ISO文書 STEP船用AP218(Ship Structures)
概要説明書
平成16年2月
株式会社IHIマリンユナイテッド
三菱重工業株式会社
AP218は、船殻構造の製品定義データ、形状、承認状況などに関する情報のデータ交換のための規格である。以下のものが適用範囲に含まれる。
・商船ならびに艦艇における船体構造、上部構造と、他のすべての内部構造に関係する製品定義データ。
・以下に示す船のライフサイクルの諸段階について、船殻構造に関係する製品定義データ。
a)設計準備段階
b)主設計段階
c)製作段階
・船の製品構成の組織、組立に関する製品定義データ。
・船殻構造を設計することに関連した、船の一般的な特性とみなされる製品定義データ。船の一般的な特性とは、船の主要な寸法、名称と、船級、規定、船舶に適用される標準といった基本的な特性を含んでいる。また、設計や設計承認のための軽荷重量分布と乾舷などの諸特性を含んでいる。
・船殻構造の幾何定義のための全体座標系、局部座標系と空間グリッドに関する製品定義データ。
・船殻部材とアセンブリの形状表現に関する製品定義データ。
・船体の板や補強材の外形と、船の構造の部品と組立に含まれるエッジ、コーナー、内部の切り出し(部品)などの機能の記述を含んだ、構造の特徴の製品定義データ。
・船殻構造の部品と組立の、溶接接合と継手の開先加工や溶接法・寸法を含む設計の製品定義データ。
・強度の承認に用いられる横断面構造の詳細に関する製品定義データ。
・船体の縦強度を決定するために、船殻構造にかけられるせん断力や曲げモーメントの設計荷重に関する製品定義データ。
・船殻部材やアセンブリの、重量・重心に関する製品定義データ。
・船やその部品を製作するときに要求される、船殻構造の材料に関する製品定義データ。
・承認、バージョン、改正の管理を含む、船体の形状管理の製品定義データ。
・船殻構造部材やアセンブリを設計したり、生産するときに必要な、外部参照、技術文書などの補助的なものに関する製品定義データ。
以下は適用範囲に含まれない。
・船のライフサイクルの中で、運航と解役の段階における船殻構造に関する製品定義データ。
・予算、スケジュール、必要資源などの、船の工程を管理するための経営的な情報。
・設計段階での船体構造の直接計算に関する製品定義データ。
・構造部材の塗装と製品の耐久性に関する製品定義データ。
・船の分割に関する製品定義データ。
・船のディストリビューション・システムに関する製品定義データ(例1: 電装、配管、HVACsystem)。
・船の機関や推進システムに関する製品定義データ。
・船の艤装と、備品に関する製品定義データ。
・鍛造あるいは鋳造によって製作された船殻部品に関する製品定義データ(例2: スタンフレーム、ラダーホーン、シャフトブラケット)。
AP218が対象とする組織には船会社や船級協会、船舶設計会社、造船所などが含まれる。ライフサイクル内での対象範囲は、一般商船および艦艇における、見積りから設計、建造、修理、そして運航中の検査などが含まれる。機能単位は以下の通りである。
・class_approvals(船級承認)
class_approvalsは船殻部材やその全体としてのシステム、板材、条材、特定の場所の船殻横断面に対する船級承認状況の定義に使用される。
・configuration_management(構成管理)
configuration_managementでは、「承認」、「変更」、バージョン履歴の中での個別の「バージョン」の識別とその違い、といった側面を取り扱う。「承認」には、いつ、だれが、なにをどのようなレベルで承認したか、また承認同士がどのような関連があるかが記述される。「変更」には、いつだれがどの情報を変更したかが記述される。さらに、その変更の影響を、他の情報の作成、修正、削除という観点で記述できる。「バージョン」は、バージョンを付けるという問題と、そのバージョンを履歴中のほかのバージョンとどう区別するのかといった問題の双方を取り扱う。
・definitions(定義)
definitionsは品目の定義、品目の構造、品目の関係について概要を記述する。
・design_loads(設計荷重)
design_loadsは、強度計算のために船体構造にかける荷重に関する図書を取り扱う。ここでは、実際の荷重と、船級協会によって定められる荷重の両方を取り扱う。静水中および波浪中での曲げモーメントとせん断力が典型的な設計荷重である。承認は、通常は基本的縦強度計算で使用される人工的な荷重ケースに対応している。
