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国際協力事業団(JICA)受託事業
1. 都市交通セミナー
 都市交通セミナーは、昭和53年度以降平成9年度まで20回実施されてきた。このセミナーは、国際協力事業団(平成15年10月1日独立行政法人国際協力機構に改稱。以下同じ。)(JICA)の海外研修員受入れ事業の一環として行われた事業の一部を当協会が受託して行ってきたものである。
 開発途上国においては、わが国が過去に経験したのと同様、経済の成長に伴って農村部から都市部への人口集中が始まり、またモータリゼーションの進展により都市交通量が増加し、交通渋滞、自動車排気ガスによる健康への被害、騒音、振動等都市交通問題が大きな社会問題となってきた。しかしながら、途上国においては、運輸インフラの未整備、都市計画・都市交通計画の欠如、技術・ノウハウの不足、都市交通政策立案及び行政執行体制の不備等により対策が進まない状況にあった。
 
 そこでわが国は、開発途上国政府の都市交通関係者を集め、当該国における都市交通問題の諸対策を内容とする研修を目的として都市交通セミナーを開催した。同セミナーを開催するに当たり、運輸省は、「東南アジア都市交通調査団」をASEAN5ヶ国に派遣し、現地の交通事情を調査した。その調査結果をふまえ運輸省はJICAと協議のうえ、昭和53年度に同セミナーを開設したものである。
 都市交通セミナーは、大別して(1)座学、(2)施設見学及び(3)国内研修旅行に分けられた。座学は主として東京(JICA研修所)で行われ、内容としては、日本における都市交通の歴史、現状及び問題点、日本の運輸行政、各輸送機関の特性、交通計画の考え方、需要予測の方法、財務分析、ケーススタディー等都市交通問題を全般的に把えていた。施設見学については、国鉄(JR)、営団地下鉄、モノレール、バスターミナル、新交通システム等であり、国内研修旅行は、都市交通事情及び各輸送機関を集中的に研修できる関西方面(大阪・神戸)及びわが国において都市交通計画が進んでいる名古屋とした。特に、関西方面においては、名所・旧跡の視察によりわが国の歴史・伝統・文化を紹介し、もってわが国に対する理解を深めさせることができた。
 因みに、昭和53年度から平成9年度までの間、20回開催され、世界各国42ヶ国から216名の研修員を受け入れてきた。また平成10年度からは、開発途上国の交通事情と変化とニーズに対応すべくコース内容を新しくし、名称を「都市公共交通コロキウム」と改称し再スタートした。
 
 平成10年度から、途上国の交通事情の変化とニーズに対応すべく前記の「都市交通セミナー」のコース内容をリニューアルし、「都市公共交通コロキウム」として再スタートした。
 
都市公共交通コロキウム(平成14年度)
 
 この研修コースの特徴として、「コロキウム」の名にふさわしい内容を目指して、研修員が応募時に提出したカントリーレポートに基づき、他の研修員及び講師に対し、自国の都市交通の現状と問題点並びに将来計画等について発表し、また、ファイナルレポートを研修最後に作成して発表を行い、全員で討論を行い各国の都市交通問題と自国の問題とを比較検討した。このカントリーレポートは、日本語に翻訳され、当協会の他の事業活動にも役立っている。
 研修参加者は、都市公共交通に対する実践的な知識及び環境問題に対する認識を含めた幅広い知識を習得し、更に、軌道系システム導入推進上の課題と対応策についての知識も得て、都市公共交通に対する理解を深めることができたものと考えられる。
 都市公共交通コロキウムヘの参加者は、平成10年度は、10ヶ国、11名。11年度、9ヶ国、10名。12年度、10ヶ国、10名。13年度、8ヶ国、10名。14年度、10ヶ国、11名。合計23ヶ国52名であった。なお、平成15年度からはさらに討論の場を増やすなどコース内容を新しくし、「都市公共交通コロキウムII」と改称して再スタートすることになった。
 
 国際協力事業団(JICA)は、開発途上国からの集団研修員受入れ事業の一環として空港セミナーを開催していたが、当協会は、昭和59年度より当該事業の一部を受託し、講師の派遣、航空関係施設の見学、国内研修旅行その他同セミナーの円滑な運営に積極的に協力してきた。
 このセミナーは、開発途上国政府等の航空関係職員をわが国に招き、当該国における空港計画、建設及び管理の問題を内容とする研修を行うことを目的とした。
 JICAは、この集団研修のほか、個別研修も実施した。昭和60年度には、「航空保安無線施設保守研修」を、61年度には、「レーダー航空管制研修」をそれぞれ実施した。この研修の実施において当協会は・使用するテキストの準備、専門講師の派遣、国内研修時における関係先との連絡・調整等を行い同研修の効果的な運営に協力した。
 また、当協会では、同研修の一項目として、当協会の空港計画関係全員とセミナー参加者との討議時間を設け、更に、これら研修員全員と関係会員との意見・情報交換のための懇談会も開催した。昭和59年度から63年度までの間に開催されたこのセミナーには22ヶ国から延べ55名が参加した。
 
