4. 協会の歩み
海外運輸協力協会 常務理事 桑原 薫
【司会】 それでは講演会を再開いたします。第2部といいますか、後半は調査研究報告がメインでございます。調査研究発表に先立ちまして、当協会の桑原薫常務理事から、当協会の30年の歩みについてご紹介いたします。常務よろしくお願いします。
【桑原常務理事】 ただいまご紹介にあずかりました当協会の常務理事の桑原でございます。若干お時間をいただいて、JTCA、社団法人海外運輸協力協会の30年の歩みにつきまして、簡単にご紹介をさせていただきたいと思います。
今日、皆様方のお手元にできたてのJTCAのパンフレットをお配りしておりますので、ご参照いただければと思います。
先ほど会長のあいさつの中にもありましたとおり、JTCAは昭和48年4月1日に社団法人海外運輸コンサルタンツ協会として運輸大臣の許可を得て設立いたしました。平成6年6月7日に社団法人海外運輸協力協会、これは名称変更でございました。そしてその際に、運輸協力研究センターを設置しております。
昨年、平成14年4月1日に観光開発研究所を設置しております。これは財団法人の国際観光開発研究センター、いわゆるITDIJの廃止に伴ってその業務の一部を引き継いだということでございます。これが極めて簡単に申しますと、このJTCAの30年の組織、あるいは名称の歴史でございます。
30年の記念ということでいろいろな記念事業を検討いたしましたが、私どもをめぐるさまざまな経営状況等もございますので、あまり派手な事業というものは差し控えまして、中身のある、実質のある記念事業ということで、今日、こうした講演会を実施させていただいております。
このほか現在作成中で、まもなく皆様にお届けできると思いますが、「JTCAの30年史、30年の歩み」というものを今編集しております。それから実は先日会員の何名かの方々と今後の海外コンサルのあり方についての座談会を実施いたしまして、その模様を私どもの広報誌「海外運輸」にご披露させていただく予定でございます。
私どもの協会は社団法人でございますので、基本的には会員によって成り立っているわけでございます。現在の正会員は26社、賛助会員は36社でございます。ちなみに昭和48年4月1日の設立時には、正会員11社ということでスタートしたわけでございます。一番最多の正会員というのは、私の調べたところでは平成2年に37社、賛助会員については平成6年に50社というのが一番多いということでございました。
次にJTCA30年間の事業実績ということについては、事細かにお話しますと時間がいくらあっても足りませんので、詳しいことはご説明いたしませんが、このパンフレットはここ最近10年間の私どもの海外事業実績を国ごとに、また事業ごとにわかりやすくビジュアルにまとめてみたものでございます。
挟み込みであります「JTCA海外事業実績」は、最近5年間の私どもの事業の項目をご紹介しております。それから一枚紙で「JTCA 30年の主な事業実績」でございます。30年間の事業のトータルということで、一応数だけはわかるようになっております。例えば、国庫補助事業、あるいは国土交通省国際協力機構、JICA、あるいは国際協力銀行等からの受託事業。最近ちょっとございませんが、日本財団からの補助事業。それから私どもが自発的に行っている自主事業というのがございます。
例えば国庫補助事業を見ていただきますと、現在は半分、2分の1の助成を国土交通省からいただいております。実はいろいろな変遷がありまして、日本財団からも補助をいただいた時期もございますが、そういうのをひっくるめて例えば情報収集事業ですと、30年間のトータルが延べ542カ国、360の調査団を派遣したとか、案件形成ですと同じく123カ国113の調査団を派遣したとか、要人招へいですとトータル305名。
あるいは最近はもうやっておりませんが、日本のコンサルタンツの方々の研修をやっておりましたが、それがトータルで2,869名とか、その他こういったいろいろなセミナーも実施しておりますが、延べ受講者数が30年間2,212名。こういった形で30年間いろいろなことをやってきたというのを、皆様方にご参考までに配布しております。
それから今まで30年間に国庫補助金とかあるいは調査の委託とかそういったもので、国庫から30年間に約27億円ちょうだいしております。日本財団からは34億円、JICAは受託調査とか研修事業の委託、約1.6億円。JBICが0.3億円。会費収入30年間に8億6千万円、会員の事業の参加負担金が12億5千万等々、私どもの30年間の事業に伴って得た収入は約100億円でございました。1年に直しますと約3億円ぐらいの収入に基づいて事業を行ってきたということでございます。
