参考資料
船上におけるNOx検証方法のためのガイドライン−直接計測及びモニタリング法
(仮訳)
Resolution MEPC.103(49)(2003年7月18日採択)
Guideline for on-board NOx verification procedure - direct measurement and monitoring method (MEPC 49/22/Add.1 ANNEX 5)のANNEX部分の仮訳である。
目次
安全注記
原則
1 分析機器
.1 排ガス成分計測
.2 分析器の仕様
.3 純及び校正ガス
.4 ガスサンプリング及び移送システム
2 エンジン性能及び周囲条件計測
.1 エンジン性能計測
.2 周囲条件の計測
.3 エンジン性能及び周囲条件のモニタリング機器
.4 電気機器:材料及び設計
3 排気ガス計測
.1 テストサイクル
.2 試験条件パラメータ
.3 分析器の使用時の性能
.4 排出計算のためのデータ
4 データの評価
.1 燃料組成
.2 排気ガス濃度
.3 乾き/湿りの補正
.4 湿度と温度に関するNOx補正
.5 排気ガス流量
.6 排気排出物流量と具体的排出物の計算
5 適合要件
.1 限界値及び許容値
.2 適合証明のためのデータ
.3 証書の様式
.4 機器と方法の検査
付録1-サンプリング場所の接続フランジ
付録2-負荷点の選択と重み付け係数の修正
付録3-負荷設定点の安定度
船上におけるNOx検証方法のためのガイドライン−直接計測及びモニタリング法
安全注記
排気ガス、計測機器の操作とそれらへの接近、及び容器入り純及び校正ガスの貯蔵と使用に関する十分な注意が払われなければならない。サンプリングの位置と作業のための足場は、このモニタリングが安全に行え、エンジンの妨げとならないようなものであること。
原則
本指針は、客観的でかつ有効性を基本とする図書として企画されている。これら指針は事実上推奨である。しかしながら各国政府にはその履行において本指針に基づくことを勧める。直接計測及びモニタリング法はNOxテクニカルコード(NOxテクニカルコードの2.4.4参照)が認める3つの船上NOx検証方法のひとつであるため、その精度は他の方法に匹敵すべきである。このため本指針は船上NOxのモニタリング及び記録装置の承認に閲し、適宜NOxテクニカルコードを参照する。NOxテクニカルコードを参照すれば、関連する要求事項が、例えば「直接計測及びモニタリング法」などという章立てでグループ化されてこそいないものの、既に強制される図書の中で規定されていることがわかる。この方法により決定された数値は試験台上での結果と直接比較できない場合がある。承認において最も重要なのは、NOxモニタリング及び記録装置の船上での使用に対する適格性である。
一般的原則として、船上NOx検証方法は附属書VI、13規則への適合をいつでも簡単に示せる必要がある。同時に、過度に船舶を遅らせたり、特定のエンジンの特徴に関する深い知識や船上にない専門的計測機器を必要とするような、負担の大きいものであってはならない。
1 分析機器
1.1 排ガス成分計測
1.1.1 船上でのNOxモニタリングには、絶対的最小限として、NOx(NO+NO2)のガス排出濃度の計測を含む。
1.1.2 排気流量の決定にNOxテクニカルコード付録6(方法2、ユニバーサル、炭素/酸素バランス法)を利用する場合、O2及び/又はCO2を計測し、付録6中の完全燃焼を想定する規定を全てのケースに対して使用すること。付録6中の不完全燃焼を想定する規定を使用する場合、CO及びHCを追加して計測すること。
1.1.3 排気ガスは以下の機器を用いて分析すること。非線形分析器の場合、線形化回路の 使用が認められる。他のシステムや分析器は、主官庁の承認を条件に、以下に参照される機器と同等の結果を示す場合、受け入れられる場合がある。
.1 窒素酸化物(NOx)分析
窒素酸化物の分析器は化学発光分析計(CLD)又は加熱化学発光分析計(HCLD)型でなければならない。NOx測定のために採取された排気ガスはNO2/NOコンバータを通過するまでは露点温度以上に維持しなければならない。