・external_references(外部参照)
external_referencesは他の製品モデルデータセットが持つ情報やデータ交換やデータ共有によって得られるデータ以外の情報を参照するためのものであり、外部のライブラリやISO 10303のスコープ以外に定義された標準や文書への参照も定義できる。
・hull_cross_section(船体横断面)
hull_cross_sectionは船の長手方向の任意位置での船殻の二次元視(横方向)の詳細を定め、船の縦強度に関連している。これにより、船は垂線間長に横断面の特性が分布しているものとして取り扱われる。横断面を構成する鋼構造の構成は船殻構造要素の項目に定義される。船殻構造要素は、補強されあるいは切り出し(部品)を持ち、構造やその他の機能を満足するために幾何学的に構成されている板である。
・items(部品)
itemsは船舶特有の製品構造を取り扱う。これにはいわゆる“部品”という概念を反映すると同時に、集められ決められた方法でお互いに関連づけられた部品構造と部品関係の概念を反映している。
・library_references(ライブラリ参照)
library_referencesは外部ライブラリにおいて参照から情報を得るためのメカニズムを提供する。
・location_concept(位置概念)
location_conceptでは、三次元右手直交座標系での、船とその部分の位置の情報を取り扱う。さらに、座標軸上の位置の指定を間接的に行うための、各座標軸のある間隔にそった分割も取り扱う。座標系には、製品定義のためのただひとつの、また座標系の階層構造の頂点となる「全体座標系」と、「局所座標系」の2種類がある。局所座標系のほうはいくつ存在してもかまわない。空間位置は、全体座標系の三つの座標軸上に定義できる。たとえばある局所座標系を全体座標系上に定義する場合には、その局所座標系の原点が、この空間位置で定義されることになる。
・product_structures(製品構造)
product_structuresはいろいろな角度から船の製品構造を記述する。これは製造目的とブロック単位の設計に必要な組立の観点とを含む。このUoFは初期設計と詳細設計ステージまた船級承認の間で特に扱われるそれぞれのシステムタイプの特徴的な側面を強調する為に、船の機能的な観点を表現する。このUoFはいくつものレベルによって表される、組立てとシステムの階層的な定義を示す。
・shapes(形状)
幾何モデルリソースのスキーマは10303-42幾何モデルスキーマのエンティティにより導かれている。トポロジーリソースのスキーマは10303-42トポロジースキーマのエンティティにより導かれている。これらのスキーマの目的はソリッド、サーフェス、トポロジーなどのモデルタイプそのものではなく、他の船舶構造に関するスキーマの完全な参照構造のエンティティを用意することにある。
・ship_general_characteristics(船の一般情報)
ship_general_characteristicsでは、船の寸法と特徴識別に関する基本的な情報を詳述する。これらの情報は、幾何情報とは完全に独立なものである。船の主要寸法を表わすためのスカラー量や、その船の関係各社がその船を識別するための情報、船級協会のノーテーション、およびすべての規則や法規に関する情報などもこのUoFに含まれる。また軽荷重量分布と乾舷の情報もこのUoFに含まれる。
・ship_manufacturing_definitions(製造定義)
ship_manufacturing_definitionsは、部品のエッジの伸ばし評価と開先加工、レイアウトとマーキン情報の追加、曲げ板または折れ板の平板展開などの詳細設計の改正の情報を詳述する。部品の形状は切り出される材料や板と関係づけられる。構成は材料に部品を配置し切り出すための、手またはNCの利用の為に用意される。NCの属性はレイアウトとマーキン情報とに関係づけられる。部品を組み上げる為に必要な組立治具も特定される。また、このUoFは組立製造に必要な定義を詳述する。定義は組立の原点、組立の外形枠と投影面積、重量・重心とに関係づけられる。溶接による製作のしくみは製作の全段階を通じて行われることになる。
