福祉協議会
川崎市社会福祉協議会
名古屋市社会福祉協議会
京都市社会福祉協議会
大阪市社会福祉協議会
神戸市社会福祉協議会
広島市社会福祉協議会
北九州市社会福祉協議会
福岡市社会福祉協議会
権利擁護センターあだち
宮城福祉オンブズネットエール
以上109カ所の内訳
アンケート送付・・・107カ所
事例提供・・・22カ所
訪問調査先・・・15カ所
ご協力いただきました皆様には、心から御礼申し上げます。
3. サービスの質的向上と利用者の権利擁護への提言
1. 利用者と事業者との対等な契約を締結するために
(1)重要事項や契約内容を利用者にわかりやすく書き、丁寧に理解できるように説明する工夫をして欲しい。
(2)利用者の理解を助けるために、契約に詳しい第三者(名古屋市の場合は介護保険アドバイザー)が、求められれば契約時に立会うなどの援助が必要ではないか。
(3)重要事項説明書だけでなく、契約書の交付を行い、お互いに契約内容を理解し、後々のトラブル防止をはかることが必要ではないか。
(4)契約当事者としての能力が疑われる利用者の場合、家族などと三者間契約をする事業者が多い。後々のトラブル防止のためには、成年後見制度を利用し、後見人などと契約することが望ましい。
2. 契約内容の相互理解と意思の合致のために
(1)利用者の要求、状態を的確に把握するために、介護保険制度のキーパーソンであるケアマネジャーのアセスメント技術、コミュニケーション技術の向上のための教育・研修の強化を望みたい。
(2)サービス契約締結にあたり、サービス内容を利用者が理解するまで懇切丁寧に説明する努力を望みたい。
(3)利用者の状態の変化に敏感に対応し、適時のモニタリングとリアセスメントをきめ細かく行い、サービス計画を利用者の状態や要望に最適であるように作成する工夫が必要ではないか。
(4)サービス提供の記録を整備し、契約通りのサービスが実施できたかを確認することが必要。記録はトラブルになったときの重要な証拠資料となるので簡潔明瞭に記載して欲しい。
3. 利用者の知る権利、選ぶ権利の保障
(1)サービス選択に必要な情報(サービスの質などに関する情報)として、第三者評価の公表などが欲しい。
4. 利用者の意見を反映する権利の保障
苦情相談窓口を整備し、苦情処理マニュアルを作成し、苦情を速やかに解決し、予後のサービス向上に繋げる体制を整えることが必要。
5. 速やかな被害救済のために
(1)苦情窓口整備と同時に、過失の有無に関わらず補償される損害保険制度を利用することも必要ではないか。
(2)リスクコミュニケーションのあり方を検討し、リスク対応マニュアルを整備することで速やかな対応を図ることが望まれる。
6. 利用者重視のコンプライアンス経営を実現をめざして
(1)介護保険サービス事業者は、都道府県の指定を受け、運営基準を遵守しなければサービス提供ができない。運営基準など法や制度だけでなく、守るべき事柄を自ら定め、それを実現するための行動計画を立て、実施できたかを評価し、監査を行うことが望ましい。
(2)コンプライアンス経営のために、進んで第三者評価を受けることが必要ではないか。
(3)違法行為をチェックし、サービス改善のため、内部通報者を保護する制度も必要である。
7. 利用者や家族が心がけること
(1)介護保険で利用できるサービスは、契約によって決められていることに限定されるということを理解するよう努力して欲しい。
(2)契約時には、自らの要望をしっかり伝え、納得してから契約したい。
(3)不満があったら、進んで意見を述べ、今後のサービス改善につなげる役割を担って欲しい。
(4)契約には義務と責任が伴うことを自覚し、節度ある利用を心がけたい。
(5)契約当事者は対等である。サービスを提供する側の人権を尊重し、人格を傷つけることのないように接したい。
朝日新聞 H15.12.23
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