注記:生排気ガスの場合、エンジンがISO 8217 DM級型の燃料油を使用している場合は、その温度は335k(60℃)より高くなくてはいけない。又、ISO 8217 RM級型の燃料油を使用している場合は、その温度は413k(140℃)より高くなくてはいけない。
.2 二酸化炭素(CO2)分析
使用する場合、二酸化炭素分析器は非分散形赤外(NDIR)吸光式でなければならない。
.3 酸素(O2)分析
使用する場合、酸素分析器は常磁性検知器(PMD)、ジルコニア(ZDIR)又は、電気化学検出器(ECS)でなければならない。
.4 一酸化炭素(CO)分析
使用する場合、一酸化炭素分析器は非分散形赤外(NDIR)吸光式でなければならない。
.5 炭化水素(HC)分析
使用する場合、炭化水素分析器は加熱形水素炎イオン化形検出器(HFID)型でなければならない。HC測定用に採取された排気ガスは、採取点から分析器に至るまで463k±10k(190℃±10℃)に維持しなければならない。
1.2 分析器の仕様
1.2.1 分析器の仕様はNOxテクニカルコードの付録3の1.4、1.5、1.6、1.7、1.8及び1.9と一致しなければならない。
1.2.2 分析器のレンジは、計測される排気ガス量が使用されるレンジの15%−100%の範囲に入るようなものでなければならない。
1.2.3 分析機器はNOxテクニカルコードの付録3の1.5、1.6、1.7、1.8、1.9及び付録4の7及び8の要件に合うように製造者の推奨に従って設置され、保守されなければならない。
1.3 純及び校正ガス
1.3.1 純及び校正ガスは、要求される場合、NOxテクニカルコードの付録4の2.1及び2.2に従わなければならない。提示される純度は国家及び/又は国際標準にトレーサブルでなければならない。校正ガスは分析機器の製造者の推奨に従ったものでなければならない。
1.3.2 分析スパンガスは分析器のスケールの80%−100%の範囲内になければならない。
注記:特定の条件の下では、NOx分析器のスパンガスのみで分析計器の校正を行うことが可能である。NOx分析器のNOスパンガスは、スパンガスが窒素のみにバランスする場合は、O2又はCO2分析器のゼロガスとして使用することができる。外気は、それが排気ガスにより汚染されていない状態であれば、O2分析器の20.9%のスパンガス及びNOx分析器のゼロガスの両方に使用できる。
1.4 ガスサンプリング及び移送システム
1.4.1 排気ガスサンプルは、エンジンの全てのシリンダーから排出される排気ガスを平均した代表でなければならない。排気ガスサンプリングシステムはNOxテクニカルコードの5.9.3を満足しなければならない。
1.4.2 排気ガスサンプルは、ダクト径の10%−90%の範囲内から引くようにしなければならない。
1.4.3 サンプリンググローブの取付を容易にするため、サンプル場所の接続フランジの例が付録1に示されている。
1.4.4 NOx測定のための排気ガスサンプルは、分析機器製造者の推奨に従って、水分又は酸化による凝縮によるNOxの損失を避けるように維持されなければならない。
1.4.5 ガスサンプルは化学的乾燥剤により乾燥させてはならない。
1.4.6 ガスサンプリングシステムは、分析器製造者の推奨に従って、漏洩がないことを証明できなければならない。
1.4.7 システムの品質管理チェックを容易にするために、追加のサンプル場所を近接して設けなければならない。
2 エンジン性能及び周囲条件計測
2.1 エンジン性能計測
2.1.1 船上でのNOxモニタリングにおける各モード点において、計測又は算出、記録すべきエンジン特性パラメータを表1に示す。
表1
記号 |
パラメータ |
単位 |
nd |
エンジン速度 |
min-1 |
pbe |
レシーバ部における給気圧力 |
kPa |
P |
軸出力(下記に規定する) |
kW |
Paux |
補助出力(関連がある場合) |
kW |
Tsc |
レシーバ部における給気温度(適用する場合) |
K |
Tcaclin |
給気冷却器冷却水入口温度(適用する場合) |
K |
Tcaclout |
給気冷却器冷却水出口温度(適用する場合) |
K |
Tsea |
海水温度(適用する場合) |
