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この調査及び報告書作成は日本財団の助成を受けて実施し、社団法人全国消費生活相談員協会中部支部介護保険調査研究グループが作成しました。
 
内容の転載等のご利用はあらかじめご相談ください。
 
 (社)全国消費生活相談員協会は、消費生活問題に関する専門家を効率的に組織し、会員の資質及び社会的地位の向上に努めるとともに、地域活動を通じて、消費生活に関する相談に係る情報や消費生活に関する情報を収集・提供し、もって消費生活の安定・向上に寄与することを目的としています。
 
 日本財団は、世界の平和と人類の明るい未来に向け、様々な角度から公益事業をサポートする助成団体です。1962年(昭和37年)に財団法人 日本船舶振興会として設立されましたが、時代の要請と共に、海洋船舶事業だけでなく、公益・福祉事業、ボランティア支援事業、海外協力援助事業など、幅広い公益活動に支援を行なうようになりました。そこで、1996年1月1日から、ニックネームとして日本財団を使用しています。
 
第1章 調査のねらい
1. はじめに
 平成12年介護保険法施行により、介護サービスの利用方法が大きく変わった。介護が福祉から消費者取引の1つとなり、「措置」から「契約」という法律行為のもとで提供されるという、利用原則の一大変革が行われた。このことにより、サービス利用者は、「サービスの受け手」という受け身の立場から、介護サービスを自ら選び、利用契約をする「サービス契約の主体」に変わった。
 ところで、「契約」とは、対等な当事者間で交わされ、双方の意思に食い違いがないとき初めて成立する法律行為である。しかし、事業者も利用者も契約には不慣れである。とりわけ、高齢の利用者の中には判断能力が不十分である者も少なくない。いかに利用者の権利を擁護し、事業者、消費者双方にそれぞれの役割や責任を自覚させるかが、介護保険制度を円滑に進めるためには重要な課題であるといえよう。
 
 利用者は、サービス取引の上では消費者となるので、当然消費者としての権利が擁護されるとともに自覚と役割が求められることとなった。
 消費者の権利については議論があるが、およそ次のような事柄である。
(1)知る権利・・・必要なサービスを選択するための情報を手に入れる権利
(2)選ぶ権利・・・情報を比較検討してどれにするか決定する権利
(3)安全である権利・・・サービス利用で生命・財産に被害を受けない権利
(4)意見を反映される権利・・・利用者の要望、苦情を聞き入れてもらう権利
(5)被害救済の権利・・・被害が発生したら速やかに回復される権利
 介護保険制度のもとでは、消費者の権利を侵害することのない取引条件で契約が締結され、サービスが提供されることが求められている。
 
 ところが、制度が新しいこと、また、利用者と提供者の間の力関係が必ずしも対等とはいえないことから、介護や福祉サービスの利用を「契約」という側面からとらえた研究はほとんどない。そこで、この度日本財団の助成をいただき、消費者契約に関わる消費生活専門相談員として、契約を切り口にして研究することとした。利用者が事業者と対等な立場で、多くの情報を提供され、自由な意志でサービスを選択し、満足できる高品質のサービスを受け、提供されたサービスによって、質の高い老後の生活が保障されるためにはどうあったらよいだろうか。
 特に消費生活相談に関わる者としては「苦情は情報の宝庫であり、改善のきっかけである」と常々考えている。そこで、利用者の苦情を契約という視点から分析し、提言に結び付けたいと考えて本報告書をまとめた次第である。
 
2. 調査のねらい
 相談苦情は「サービス改善・制度見直等の情報源である」という認識のもとで苦情を集め、その内容を分析し、今後の制度の活用と改善をめざして、事業者、利用者のあり方について提言することを目的とした。
 
《調査の経過》
1. 苦情相談窓口へアンケート(国保連、社会福祉協議会等107カ所)
2. 事例集・マニュアル・報告書などを収集(22カ所から2,282事例)
3. 報告書から事例を検索(335事例抽出)
4. 苦情・相談窓口へ訪問調査依頼(22カ所)
5. 訪問調査事例を選択(105事例選択)
6. 訪問調査実施(15カ所)
 
苦情相談窓口の役割
 
 介護保険法においては、保険者・都道府県・国保連合会が利用者からの苦情に対応することが定められている。また厚生省令によって、介護サービス事業者、居宅介護支援事業者には、提供したサービスに係る苦情に迅速に対応することが定められている。
 しかし現実には介護サービスの利用者は、直接に苦情を言いにくい立場に置かれており、どこへ相談すればいいのかもわからないため苦情を解決できない場合が多くみられる。
 こうした苦情への対応について実質的に利用者を保護するという権利擁護の立場から、行政で定められた苦情処理機関はもとより、社会福祉協議会・在宅介護支援センター・消費者相談窓口、民間NPOなど、さまざまな機関が苦情相談を受けつけ、トラブルの未然防止に役立つ情報の提供をしている。利用者や家族がこれらの相談窓口の存在を知り、もっと気軽に活用できれば、介護サービスに対するさまざまな苦情を潜在化させることなく適切に対処・改善させることができるだろう。相談・助言・事情調査などのシステムの基盤整備によって苦情が検証されることが、これからの介護サービスの質を向上させていく上で大変重要な課題となっている。
 
介護保険に関する苦情相談処理業務
 
法令の記載方法について
 
厚生省令第37号
・・・
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準
厚生省令第38号
・・・
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準
厚生省令第39号
・・・
指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準
厚生省令第40号
・・・
介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準
老企第22号
・・・
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について
老企第52号
・・・
特定施設入所者生活介護事業者が受領する介護保険の給付対象外の介護サービス費用について







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