空港セミナー(昭和60年度)
滑走路上で説明を受けている研修員
 
 JICAは、昭和61年度より平成3年度まで、研修員受入れ事業の一環として、空港管理・保安セミナーを開催した。このセミナーは、開発途上国政府等の主として航空保安(ハイジャック防止等)業務を担当する職員を招き、空港管理についての一般的知識及びハイジャック防止等について国際民間航空機関の勧告する体制、対策等、更にわが国の政府機関及び航空企業の採用している対策、対応措置等を研修することを目的とした。
 当協会は、既存のセミナー同様、JICAより事業の一部を受託し、講師の派遣、ハイジャック防止関連施設への見学、その他セミナーの円滑な運営に積極的に協力した。
 昭和61年度から平成3年度までの間に開催されたこのセミナーには、23ヶ国から延べ55名が参加した。
 なお、このセミナーは、平成元年度に「航空保安セミナー」と改称された。
 
 この事業は、国際協力事業団(JICA)と国際協力銀行(JBIC)で行つている連携D/D(実施設計)に係る技術評価業務である。わが国ODAをより効果的・効率的に実施するため、JBICによる円借款事業で実施されていた詳細設計を、JICAが開発調査の一環として実施することとなったものについて、詳細設計を受注したコンサルタントが作成する設計図書及び入札図書の妥当性を技術的観点から照査し、調査精度を確保するとともに、JICAに対して助言や提言を行うものであった。
 
【平成11年度】
 フィリピン及びスリランカにおける空港関連事業プロジェクトを対象とした。
・フィリピン国幹線空港施設建設事業連携実施設計調査
・フィリピン国バコロド空港の緊急改良計画及び新空港建設設計調査
・フィリピン国タクロバン空港の緊急改良計画及び拡張計画
・スリランカ国コロンボ国際空港改善事業連携実施設計調査
 
【平成12年度】
 11年度に引き続き「スリランカ国コロンボ国際空港改善事業連携実施設計調査」を対象に、設計図書等の妥当性を技術的観点から照査し、JICAに対して報告を行った。
 技術評価審査の主な項目は、(1)土木・建築施設、(2)機械・電機施設及び(3)施工計画・入札図書であった。
 
【平成13年度】
 「エル・サルバドル国ラ・ウニオン県港湾再活性化計画実施設計調査」を対象に設計図書等の妥当性を技術的観点から照査し、事業の質の向上、調査精度の確保を目的として業務を行った。
 技術評価審査の主な項目は、(1)港湾土木施設、(2)建築構造物及び(3)施工計画/入札図書であった。
 
【平成14年度】
 以下の3件を対象として設計図書等の妥当性を技術的観点から照査し、事業の質の向上、調査精度の確保を目的として行った。
・ エル・サルバドル国ラ・ウニオン県港湾再活性化計画実施設計調査に係る技術評価審査(第2年次)
・ インドネシア国ジャワ幹線鉄道電化複々線化事業連携実施設計調査に係る技術評価審査(第1年次)
・ フィリピン国次世代航空保安システム整備事業連携実施設計調査に係る技術評価審査(第1年次)
 
 インドネシアは、大小17,000を越える島で構成される群島国であり、海上輸送は、同国の経済活動に重要な役割を果たしていた。なかでもスマトラ島、カリマンタン島は河川を利用した舟運が内陸深くまで発達していた。その一方、河川沿いの航路は上流からの流送土砂や河口部に堆積した浮泥の打ち込みの影響により航路埋没が生じており、毎年港湾関係予算の25%を航路維持浚渫に費やさなければならない状況にあった。このためインドネシア政府は、効率的な港湾の管理運営・開発を進めるため、両島の河川港7港の総合整備計画を目的としたマスタープラン策定をわが国に要請してきた。
 平成12年度に実施されたこの調査は、インドネシア政府の要請に基づき、スマトラ島及びカリマンタン島の河川港整備に係るマスタープラン策定の実施調査をS/W協議・署名することを目的に実施されたものである。
 
(対象港湾)
カリマンタン島−サマリンダ港、クマイ港、サンピット港、ポンティアナック港
スマトラ島−パカンバル港、ジャンビ港、パレンバン港
 
 当協会は、事前調査団5名のうち1名を派遣し、主に自然条件・環境調査を担当した。調査団は、関連資料の収集・分析、各担当分野に関わる本格調査の実施方針等を検討した。







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