K |
GFUEL |
燃料流量(下記に規定する) |
kg/h |
|
2.1.2 その他エンジンの運転状態を決めるのに必要な設定、例えば、掃気弁、給気バイパス、過給機仕様等は、決定の上記録されなければならない。
2.1.3 NOxを制御する装置の設定及び運転条件は、決定の上記録されなければならない。
2.1.4 エンジン出力及び速度は、エンジンが規定のテストサイクル(このガイドラインの3.1を参照)に従ったモードで運転されているかどうかを判断するために計測されなければならない
2.1.5 出力を直接計測するのが困難な場合は、主管庁が承認した他の方法で未修正の軸出 力を推定することができる。(NOxテクニカルコードの6.3.1.3、6.3.3.2及び6.3.7参照)
制動出力を決定するための方法には、次が含まれるが、これに限定するものではない。
.1 NOxテクニカルコードの6.3.3.1による直接的でない計測。又は
.2 計算図表による推定。
2.1.6 燃料流量(実消費率)は、次により決定されなければならない。
.1 直接計測;又は
.2 NOxテクニカルコードの6.3.1.4による試験台計測データ
2.2 周囲条件の計測
2.2.1 船上でのNOxモニタリングにおける各モード点において計測又は算出、記録すべき周囲条件のパラメータを表2に示す。
表2
記号 |
パラメータ |
単位 |
Ha |
絶対湿度(エンジン乾き吸気質量に占める水質量) |
g/kg |
PB |
大気圧(ISO 3046-1、1995参照: px=Px=計測周囲気圧) |
kPa |
Ta |
吸入空気温度(ISO 3046-1、1995参照:Tx=TTx=計測周囲空気温度) |
K |
|
2.3 エンジン性能及び周囲条件のモニタリング機器
エンジン性能及び周囲条件のモニタリング機器は、許容される誤差がNOxテクニカルコードの付録4の1.3.2並びに表3及び4に適合するように製造者の推奨する方法に従って、装備され、維持されなければならない。
2.4 電気機器:材料及び設計
2.4.1 電気機器は、設置環境及び機器が曝されるような温度において劣化することがないように、耐久性、難燃性、耐水性がある材料で構成されなければならない。
2.4.2 電気機器の電流が流れる接地の可能性のある部品については、間違って接触しないよう保護された設計としなければならない。
3 排気ガス計測
3.1 テストサイクル
3.1.1 定められたテストサイクルでの船上におけるエンジン運転は、常に可能であるとは限らないが、試験方法は、主官庁に承認され、NOxテクニカルコードの3.2に定められた方法にできるだけ近いものとしなければならない。
3.1.2 E3型テストサイクルに関して、実際のプロペラカーブがE3カーブと異なる場合は、負荷設定は、そのサイクルの適切なモードを与えるようなエンジン速度、又は、対応する平均有効圧力(MEP)又は平均指示圧力(MIP)で設定しなければならない。
3.1.3 船上の計測点数が試験台上でのそれと異なる場合は、計測点数及び重み付け係数は、主管庁により承認を得なければならない。
3.1.4 E2/E3/D2型テストサイクルに関して、最小の負荷ポイントは、NOxテクニカルコード3.2で与えられる公称重み付け係数が0.50より大きくなるような組み合わせが使用されなければならない。
3.1.5 C1型サイクルに関して、負荷ポイントの最小1点は、定格、中間及びアイドル速度区分のそれぞれから使用しなければならない。
3.1.6 船上の測定点の数が試験台上でのそれと異なる場合は、それぞれの測定点の公称重み付け係数は、合計が1.0になるように適切に増加させなければならない。
3.1.7 負荷ポイント及び修正重み付け係数の選択例が付録2に示されている。
3.1.8 適合性を証明するための使用する実際の負荷ポイントは、100%負荷の場合を除き形式上のポイントにおいて定格出力の±5%以内としなければならない。100%負荷の場合は+0%から−10%の範囲としなければならない。例えば、75%負荷ポイントにおいて、許容範囲は、定格出力の70%−80%としなければならない。
