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標準化が予期される分野・項目の補足(8)
分野 環境・資源循環分野
項目 船舶のリサイクル
現況 (経緯、IMO審議状況等)
 船舶のリサイクル(解撤)は、先進国の人件費やリサイクル資材の需要などの採算性の問題により、近年その中心はインドやバングラディッシュなどの開発途上国へと移っているが、リサイクルヤードからの環境汚染、劣悪な労働環境等が問題となっており、国連環境計画(UNEP)、国際海事機関(IMO)及び国際労働機関(ILO)の3国際機関にて船舶のリサイクルに関する議論が進められている。
 本件に係わる国際的な検討内容は、リサイクルヤードの技術的問題から、船舶のリサイクル全体に関する枠組の問題へと発展してきている。船舶のリサイクルに何らかの責任を有する、又は、リサイクルによって受益すると考えられる関係者(ステークホルダー)は、製造者、使用者、リサイクル業者、寄港国、リサイクル国等多岐に亘っており、本件に対する関係者のそれぞれの責任・役割を明確にすることが望まれている。
 国連環境計画(UNEP)のリサイクルヤードに関する技術ガイドラインは2002年11月の第6回締約国会議(COP6)にて、採択された(非強制)。
 IMOにおいては、解撤予定船舶が解撤ヤードへ引き渡されるまでの旗国、寄港国及び船主の責任、有害物質の特定の問題、作業環境の問題などが討議され、IMOとして勧告となる総会決議の作成が検討され、MEPC49(2003年7月開催)において、船舶のリサイクルに関するガイドライン案及び総会決議案がまとめられ、また、将来の作業計画もまとめられた。本ガイドラインでは、シップリサイクルに伴う環境・労働安全衛生のリスクを減ずること及び寿命に達した船舶の円滑な退役を確保することを両立するという政策目的が明確にされている。
(将来の作業計画)
(1)リサイクル計画の統一仕様の作成
(2)リサイクル前の準備に関する技術的検討
(3)潜在的有害物質リストの継続的な見直し
(4)リサイクル準備が整っていることの判断基準の作成
(5)ガイドライン遵守を促進するために必要な仕組みの検討
IMOのシップリサイクルガイドラインは、2003年12月の第23回総会において採択された。(総会決議A. 962(23) IMO Guidelines of Ship Recycling)(非強制の勧告)
規格化の可能性  IMOの審議状況を見守る。
規格化の可能性の検討は今後の課題と考えられる。
規格の内容  
緊急度 急がない
参考資料 1. (MEPC49/22 ANNEX 3) DRAFT ASSEMBLY RESOLUTION - IMO GUIDELINES ON SHIP RECYCLING
2. (MEPC49/22 ANNEX 4) LIST OF FUTURE WORK ITEMS ON SHIP RECYCLING
備考  
 
シップリサイクルガイドラインの概要
1. ガイドラインの目的
[基本認識]
 リサイクルヤードにおける作業方法や環境基準は十分ではない。ヤードの状態に関する責任は一義的には当該ヤードの所属国にあるべきだが、他の関係者(ステークホルダー)もヤードにおける労働安全衛生や環境保護に関する問題を最小化するうえで貢献できる立場にある。
[本ガイドラインの目的]
・寿命に達した船舶を処分するうえでの最良の手段としてリサイクルを促進する。
・リサイクルの準備や、船舶使用期間における有害物質の使用及び廃棄物の発生量を最小化するためのガイドラインを提供する。
・国際機関の協力を促進する。
・全てのステークホルダーがリサイクルに取り組むことを勧奨する。
(注)非強制の勧告であるため、以下は努力規定であり、「・・・するべき」との表現がそれぞれに用いられている。
2. グリーンパスポート
(1)船舶に関する基本的情報(要目、船主、建造造船所等)
(2)潜在的有害物質の明細書(インベントリリスト)
第一部:船舶の構造や機器に含まれる潜在的有害物質
第二部:運航中に生じる廃棄物
第三部:貯蔵物