次に先ほど来、ODAをめぐる情勢の大きな変化について、会長、矢部さん、あるいは森地先生からもいろいろなお話がございましたので詳しいことは私は申し上げませんが、いろいろODAをめぐる環境が厳しくなり、私どもの会員の経営状況も厳しくなり、あるいは公益法人の改革に伴ってJTCA自体の環境が厳しくなっていっても、私どもの竹内会長が常々強調しているように、やはり国際協力の必要性というものは変わりはないのではないか。やり方はいろいろ工夫すべきだけれども国際社会に生きている日本としては、国際協力を積極的に進めるべきであろうと。
その場合、今後私どものJTCAがどのような役割を果たしていったらいいかということが大きな問題かと思いますが、やはり公益法人という中立的な立場がベースにあるべきではなかろうか。そうした上で私が感じるのは2つの大きなポイントがあると思います。一つは、会員はいろいろな困難、例えばODAの予算が減ることによって経営が苦しくなる。あるいはコンサルタントの人材といいますか、仕事のやり方もいろいろ変わって変化していって国際競争も激しくなる。あるいはNGOとかその他大学研究機関等との競争も激しくなる。そういう中でどのように人材を育成したらいいか、またいろいろな新たな仕事を確保したらいいかという、会員が大変いろいろな悩みを抱えております。そうしたときにやはり会員と国土交通省、あるいは外務省、JICA、JBIC等との間の架け橋の役割が一つあるのではないか。もう一つは新しいODA大綱のもとで新しい国際協力ということがいろいろ求められている。その中で最近よく伺いますのは、政策協議の強化、あるいは現地のタスクフォース、つまり現地の大使館やJICA、あるいはJBIC、JETROといった現地の方々が十分に協議を連携して、国際協力のあり方というのをしっかりまとめて、それを本国日本に提言して、それをまた関係者が議論して、現地の実情に沿った国際協力のあり方を検討していくことが強調されています。そういう中で私どもはコンサルの会員の方々と一緒になって、具体的にどのようなODA国際協力の方向を考えたらいいのかという、政策提言能力といったものが我々の役割と思っております。
それから、私ども基本的には運輸分野という中でのJTCAの仕事ということで言いますと、運輸分野についての国別の援助方針をきちっとまとめることについて国土交通省さんをサポートしていくこととか、あるいはセクター別に、都市交通とか鉄道・港湾・海運・造船・空港・物流・環境、最近ではよくCDM、クリーンデベロップメントメカニズムといったことが重点事項となっておりますが、そういった環境問題。それから環境にやさしい交通体系あるいは観光、そういった運輸関係の各セクターについての調査研究能力を高めていく必要があると思います。
本日は、私どもの最近の調査研究についていくつか発表させていただきたいと存じます。これは主として国土交通省からの委託調査研究をベースにして、私どもの協会の中で調査研究した成果につきまして、先ほど申しましたようにセクターはもっとたくさんございますけれども、今回は3つのテーマを取り上げて、それぞれCDMについては竹内前主任研究員、観光につきましては前野主任研究員、航空に関しては新関主任研究員から、それぞれご報告をさせていただきたいと思います。
ぜひその3人の発表に期待していただきたいと思いますが、私どもとしては、これからも国土交通省をはじめ関係の方々のご支援を受けながら、会員の方々とともに頑張ってまいりたいと思いますので、どうぞ皆様方のご支援をよろしくお願いいたします。
大変簡単ですが、以上JTCA30年の歩みをご紹介させていただきました。(拍手)
JTCA30年の主な事業実績(昭和48年度〜平成14年度)
I. 国庫補助事業
1. 情報収集事業
注:昭和48年度〜平成9年度の間は日本財団からの補助あり。 |
2. 案件形成事業
注:平成2年度〜平成7年度の間は日本財団からの補助あり。 |
3. 要人招へい事業
注:昭和57年度〜平成7年度の間は日本財団からの補助あり。 |
4. 専門家派遣事業
5. 研修事業
注:平成5年度〜平成7年度の間は日本財団からの補助あり。 |
(コンサルタンツ研修事業)
・昭和48年度〜昭和63年度実績
II. 国土交通省受託事業
1. 調査研究等事業
2. 行政官研修事業
III. 国際協力機構受託事業
1. 研修及び技術評価審査等
2. 観光関係研修
IV. 国際協力銀行受託事業
1. 調査研究事業
V. 日本財団補助事業
1. 調査研究等事業
(発展途上国における運輸関係プロジェクトの調査事業)
・昭和48年度〜平成8年度実施
VI. 自主事業(含む・日本財団補助事業)
1. 運輸国際協力データベース整備事業
・JTCAホームページの更新・充実等
2. 開発途上国運輸インフラ整備促進事業
・ハノイ市における都市及び公共交通開発セミナーの開催等
3. 国際機関との連携、交流事業
・ESCAP、アセアン開催の会議への出席等
4. 広報活動事業
・機関誌「海外運輸」発行
5. 運輸分野国際協力セミナーの開催事業
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