3.1.9 アイドルを除き、選択したそれぞれの負荷ポイントにおいて、及び初期過渡期間の後(適用される場合)、エンジン出力は10分以上の間隔で5%以下の負荷変動係数(%C.O.V)に抑えなければならない。負荷変動係数の計算の適用例が付録3に示されている。
3.1.10 C1型テストサイクルに関して、アイドル速度の許容範囲は、主管庁の承認を得た上で、提示されなければならない。
3.2 試験条件パラメータ
NOxテクニカルコードの5.2.1に規定される試験条件パラメータは、船上NOxモニタリングには適用されない。いかなる自然周囲条件の下でのデータも受け入れられる。
3.3 分析器の使用時の性能
3.3.1 分析装置は製造者の推奨に基づいて操作されなければならない。
3.3.2 計測の前に、ゼロ及びスパンの値をチェックしなければならない、また、分析器は必要に応じて調整されなければならない。
3.3.3 測定の後、分析器のゼロ及びスパンの値は、NOxテクニカルコードの5.9.9において許容値内にあることを確認しなければならない。
3.4 排出計算のためのデータ
3.4.1 分析器の出力はテスト中及び全てのレスポンスチェック(ゼロ及びスパン)中の両方とも記録しなければならない。このデータはストリップチャート記録器又は他の形式のデータ記録装置に記録しなければならない。
3.4.2 ガス状排出物の評価のため、それぞれの負荷ポイントで1Hz以上安定して10分間サンプリングしたチャートの記録を平均しなければならない。NOx、O2、及び/又はCO2(求められるならば)、及び任意にCO及びHCの平均濃度(conc)は、平均したチャートの読み及び対応する校正データから決定されなければならない。
3.4.3 最小限、排出濃度、エンジン性能及び周囲条件のデータが前述の10分間以上記録されなければならない。
4 データの評価
4.1 燃料組成
湿り排気ガス質量流量(GEXHW)の計算のため、燃料組成は次の1つによって提供されなければならない。
.1 分析による燃料組成(炭素、水素、硫黄)、又は
.2 表3に示すデフォルト値
表3
|
炭素 |
水素 |
硫黄 |
BET |
ALF |
GAM |
ディーゼル油 (ISO 8217 DM級) |
86.2% |
13.6% |
0.17% |
残さ燃料 (ISO 8217 RM級) |
86.1% |
10.9% |
2.7% |
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4.2 排気ガス濃度
湿り排気ガス質量流量(GEXHW)及びNOxテクニカルコードの表5による係数「u」を計算するため排気ガス濃度は、次の1つによって提供されなければならない。
.1 NOxテクニカルコードの付録6による計算、又は
.2 1.293kg/m3のデフォルト値(273.15K及び101.3kPa)
4.3 乾き/湿りの補正
湿り状態で既に測定されていない場合、このガイドラインの2によるガス状排出物濃度は、次により湿り状態に変換しなければならない。
.1 水分の直接測定
.2 NOxテクニカルコードの5.12.2(NOxテクニカルコード、式11、COはゼロに設定)に従って算出
4.4 湿度と温度に関するNOx補正
湿度と温度に関するNOx補正は、NOxテクニカルコードの5.12.3により実行されなければならない。参照する給気又は掃気空気温度(T sc ref)を指定し、主管庁により承認されなければならない。T sc ref 値は25度C海水温度に対応し、T sc ref 値の適用において、許容値は実際の海水温度で決めなければならない。
4.5 排気ガス流量
排気ガス流量は次により決定されなければならない。
.1 NOxテクニカルコードの5.5.1又は5.5.2、又は
.2 NOxテクニカルコードの付録6の方法2、計測されない種類はゼロに設定する、また、CO2AIRを適用する場合は、350ppmに設定する。
4.6 排気排出物流量及び具体的排出物の計算
排出物流量及び具体的な排出物の計算は、NOxテクニカルコードの5.12.4及び5.12.5により行う。
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