第一部については、新船の場合、造船事業者が作成し、船主に提供。既存船の場合は、船主が造船所や舶用メーカーとの協力のもと、可能な範囲で作成。
第二部及び第三部については、最終航海の前に船主が作成。
3. 新造船に関する措置
・新造船及びその機器の製造において使用される危険物質を最小化する。
・リサイクル及び有害物質の除去を容易にする船舶及び舶用機器を設計する。
4. 既存船に関する措置
・船上に存在する有害物質(貯蔵物を含む)や、廃棄物の発生を、通常航海や修繕の際も含めて最小化する。
5. リサイクルのための船舶の準備
(1)リサイクルヤードの選定
・リサイクルヤードは、ILO及びバーゼル条約が作成したガイドラインに適合できる能力を有する。リサイクル国の主管庁は、その能力を評価する。
・リサイクル国の主管庁は、評価結果に関する情報の周知を図る。
・リサイクルヤードの選択にあたって、船主は、リサイクル国の主官庁と相談の上、以下の点を中心にリサイクルヤードの設備と作業方法について考慮する。
→アスベストやPCB等、船上に残っているかもしれない有害物質の処理を安全かつ適切に実施する能力
→防護服等の安全装備
→ガスフリー状態にあることをチェックし、熱作業に適した状態を維持できる能力
→安全記録、訓練プログラム
・リサイクルヤードの選択は、商行為として行われるものの、船主は、有害物質の処理に関する能力にもっとも優れたヤードを選択すべき。
・さらに船主は以下の点につき検討するべき。
→有害物質の処理につきリサイクルヤードがとるべき手法を確立
→リサイクルの契約において、解撤方法を指定
→リサイクル工程をモニターする権限を契約において維持
→リサイクルが各種ガイドラインを遵守して行われることに対するインセンティブの供与
・リサイクル施設を選択した船主はその旨を旗国及びリサイクル国主管庁に情報提供する。
(2)リサイクル船舶の準備
(1)リサイクル計画
・リサイクル計画は、グリーンパスポート、造船所からの助言、労働安全に関する潜在的な危険性等を考慮して、船主との協力によりリサイクルヤードが作成する。
(2)汚染防止のための準備
・リサイクル船舶の最後の船主は、船舶の安全運航に相反しない限り、以下の措置をとるべき。
→船内の燃料油、ディーゼル油、潤滑油、油圧オイル及び他のオイル、並びに化学品をヤードへ到着前に最小化する。
→ヤードに受入施設が備わっていない場合、ヤードの引渡しの前に、受入施設のある最終港で廃棄物を除去する。
→グリーンパスポートを完成させる。
→船上に存在する有害な液体について、ヤードによる排水を容易にする方策をとる。
→国際基準に従い船舶のバラスト水が管理されるような方策をとる。
(3)労働安全衛生のための準備
 リサイクル前に、船主は以下を実施する。
→引渡しに際して、閉囲場所について、ガスフリー及び熱作業の安全証明を提供する。
→船内の酸素が不足している区画を明確にマークするとともに、ヤードに通知する。
→構造上の欠陥(例。衝突によるダメージ)がある部分を特定する。
→船体構造上重要な部分で、構造上の崩壊を避ける方法で解撤すべき区画を特定する。
5. 利害関係者(ステークホルダー)及び他の機関の役割
(1)旗国
・旗国は、船舶につき、その"リサイクル準備完了"を宣言するための基準を策定する。
・船舶リサイクル売買契約において、環境及び労働安全衛生が十分に考慮されるようBIMCOの標準契約様式を使用することを推奨する。
(2)寄港国
・寄港国は、旗国管理の補完をとして機能を担う。
(3)リサイクル国
・リサイクル国の役割は、船舶リサイクル業界における労働安全衛生及び環境保護に関連する国際的義務及び国内法を施行すること。
・リサイクル国は、リサイクル船舶の購入及び引渡しの時点における条件について国内規制を導入するべき。
・いったんリサイクル船舶を受け入れた後については、リサイクル国は、有害物質の処理をモニターする責任を負う。
・リサイクル国は、リサイクルヤードの能力を評価してそれを公表する。
・リサイクル国は、承認・免許制度の導入を含めて、リサイクルヤードを管理する法制や規制を導入する。







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