・ship_material_properties(材料特性)
ship_material_propertiesは船舶の建造に使用される材料を定義する。これは物理的な特徴によって原材料を定義する物で、多くの原材料を含む製品としての材料を詳述するものではない。船の材料は複合材料と均質材料とを含む。
・ship_measures(寸法)
ship_measuresには、物理量を表現するための情報である。
・structural_features(構造構成物)
structural_featuresでは構造に対しの切り出しを含む構造物の定義をする。構造の切り出し(部品)とは、パネルやアッセンブリといった部分構造や複合構造体のような、構造からの材料の切り出しと言う定義をしている。切り出しは、それらがいくつ境界要素を持っているかによって区別される。エッジ切り出しは1つの境界を持ち、コーナー切り出しは2つの境界を持ち、内部切り出し(ホール)は境界を持たない。
・structural_parts(構造部材)
structural_partsは船の部材に専門化して定義される。構造部材は、板や条材(スティフナやビーム)のような鋼構造の部品により構成される。構造部材はたいていの場合、アッセンブリや境界形状の関係や結合や機能別部分といった、いろいろな製品構造の一部をなしている。特性の追加により構造部材は質量と材料特性の定義を持つようになる。板は特殊化した構造部材であり、船殻を構成する部材である。条材は断面に対して垂直な方向に定義された表面によって表される構造部材である。
・structural_systems(構造システム)
structural_systemsはパネルに特化したシステムを持つ構造システムに特定されている。パネルは船殻要素を表したもので、バルクヘッドやタンク、デッキ、ボトム等である。これは防撓板材つきとして定義され、閉じた境界曲線で定義される。境界曲線は切り出しなどの特性により変更されることがあり、構造の内部はホールによって影響を受ける。このUoFは通常利用される抽象概念を分析するための定義だけでなく、より造船所特有の抽象概念のための可能性を提供する。それはタイトネスのような特性を取り扱う。また、これによりシステムを上部構造や区画やデッキハウスに属する特性とすることが可能である。
・welds(溶接)
weldsは構造部材の溶接結合指示のために必要な情報の要求が含まれている。2つ以上の部材を結合する場合には、この要求は強度的な信頼性により定められる。溶接設計に関するこのUoFの定義は、溶接継手の定義でもある。その設計定義は溶接と溶接継手に関する製作上の要求を確実に満足する設計要求を示している。
ライフサイクルにおける各アクテビティでモデル化対象範囲が定義さているがその主なものが船体構造に関するもので初期設計の部分から含まれるがHULL_FORM、General_Arrangement、Cost、Offer関連等は含まれない。
AP218では実際の作業を想定し、その実装時に利用されるであろう機能単位(UoF)をConformance Classとして分類している。
Class-1〜3 基本設計及び船級承認
対象 サブコン、造船所、船級協会
内容 基本設計段階でのサプライヤや協力会社とのやりとり、並びに基本事項の船級承認が目的になっている。
Class-4〜6 詳細設計
対象 サブコン、造船所
内容 詳細設計段階での船殻構造定義と承認データをサプライヤや協力会社と造船所間で交換するもの。
Class-7〜13 建造(製造)
対象 設計部署、製造部署
内容 建造段階で、造船所内の設計と現場で対象となる情報を交換するもの。
Class-14〜15 船級承認
対象 造船所、船級協会
内容 製造に移る際に必要な船級承認データを交換するもの。
(拡大画面:124KB)
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計画されていたテストケース(ATS318)の開発は開発負荷や期間等の問題によりキャンセルされた。ただし全て白紙になるわけではなく、これまでの作業内容を整理しGuidelineとして残すことで合意がなされた。
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